東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
もそもそと病院食を頬張りながら、未だに俺の上で寝ている妖夢に目を向ける。
・・・四徹と言う事は寝ずに俺の傍に居てくれたのだろう。後でお礼を言わなければならない。
「で、今回の真の容態だけど」
声が聞こえた方へ俺は振り向く。そこに居るのは永琳先生。病院食を持って来てくれ、俺に食べさせてくれている。
カルテをぺらぺらと捲りつつ、彼女は深刻な表情で呟いた。
「全く、いつも以上に酷い損傷ね。・・・その所為で・・・真、良く聞いて」
「はい?」
梅干しの入った御粥を食べさせる手を止めた永琳先生の言葉で、急に上がった緊張感に体を強張らせる。
俺の眼を真っすぐに見据え、そして彼女は言いきった。
「スーパーノヴァ、ビッグバン。・・・これらが貴方の体で使えるのは残り三回程度よ」
「・・・そう、ですか・・・」
恐らく俺の中での最強威力を持つ二つの技。
自身の腕を犠牲に大爆発を起こすその技の、実質封印を俺は告げられた。
「これ以上は薬でも治し切れるか分からない。右腕が再生できなくなるかもしれないし、再生したとしても動かないかもしれない。・・・もう、唯の人間としてはボロボロの体なのよ」
「・・・」
何も言えなかった。
今は包帯に包まれている、傷だらけの右腕。
ボロボロのその手は、やはり俺が”人間”なのだと思い知らされる。
「・・・ま、それくらいね。完治まで一週間と言う所かしら。後、あまり女の子連れ込んじゃ駄目よ?」
「連れ込みませんからっ!!」
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「おーい、陽炎ちゃーん」
「あんたまで陽炎ちゃん言うな!!」
「えー」
白い世界。
真の中で、二つの魂は会話していた。
「あのさ、ロストバーストって悪夢が使ってたじゃん」
「うん」
「あれ、どうやったら使えんの?」
「知らないよ!!」
首を傾げる幻夢に突っ込む陽炎。
何だかんだで良いコンビである。
「・・・まあ、悪夢?が外に出てそれは天久って奴が纏ってたよね」
「オーバーレイを外でやった感じ?」
「それが近いんじゃない?」
うーん、と幻夢は頭を悩ませる。
理由は簡単。どうやったら出来るか分からないだけだ。
「やってみっか」
「今真入院中だから!!」
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レミリアは頭を悩ませていた。
今、彼女の目の前では美鈴率いる妖精メイドが紅魔館を直している。
パチュリーも地面に木の棒で魔法陣を書いており、直るのは後少しだろう。
咲夜は人里まで物資の調達。
かくいうレミリアは、怪我が酷く皆から『休んで下さい』と言われ不本意ながらも日傘の下で足を組んでいるのだ。
(・・・暴走妖、か)
レミリアはふと思う。
(知らない妖怪なら無情になれるのでしょうけど・・・相手が隔と成ると、それはキツイ・・・いや、無理ね)
くるくると指を回し、それと同じく頭を回す。
そういえば、咲夜がこんな事を言っていたではないか。地底の異変から帰って来た時、やけに落ち込んでいる咲夜を見かねたレミリアは思い出す。
『真は、暴走妖を救けて自身はマグマに落ちてしまったらしいです――――』
――――救けて落ちてしまった――――
ニヤリ、と。
レミリアは不敵に口角を吊り上げる。
自分たちは暴走妖の事を殆ど知らない。隔がどんな状態なのかも。
なら、聞けばいいだけだ。
レミリアは立ち上がり、美鈴に声を掛ける。
「美鈴。ちょっと出かけて来るわ」
「えっ・・・ええっ!?ちょ、ちょっとレミリア様!?どこ行くんですか!?」
日傘を持ち、レミリアは立ち上がる。
黒い蝙蝠の翼を広げ、後ろで叫ぶ美鈴に向かって――――
――――レミリアは犬歯を剥き出しにした。
「地獄」