殺せんせーは触手を体の前で十字に交差させ印を結んだ。
「「「「「さて、始めましょうか」」」」」
次の瞬間には、国・数・理・社・英の文字が書かれた鉢巻を締めた殺せんせー×5が教壇に立っていた。
(((………、何を?)))
クラス全員ポカーンとしていた。
「学校の中間テストが迫ってきました」
と、殺せんせー(国)
「そうそう」
と、頷く殺せんせー(数)
「そんなわけでこの時間は」「高速強化テスト勉強を始めます!」
殺せんせー(社)と殺せんせー(理)が続いた。
「先生の分身が一人ずつマンツーマンで」「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」
クラス全員32人の前に異なるハチマキの殺せんせーが着く。
「くだらねぇ…ご丁寧に強化別ハチマキとか…」
ぼやく寺坂の前の殺せんせーのハチマキは・・・・
木の葉隠れの里のマークだった。
「はっ、まさか殺せんせーは大筒木の末裔………それで月を破壊…!?」
「不破さん何言ってんの?」
「なんで俺だけNARUTOなんだよ!」
「寺坂君は特別コースです、苦手科目が複数ありますからね」
そして特別コースは寺坂だけでは無かった。
「…殺センコー」
「何ですか、相良君?」
タスクの前の殺せんせーも木の葉の額当てをしていた。
「俺は我愛羅が好きだ」
「では相良君はこれで」
タスクの前に殺せんせーの分身は砂隠れの額当てに取り替えた。
ちなみに、他の面子の前には
萌⇒殺せんせー(国)
岬⇒殺せんせー(数)
翼⇒殺せんせー(理)
雪⇒殺せんせー(社)
健⇒殺せんせー(英)
が担当していた。
国語7人、数学9人、社会4人、理科5人、英語5人、木の葉1人、砂1人
クラス32人分の多重分身によるテスト勉強が始まった。
「高荷さん、まずは選択肢を絞るところから始めましょう。そこから文書の中に答えがありので探しましょう」
「巻町さん、細かい計算ミスがあります。まずは落ち着いて一問ずつ解きましょう」
「明神さん、化学式は構成している物を1つひとつしっかり確認しましょう」
「紫村君、社会の流れも大規模な計算で成り立っていますよ。歴史もまた然りです」
そんな中、健は苦戦していた。
「緋村君、英文全てを完璧に読もうとせずに全体を把握しましょう。分からない単語は前後の単語から推測するのです」
「む~…、ってうわっ!?」
突如、全部の殺せんせーの顔が歪んだ。原因はカルマのナイフだった。
「ちょっとカルマ君、急に暗殺しないでください、それ躱すと残像が全部乱れるんです!!」
「意外と繊細なんっすね…、この分身………」
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
カチャ カチャ
「この六面体の色を揃えたい、素早くたくさんしかも誰にでもできる方法で。あなた方ならどうしますか?先生方…」
男は弄っていた六面体の隙間に紙を挟み、そこにマイナスドライバーを差し込んだ。
「答えは簡単」
バキ
「分解して並べ直す、合理的です」
放課後、健と雪は殺せんせーへの質問のために教員室の前に来ていた。
「…?誰かいる………」
健がこっそり覗くと、中には烏間先生とビッチ先生、それに、仕立ての良いスーツをびしっと着こなしイスに座る姿も様になっている壮年の男性がいた。
「けほ…、あれ理事長じゃん」
健の頭越し(身長差27cm)に覗く雪の言うとおり、椚ヶ丘学園の理事長にしてこのE組システムを創り上げた浅野學峯がそこにいた。
「つーか…、殺せんせーはなにやってんのさ…」
そして殺せんせーはというと・・・・
「にゅやっ!これはこれは山の上まで!それはそうと私の給料、もうちょいプラスになりませんかねぇ?」
殺せんせーの弱点⑥【上司には下手に出る】
お茶を汲み、肩を揉んでいた。
「こちらこそすみません、いずれご挨拶に行こうと思っていたのですが。あなたの事は防衛省や烏間さんから聞いていますよ。まぁ私には、全てを理解する学はないのですが…」
慇懃な態度の理事長は立ち上がると殺せんせーの真正面に立った。
「なんとも悲しい生物(お方)ですね。地球を救う救世主となるはずが、世界を滅ぼす巨悪になってしまうとは」
「救う…?」
「ごほごほ………滅ぼすって?」
廊下で盗み聞きしている健と雪は首を傾げた。
「いや、ここでそれをどうこう言う気はありません、私如きがどう足掻こうが地球の危機は救えませんし」
理事長は窓枠に腰掛けた。いちいち言う事為す事芝居がかっている。
「しかしだ…、この学園の長である私が考えなくてはならないのは地球が来年以降も生き延びる場合。つまり、仮に誰かがあなたを殺せた場合の学園の未来です。率直に言って、E組はこのままでなくては困ります」
「このまま、というのは成績も待遇も最底辺という今の状態を?」
「はい。はたらきアリの法則を知っていますか?」
「それなんだっけ?」と雪が訊く。
「どんな集団でも20%は怠けて、20%は働いて、残り60%は平均的になる法則だよ」
