東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「テストの時期ですので、暫し不定期更新になります。すみません!」
隔「じゃあ、どうぞ!」


第八章第二十話「さよなら」

八咫烏に乗って飛んでいた時だ。

急に、珍しく陽炎が話しかけて来た。

 

『真』

「ん?」

 

『今回の戦闘、ちょっと私に任せて貰えない?』

「・・・なして?」

『真が行き詰ってるみたいだからね。ちょーっと可能性を示すのと、後真はもう全身が限界。そんな状態で無茶されたらいやだからね』

 

陽炎の言葉。

幻夢に体を預けた事はあるが、陽炎にはしたことが無い。

そして俺もこいつの戦闘を見てみたい。

 

・・・自分自身の可能性も。

 

「分かった。頼む」

『はい、じゃあ・・・よっと」

『おお!?何此処真っ白!』

「ありがとね、真。んじゃ、行きますか」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

弓を消し、私は魂を奥にしまう。

前に出て来る真。横たわる隔へ向けて、彼は駆け出した。

 

☆★☆

 

「隔!大丈夫か!?」

 

くたり、と力なく横たわる隔へ声を掛ける。しかし反応は無く、呼吸は弱弱しい。

陽炎はやはり強かった。

この俺と変わらない条件で、俺よりも強く戦える。

・・・つまり、俺もあの動きが出来ると言う事。そして、恐らく理屈ではそうでも絶対に出来ないと言う事が分かった。

 

何より先に、俺は隔相手でもあんなに豪快に殴れない。

容赦なく相手を殴る時は、本当に起こった時だけだ。

 

情けを掛けるなと言う事なのだろうか。

 

雑念が渦巻く。そんな中、抱えている隔がそっと身じろぎをした。

 

「起きたか・・・?」

 

そっと、隔の瞼が重々しく持ち上がる。

一先ず、安心か。俺は起きた隔に向かって笑いかけた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

暗い暗い、深海の様な場所に私は居た。

眼を開いても何も分からない。明りの様な物は何一つない。

 

辺りを眺めまわす。すると突然、私の後ろで光が差した。

 

慌てて其方に振り返る。そこにあったのは、最近ずっと頭に流れ続けていた映像だった。

でも、いつもと違う点がある。それはノイズが掛かって無いと言う事。

 

不思議に思う。あのノイズは、絶対に消えなかったのに。

 

その映像を見ていると、やがて私の周りは映像で覆い尽くされ始める。

長い長い夜の映像。それは段々と私の心に影を落とし、蝕み始めた。

 

急に、映像が消えた。

 

再び広がる無限の闇。終わりの見えない虚空の中で――――

 

 

私の頭の中で、全ての映像が、記憶になった。

 

その瞬間理解する。真の傷だらけの理由や、ボロボロの紅魔館。

そして自分自身の異変も全て、全てが分かってしまう様になった。

 

映像には、時折、誰のか分からない小さく力の無さそうな右手が映っている。

自身の右手を掲げ、その闇の中でそっと手の輪郭をなぞる。

 

ああ、同じだ。

 

真を傷つけた手も。

レミリア様を斬った手も。

美鈴さんを殴った手も。

 

私の手だった。

 

ドン!! と、心臓から闇の中でも分かるくらいの漆黒に染まった霊力が溢れ出す。

暴走妖――――聞いていた。咲夜さんから。

 

核を壊せば再生しなくなる。核を壊さなければ、無限に再生し襲い続ける。

 

弓に射られた記憶。表面上の核は壊された。・・・でも。

 

ごめんね、真。

 

少女は呟いた。

 

 

「私の核は・・・もう、心臓の中まで侵食しちゃってるんだ・・・」

 

鼓動が一瞬高まる。

少女は、現実に引き戻された。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一瞬の出来事だった。

隔の心臓部分に黒い霊力が溢れたと感じた瞬間、俺は大きく弾き飛ばされ。

虚無の闇を纏った隔の眼は、いつも通りに光が宿っていることを認識する。

 

空中で、交錯する視線。

 

その中で。

 

さ よ な ら

 

隔の口が声を発さずに動き、最後に微笑み。

 

黒い一陣の風が吹き荒れるとともに、俺の前から消え去った。


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