高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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μ'sメンバーと出会い、海未とことりにアイドルをしないかと提案した穂乃果。
結果は△。
穂乃果の無謀な挑戦に、すぐにYesとは言えなかった。

更新ペースについてですが、10話ぐらいまではこのペースでいけると思います。
そう言ったことに関しては、活動報告などを使っていこうと思っているので、その時は連絡致します。




5話 ススメ→トゥモロウ

 穂乃果は職員室に着くと、体育教師に話しかけた。

 

「あら、穂乃果さん。どうしたの?」

「あのダンスの練習をしたいんですけど、プレイヤーとCDを貸していただけませんか?」

「ダンスの?えっと、授業で使ったやつで良いかしら?」

「はい!あ、その中にアイドル系の音楽とかもありますか?」

「有名な人のものならあると思うわ。まぁ、見てみないと分からないから……ちょっと待っててね、持ってくるから」

「ありがとうございます!」

 

 穂乃果は待っている間、辺りを見渡した。

 よく見れば懐かしい人ばかり、職員室のこの光景自体も久しぶりだ。

 そんな懐かしい気分に浸かってる間に、CDプレイヤーとCDを先生が持ってきた。何枚かあり、ジャンルごとに分かれていた。

「はい、持ってきたわ。ところで練習って言ってたけど、何のために?」

「アイドルやろうと思ってます!」

「アイドル?あぁ、最近有名なスクールアイドルね。そう、なら頑張ってね」

「はい!頑張ります!」

 

 穂乃果はプレイヤーと数枚のCDを持って、職員室を出た。

 そんな時ふと思い出す。そう言えば担任の山田先生に言った時、最初は笑われたっけ。

 今さっき人が少なくて良かった、と内心少し恥ずかしさを覚えながら、ダンスの練習ができそうな場所を探す。とは言うものの、見当はついている。

 

「人はいないかな?」

 

 一応辺りを確認し、邪魔になってないかを確かめる。

 目立った人影はない、部活動も離れたところでやっているし、存分に音楽を流しながらダンスをやっても問題はなさそうだ。

 

「よぉし、やるぞー!」

 

 プレイヤーにアイドル関連のCDをセットし、曲をかける。

 何年間か経って衰えてしまったダンスの感覚を思い出さなければ、という熱意の元、彼女は踊り始めた……

 

「あれ?この曲よく知らないや。えっと、これも知らない、これも、これも……あれぇ!?どうしよー!?」

 

 熱意十分。しかしいくつか、問題はあるようであった。

 

 

 

 

 

 一方園田海未は弓道場にいた。

 弓を構え、精神を研ぎ澄まし、狙いを定める。

 フォーム、呼吸のリズム共に完璧、標準も自分が間違えないと思える位置に置けた。

 いける!そう思った瞬間、脳裏によぎる。

 

『皆のハート撃ち抜くぞぉ、バーン♡』

 

 それは海未を激しく動揺させ、的外れな方向に矢が飛んで行った。

 

「外したの!?珍しい……」

「あ、いや、た、たまたまです!」

 

 何を考えているんだ私は、と思いながら、少し頭を振ってリセット、再び構える。

 よし、次こそは……と思った瞬間、

 

『ラブアローシュート♡』 「あぁ!」

 

 矢は外れ、海未はその場に倒れこむ。

 余計なことを考えてはいけない、と強く思っても何故か脳裏によぎる自分のアイドル像。

 どうしたものか……と思っていると、「海未ちゃーん、ちょっと来てー」ことりが弓道場へやってきた。

 ちょうど良い気分転換になるだろう、そう思った彼女はことりについていった。

 

 

 

「穂乃果の所為です、練習に全然身が入りません」

「ってことは、ちょっとアイドルに興味があるってこと?」

「い、いえ、それは……」

 

 ない、とは言い切れない。

 あの様な自分の姿、今まで想像したことない。けれどこんなにもはっきり浮かんでくるということは、アイドルに対して興味があるのかもしれない。海未は冷静に自己分析をした。

 