「ふ~ん、それってどこかの誰かさん譲り?」
「っ、ま…、まぁね………」
「私が目指すのは、5%の怠け者と95%の働き者がいる集団です。「E組のようにはなりたくない」「E組には行きたくない」95%の生徒が強くそう思うことでこの比率は達成されます」
「………なるほど、合理的です。それで、5%のE組は弱く惨めでなくては困ると」
「今日、D組の担任から苦情がきました。「うちの生徒がE組の生徒にすごい目で睨まれた」と、「殺すぞ」と脅されたとも」
「誰さそんなことしたの…?」
「あ~、渚のことだ…。あのスーパーモブオブラザーズ…、チクったな………」
「暗殺をしているのだからそんな目付きも身につくでしょう、それはそれで結構」
問題は、と浅野理事長は続ける。
「成績底辺の生徒が一般生徒に逆らうこと。それは私の方針では許されない。以後、厳しく慎むように伝えて下さい」
「殺せんせー」理事長はスーツの懐から何かを出して殺せんせーに放り投げた。
「一秒以内で解いて下さいッ」
それは知恵の輪だった。
「ちょ…、いきなり!」
一秒後
殺せんせーは触手が絡まって知恵の輪と一体化してしまった。
殺せんせーの弱点⑦
【知恵の輪でテンパる】
「なんてザマだ…」
「あの程度なら一秒もいらないし…ケホケホ…」
「………噂通りスピードはすごいですね。これならどんな暗殺も躱せそうだ」
理事長はその場にしゃがむと、とんでもないザマの殺せんせーと目線を合わせた。
「でもね、殺せんせー。この世の中には…スピードで解決できない問題もあるんですよ」
理事長は目線を合わせながらも殺せんせーを見下した。
「では、私はこれで」
健と雪は姿を隠すでもなく、むしろ教員室から出てきた理事長に立向かうように廊下の端に立って一礼した。
「やあ、紫村雪君に、それと………」
「…緋村健っす」
「あぁ、そうだ緋村君、中間テスト期待しているよ。頑張りたまえ」
10人に訊けば10人とも「この人は信用できる」と答える笑顔で2人を激励した浅野理事長は、しかし数秒後には感情が読めない表情になり去って行った。
渚辺りならあっという間に萎縮しそうなその乾いた頑張れを、健と雪は受け流して教員室に入っていった。
「殺せんせー、大丈夫っすか?」
「ちょっと待ってて………」
雪がちょっと手を2~3回交差させると、絡まっていた知恵の輪は解け、殺せんせーは解放された。
「…?」
雪は机に散らばった分解されたルービックキューブと色がバラバラ状態のもの3つを見つけた。
「バラして組みなおす、それが一番合理的なんですってよ」
ビッチ先生の言葉に、珍しく雪は怒った。
「はぁッ?あの理事長バッカじゃない?」
雪はバラバラの3つをその大きな手にいっぺんに取ると殺せんせーばりのスピードで手の上で転がし、六面全部揃え、さらに分解された物もあっという間に組みなおして六面揃えてしまった。
「ちょ…、」
「雪はこういうパズル系がものスゴイ得意なんっすよ、ビッチ先生」
その一方、殺せんせーは・・・・なにやらメラメラ燃えていた。
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
その翌日・・・・
「「「「「「「「「「頑張ってさらに増えてみました、さあ授業開始です」」」」」」」」」」
「いや、増えすぎっすよ…、殺せんせー。つーか、分身雑になって別物になってるっすよ………」
コピー能力ありそうなピンクの『ころービィ』
日朝に毒吐く仙人の化身みたいな一つ目お化『ころセン』
圧倒的戦闘力がありそうな金色の『ゴールデンころーザ様』
目の前の微妙な分身殺せんせー(英)×3に対して健は突っ込んだ。他にも舞浜のネズミのアレとか、21世紀のネコ型のアレなどになっている殺せんせーによる猛烈な速度のテスト勉強は2時間目まで行なわれた。
32人×3体ずつの多重分身の後は流石に殺せんせーもバテていた。
「やっぱり殺せんせーもチャクラが切れたようね」
「いや不破さん、チャクラじゃなくて体力ね」
「つーか殺せんせーさぁ…、ケッホ、こんなに俺らに教えてどうしたいの…?」
「ヌルフフフ、紫村君、それは君たちのテストの点数を上げるためです。そうすれば………」
本校舎からテストの答案を持って笑顔で駆け寄る、健、雪、タスク、翼、岬、萌。
「殺せんせー、おかげでいい点数取れたっす!」
「テストでいい点数取ったおかげで僕の病弱体質も治ったよ!」
「すげーぜ、殺センコー!」
「もう殺せんせーの授業なしじゃ生きれないよ、ねぇ岬ちゃん」
「うんうん、暗殺なんて止めよう」
「あのぉ殺せんせー、私の知り合いの私以上の巨乳の女子高生や女子大生のお姉さま達が評判聞きつけて来たの、個人授業してくれないかって」
「………となって先生的にはいいことずくし、ニュルフフ」
「いや…テストでいい点取ったからって僕の体質まで治るわけないし…、こほ…」
いやらしい笑みの殺せんせーとは対照的に、三村や矢田達は冷めた表情をしていた。
