「ん~っ……今日もいい天気~!」
カーテンを思いっきり開け、太陽の光を浴びながら伸びをする。この動作は朝起きてからはいつもする動作で、これはもう週間になってます。やっぱり朝は太陽の光を浴びないと、起きたって感じがしませんっ。
おっと、まだ自己紹介をしていませんでした。いけないいけないっ。私の名前は高町ヴィヴィオ、ミットチルダ在住で、魔法学院初等科四年生の十歳です。
太陽の光を存分に浴びた後は、窓を閉めてお着替えをしますっ。学院祭が終わって、今着ている秋服にもだいぶ慣れてきました。でもやっぱり中等科の制服がとっても可愛かったので、ちょっぴり着てみたいなぁ……なんて思ったりもしてます。
アインハルトさんに頼んだら貸してもらえるかな……?
なんてことを考えているうちにお着替えも終了。
「髪の毛よしっ、制服よしっ!」
おかしなところがないことを確認すると、部屋を出て一階におります。
「あ、ヴィヴィオ~、おはよ~♪」
「おはよ~、ママ~♪」
このサイドテールがとっても素敵な女性は私の母の高町なのはさん。公務員さんで、私の大切で大好きなママですっ。
「今日はヴィヴィオ、日直だっけ?」
「うん、そうなの~、だから今日はトレーニング出来なくてちょっと残念」
私はストライクアーツっていう、競技をしているのですが……今日は学校の日直があってトレーニングができず、少し悲しいです。でも終わった後に、リオやコロナ……アインハルトさん達と一緒にトレーニングをする約束をしていたので、それはとても楽しみだったりします。
「まぁ、学校終わった後に皆とするんでしょ?」
「うんっ!」
「ならその時まで我慢だね」
「そうなの~、あっ……今日も美味しそ~♪」
ちなみに余談なのですが、私はママの作る料理が大好きです。とっても美味しくて、朝からほっぺが落ちそうになります!
「ふふ~ん♪ 今日も愛情を込めて作ったからね~」
「じゃあ、早速……いただきま~す♪」
「は~い、召し上がれ~♪」
手を合わせて、いただきますをした後……ママの朝ごはんを食べます。やっぱりいつも通り美味しくて、ヴィヴィオはとっても幸せですっ。
そんな感じで朝ごはんを食べていると、ふとママが何かを見ていました。よく見てみると、そこには青くて綺麗なペンダントのようなものがありました。
「ママ、それな~に?」
「あ……これ?」
私がそう聞くと、ママはなんだかとても懐かしそうな……そして楽しそうな顔をしながら言いました。
「これはね……? 私がまだ小さかった……ヴィヴィオくらいの頃かな。 その時に迷い込んでしまった場所の、ある人から貰ったものなんだ」
「も、ももも、もしかして、男の人っ!?」
私が身体を乗り出して聞くと、ママはくすっと笑った後、首を横に振りました。な、な~んだ、と安心していいのか安心してはいけないのか、ヴィヴィオはちょっと複雑な気分です。
「これはね? 青い髪がとっても綺麗な……可愛いお嬢様から貰ったんだよ。 さよならをする前に……くれたんだ」
その昔話をするママの顔は、どこか寂しそうで、悲しそうな気持ちも混ざっているような、そんな気がしました。
「もう会えないの……?」
私がそう聞くと……
「うん、きっと……もう会えないと思う。 簡単にいけるような場所じゃなかったし、私がそこに行けたのも、帰れたのも、ある意味奇跡みたいなものだったから」
「そう……なんだ」
私はなんだかとっても悲しい気持ちになりました。なんとかできないのかな……と、そう思っていると。
「はいはいっ、昔話はおしまいっ! ほらっ、急がないと間に合わなくなっちゃうよ?」
ぱんぱんっと二回手たたいて音を鳴らしたママは、先程の悲しい顔はどこえ消えてしまったのか、いつものにっこり笑顔でした。
「え!? あ、ほんとだっ!」
時計を見てみると、学校へは……急いでぎりぎり間に合う時間になっていました。焦った私はもっと味わいたかったママの料理を急いで食べ、完食しました。
