ブラックブレッド~半感染者~『一時更新停止』   作:抹茶屋

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第八話 美人社長が羨ましい

 みなさん音波(おとは)です。わたくし、第七話目の最後らへんで天童民間警備会社の社長様を『ごっつい人』っと言ってしまったことをここで謝罪します。

今目の前にいる方は、粉うことなき、『美人』でした。

 凛とした顔立ちに、綺麗な艶を出した黒いロングヘアー、スラッとして一部は盛り上がった体、かなり上位に君臨するだろう。

 

 それを俺は……。

 

「いや、まじですみません……」

「えっ? 謝るのはこっちらの方よ、こちらの社員のオバ……里見(さとみ)くんが迷惑をおかけしました」

 

『オバ?』

 

「そんなことないですよ、里見さんは凄く的確な判断をしてましたぁ……たぶん……」

 

 音波は、刑事から貰った、報酬を、天童民間警備会社の社長。天童(てんどう) 木更(きさら)に渡してから、すぐに帰る予定だったが、天童木更にお茶を進められたため、今に至る。

 それにしても気まずい、こんな美人って聞いてないぞ(知らされてない)

 里見くんの社長と、うちのロリババア(社長)と交換して欲しいな、てか妬ましい。次あったら一発殴ろうかな……いや一層立ち直れないぐらいに心をズタズタにするか………。

 音波が頭のなかで、蓮太郎を、どう料理するかを考えていると、天童木更が質問をしてきた。

 

「ずっと気になっていたのだけれど、あなた、何故お面を外さないの?」

「別に深い意味はないけど、ただお洒落で着けているのと、素顔を見せるのが恥ずかしいだけで……」

「そうなの、その特徴からして、あなた……鉄民間警備会社の……フォックス兄妹でしょ」

「……御名答、ご挨拶が遅れました。プロモーターの春咲(はるさき) 音波です。以後、お見知りおきを」

「天童木更、天童民間警備会社の社長をしてるわ」

「存じています」

 

 場の空気が重たくなった。ただ自己紹介をしただけなのにどうしてこうなった?

 理由はすぐにわかった。

 

「あなたみたいな人が、何故こんな簡単な依頼を受けているの?」

「そりゃ、俺たちもここに住んでるんだ、自分達の町を守ることくらい普通だろ?」

「そうね、でも、あなたほどの()()()なら、あっちこっちから依頼がくるんじゃないの?」

「簡単なことだよ、俺はめんどくさがり屋なんでね、めんどくさそうな依頼は断って、簡単ですぐ片付きそうな依頼は受ける、それが俺のやり方」

「序列17位の人が序列12万の人に依頼を譲ってはくれないかしら」

「序列なんってただの飾りだ、里見くんがしたのなかでダントツに強い、千番台クラスだと俺は思ってるよ。そろそろ時間も遅いので、ここでおいとまさせていただくよ。明日また会える気がします」

 

 茶飲みに入っていたお茶を飲み干して席を立ち、その場をあとにした。

 

 

 

 

 場所は変わって、我が家。我が家は『春咲イチバン』というまあなんとも言えないネーミングセンスのないパン屋を営んでいる。

一階がパン屋でその奥が厨房、二階が我が家である。

 レジには母がお客さんが持ってきたパンを袋に積めて、会計をしていた。

 音波は母の手伝いを少ししてから、奥の厨房に入る。

 厨房には父が生地を練っているところだった。

 

「親父、破棄されるパンは?」

 

 音波の父は、あまり喋らないため、顎で廃棄されるパンの方向を教えてくれた。

 その方向を見ると、ぎっしりとパンが詰められている籠が2つ、台のうえに置かれていた。

 

「いつもありがとう、たまには喋れよ」

 

 父の顔がムスッと歪んだ気がするが、無視してそのまま籠を重ねて持ち上げる。

 パンのはいた籠が2つあると、かなりずっしりとして重たい。

 裏口からでると、すぐそばに、宅配用のバイクが2台置かれており、その一台の後ろに籠を固定した。

 

「さて、行くか」

 

 バイクにまたがるり、ヘルメットを被ってから、バイクにエンジンをかけて走り出した。


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