東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

131 / 224
第八章第十四話「気づき」

もそもそと病院食を頬張りながら、未だに俺の上で寝ている妖夢に目を向ける。

・・・四徹と言う事は寝ずに俺の傍に居てくれたのだろう。後でお礼を言わなければならない。

 

「で、今回の真の容態だけど」

 

声が聞こえた方へ俺は振り向く。そこに居るのは永琳先生。病院食を持って来てくれ、俺に食べさせてくれている。

カルテをぺらぺらと捲りつつ、彼女は深刻な表情で呟いた。

 

「全く、いつも以上に酷い損傷ね。・・・その所為で・・・真、良く聞いて」

「はい?」

 

梅干しの入った御粥を食べさせる手を止めた永琳先生の言葉で、急に上がった緊張感に体を強張らせる。

俺の眼を真っすぐに見据え、そして彼女は言いきった。

 

「スーパーノヴァ、ビッグバン。・・・これらが貴方の体で使えるのは残り三回程度よ」

「・・・そう、ですか・・・」

 

恐らく俺の中での最強威力を持つ二つの技。

自身の腕を犠牲に大爆発を起こすその技の、実質封印を俺は告げられた。

 

「これ以上は薬でも治し切れるか分からない。右腕が再生できなくなるかもしれないし、再生したとしても動かないかもしれない。・・・もう、唯の人間としてはボロボロの体なのよ」

「・・・」

 

何も言えなかった。

今は包帯に包まれている、傷だらけの右腕。

ボロボロのその手は、やはり俺が”人間”なのだと思い知らされる。

 

「・・・ま、それくらいね。完治まで一週間と言う所かしら。後、あまり女の子連れ込んじゃ駄目よ?」

「連れ込みませんからっ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おーい、陽炎ちゃーん」

「あんたまで陽炎ちゃん言うな!!」

「えー」

 

白い世界。

真の中で、二つの魂は会話していた。

 

「あのさ、ロストバーストって悪夢が使ってたじゃん」

「うん」

「あれ、どうやったら使えんの?」

「知らないよ!!」

 

首を傾げる幻夢に突っ込む陽炎。

何だかんだで良いコンビである。

 

「・・・まあ、悪夢?が外に出てそれは天久って奴が纏ってたよね」

「オーバーレイを外でやった感じ?」

「それが近いんじゃない?」

 

うーん、と幻夢は頭を悩ませる。

理由は簡単。どうやったら出来るか分からないだけだ。

 

「やってみっか」

「今真入院中だから!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

レミリアは頭を悩ませていた。

今、彼女の目の前では美鈴率いる妖精メイドが紅魔館を直している。

パチュリーも地面に木の棒で魔法陣を書いており、直るのは後少しだろう。

咲夜は人里まで物資の調達。

 

かくいうレミリアは、怪我が酷く皆から『休んで下さい』と言われ不本意ながらも日傘の下で足を組んでいるのだ。

 

(・・・暴走妖、か)

 

レミリアはふと思う。

 

(知らない妖怪なら無情になれるのでしょうけど・・・相手が隔と成ると、それはキツイ・・・いや、無理ね)

 

くるくると指を回し、それと同じく頭を回す。

そういえば、咲夜がこんな事を言っていたではないか。地底の異変から帰って来た時、やけに落ち込んでいる咲夜を見かねたレミリアは思い出す。

 

『真は、暴走妖を救けて自身はマグマに落ちてしまったらしいです――――』

 

――――救けて落ちてしまった――――

 

ニヤリ、と。

レミリアは不敵に口角を吊り上げる。

自分たちは暴走妖の事を殆ど知らない。隔がどんな状態なのかも。

 

なら、聞けばいいだけだ。

 

レミリアは立ち上がり、美鈴に声を掛ける。

 

「美鈴。ちょっと出かけて来るわ」

「えっ・・・ええっ!?ちょ、ちょっとレミリア様!?どこ行くんですか!?」

 

日傘を持ち、レミリアは立ち上がる。

黒い蝙蝠の翼を広げ、後ろで叫ぶ美鈴に向かって――――

 

――――レミリアは犬歯を剥き出しにした。

 

「地獄」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。