面白くなるようにこれからも頑張っていきたいです。
夕陽が沈みかかっている時間に
そこは、森の中にひっそりと佇む教会だった。
「あっ! 音にぃだ!」
「えっ? にぃ着たの?」
「音波兄ちゃん! お帰り!」
「にぃに……あいたか……った」
協会の入り口から、少年少女が音波の姿を見つけると、次々と雪崩のように向かって抱き付いてくる。
「ようお前ら、元気そうだな!」
「うん! ママ呼んでくる?」
「ああ、頼むよルルカ」
ルルカという少女は、嬉しそうな顔で協会に戻っていった。
ここにいる少年少女たちは、皆ガストレア大戦で親をなくし、行き場所を失ってしまった子供や、赤目をした、《呪われた子供たち》といって捨てられた子供が、ここの協会のシスターであり、この子達の母親でもある、
「ママ呼んできたよ!」
「こんばんわ松崎さん」
「こんばんわ、音波ちゃん」
「これ、いつものです。廃棄ですみません」
音波が頭を下げると、松崎さんは、首を横に振りながら、音波の頭を撫でる。
「疲れたでしょう? 今晩は女の子達がシチューを作ったのよ、音波ちゃんが食べてくれると皆喜ぶわ。」
「音にぃ、一緒に食べよ?」
「うーん……」
今日は、家で
「ごめんな、今日は九魅との約束あるんだ、また今度食わせてくれ」
「そっか……じゃあ今度は絶対に食べよ!」
「ああ、今度絶対食べる、約束だ」
「うん!」
ルルカは満面な笑みで協会に戻っていった。
「松崎さん、少しお時間をもらっても?」
「何ですか?」
「里見蓮太郎について、少し調べてもらってもいいですか?」
「……個人情報はあまり口外したくはないのですが……わかりました、調べときます。何か分かったら連絡します」
「お願いします」
音波は、ヘルメットを被り直すと、バイクに跨がり、エンジンをかける。
「それでは、またパン持ってきます」
「いつも感謝してます、あなたに神のご加護を……」
音波はもう一度頭を下げると、その場から走り去った。
場所は変わって、我が家。
家に戻ると早速緊急事態、九魅の悲鳴が家の中を響く。
時間はもう夕方、店は閉めているため、客はいない、家には親父と母親、そして居候の九魅だけだ。
そのため、九魅がいくら叫んでも、店に迷惑はかからないが、近所からの苦情は絶えない。
だから、今の九魅の悲鳴で……『ガンガンガン!』
「春先さん! ちょっとうるさいのだけれども!」
このように近所のママさんたちが訪れる。まあ大抵は親父が出て、
「まあここは何時ものように親父に任せて。俺は、元凶を叱りにいくか」
音波は二階に上がると、一つのドアの前に立つ、そのドアには、【九魅】と書かれたドアプレートがぶら下がっていた。
音波はドアノブに手を伸ばそうとしたときに、目の前のドアが勢いよく開かれ、その中から九魅が飛び込んできた。
「音波ぁぁ! やつが現れたぁ!」
音波の腹に巻き付いて上目遣いでこちらを見つめてくる。その目は少し潤んでいたため、少しドキッとさせられてしまい、怒る気が失せる。
「どうした九魅、怖い夢でも見たか?」
「黒い悪魔が現れたのだ! 奴等は殲滅しないと増え続ける悪魔だ!」
前言撤回、音波怒るまであと一秒……
「お前、黒い悪魔ってゴキ○リだろ! そんなもんよりも、ガストレアの方が恐ろしいわ! 優しくして損した」
「なっ……何を言っているんだ! ガストレアはガストレアだが、奴等はそれよりもヤバイんだぞ! スプレーをかけても、苦しんでるんじゃなくって気持ちよくって悶えてるって、ぐーぐるせんせいが言ってたよ!」
「待て! 何故そんなことをぐーぐるさんに聞いた!?」
「そんなことよりも音波! 早く
「何でゴキ○リがそんなに強そうな名前になってるんだよ! それに俺は白い人じゃねぇ」
「何でもいいから早くしてくれ音波ぁぁ!」
このあと、九魅の部屋でサタン基ゴキ○リの討伐が始まった。
やつは早かった、隙間と言う隙間を縫うように走り回り、気がつけば後ろの壁に張り付いている。
しかし最後は、様子を見に来た母親の殺虫剤が、ゴキ○リに炸裂。
ゴキ○リは
「九魅、今日は特別に俺の部屋で寝ることを許可する。だけど変な行動したら即叩き出すからな?」
「安心しろ、それは問題ない! 音波こそ私に欲情してもよいぞ?」
「すまねえがガキに欲情する性癖は持ち合わせてねぇんだ、寝言は寝て言え」
九魅は、頬を膨らませながら、自分の部屋に戻ると、枕や毛布を持ってきた。
「よし、じゃあ、部屋いくぞ?」
「はーい」
音波は部屋に入ると、その後ろからトタトタと九魅が着いてくる。
九魅が部屋に入ると、早々に音波のベッドにダイブ。
「なんだ九魅、お前のベッド引くから手伝……」
ダイブしてから数秒しかたっていないのに、九魅は寝息をたてていた。
「疲れてたのか? 昼寝してたのに……まあ寝ちまったら仕方ないか、お疲れ九魅、ゆっくり眠りな……。」
音波はパソコンを起動すると、業務用メールに一件受信していた。
社長からのものだった。内容は、「明日の午後、護衛として付いて来い、有無は言わせない」とのことだ。
「有無を言わせないって、強制かよ……」
音波は断りたい気持ちで一杯だったが、短く「了解」と打って、社長に送信した。
作品をもうひとつ増やしました。そっちと交互に投稿していく予定です。
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