「やっぱり上手くいくとは思えません」

「でも、いつもこういう事って穂乃果ちゃんが言い出してたよね」

 

 そう言われふと思い出す、数年前の小さな頃。

 

「私達が尻込みしちゃうところを、いつも引っ張ってくれて」

「でもその所為で散々なめにあったじゃないですか」

「そうだったね」

「穂乃果はいつも強引すぎます」

「でも、海未ちゃん。後悔したこと、ある?」

 

 あの頃登った大きな木。

 穂乃果が引っ張ってくれなきゃ、無理だと思って登らなかったであろうその木から見た景色。

 怖かった。けれど、それ以上に目の前に映る景色は、綺麗という言葉じゃ足りない程輝いて見えた。

 

 後悔なんて、したことない。

 

 その時近くから声が聞こえた。

 知っている声、何度も聞いた、穂乃果の声。

 

「見て」

 

 ことりにそう言われ見えた彼女の姿。

 必死にダンスの練習をする彼女の姿。

 

「いたた、あぁ、やっぱり難しいなぁ。

 よし、もう一回!」

 

 尻もちをつきながらも、汗を流し練習する姿は、あの時見た景色と同じ様に輝きを放っている様に見えた。

 

「ねぇ、海未ちゃん。私、やってみようかな。海未ちゃんは……どうする?」

 

 そう言って笑うことり。

 その時、海未の気持ちは決まった。

 

「あいたたた」

 

 また尻もちをついてしまい、痛む部分をさすっている穂乃果。

 その時、何者かから手を差し伸べられたことに気付き、視線を上げる。

 

「海未ちゃん……」

「1人で練習しても意味がありませんよ。

 やるなら、3()()でやらないと」

 

 そう言って笑顔を向ける海未。

 穂乃果は彼女の気持ちに応えるかの様に、差し伸べられた手を強く握った。

 

 

 

 

 

「これは何?」

 

 スクールアイドルをすることに決めた3人、プレイヤーなどを戻した後、部活申請書を持って向かったのは生徒会室。

 絵里の前に提示すると、彼女は鋭い視線でこちらを見た。思わず穂乃果は後ろに下がってしまいそうになったが、踏みとどまる。

 

「アイドル部設立の申請書です」

「それは見れば分かります」

「では認めて……」「いえ、部活は同好会でも最低5人は必要なの」

 

 海未とことりが驚く中、穂乃果は冷静だった。

 その事を既に知っていたからだ。

 

「ですが、5人以下の部活も多くあると聞いています」

「設立時はちゃんと5人以上いたはずよ」

 

 設立する場合5人以上必要。

 部活を設立するというのは、そう頻繁に起きる事ではないので見落としがちだが、校則でしっかりと決められていることであった。

 絵里に対し、今何かを言い返す材料は持ち合わせていない。

 

「後、2人やね」

 

 静かに希はそう口にする。

 そう、つまりは5人にすれば大丈夫だという事だ。

 

「分かりました、それでは失礼します。行こう、2人とも」

 

 この場は退くべき、それは誰もが思う事。

 穂乃果はそう言って、2人と共に生徒会室を去ろうとするが、「待ちなさい」絵里がそれを止める。

 これからの展開を穂乃果は覚えていた。

 

「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?あなた達2年生でしょ?」

「学校の廃校を何とかして阻止したいからです」

「だったら、例え5人集めてきても……」

 

 絵里が言おうとしている言葉を知っている。

 

 認めるわけにはいかない、と。

 

 そしてそれがどんな気持ちで発されたことなのかも知っている。知ってはいるから、今は黙って聞くべきなのかもしれない。

 そう考えたのは、

 

「阻止したいからという理由だけではありません!皆とスクールアイドルをやりたい!そう思ったからです!」

 

 言葉が出た後であった。

 内心焦った。言うべきではなかったのでは?と言った後に冷静になって考えた。

 しかし、それはもちろん遅いことで、絵里と希にその言葉はしっかりと届いていた。

 

「……変な事考えてないで、自分のこれからの事を考えなさい。

 

 まだ、あなた達を認めることはできないわ」

「まだ、ですね」

 

