東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
レ「スーパーノヴァとは違うの?」
ラ「似てるけど威力は全然上だお("´∀`)bグッ!」
レ「へえ・・・で?次最終話?」
ラ「まだ一波乱あったりする」
レ「・・・うわあ」
ラ「引かないで!?では、どうぞ!」
レ・・・レミリア
全身が熱い。
外側からでは無く、内側から灼熱の焔で焼かれているかのような感覚。
それでも、頭は冴えていた。
静かに、冷たく世界が見える。澄んだ視界の奥で、大きく翼を広げる少女は居た。
何の為に戦うのか。
最後の陽炎の問いかけ、それは勿論、
「・・・全員、護る為・・・だろ・・・!!」
無理やり体を動かす。壁に亀裂を入れつつ叩きつけられていた俺は、右足で強く壁を蹴り飛ばした。
薄れていた紫紺の翅が生成され直す。美しく広がり始めた翅は、更に大きく。
迷いも何も無い。吹っ切れた俺は、木筒を構えた少女に向けて桜ノ妖を構えた。
もう誰も死なせない。俺は少女が再び砲撃をする直前、高速で上へと方向転換した。
俺の下を掠める様にエネルギーの奔流は放たれる。撃ち終わり、エネルギーを消費した少女の一瞬の硬直。そこを見逃さず、俺は自分自身の得意な状態、接近状態での肉弾戦に持ち込んだ。
黒い霊力によって強化されている身体能力。空気を喰らい尽くすように放たれた蹴りを、俺は撫でる様に後ろへと勢いを流す。
左手は折れているため使えない。
桜ノ妖を神速で閃かせ、俺は彼女の胸の中心にある核を撫でる様に切り付ける。
決して、体は傷つけない。妖力を纏った刃は、表面のみを切り裂く。
暑さは、吹き飛んでいた。
少女は急いで俺から距離を取る。木筒の射線に重ならない様に、そっと俺も横に避けた。
「グ・・・・があ・・・あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
彼女は叫び、木筒から白い輝きを撒き散らす。
溢れるエネルギーの奔流。風が巻き起こり、俺の髪をなびかせる。
「行くよ、幻夢」
そっと呟き、俺は桜ノ妖を鞘に納めた。
懐から勇儀に貰ったお握りを取り出し、一口で頬ばる。
彼女の全力を受け止める。そんでもって、全力で助ける。
「[サブタレイニアンサン]!!!」
少女が叫ぶ。刹那、木筒からは紅蓮の太陽が放たれた。
耐熱加工を施しているであろう銀の壁が、余りの熱に溶けて行く。
地底の太陽。絶大なエネルギーを誇るそれを前に。
――――俺は、右拳を強く握りしめた。
「オーバーレイ!!」
バシュンッッ! という音と共に、俺の体が黒と白の霊力に包まれる。
それは渦を巻き、俺の右拳を包み込んでいく。
右半身と左半身で別れた力は、正反対の思いを抱え矛盾を携え合わさっていく。
壊すために護る。守るために壊す。
流星の如き力は、強く尾を引き、白と黒の奔流をジェットの様に噴き始めた。
太陽を――――
「滅壊ノ・・・」
―――打ち砕けッ!!
「星撃ッ!!」
全力の体の捻り。全身の血が沸騰するような感覚を覚えつつ、俺は右手を一心不乱に打ち出した。
次の瞬間、少女の放った太陽と滅壊ノ星撃が衝突する。凄まじい衝撃波を周囲に撒き散らしつつ、お互いは負けまいと競り合う。
だがそれは、一瞬の拮抗。少しづつ、滅壊ノ星撃が押され始めた。
奥歯を噛みしめ、更に力を籠める。
しかし彼女の太陽は俺をも巻き込み滅壊ノ星撃を飲み込み始める。ひしひしと伝わる力の差。光を失った彼女の瞳は、ただ俺を殺そうとしていた。
左手は動かない。右手は、外したら直ぐに俺も消し炭に成るだろう。
その時。
一つ、一つと桜ノ妖から紫紺の蝶が飛び立ち始めた。
じりじりと押され始めている俺の腕にそれらは止まり、そして溶け込んでいく。
突然感じる妖力。西行妖と戦った時の感覚が甦り、背筋がぞっと粟立った。
霊力と妖力が合わさり、暴走していく。異なる力は互いを喰らおうと更なる力を求め、自身らを高めて行く。
「お・・・おおお・・・!!」
体の奥から霊力を引っこ抜かれるように、俺の右腕に高密度の霊力が溢れ出す。
それに対抗する様に、無数の蝶は舞い俺の右腕へと溶け込む。
紫紺の輝きと黒白の輝き。ふたつはやがて重なり、溶けあい――――
新たな可能性を、新たな希望の道を俺に示した。
太陽が間近に迫る。少女は、最後の止めと言わんばかりに大きく咆哮した。
「・・・インフレーションッ!!」
俺は空中で翅を大きく広げ、そして負けじと叫んだ。
急激に高まる力。右腕に収まりきらない程強大なエネルギーはミシミシと腕を軋ませる。
最早猶予は無い。不完全に、そして瞬く間に膨れ上がった力の塊を――――
全力で、俺は解き放つ。
「ビッグバン!!!!」
右腕から、幾筋ものの光が世界を切り裂く。
視界が塗りつぶされる。鼓膜は破けそうな程に張り詰める。聞こえるはずの轟音は、遠くに響いていた。