暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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イリーナ編を一話にまとめました
その結果のこのタイトルです


ビッ乳の時間

カルマの暗殺は結局失敗に終った。しかし、その殺意は健康的で爽やかなものになり、また一人暗殺教室に暗殺者(アサシン)が加わった。

 

 

 

 

次に仕掛けたのは、理科の成績が優秀な奥田愛美。

水酸化ナトリウム、酢酸タリウム、さらに王水を直接手渡しで「飲んでください」というストレートな暗殺を試みたが、殺せんせーの表情を変える程度の効果しか得られなかった。

放課後に殺せんせーと一緒に毒薬の研究をして作り上げた毒も、実は殺せんせーの細胞の活性化させ流動性を増す薬だった。

それを飲んだ殺せんせーは光に包まれ・・・・・・・・・

 

 

 

どろっと溶けた。

 

 

 

「先生は、怒りの王子!」

「「「どこのRXだ!!!」」」

液化したバイオ殺ダーは生徒達のナイフはもちろん、弾丸すら液化した状態のマッハで躱してしまった。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「もう5月か…」

健は裏山で剣の朝稽古を終えると逆刃の小太刀を納刀した。

「そうだねぇ~、殺せんせーの暗殺期限まであと11ヶ月だね」

「ま、99日の期限がある寺の息子よりは余裕があるから大丈夫でしょ」

陽菜乃も虫捕りのついでに健の剣の稽古の見学をするのがすっかり習慣化していた。

「ん~…」

「な、何?陽菜乃…」

陽菜乃は健をじっと見ながら近付いてきた。健は顔を徐々に赤くしながら後ずさりして木の幹に背中がぶつかった。

「ひーちゃんって、こないだの身体測定で身長いくつだった?」

「…ギクッ!!!」

赤くなっていた健の顔色は一瞬で青くなった。

「………158cm………」

「もしかしてE組男子で一番低い?」

「ぐはっ!」

渚が159cmなので、陽菜乃(149cm)の言う通りなのだ。

「大丈夫だって、成長期なんだからまだまだ伸びるよ、それこそ、がらちゃんやむっちゃんくらい大きくなれるって」

悪気が一切無い陽菜乃の言葉の刃はしかし確実に健の精神を的確に刺し貫いていた。無自覚に。

「あ、そういえば“烏間先生”から聞いたんだけど今日から新しい先生来るんだって」

陽菜乃の口から“烏間”という名前を聞いただけで健は一瞬イラっとした。

「へえ…、でも殺せんせー全部の教科を完璧に教えられるじゃん」

「なんか外国からの先生だって」

「外国語か…、生の外国語に触れさせようってことかね」

「女の先生だって、美人だといいね、ひーちゃん」

「…関係ないよ」

(………陽菜乃より可愛い奴なんているわけないじゃん………)

健は自分のと陽菜乃のカバンを持つとE組校舎への道を登り始めた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「今日から来た外国語の臨時講師を紹介する…」

朝のHRで烏間先生から新任教師が紹介された。

その新任教師は、何故か殺せんせーにべったりとくっついていた。

「イリーナ・イェラビッチと申します、皆さんよろしく」

「…おっきい…」

「…萌っちよりデカい…」

「すご…」

翼(そこそこ)、岬(ぺったん)、萌(Fカップ)は新任教師の胸元を凝視していた。

「つーか殺せんせーも普通にデレデレじゃん」

「こほこほ…、普通に巨乳好き?」

「普通に骨抜きじゃねぇか、いや、殺センコーに骨あるか微妙だけど…」

健、雪、タスクもすっかり骨抜きになっている顔色ピンクの殺せんせーに呆れていた。

 

殺せんせーの弱点⑤【おっぱい】

 

