ブラックブレッド~半感染者~『一時更新停止』   作:抹茶屋

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第七話 聖天子様

 緊張が走る部屋の中、スクリーンに映る一人の少女が、その緊張を一層引き立てていた。

 

「社長、なんで東京エリアのお偉いさんが俺らの前に、映ってんだ?」

「そんなもの、仕事の話し以外ないじゃないの。それに、相手があの東京エリアの代表の、聖天子(せいてんし)様なのよ? 断れるわけないでしょ」

「……それもそうだな」

 

 音波と鉄社長はお互いにヒソヒソと話していると、聖天子様の口が開かれた。

 

「ごきげんよう、鉄民間警備会社(くろがねみんかんけいびがいしゃ)様」

 

 その一言だけで、どれだけの凄みを持っているのかを、二人は瞬時に悟ることができた。

 鉄社長は、聖天子様に頭を下げるのと同時に、今日の要件について話しを切りだす。

 

「御目に掛かれて光栄です。聖天子様。今日は一体どのようなご用件でしょうか?」

「お顔を上げてください、鉄社長」

 

 聖天子様の、優しくて、しかし張りのある声が響くと、鉄社長は、重々しく頭を上げる、そのままゆっくりと音波の後ろに身を潜めた。

 

『おい、何で俺の後ろに隠れる、相手に失礼だろ!』

『仕方ないじゃないの! 相手が相手なのよ? あんなのが目の前にいるって思うと生きた心地がしないのよ』

『そんなこと知ったことか、早く前に出ろ!」

『いやよ! もう少しだけこのままにさせて』

 

 鉄社長の目が、少しだけ潤んでいた。

 

『あーもう、わかったよ、好きにしろ』

『チョロッ』

「あぁんッ!」

 

 声に出てしまった。智也と鉄社長は恐る恐る聖天子様のほうに顔を向ける。

何が面白かったのか、口元を手で隠しながら、クスクスと笑っていた。

 

「御見苦しい姿をお見せして申し訳ありません聖天子様」

「いえ、お構いなく、仲がよろしいようですね」

「仲がよろしければ、ケンカなんてしねぇよ」

「黙りなさい!」

「……俺は帰るわ、難しい話は苦手でな、あとは社長が話し聞いてくれ、俺はあんたに従うから」

「ちょっ…待ちなさっ!」

 

 音波は足早にその部屋から出た。

 

 

 

 場所は天童民警警備会社のビルの前まで来ていた。

 

「里見くんもすごいところで雇わているな…。」

 

 目の前のビルにはゲイバーやキャバクラ、はたまた闇金までもがそこに建っていた。

 

「やべぇ、社長とかめっちゃごつい人そうだな……帰ろうかな…」

「あ~らかわいいお客さん、頭に狐のお面なんてかぶって、何かごよーかしらぁ?」

 

 背筋から寒気が、音波の脳内で警戒音が鳴り響いていた。振り向いたらだめだ、振り向いたらそこは完全に地獄が広がっている。ならやることは……。

 

「おれはまだ失うわけにはいかないんだぁぁぁ!」

「いきなりどうしたのかしら? それよりも蓮太郎ちゃん、うちによってかなぁい?」

「今日は遠慮しとくよ、今忙しいんだ」

「あら残念」

 

『さっきの声、どっかで聞いたことが……?』


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