東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
真「乙・・・っていうか、明日は?」
ラ「明日は勉強しなくていい教科だからね。しょうがないね!」
真「馬鹿野郎」
ラ「さて、前回はかくりんがさよならして終わったね」
真「・・・これからどうなんの?」
ラ「真君が酷い目に会うでファイナルアンサー。では、どうぞ!」
真「ふざけんなよラギアあああああ!!」
俺は、気づけば永遠亭に戻って来ていた。
どうやって来たかも覚えていない。深夜の真っ暗な白い廊下のベンチに、気づいた時には座っていた。
仄かな月明かりが廊下の窓から差し込む。無音、静寂に包み込まれたここは世界から隔離されている様だった。
紅魔館の皆は今、治療と同時に咲夜さんのお見舞いに行っている。
そっと掲げた傷だらけの右手。何も掴めないその掌は、掌だけは綺麗だった。
――――きっと、殴り続けたから拳は汚いんだ。
――――きっと、何も掴もうとしないから掌は綺麗なんだ。
顔を歪め、悔しさに奥歯を噛みしめる。思わずミシッと軋むくらいまで強く握りしめていた拳を膝の上に力無く落とすと、嫌でも隔の最後の一言が甦る。
『さよなら』 と。
あいつは、そう呟いて微笑んだ。
理性を持てている。つまりは、レミリア様から聞いた話の通りなら。
「あいつは、完璧に暴走妖になったって事だ・・・」
ぽつりと呟く。だが、それに返す人はここには居ない。
一度は壊した核が甦った事。心に引っ掛かりを残したまま、記憶は鮮明に残る。
考えろ。
あいつなら、記憶が戻った後に、どこに行く?
思い出せ。
伊達に16年間一緒に居る訳じゃないだろう。
ピースをかき集めろ。這いつくばってでも集めるんだ。
――――――最後何かじゃない。たとえ何があろうとも、俺はあいつを救い出す。
ベンチから立ち上がり、俺は永遠亭の外へと出る。
九月の涼しい夜風が肌を撫でる。少し欠けた月が、それでも青白く強く光り輝く。
「オーバーレイ」
徐に、俺は自身の最強技を使用した。
黒と白の霊力が体の左右から燃え上がる。光粒を散らしながら、俺は体を捻り右拳を腰ダメに構えた。
(・・・真か、丁度良い、少し話したいことがあったんだ)
「そっか。分かった。・・・でも一回だけ、少し試したいことがあるんだ。良い?」
(ん、おっけ)
「ありがとう」
幻夢に返し、長く息を吐く。
刹那、白と黒の霊力が激しく右拳から立ち昇る。夜の闇を切り裂く一筋の流星は、その色をどんどん禍々しい漆黒に塗り替えて行く。
ブウン、と右腕の刻印が浮かび上がる。黄金の輝きを放ちつつ黒い刻印はリングの様に浮かび上がり、フルバーストは出来ない物の、”破壊”の霊力を更に強くさせた。
漆黒の尾を引く、ただただ破壊を、威力を求める拳。
余りのエネルギーに右腕は小刻みに震え始め、血管が膨れ上がり今にも血が噴き出しそうな状態。
「お・・・おおお・・・!!」
歯を食いしばり、暴発しそうな力を無理やりに抑え込む。
霊力が渦を巻く。絶大な破壊を以てして、俺はそれを、解き放った。
「滅壊ノ・・・星撃ッ!!」
その瞬間、幻想郷に凄まじい轟音が轟く。周囲には台風の中に居る様な暴風が吹き荒れ、地面は抉られ木は吹き飛び、木の葉は舞う。
どこまでも、その威力を弱めながらも漆黒の流星は前に突き進む。
しかし、それは50m位で真上に弾き飛ばされた。
いきなりの事に眼を見開く。直後、瞬きを一回するかしないかの速度で何かが俺へと急接近した。
二刀の小太刀を両手とも逆手に持ち、紫の焔を纏いながらそいつは連撃を放つ。
「ぐっ・・・霊甲[九十九]!」
右手に鬼の角をモチーフにした二本の突起がある手甲が生成される。
赤いマフラーをたなびかせ小太刀で切りつけて来るそれと、俺は大きく距離を取った。
空を見れば、もう夜明け。朱色に染まる大空のした、金色の簪を陽光に煌めかせ――――
「・・・いきなり滅壊ノ星撃は酷いと思う」
「あ、暁!?」
むすっと頬を膨らませた暁が、そこに居た。
未だに紫の焔を纏い、『時雨』と『日登』を両手に構える。
相当おこの様子。俺はオーバーレイの脚力を全力で使い、さっきの滅壊ノ星撃で痛めた右腕を庇いつつ大きく飛び退った。
しかし、そこは暁。俺の真上に一瞬で来るやいなや、ハイライトを消した瞳のままぽつりと呟いた。
「真の・・・ばか」
そして。
ドゴォオオンッ!!! と、洒落に成らない威力の峰打ちが脳天へと突き刺さった――――!!