東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
「・・・処遇は、今後の様子を見て、ね」
「分かりました。まだ俺でも互角以上に戦える程度の力ですので、そんなに直ぐに脅威にはならないと思います」
重々しく言いきり、レミリア様は立ち上がる。
そういえば、そろそろ朝ご飯だ。早く隔にご飯を持って行ってあげなければならないし、何よりも白玉楼に帰らなければならない。
妖夢相手に試してみたいことがあるのだ。
その後、俺は何故か憤慨している霊夢にボコされ、隔にご飯を持って行き、そして紅魔館を出た。
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白玉楼の玄関の扉を開けて、中に入る。
「あ、お帰りなさい真さん。どうでした?」
「ただいま妖夢。一応皆に挨拶できたよ」
迎えてくれた妖夢に返し、俺は早速話を持ち掛ける。
「妖夢、ちょっと手合わせしてくれないかな?その・・・修行の成果、見せたいし」
「おっ・・・真さんから誘ってくるなんて珍しいですね。良いですよ、受けて立ちましょう!!」
にこっと笑った妖夢は手を打ち鳴らす。早速、俺達は白玉楼の中に在る稽古場へと向かった。
「さて、じゃあ本気で行きますよー♪」
「・・・え?楼観剣と白楼剣使っちゃいます?」
「勿論です」
初っ端からギャリイイン!!と二刀を抜き放ったのを確認し、俺は彼女からさらに一歩離れる。
稽古場の端から端まで25m程。その中心で、俺達は相対した。
余裕を持った表情で、妖夢は二刀を持ったままゆったりと力を抜く。
対する俺は、姿勢を低く。桜ノ妖は、まだ抜かない。
「よーい、どん!」
妖夢の合図。直後に襲い掛かる二筋の斬撃を、俺は横に転がり避ける。
「バースト!!」
出力、15%。
一気に距離を詰めて来る妖夢は素早く細かい斬撃を無数に繰り出してくるが、俺はそれを全て素手で受け流す。
勇儀師匠と萃香師匠の拳の方が、まだちょっと速い・・・!!
一つを大きく弾く。それによって生まれる隙に向けて、俺は圧縮を繰り返し極限まで小さくなった霊弾を放った。妖夢はそれを回避し、大きく飛び退る。一瞬の攻防。しかし、俺が今までよりも成長して居る事を実感したのだろうか。
「人符[現世斬]」
何の前触れも無く唱えられるスペルカード。銀の刃が更に強く煌めくと同時に、視界一杯の弾幕と中心を切り裂く凄まじい斬撃が現れる。
・・・ここだ。
俺は右拳を強く握りしめ、そして滅壊ノ星撃前の様に強く霊力を放出した。
青白い霊力が尾を引く。その状態で、俺は『修行の成果』を形成していく。
迫る攻撃。俺は握りしめていた右拳を開くと同時に、強く、大きく叫ぶ。
「霊甲……[九十九]!!」
刹那、蒼き光が宙を切り裂くと同時に俺の右手を霊力が包み込む。
形成される、蒼い手甲。鬼の角の様な物が付いたそれを纏い、俺は手を前に突き出した。
途端に、一瞬で創りだされる結界。俺を守る様に、それはしっかりと立ちふさがる。
その名の通り九十九の選択肢を持つ、俺の技の『土台』である。
手甲の為防御にも使えるし、少し形を弄ればそのまま殴れたりもする万能技。
今まで、俺は体の内側から霊力を放出し戦ってきた。
しかし。それでは、どうしても少しのタイムラグが発生する。
ならどうするか――――勇儀師匠の答えは、元々の土台を形成しておいておけばいい。
今までよりも格段に早く。今は小さな速さかもしれないが、それは俺が強くなればなるほど重要に成って行く。
弾幕が完全に晴れる。それと同時に、俺は左手で桜ノ妖を抜き放った。
ガァン!!と妖夢の楼観剣と桜ノ妖は火花を散らす。迫る二刀目、白楼剣を、
「心刀[天開・羅刹]!!」
同じように、俺は刀で受け止める。
お互いにお互いの刀を弾く。腕がびりびりと痺れるのを耐え、すっと遠くに着地した妖夢へと切っ先を向けた。
「・・・良いですね。速くなりましたね」
「分かるもんなのかな?」
「ええ。かなり」
そこで戦闘は止まり、俺達は息を吐く。
「ん・・・途切れちゃいましたし、終わりましょうか。修行の成果は見れましたし」
「分かった。ねえ妖夢、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「えとさ、霊力と刀の扱いに長けている人っていない?」
「・・・いやいやいや、近くに居ますよね?」
「・・・え?」
「・・・え?」
何の事か分からずに首を傾げると、妖夢も同じように声を出す。
黒い黒い、笑顔付きで。
「やっぱり終わりにしません続行ですその腐った精神根本から叩きのめします」
「え、ちょっと妖夢待って」