東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
テスト勉強をし続け時間もろくに取れず投稿が出来なくてすみません。
増えて行くお気に入り様、UAを見ると申し訳なさが凄く、東方要素は皆無ですが番外編を空き時間を縫って書きました。
真君と隔が、二人とも中学生だった頃のお話です。
隔は病院で魂を失って居た時に髪が伸びたため、今はまだ妖夢を黒髪にしただけの容姿です。
それでは、何故かちょっぴりシリアス風味の番外編をどうぞ。
「次の授業は体育だから、皆着替えて置けよー」
お節介な学級委員やその他の奴らが口々に言う。それを聞き、俺はため息をついた。
俺、天音真は体育が苦手である。
取り敢えず、マット運動をしようものなら前転で酔い、側転でぶっ倒れ気を失う。
跳び箱は顔面からダイブするか飛び過ぎて地面に顔面からダイブするかの二択、球技に至ってはボールが予想したのと反対に飛んで行く。
剣道は出来るのだけれど、その他が壊滅的だ。
寧ろ、俺は教科で理科以外何も出来ない。泣きそう。
体操着を持って男子更衣室へ向かう。少し遅めに出たので周囲には誰もおらず、雨の降る外を見ながら一人廊下を歩いていく。
しかし、全教科オール5、高校の推薦やプロからの勧誘が止まない少女が俺の周りに一人いる。
魂魄隔。黒髪をショートに切りそろえ、昔に俺が上げた黒いカチューシャを今でもしている奴だ。
才色兼備、文武両道・・・褒める言葉は後を絶たず、勿論男女からの人気も高い。
跳び箱では18段を助走無しで飛び、マットでは『シライ』をいとも簡単にこなす。
サッカーではどこぞの化身をだしたり、バスケでは消えたり飛んでも無くジャンプしたりする。
決して傲慢では無く、寧ろ謙虚。クラスの隅に居る様な奴、例えば俺ですね。にも手を差し伸べてくれるような優しい性格。
非の付け所の無い彼女は、何を隠そう俺の幼馴染だ。
思い出せる限りの最古の記憶に、もう彼女は居る。
家族を交通事故で失った俺の傍に何時も居てくれ、ご飯も作ってくれるわ家事もしてくれるわ・・・。
やはり俺は、いつも思ってしまうのだ。何で俺なんかと一緒に居るのか、と。
外で振り続ける雨の音が一層俺の気持ちを暗くさせる。曇り空は濁り、青空は微塵も見えない。
クラスには隔の事が好きな男子が沢山というか全員。その中には俺よりも成績も良いし勉強も出来る奴もいる。見た目が良い奴も優しい奴もいる。
その中で、何故俺なのか。
何故、天音真の傍に魂魄隔が居るのだろうか。
それは、ずっと俺やクラスの皆の胸に燻り続ける思いだった。
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しかし、そんな中でも俺に接してくれる奴は居る。
塩谷樹(しおやいつき)、略して塩。
生徒会にわざわざ立候補するような奴の傍によると、そいつはもう着替え終わっていた。
「お、天音。早く着替えねえと遅れるぞ」
「いやまあ、大丈夫だ問題ない」
「フラグ立てて行くの止めない?」
今日の授業は男女混合のバレーボール。
着替えを手早く終わらせ、俺は塩と一緒に体育館へと向かった。
☆★☆
「えっと、チームは私と真と塩と新田と小台だね!一人少ないけど、宜しく!」
「魂魄が居るなら百人力だ!」
小台という変態が大きく声を上げる。俺と小台はこれまた腐れ縁も腐れ縁の関係だ。
隔と新田が女子同士盛り上がる中、俺と小台と塩は周囲からの鋭い視線を受けていた。
(・・・周囲の視線が痛いんだが)
(それな)
(勝手に言わせておけばいいんだよ、そんなの)
小台が最後に呟くと同時に、試合が始まる。
俺は身長が高いため前に行き、隔と塩も前。
バレー部の新田と・・・大して特徴の無い小台に後衛を任せる。
まずは相手のサーブ。男子がゆるりとボールを上げ、そして鋭く右手を振り下ろす。
甲高い音が体育館に響く。それと同時に、真っすぐ飛んでくるボール。その路線上には、俺が重なり・・・
「ふぐおっ!」
「「「天音ーー!!」」」
顔面にヒット。しかし高く上がったボールを隔が何とか上げ、塩が叩き込み先制点。
「真、大丈夫?」
「何とか」
隔が顔面を抑える俺に手を差し伸べる。掴んで引き起こされたところで、今度は此方のサーブ。
ローテーションはしないスタイル。小台がボールを下から投げ、相手が高くレシーブをする。
そのボールは相手のセッターにわたり、そのまま、
「死ね天音え!!」
「何でピンポイントで俺なんだよ!!」
高くジャンプした男の強烈なスパイクが再び俺目がけて放たれる。
しかしそれを俺は取り敢えず高く上げ、ひりひりとする両腕を擦り叫んだ。
「隔!頑張って!」
「いや――――無責任すぎでしょ!」
と言いつつ、隔は高く上がったボールをそのまま叩き込み得点。
その後も俺は狙われ続け、ボロボロになりながらも全て上げる。
チーム全体のフォローもあり、その試合は何とか(25-0)で勝ったのだった。
「もうやだバレー怖い」
「いやまあ、お前魂魄と仲良すぎだから狙われんだよ」と塩。
「・・・そういえば隔ってお前らと遊んだりするの?」
「ううん、誘っても真がなんたらかんたら・・・って言って来ないよ」
新田が首を振り、小台が審判をしている隔を見つつ腕組みをし、神妙な面持ちで呟いた。
「あれが、絶壁・・・か」
「お前何言ってんの?」
塩が遠慮なしの蹴りを放ち、脛を押さえ小台は呻き始める。
友人が馬鹿をやって居る中。
俺は一人胡坐を掻きつつ、声援を送りつつ審判をする隔を見て、ふと思う。
もしかしたら、俺が隔から距離を取れば良いんじゃないかと。
そうすれば隔はクラスの友達と一緒に遊びにも行けるだろう。
俺なんかに構わず、しっかりと青春を謳歌出来るのではないだろうか。
「おい天音、どうしたんだよ」
「ん・・・いや、何でも無い」
試合の様だ。
駆け寄って来る隔、声を掛けてくれた塩へと歩み寄りつつ、俺は複雑な気分で再び集中砲火を受けるのだった。
魂魄「ねえ小台、さっき何か言った?」
小台「ろ、ロッククライミングって良いよね!」
魂魄「ん?」
小台「マジですみませんでしたああああああああ!!」
真、新田、塩(怖えええええええええええええええええええええ!!!!)