東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「どうも!最近艦これ良いなと思い始めたラギアです!」
真「・・・艦これ?」
ラ「うん。暁と時雨が好きですね」
真「ああ・・・イラスト方面から入ったのか」
ラ「そうです。では、どうぞ!」


第七章第十三話「鎮火」

爆風が晴れる。

太陽を、自身の一番の大技を真正面から打ち消された少女は其の場で立ち尽くした。

 

それは二重の驚愕。目の前に居た筈の少年は、少年が放った技で大きく壁に叩きつけられていたのだ。

ダランと垂れ下がるぐちゃぐちゃの右腕。肘から先が外に向いている左腕。

生気の感じられない体で、銀色の壁に網目状の亀裂を滅茶苦茶に入れながらのめり込んでいる。

 

「・・・ア・・・」

 

本能赴くままにやった結果。理性は無いはずなのに、しかしそれでも少女の眼からは暖かい涙が溢れ出した。

意味が分からない――――強く目元を拭いながら、少女はそっと少年に近づく。

 

黒く禍々しい霊力が、胸の中央から段々と体を覆い尽くそうとしてくる。

 

近づき、少年に手をそっと近づける。それと同時に、黒い何かに蝕まれていく視界。伸びている手はもうすでに黒く包まれている。

 

「ア・・アア・・・!!」

 

消え去る少女の思考。記憶。

触れる、その瞬間―――――――

 

 

 

突然、その目の前の少年は顔を上げ、強く鋭く目を細めた。

蒼い眼からはまだ光が消えて居ない。ボロボロの右手を動かそうとし、激痛に顔を顰めるも、少年は両足で壁を蹴り少女の胸元へと頭から突っ込む。

空中で全力で身を捻る。遠心力に引っ張られ黒い鞘に収まった刀は飛び出し、その柄を少年は我武者羅に加え、刃を引き抜いた。

 

紫紺の蝶が舞う。妖力が荒ぶる中、少年は全力で首を振り少女の胸元にある核を切り裂いた。

 

鮮明になる視界。少女の体から飛び散る黒い霊力。戻る、理性。

 

そして。そして。

 

茶色の眼に光が戻ったその時には、まるで最後の役目を終えたかのように少年は灼熱のエネルギーの塊へと落ちて行った。

ゆっくりと、コマ送りの様に進む時間。

 

慌てて少女は羽根を打ち鳴らし、全力で手を伸ばす。

 

服の裾を掴み、引き上げる。

 

――――事は、出来なかった。

 

するりと抜ける少年の体。自分を助ける為に全力を振り絞った少年は。

 

「あ・・・あああああああああああ!!!」

 

 

ドボンッ と。

少女の目の前で、灼熱のマグマへと沈んでいった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

紫に向けられた雷と言う少年の技。

皆が動きを止める中、しかし唯一人だけは紫を突き飛ばした。

 

ドザンッ!! と少女に、魂魄隔に霊力の刃は突き刺さる。

呆気にとられる霊夢や魔理沙。そして誰よりも早く動いたのは、八雲紫。

 

「――――そんなっ!?何で、隔!!」

 

紫は叫ぶ。

・・・しかし、隔の体は斬れていなかった。

自分の体を見回し、異変が無い事を確認する隔。今度こそ遅れを取らない様に、暁や妖夢、咲夜はすっと前に出て身構える。

 

「・・・」

 

すると、一瞬だけ硬直した雷は直ぐに踵を返した。

彼岸ノ妖を鞘に納めると、黒い霊力を纏い直ぐに彼は飛び去る。

 

「隔さん!大丈夫ですか!?」

 

妖夢が楼観剣と白楼剣を鞘に納め、直ぐに駆け寄る。

 

「え?うん。・・・全然大丈夫だよ?」

 

首を傾げる隔。皆はひとまず胸を撫で下ろし。

 

「・・・おい、爆発の方行かなきゃなんだぜ!!」

 

魔理沙の一言に血相を変え、飛び出した。

 

 

 

・・・そんな中。地霊殿に取り残された紫とさとりは、そっと口を開く。

 

「紫さん。相変わらず、貴方の心の中だけは読めないですが・・・あの斬られた女の子・・・」

 

言いにくそうに、さとりは呟く。

紫は立ち上がるとその場でさとりに背を向け、そうね、と返した。

 

 

「・・・色々と、不味いかもしれない」

 

 

異変自体は解決した。

たった一人の犠牲と。

 

そして、次の布石を残して。


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