東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「理解した」
パ「何をよ」
ラ「勇儀、幻夢さんに似てるわ」
パ「・・・そう?」
ラ「うん。(自分的に)書きやすい」
パ「上手く書けてるかは別としてね」
ラ「うっ・・・では、どうぞ!」

パ・・・パルスィ


第七章第六話「鬼の四天王」

パルスィが足を止める。

ざわざわと賑やかな声が聞こえ、アルコールの匂いは強くなる。

提灯が沢山付けられているそこは明るく、オレンジ色の光が辺りを包み込む。

その中心、体操着の上を着ている、一本角の女性を元へと俺達は歩み寄った。

 

「・・・勇儀」

「ん?おっ、パルスィじゃないか。どうしたんだい、珍しいな」

 

赤い枡を豪快に傾け、並々と入った透明な酒を喉に流し込む。

かーっ、と体を震わせ息を付いた女性は、頬をうっすらと赤く染めながら俺を見た。

 

「おっ、見ない顔だね。あんた、名前は?」

「あ、天音真です」

「へえ・・・あんたが、あの闇鬼を倒した奴か・・・」

 

胡坐を掻いたまま、パルスィの後ろに立つ俺の体をじっと眺めまわす。

面白そうに口元をむにむにとさせる彼女は、強く自分の胸を叩いた。

 

「あたしは星熊勇儀。鬼の四天王やってるもんだ。んで?何かようかい?」

「えっと・・・長い黒髪の女の子か、白髪の少年を見てないでしょうか?もし知って居たら、情報が欲しいのですが・・・」

「ふーん・・・あたしは知らないねえ」

 

勇儀はそういうと立ち上がり、大きく口を開いた。

 

「おーいあんたら!!長い黒髪の女の子か、白髪の少年を見てないかー!?」

 

どんちゃん騒ぎの、鬼の集会。

良く見れば皆角を持って居る。体全体に傷があり、そして豪快に酒を呑んでいた彼らは――――

 

勇儀の一言に静まり返り、そして何名かが手を上げた。

 

あの騒ぎを一瞬で納めた勇儀。改めて凄さを感じると同時に、俺は一つずつ発言を聞き始める。

 

「ああ、それなら・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

要約すると、どうやら目撃されたのは長い黒髪の女の子らしい。

その子は地底の、更に奥深くに鎮座する屋敷、その名も”地霊殿”の方面へと真っすぐ歩んで行った。

周りには誰も居ない。ただ感じたのは、強大な霊力と不気味な雰囲気だったと鬼たちは告げる。

 

「・・・ま、こんな感じさ」

「ありがとうございます、助かりました!」

「いやあ何、気にする事は無い。ただその・・・・お礼と言っては何だが、私の願いを聞いてもらえないかい?」

 

勇儀は申し訳なさそうに頭を下げる。

俺が慌てて了承すると勇儀は顔を上げ、そしてにかっと口角を吊り上げた。

 

 

「あたしと戦って欲しい。ちょっと、闇鬼を倒したあんたの強さが知りたくなった」

 

 

 

☆★☆

 

 

どうしてこうなった。

何で俺は、こんな所で鬼の四天王と戦う事になったんだ。

 

「よし、始めるよ」

 

目の前で楽しそうに笑う勇儀。

内心、冷や汗が洪水の様に流れている俺はそっと桜ノ妖に手を当てる。

 

「よーい、どんっ!」

 

勇儀は盃にお酒を入れたまま、開始の宣言をした。

どっと沸く観衆。奥の方で頭を抱えるパルスィ。

俺は柄を握り、走りながら抜刀しようとした所で――――

 

「無理だな・・・・。うん。フルバーストっ!!」

 

その手を離し、30%の霊力で身体能力を大幅に向上させる。

刀を抜かない事に驚いたのか勇儀の眼が見開かれるが、俺はそこに遠慮なく拳を叩き込んだ。

 

パアン! と肌と肌がぶつかる音が響き、より一層観衆が湧いた。

俺の拳を片手で受け止めた勇儀。杯の中の酒を揺らさず、彼女は俺へと鋭い蹴りを撃ち放つ。

 

・・・が、それを俺は体を捻る事で回避する。そしてその捻りを利用し、今度は俺が蹴りを叩き込む!!

