緊張が走る部屋の中、スクリーンに映る一人の少女が、その緊張を一層引き立てていた。
「社長、なんで東京エリアのお偉いさんが俺らの前に、映ってんだ?」
「そんなもの、仕事の話し以外ないじゃないの。それに、相手があの東京エリアの代表の、
「……それもそうだな」
音波と鉄社長はお互いにヒソヒソと話していると、聖天子様の口が開かれた。
「ごきげんよう、
その一言だけで、どれだけの凄みを持っているのかを、二人は瞬時に悟ることができた。
鉄社長は、聖天子様に頭を下げるのと同時に、今日の要件について話しを切りだす。
「御目に掛かれて光栄です。聖天子様。今日は一体どのようなご用件でしょうか?」
「お顔を上げてください、鉄社長」
聖天子様の、優しくて、しかし張りのある声が響くと、鉄社長は、重々しく頭を上げる、そのままゆっくりと音波の後ろに身を潜めた。
『おい、何で俺の後ろに隠れる、相手に失礼だろ!』
『仕方ないじゃないの! 相手が相手なのよ? あんなのが目の前にいるって思うと生きた心地がしないのよ』
『そんなこと知ったことか、早く前に出ろ!」
『いやよ! もう少しだけこのままにさせて』
鉄社長の目が、少しだけ潤んでいた。
『あーもう、わかったよ、好きにしろ』
『チョロッ』
「あぁんッ!」
声に出てしまった。智也と鉄社長は恐る恐る聖天子様のほうに顔を向ける。
何が面白かったのか、口元を手で隠しながら、クスクスと笑っていた。
「御見苦しい姿をお見せして申し訳ありません聖天子様」
「いえ、お構いなく、仲がよろしいようですね」
「仲がよろしければ、ケンカなんてしねぇよ」
「黙りなさい!」
「……俺は帰るわ、難しい話は苦手でな、あとは社長が話し聞いてくれ、俺はあんたに従うから」
「ちょっ…待ちなさっ!」
音波は足早にその部屋から出た。
場所は天童民警警備会社のビルの前まで来ていた。
「里見くんもすごいところで雇わているな…。」
目の前のビルにはゲイバーやキャバクラ、はたまた闇金までもがそこに建っていた。
「やべぇ、社長とかめっちゃごつい人そうだな……帰ろうかな…」
「あ~らかわいいお客さん、頭に狐のお面なんてかぶって、何かごよーかしらぁ?」
背筋から寒気が、音波の脳内で警戒音が鳴り響いていた。振り向いたらだめだ、振り向いたらそこは完全に地獄が広がっている。ならやることは……。
「おれはまだ失うわけにはいかないんだぁぁぁ!」
「いきなりどうしたのかしら? それよりも蓮太郎ちゃん、うちによってかなぁい?」
「今日は遠慮しとくよ、今忙しいんだ」
「あら残念」
『さっきの声、どっかで聞いたことが……?』