「…勉強のほうはそれなりでいいよな?」
「うん、なんたって暗殺したら100億円だし」
「「「百億あればその後の人生薔薇色だし」」」
「にゅや、君達そういう考えをしていますか!?」
「俺らエンドのE組だぜ」
「テストなんかより、暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」
肩を竦める岡島と三村、さらに他のクラスメートもそれに同意したような顔をしていた。
「………なるほど、よく分かりました。今の君たちには暗殺者(アサシン)の資格がありませんねぇ…。全員、校庭に出なさい、烏間先生とイリーナ先生も呼んで下さい」
殺せんせーはそういうと教室から出て行った。
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
校庭に集まると、殺せんせーは使われていないサッカーゴールを片付けていた。
「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います」
「…なによ、いきなり」
「あなたはいつも仕事をする時、用意するプランは1つですか?」
「………いいえ、本命のプランなんて上手くいくことの方が少ないわ、不測の事態に備えて予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」
「のわりに、殺センコーの暗殺失敗したじゃねぇ…、グふっ!」
余計なことを言ったタスクの脇腹に萌の肘打ちがめり込んだ。
「ま、あんたの場合規格外過ぎて予備プランが全部狂ったけど、見てらっしゃい次こそ「無理ですねぇ」…ぐ、」
殺せんせーはビッチ先生の言葉を遮ると、今度は烏間先生を指差した。
「では次に烏間先生、ナイフ術を生徒に教える時、大事なのは第一撃だけですか?」
「………第一撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる。その後の第二、第三撃をいかに高精度で繰り出すかが、勝敗を分ける」
「げほ…、結局よぉ殺センコー、何が言いたいんだ?」
脇腹を押さえながら訊くタスクに、殺せんせーはくるくる回りながら答えた。
「先生方のおっしゃるように、自信をもてる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。かの新撰組は、常に刃長が長い脇差を差していました。緋村君、何故だか分かりますか?」
突然当てられた健は一瞬驚いたが、それでも即答した。
「…万が一、大刀が折られた場合普通の短い脇差だと戦闘に不利になる。だから大刀と遜色ない長さのを差していた………」
「その通り、対して君達はどうでしょう?」
殺せんせーの回転が徐々に速くなる。
「『おれらには暗殺があるからそれでいいや…』と、考え勉強の目標を低くしている。それは、劣等感の原因から目を背けているだけです」
殺せんせーの指摘に、E組は誰も反論できなかった。
「もしこの教室から逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君達には、E組の劣等感しか残らない。そんな危うい君達に、先生からの警告(アドバイス)です」
殺せんせーの回転に起こされた旋風は、とてつもなく巨大な竜巻になった。
「第二の刃を持たざるものは、暗殺者を名乗る資格無し!!」
殺せんせーの起こした竜巻は校庭の土や雑草を巻き上げた。
「…校庭に雑草や凸凹が多かったのでね、少し手入れしておきました」
(((!?!?!?)))
荒れ放題だった校庭は綺麗に均され、400mトラックまで整備されていた。
「先生は地球を消せる超生物、この一帯を平らにするくらいたやすい事です」
殺せんせーの危険性を改めて実感したE組は誰も何も言えなかった。
「もし君達が自信をもてる第二の刃を示さなければ、相手に値する暗殺者はいないとみなし、校舎ごと平らにして先生は去ります」
「第二の刃…、いつまでに?」
渚の質問に、殺せんせーはとんでもない答えを言った。
「決まっています、明日です。明日の中間テスト、クラス全員E組を抜け出せる資格、50位以内を取りなさい」
(((!!?)))
クラス全員、目が飛び出るほど驚いた。
「君達の第二の刃はすでに先生が育てています。本校舎の教師たちに劣るほど、先生はトロい教え方をしていません」
殺せんせーはE組全員を指差す。
「自信を持ってその刃を振るって来なさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです。自分たちが、暗殺者(アサシン)であり、E組であることに!!」
相楽祐(さがらたすく)
容姿=[相楽佐之助(再筆)+男鹿辰巳(ベルゼバブ)]×2
身長:183cm(頭のツンツン込みなら186cmの雪と同じ)
体重:71kg
NARUTOでは我愛羅が好き