東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十一章第十話「乗り越えるべき相手」

目の前に降り立ったレミリア様。驚く俺と、不敵に笑うレミリア様の視線が一瞬交錯する。

その瞬間。彼女はグングニルを俺へと投擲し、俺は天開・羅刹を振っていた。

ガギイン!! と、深紅の矛先と蒼い刃が火花を散らす。レミリア様の手から離れても尚勢いを弱めない神槍。その神の槍を、俺は刀の刃で滑らせ後ろへと軌道をそらした。

そして、直ぐに身を屈める。俺の髪を二、三本持っていきつつ、レミリア様の蹴りが頭上を掠める。

反撃とばかりに、俺はその状態からアッパーを放った。しかし。その拳をいとも容易く掴み取り、上へと受け流した彼女は、がら空きになった腹部へと紅い魔弾を打ち込む。

 

「紅符[スカーレットシュート]」

「結界[双対の禊]!!」

 

慌てて、俺は結界を生成した。黄金に輝く長方形の結界が四枚、重なり合うようにして俺の腹部を覆い尽くす。だがレミリア様はそれを気にせず魔弾を打ち放つ。鋭いドリルの様にきりもみ状に回転し、双対の禊を削る魔弾。底知れない紅の魔力に武者震いしつつも、俺は禊の陰から飛び出した。

 

その瞬間に、双対の禊がレミリア様の拳によって破壊される。窓ガラスの様に、割れて飛び散る結界の破片。

いつもなら散って終わり。だが、今の俺には地底で創ったあれがある。

 

「霊甲[九十九]!!」

 

蒼い手甲が、右手に生成される。鬼の角を模した二つの突起は肘から後ろへと飛び出しており、散った破片がそれを瞬時に形成した。

より強固に、威力の増した右拳を俺は振るう。ボッ! と空気が渦巻く強い音が鳴り響き、レミリア様の頬を穿いた……かのように思った瞬間。

俺の拳はしっかりとレミリア様の左手に受け止められ、彼女も彼女で先ほどよりも口角を釣り上げている。

深紅の瞳が、すっと細められる。右手を慌てて引こうとしたその時。

 

「紅符[不夜城レッド]」

 

小さな声が呟かれ、紅い魔力が膨れ上がる。何よりも先に回避行動を、いや一心不乱に俺は後ろへと全力で飛び退った。

 

ボッ、と一瞬レミリア様の体が燃え上がる――――そう思った矢先に、彼女の体から十字を描く様に高密度の砲撃が放たれていた。

回避を優先したため、俺に被害は無い。しかし九十九の角が一本折れてしまっている。流石の威力に舌を巻くも、俺は天開・羅刹を右手に、そして左手で白楼剣を鋭く引き抜いた。

二刀を合わせ、不夜城レッドを解いたレミリア様へめがけて大きく振りかぶる。

思い描くのは、妖夢の最強技。模倣で、未完成であっても、その威力は凄まじい――――

 

「人鬼[未来永劫斬]!!」

 

蒼い霊力が、急激に伸びる。射程距離拡張が、フルバースト+ドライブによって今までとは段違いの密度、長さを生み出した。

右手の羅刹は、斜めに。左手の白楼剣は真っすぐに、それらはレミリア様を目がけて振られる。

手が霞む。ブウン!! と鋭い音を里に響かせる二刀の刃は、真っすぐに彼女へと切っ先を向けていた。


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