東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
真「いや誰も分かんないよね」
ラ「作者も分からない!」
真「おい」
ラ「ただ一つ言えるとするならば」
真「?」
ラ「この章、悲惨な眼に合うのは隔だ・・・」
真「不憫だなあいつ!」
階段を一つずつ登っていく。手すりを掴む手には汗がじんわりと浮かび、俺はそれを着物の裾で拭う。
霊夢や魔理沙に会うのも実は結構緊張していた。暁とは初めて会った時が敵同士だったという複雑な過去を持つので、それ以上に俺の鼓動は速まっている。
・・・しかし、神はまるで謀ったかのようにタイミングを合わせるのだ。
階段を上り終え、暁の部屋へと向かう。
だけど、それよりも速く、扉は開いた。
「・・・!」
中から目元を真っ赤にし、簪で長い黒髪をポニーテールに括った暁が出て来た。
寝間着では無く、何時もの香霖堂に立つ服装。
彼女は扉を開いた態勢のまま、数秒硬直。
やがて、俺へと勢いよく抱き着いてきた。
強く抱きしめられ、洒落にならない程の強さで背骨とかが圧迫される。
暁の顔の辺りから温かい涙を服越しに感じ、思わずと言った風に俺は暁の頭を優しく撫でた。
自分の帰りをこれだけ喜んでくれる、待っててくれる人が居るのはやはり嬉しい。嗚咽を漏らし続ける暁を優しく宥め、俺達は数分間そのままで居た。
☆★☆
さっきよりも目元を赤く腫らした暁。しかし口元は笑みを浮かべていた。
「おお、暁。大丈夫か?」
「・・・大丈夫」
魔理沙が尋ねると、暁は小さく頷く。
霊夢も二人にそっと近寄る所を見ると、いつの間にやら暁は大分皆に受け入れられていたらしい。
「真君、ありがとう。・・・やっぱり、暁があんなに嬉しそうなのはそんなに見ないよ」
「自分は殆ど何もしてないですけどね・・・」
そっと霖之助さんが話しかけて来る。苦笑を浮かべ返すと、そっと霖之助さんは首を横に振った。
「君が身を挺して頑張ったから、あの光景があるんだ。逆に言えば、君がずっと逃げていたら。今の様に、突っ走る事が出来なかったら、この
そう言うと、霖之助さんは暁へと声を掛ける。
「暁、今日は休みだ。僕は全力で寝るッ!!!・・・だから、暁も好きな所に行っておいで?」
「・・・!はい!」
暁は、満面の笑みを浮かべる。
・・・さて、最後の関門だ。
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霊夢と魔理沙、そして暁も着いてくることに成った今。
俺は紅魔館の門の前で、美鈴さんと話していた。
「・・・真さんは死にました。貴方は偽物ですね・・・?」
「いや本物です!」
「気が、少し違います。・・・真さんの気はこんなに強くなかったはずです!!」
「やばい泣きそう!!」
問答無用、とばかりに美鈴は霊夢の静止を振り切って俺へと拳を突き付ける。
そのまま大きく構えを取り、声を張り上げた。
「勝負です!貴方が勝ったら、通って良いですよ!」
「それ言いたかっただけですよね!?」
完全に口元がにやけている美鈴。涙目になりつつも、俺は勇儀師匠に教わった
☆★☆
「・・・おおお!!」
魔理沙の歓声が上がる。同時に、美鈴さんの参りましたー、という声。
俺は霊力を散らし、よろよろと立ち上がった美鈴さんへと一礼した。
素直に門を開けてくれ、後で何か咲夜さんに頼んで作って貰おう。それで持ってこようと心に決めつつ俺は紅魔館へと入る。
すると、すぐそこに居たのは黒い笑みを浮かべている咲夜さんだった。
「ごめん霊夢、急用思い出した」
直ぐに背を向けるも、能力を使ったのか一瞬で目の前に現れる咲夜さん。
「・・・何があって真が生きてるのか。聞かせてね?」
「とまあ、そんな事があったんです」
「「「「そうなんだ・・・」」」」
四人に説明すると、全員が深く頷く。
大変だったね、等と何故か皆が優しく言ってくれる中で、咲夜さんはぱちんと手を鳴らした。
「所で、隔ちゃんに会うのは確定として今日は皆泊まっていくの?」
「いやいや、普通に帰るぜ?」
「・・・魔理沙、気づいてないみたいだけど・・・物凄い雷雨よ?」
暁が無言で頷く。玄関の屋根があったため濡れてはいないが、そっと振り向き外の様子を伺った魔理沙は何も言わずに紅魔館の中へ。
ああ、その前にお嬢様に会ってね、という咲夜さんに俺は一言告げ、台所へと向かった。
☆★☆
「真!?ちょっと待って何でここに居るの!?」
「落ち着けえ!」
台所に居たのは、隔。
包丁を研ぎながら慌てふためくメイド服の隔は、背中に下した長い黒髪を左右に揺らしながら俺へと近づいてくる。
「大丈夫なの!?生きてるよね?幻覚じゃないよね?」
「お、おう。大丈夫大丈夫。幻覚じゃないから」
良かったー、と息を着いてくれる彼女に、俺はそっと耳打ちした。
「そういえば、俺の葬式で一番泣いてくれたそうじゃないか」
「!?な、なんでそれ知ってるの!?」
「い、いやその・・・でまかせだったんだけど・・・」
急激に真っ赤になる隔。
包丁を持った右手を前に突き出し、引くと同時に放たれたのはプロ顔負けの掌底。
ドゴォンッッ!!! と鈍い音を響かせ俺を体ごと吹き飛ばし、数m離れた壁に背中から強く打ち付けられる。
「・・・おまっ・・・最近、益々
「う、うっさい!」
不意打ちだったため受け身も取れず、激しく咳き込みつつ俺は立ち上がる。
そして、すっと眼を細めた。
―――――――あれは――――気のせいか――――?