 穂乃果はそう言って笑いながら、絵里が突きつけた部活申請書の紙を受け取った。

 失礼しました、と言って3人は生徒会室を去る。

 

 

 

「穂乃果は生徒会長と知り合いなのですか?」

 

 生徒会室から教室へ戻り、帰る支度をしている間、海未とことりは穂乃果に持っていた疑問をぶつけた。

 急な事に、な、何で?と少し、動揺しながらその訳を聞く。

 

「うーん、何となくそんな気がしたの」

「穂乃果は生徒会長と話しやすそうにしていた気がしたと言うか、絵里先輩に対し、敬語を使うのをためらっているような、そんな気がしたような、してないような」

 

 鋭いな、というレベルではない。

 確かに演じるのは下手だが、しっかりと敬語で話したし、特に問題はないはずだった。

 けれど感づかれてしまった。

 穂乃果は色々とボロを出さないようにと思っているため、深く考えているが、実際2人はただそんな気がしただけである。

 

「別に知り合いじゃないよ、ただ……」

「「ただ?」」

 

「ちょっとキツく言われちゃったけど、本当はすっごく優しい人なんじゃないかなーって思ったの」

 

 ポカンとした顔をする2人。

 けれどすぐに笑って、

 

「穂乃果が言うのなら、そうかもしれませんね」

「うん、私もそう思う」

 

 何だそれ、と、よく分からない顔をするのではなく。そうかもしれないと同じ気持ちを持ってくれる2人。

 改めて2人の優しさ、友情を感じながら穂乃果は帰りの支度を終えた。

 

「それじゃ、帰ろう!」

「うん!」「はい!」

 

 教室を出る3人。

 数年ぶりに再び3人で歩く帰路を穂乃果は人一倍楽しく感じていた。

 

 

 

 

 その頃、生徒会室では黙々と書類の作業が進められていた。

 その中で絵里の調子が少し悪かった。

 体調を崩した、という訳ではない。ただいつもより作業が捗っていないようである事を、いつも隣から見ていた希は感じていた。

 おそらくは先程の3人の事を気にしているのだろう。

 

「3人のこと、気になるん?」

「別に、気にしてなんてないわ」

「でもペースが少し悪い。今は2人だけだし、本当の事、言っていいんよ」

 

 希がそう言うと、絵里の手が止まる。

 

「部活は生徒を集める為にやるものじゃない、思いつきでやるものじゃないわ。状況は変えられない」

「でも、期待、してるんやろ?」

 

 絵里は黙り込んだ。

 きっとあの子達はA−RISEなどを見て、人気のスクールアイドルがいる高校は生徒も集まると知り、それを実際にやろうとしたのだろう。

 けれどそれは数多くあるスクールアイドルの極一部。

 その為には多大な努力が必要で、まして時間がないこちらにとって、厳しい、いやほぼ無謀といっても過言ではない。

 

 だから、彼女達に言った。認められない、と。

 

 けどあの時、穂乃果の言葉を聞いたあの時、僅かだったけれど確かに彼女達から、『可能性』を感じた。

 

 だから、まだと言ってしまっていた。

 無意識に、彼女達ならできるのではないかと思ったから。

 

「難しいと思うわ」

「でも不可能じゃないってことやね」

 

 そう言って笑う希に、そうかもね、と言って笑う絵里。

 あの時言った通り、今は認められない。けれど彼女達ならもしかしたら……

 

 2人は再び作業を開始した。作業ペースはいつも通りに戻っていた。

 

 

 

 

 

 




絵里ちゃんが強く言ってしまうのも、理由がある。
穂乃果ちゃんはそれを知っているから、知り合い程度の関係である今も絵里ちゃんの前で笑顔になることができます。

さて、海未ちゃんとことりちゃんがアイドルをやると決め、μ'sは3人となりました。他のメンバーはまだ先ですね。
推しのメンバーが出てないやん!という方、更新ペース遅くてすいません。また、少し展開が遅いというのも原因だと思います。
原因追求ばかりではいけませんね、改善できるように頑張ります。

それではまた次回。

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