 

それは一瞬の攻防。

 

勇儀は直ぐに跳び退り、その蹴りを回避し。

俺はそれを見るまでも無く、再び構える。

 

一瞬の静けさ。高まる緊張感、鼓動。

 

勇儀がニヤッと笑うのと、俺が右拳を強く握りしめるのは、全く同時だった。

 

ゴオオ・・・・と俺の右手から炎が燃え上がる。霊力を変換して生成されたその炎はちりちりと肌を焼き、僅かながら熱風を周囲に撒き散らかす。

 

「・・・へえ」

 

面白そうに、勇儀が声を漏らした。

悠然と立つ彼女。杯を持ったままただ突っ立っているだけだが、どこにも隙は見つからない。

 

考えろ。幻夢ならどうする――――?

 

 

いや、考えるまでも無く、答えは一つ。

 

「正々堂々・・・真っ向勝負!!」

 

更に炎は強まる。

俺は地面を全力で蹴りぬき、爆発的に加速。

周囲の景色が飛んで行く中で詰められた勇儀との距離。零にも等しいその位置で、俺は真紅の弧を描き炎の拳を振るう。

上体を逸らして躱す勇儀。振りぬいた拳から迸る熱風で、彼女の髪が大きく舞い上がる。

まだだ。

 

幻夢なら。ここで、逃げない。

 

 

俺は目標とする師を思い浮かべ、左拳をも強く握りしめる。

今までの自分を超えろ。振るえるのは、一つだけでも、真っすぐに進むだけの力では無い。

 

右拳を戻しつつ。そして、上体を起こす勇儀に向けて俺は左拳でアッパーをかます。

炎が宙に軌道を描く。火柱の様になったそれを彼女は寸前で回避するが。

 

そこには、俺の燃え盛る拳が撃ちこまれていた。

 

 

ドゴォンッ!!!

 

堅い手応え。鈍く響く音。

振りぬいた拳は勇儀の頬骨に衝突し、彼女の体ごと大きく仰け反らせる。

 

追撃しようとするも、その状態からバク転を繰り返し勇儀は態勢を立て直す。

再び開く距離。彼女の眼から、最早油断は消えていた。

 

「・・・いやあ、思ったよりも強いねえ。・・・でも、その腰の刀を使わないのは何故だい?」

 

勇儀は酒を口に含み、そして呟く。

鋭い眼光を宿し、強く、勇儀は俺を睨みつけた。

 

 

「それとも・・・・舐めてるのか?余裕か?」

「舐めてないですし、余裕も無いです」

 

俺は勇儀に即答する。本心を。

謙遜でも無い。嘘でも無い。

 

刀を抜かない理由。それは――――――

 

 

 

 

「丸腰の相手に、俺は刀を抜きたくありません」

 

 

 

 

勇儀の表情が固まる。

驚きに包まれた顔。静かな世界。

 

しかし、俺が何かを言うよりも早く、観衆がどっと笑いだした。

 

 

『姉御にあんな事言ってやんの!馬鹿だろあいつ!』

『そんなに死にてえなら殺してやるよー!!』

『勇儀の頭ー、そんな奴相手してないで酒呑みましょうよー!!』

 

様々な声が聞こえる。俺を嘲笑う声が聞こえる。

確かに馬鹿な話だ。下手したら、勇儀の気分次第では死ぬ状態にある俺が、こんな事を言っているのだ。

 

だけど俺は、眼をそらさずに勇儀を見続ける。

彼女の瞳を睨みつけ、そしてまだ俺は戦えると無言のまま示す。

 

「・・・ああ・・・そうかい」

 

 

やがて、ぽつりと勇儀は呟いた。

未だに笑い続ける観衆。勇儀はそれを一瞥もせずに、杯を口元に持って行き。

 

 

一気に、中身を全て飲み干した。

 

 

それを見て、周りの奴らの動きは止まる。

再び訪れる静けさ。空になった杯を、勇儀は後ろへ放り投げた。

 

「・・・馬鹿だ、って事は分かったよ」

 

 

両手の指を絡め、そして音を鳴らす。

急激に高まる緊張感。張り詰めた糸が切り裂けそうな程に、場に立ちこめる殺気はヒートアップしていく。

 

 

「ただ――――そういうのは、嫌いじゃない」

 

勇儀は獰猛な笑みを浮かべ、軽く膝を曲げた。

俺もそれに応える様に、少し腰を落とす。

 

静かな雰囲気。戦いの火蓋は。

 

 

・・・たった一滴。酒が、零れる音。


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