東方猫戦争 ~ネコと女神と幻想と~   作:築地マグロ

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マグロどっこい。
またまた間が空きましたな。最近はテストの嵐でろくに手を付ける事が出来ませんでした。まぁ一旦は落ち着いたので、またのんべんたらりと書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。

ちなみに今更なんですけど、この作品では幻想郷のいろんな場所を訪れますが、場所の形状(例えば、今回登場する冥界の階段)は、ほとんど「幻想万華鏡」という同人アニメを参考にしていますので、ちょっとゲームとかとは地形が異なってることもあると思いますが、そこんとこ許してつかさい。

では久々のほんぺーん。


Ep11「激突する刃」

「・・・ここが[冥界]、か」

あまりの空気の違いに、思わず息を呑む。

レティとの戦闘から10分程、ひたすら上を目指して飛んでいた一行。

やがて周囲は霧に包まれ、それを抜けると目の前には石造りの階段があった。

「地上とはまるで空気が別物だな。体が重く感じる」

「そりゃそうよ。あくまで死者の霊魂の溜り場なんだから」

「とり憑かれないように気を付けるにゃ」

「っ・・・」

ネコの何気ない一言に冷や汗を流すヴァルキリー。

その悪寒と汗を振り払い、女神は一段目の階段に足を乗せる。

 

階段を上り始め、20分程が経ったであろう。

数百メートル先に灯篭の光が見え始めたものの、脚は限界に近づいていた。

「・・・それにしても長い階段だな」

「よっぽど近づけたくないのかも。結界が歪めてあって普段より数倍長いわ」

「にゃー・・・これなら飛んだ方が楽なんじゃにゃいのかにゃ?」

「駄目だ。敵はいつ攻めてくるか分からん。下手に空中を飛べば狙撃の的になる」

「えー・・・」

ヴァルキリーの言い分がごもっとも過ぎるがため、反論が出来ないネコ。

その頭上では、アリスが護衛のために付けた人形達が低空で浮遊していた。

「・・・!?伏せろッ!」

その直後、ヴァルキリーが大声で注意を投げかけた。

素早く反応した霊夢とネコも、ヴァルキリーに続いてしゃがみ込む。

刹那、彼女らの頭上を、風のような一閃が駆け抜けた。

まんまと避けられたその刃は、背後の階段を勢い良く削り取る。

「今のは・・・!?」

攻撃の着弾地点へ目を向ける。

凸部分が削られ、もはや坂のようになった階段。その途中に、刀を携えた少女が。

「[妖夢]・・・!」

「・・・」

霊夢は名前を呼びかけたが、妖夢はただ冷徹な眼差しでこちらを睨んだ。

そして、再び剣先をヴァルキリー達へ向ける。

「来るわよッ!」

「任せろッ!」

槍を構え、ヴァルキリーが先頭に踊り出る。

レミリアと同等のスピードとパワーを兼ね備えた妖夢の一閃。

槍と刃が擦れ、周囲に鈍い金属音が響く。

「ぬぐ・・・!」

二人の眼前で、激しく火花が散る。

互いに武器を弾き飛ばそうとするが、互角であるが為に双方静止状態にある。

「霊夢、先へ行け!こいつは私が相手しておく!」

「で、でも・・・」

「いいから行け!片がつき次第すぐに向かう!」

「・・・わ、分かった!そっち頼むわよ!」

「僕も手伝ってくるにゃッ!」

霊夢とネコ、そして人形の兵隊達は、指示通り階段を駆け上がり、異変の首謀者の元へ急いだ。

彼女らの足音が遠ざかっていったのを確認し、ヴァルキリーは

「・・・これなら暴れても問題は無いな?」

二人の手足は塞がっていたが、ヴァルキリーには動かせる物が一つだけあった。

ヴァルキリーは翼を勢い良く羽ばたかせ、周囲に強風を発生させる。

それは一瞬ではあったものの、妖夢を後方へ吹き飛ばした。

「っ!?」

「貰ったッ!」

ヴァルキリーは強く踏み切り、退いた妖夢のカチューシャへ手を伸ばす。

それをむしり取ると、妖夢は気を失い、その場に倒れ伏す。

―と、思われていた。

「・・・な!?」

確かにカチューシャを掴んだはずだった。

それに反し、手で触れた感覚は一切無い。

しかし、驚いたのはその後だ。

「っ!?」

手は感覚の無いまま、カチューシャを貫通した。

―いや、[すり抜けた]と言うほうが正しいだろう。

直後、あっけにとられているヴァルキリーの顎に、凄まじい衝撃が走った。

「ごはッ!?」

ヴァルキリーの隙を見逃さず、妖夢は彼女の顎を蹴り上げたのだ。

空中で一回転し、地面に叩きつけられる。

“相手が悪かった”