「ごちそうさまっ!」
「は~い、お粗末さま~」
ごちそうさまをした後、立ち上がり、急いで食器を洗い場に持っていくと……持ってきていた鞄を背負い、急いで玄関へと向かいました。
「行くよっ、クリスっ!」
私がそう言うと、うさぎのぬいぐるみの形をした私のインテリジェントデバイスのクリスがくるくるっと飛びながら私の近くにやってきました。
ちなみにこのクリスの正式名称はセイクリッドハート。少し前に、四年生になったお祝いに、ママとフェイトママが買ってくれたものです。今ではもうすっかり私の大切な相棒で、いつもトレーニングのお手伝いをしてくれたりしていますっ。
「それじゃあ、いってきま~すっ!」
「いってらっしゃ~い、あっ……ヴィヴィオ!」
「? なんでしょう?」
家を出る前、ママに呼び止められました。その時のママはなんだかとっても真剣な表情をしていていたので、なんだ私も体に力が入ってしまいます。
「ヴィヴィオ……困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけないよ」
「んぅ? うんっ! 当たり前だよ~!」
「よしっ、それじゃあ、いってらっしゃい♪」
「は~い!」
ママのいってらっしゃいの声を聞いて、今日も学校へ行きます。さぁ、今日も楽しい学校生活の始まりですっ♪
**
最愛の娘、ヴィヴィオが元気に出ていった後、自分のお皿に残った朝ごはんを食べながら、……さっきまでヴィヴィオと話していた、このペンダントをくれた女の人と、その旦那さんのことを思い出していました。
「元気にしてるかなぁ……」
私は朝ごはんを食べ終え、洗い物をしながら……昔のことを振り返っていました。ほんの少しの時間だったけれど……ある場所で、とある人達と出会い……そして、過ごした時間。
私にとって、とても大切な……ご主人様のことを……。
私のわがままのせいで、ほんの少ししかお側にいることが出来なかった人。
私がもし、こんなことを思っていると知られたら、気にしないでくださいって言われてしまうかもしれないけれど、それでもやっぱり、罪悪感というものは感じてしまう。
だからさっき、ヴィヴィオにあんなことを言ってしまったのかもしれない。
別に今、この世界に戻ってきていることを後悔している訳では無い。そのおかげで今ではもっとたくさんの人と出会えた。それに、大切で大事な娘もいる……。
「後悔はしてないけど……それでも、ね」
洗い物が終わり、椅子に座り……あのペンダントを眺めながら、一言つぶやく。
「まぁ、今更言っても仕方ないよね……さ~て、今日もお仕事頑張るぞ~!」
椅子から立ち上がり、ぐっと伸びをすると……一度深呼吸をする。
今日もいい日になるといいな♪
**
「ふぅ……そういえば、なんでママはあんなことを……」
学校に向かっている途中……私はふと、さっきのママとの会話が気になっていました。
「困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけない……確かにその通りだとは思うけど……」
私もそう思う。困っている人がいて、私になんとか出来るのなら……絶対に助けてあげたいって思うもん。
もしかして……さっきのペンダントと……なにか関係あるのかな?
そんな風に考えを巡らせていると……
「ひゃっ!?」
突然、目の前に光っている鏡のようなものが現れました。
「な……なんだろう……これ」
その鏡のようなものはずっと光り続けていました。しかし、周りの人はこの鏡に気づいていないかのように通り過ぎていきます。
「私にしか見えてない……のかな」
気になったので、そっと鏡に触れてみると……
「えっ、ちょ……吸い込まれっ……えぇぇぇぇ!?」
私の体はあっという間に鏡の中に吸い込まれてしまいました。
って、冷静に説明してる場合じゃないよぉぉぉお!?