東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十一章第十三話「役職」

それは、とある日の事だった。

雨が強い、曇りの日。

博麗悪夢。今の幻想郷最大の敵はその姿をくらまし、八雲紫の追跡さえも振り切る。しかし紫、霊夢に夢月等は自身の式神や能力で悪夢を探していたのだ。

雷戦で、少なからず悪夢は霊力を消費し、弱っていた。だからこそ、回復する間も無く叩きたかったのが本音なのだが、遅かったらしい。

 

土砂降りの中、夢月の式神を通じて見えたのは名も無き山奥の中で、雨に打たれながら黒い靄を、自身の黒い霊力を纏っている博麗悪夢。

霊力の量ならば幻夢以上。式神と悪夢の眼があった瞬間、夢月の紙で出来た式神は破裂した。

名も無き山奥。しかし、大体の場所は分かった。

 

夢月は、霊夢と紫に直ぐ伝える。そして、今日。

 

しとしとと小雨が降りしきる中で、幻想郷の今の主力が博麗神社へと集められる―――――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

博麗霊夢。

霧雨魔理沙。

魂魄妖夢。

十六夜咲夜。

東風谷早苗。

レミリア・スカーレット。

西行寺幽々子。

藤原妹紅。

魂魄隔。

博麗夢月。

八意永琳。

鈴仙・優曇華院・因幡。

射命丸文。

 

そして、俺。天音真。

 

総勢14名が集う博麗神社の中はぎゅうぎゅうで、かなり狭い。

まあ俺の位置は一番入り口に近い処で、隣に隔が居るから幾分かマシなのだが。隔と隣に居ても緊張も何もしないため、俺はこの女子だらけの部屋でも何とか平静を保っていられるのだ。

 

「・・・後で殴るね」

「何でですか隔様」

 

ぼそっと隔が俺へと耳打ちしてくる。むすっとしている隔に言い返したところで、上座に居る霊夢が口を開いた。

 

「はい、じゃあ今日は集まってくれてありがとう。伝えたい事がいくつかあるんだけどね。・・・まず、悪夢が見つかったって事。場所はここ。幻想郷の東の果て、よ。・・・場所は、この山。此処には岩の高台があって、そこにも式神を待機させてる。んで、もう一つは・・・悪夢の処に殴り込みに行く話」

 

霊夢の、最後の一言で部屋の雰囲気が一気に引き締まる。

壁に貼ってある地図をはがすと、霊夢は真っ白な紙を貼った。そしてどこからか鉛筆を取り出すと、まず最初に『人里防衛』と彼女は紙に書き写す。

 

「役割を幾つか決めるわよ。まずは人里を守る奴ら。・・・私的には、咲夜と早苗、レミリアを除いた紅魔館メンバーなのだけれど、異論は?」

 

「無いわよ」

「無いです!!」

「問題ないわ」

 

三人が同意すると、霊夢は直ぐに『人里防衛』の下に咲夜早苗紅魔館と書き写した。次に彼女は『治療』と書く。しかしこれに至っては最早決まっているようなものだ。

 

「永琳、優曇華。まあ、永遠亭メンバーね。宜しく!」

「了解、霊夢」

 

直ぐに決まる。改めてみると、幻想郷のメンバーを集めればここまでバランスの良いチームが出来るのだと感じるほどにプロフェッショナルが多い。

永遠亭なんかはその代名詞だろう。

 

次に選ばれたのは、『作戦参謀』。

 

ここには幽々子と隔に文、掛け持ちで永琳が選出された。

 

そして最後に書かれるのは、

 

『交戦』

 

一番危険で、一番戦力を注がなければならない場所。

書かれていく名前。勿論残っているレミリア様や妹紅、魔理沙や妖夢が選出されていく。

霊夢は、書き終えると鉛筆をポケットへしまった。

 

しかし。何度見てもそこに俺の名前は無く、何故か満足げにしている皆の顔を見回すと。

 

「おい、真を書き忘れてるんだぜ」

「あ」

「単純に忘れられてた!?」

 

魔理沙の言葉に、霊夢は慌てて鉛筆を取り出す。

オーバーレイ、ノーコストスーパーノヴァ。フルバーストに陽炎の能力、幻夢の霊力。

レミリア様と引き分けた俺の名前は―――――

 

『人里防衛』に書かれた。

 

 


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