そう直感したのはヴァルキリーの方だった。

どういう訳か、彼女に触れることが出来ない。よって、槍で攻撃することも不可能。

かと言って、幻覚などではない。現に、妖夢の蹴りを直で喰らったのだ。

どこかにタネや仕掛けがあるはずなのだが・・・

そうこう考えている内にも、妖夢は再び襲い掛かる。

「チィッ!」

「っ!?」

体勢を立て直し、襲い掛かる彼女の剣の持ち手へ回し蹴りをお見舞いする。

なぜかは不明だったが、今度はしっかりと感覚があり、ダメージが入ったようだ。

その証拠に妖夢は退き、剣は弾き飛ばされた。

「デアァァァッ!」

立て続けに、彼女の頬を目掛けて拳を振るう。

「なっ!?」

しかし、その一撃は空振りに終わった。

またしても手は何かに当たることも無く、妖夢の頬をすり抜けた。

拳が空振ったことにより、体勢を崩す。

その隙に妖夢は、素早く宙を舞う剣を掴み取った。

そして、その剣先をヴァルキリーの頭上に向け、急降下。

ヴァルキリーはそれを避けようにも体勢が直しきれず、無様に尻もちをつく。

剣は彼女の目の前に突きたてられた。

妖夢は無表情のまま、ヴァルキリーを見下す。

「・・・そろそろ終わりにしませんか?こちらにも仕事がありますので」

「・・・貴様、一体何者なんだ?人間では無いようだが・・・」

「質問をしているのはこちらなのですが・・・」

妖夢は冷徹な瞳で女神を睨みながらため息をつき、

「まぁいいでしょう、質問にお応えします。貴方のお察しの通り、私は人間ではありません」

「・・・」

「・・・いえ、正確に言えば[半人半霊]、です」

「半人・・・半霊?」

「半分は人として主に仕え、もう半分は霊として主に仕える。そして私は、[霊]の方です」

「霊だと・・・!?」

「とはいえ、普段の私は実体化はできません。ですが」

頭のカチューシャを示しながら、彼女は話を続ける。

「この装置、どうやら人間である方の私に取り付けられたらしく、その影響か彼女は私を実体化させる事が出来るようになったようです。まぁ、私に付いているこのカチューシャは人である方の私の外見を移しただけで、何の効果も無いですが」

「それで必要に応じ実体化して私を攻撃し、私の攻撃を幽霊に戻る事で回避していたのか・・・ん?」

あまりの器用さに、度肝を抜かれた。

しかし、ここである事に気付く。

「カチューシャが取り付けられた事を自覚している・・・まさか霊である貴様には、カチューシャによるコントロールが及んでいないのか?」

「ええ。[私自身]は自らの意思で行動出来ます」

「それなら、なぜ私を必要以上に襲う?貴様には私が完全な敵であるという認識は無いのだろう?」

「確かに、霊である私には貴方を狙うメリットがありません。しかし・・・」

それまでこちらを睨んでいた妖夢は突然目を逸らし、哀しげに言葉を繋げた。

「あいにく、私は人である私の方に仕えなければなりません。彼女が妙な連中に操られていることも百の承知です」

「ならばなぜもう一方の自分を正気に戻そうとしない?」

「私は私自身に牙を剥くことなんて出来ません。ましてや彼女は私の半身。傷つけるなんて御免被ります」

いつの間にか彼女の言葉からは迫力が消え失せていた。

「なら、貴様は間違った事をしている半身をいつまでも正さないでいる気か?」

「・・・」

「私は貴様の境遇が全て分かっているという訳では無いが、自分がやっている事に誤りがあるなら、それを手っ取り早く正せるのは自分だけだぞ」

「・・・それなら、私にどうしろと言うんですか」

俯き気味の妖夢に、ヴァルキリーは強く言い放った。

「私に協力してくれ。壊れたお前の半身と主を、元の姿に戻してやろうじゃないか」

ヴァルキリーの発言に、彼女は大きく目を見開く。

多少困惑したものの、結論はすぐに妖夢の口から出た。

「・・・分かりました。手を貸しましょう」

妖夢は突き立てた剣を地面から抜き取ると、再び剣を強く握り締めた。




やっとこさ「カッパーマイン」の第三形態出ましたね。最近は「この子誰?」というくらい起用頻度が低かったですが、これにより射程が伸び、停止確率も上がり、まぁ少しは起用で出来るシーンが増えたのではないでしょうか。

あと露出度も上がりましt(ry

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