「けど、この時期にしかもE組(こんなクラス)に来るってことは…」

「ごほ…、考えるまでもないね」

健と雪は、否、クラス全員イリーナがただのALTでないことはすでに察していた。

「ん?」

タスクを除いて。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

その日の昼休み、校庭で暗殺サッカーをしているとイリーナがハートマークをいっぱい浮かべながら殺せんせーに駆け寄ってきた。

「殺せんせー!烏間先生から聞きました、足がとってもお速いんですって?」

「いゃぁ~、それほどでもないですね~」

「お願いがあるの、一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて、私が英語を教えている間に買ってきて下さらない?」

「お安い御用です、ベトナムにいい店を知っています」

顔をピンクにした殺せんせーはイリーナの胸元を見てニヤニヤしながら頷くと、次の瞬間にはマッハでベトナムに向かって飛んで行ってしまった。

「えっと…、イリーナ…先生?チャイム鳴ったし、教室戻ります?」

クラス委員の磯貝が訊くと、それまでの接しやすそうな女教師の仮面が外れ、殺し屋としてのイリーナが表に出てきた。

「あぁ、勝手に自習でもしてなさい。あのタコの前以外で教師を演じるつもりなからそのつもりで」

冷え切った目で生徒達を見下しながら、イリーナはシガリロを咥え火を付けた。

「それと気安くファーストネームで呼ぶの止めてくれない?イェラビッチお姉さまと呼びなさい」

「「「………」」」

クラス全員、黙ってしまった。

「で、どうすんの?ビッチ姉さん」

「略すな!」

そんな中カルマだけは普通に話し掛けた。

「大人のヤリ方ってのを教えてあげる」

そう言うと妖艶な笑みを浮かべながらイリーナは渚の顔を両手で押さえこんで・・・・

「!!」

唇を押し付けた。

渚は痙攣を起こし、どんどん体から力(というか精力)が抜けていった。

「後で職員室にいらっしゃい、アンタが調べた奴の情報を聞いてみたいわ」

イリーナはその豊満な谷間に渚の小顔を埋めると頭を撫でた。

 

「ちょっと、貴女、いい加減にしてくれません?!」

 

その状況を見兼ねた萌が割って入った。

女子の中では片岡メグに次ぐ長身の萌はイリーナと真正面から対峙した。そのせいで渚がイリーナの巨乳と萌の豊乳によって四方乳固めを掛けられてしまった状態に・・・・

 

 

「………」

その光景を見た茅野の表情が一瞬暗くなり、うなじ辺りに何やら不穏なオーラが立ち込めたがすぐに消えたので誰も気付かなかった。

 

 

「ふぅ~ん、このアタシに意見しようっての?」

「ここは学校です、仮にも教師として赴任したのなら…」

しかし萌の意見は最後まで言われることはなかった。

「~~っ!!」

イリーナは再び強制キスで萌の口を塞いだ。しかも渚の時よりも濃厚なのをたっぷりと。

「っぷは…、」

解放された萌は口元を手の甲で拭いながらそれでも立っていた。

「あら、今のに耐えるなんて中々やるじゃない。あんたも何か情報持ってたら教えなさい、オトコを紹介してあげるわよ」

「誰が…、貴女なんかに………っひゃ!」

嬌声をあげた萌の豊乳にイリーナの手が食い込んでいた。

「アタシには及ばないまでも、けっこうイイもん持ってるじゃない」

イリーナは胸を揉みしだきながら萌の耳元に口を近づけた。

「…なんならアタシが直々に手解きしてあげようか?…」

耳元で囁かれると萌は一気に腰砕けになり、グラウンドに倒れてしまった。

「萌ちゃん!」

「萌っち!」

翼と岬が慌てて駆け寄る。健とタスクも手伝おうとしたが、校庭の向こう側から近付いてくる異様な気配がそれをさせなかった。大きな荷物を背負った屈強な男、それが3人も近付いていた。

「技術、人脈、全て有るのがプロの仕事よ。ガキは外野で大人しく拝んでなさい」

男の一人から小型拳銃デリンジャーを受け取ったイリーナはそれを胸の谷間に隠しながらE組全員に振り返り様こう言った。

「少しでも私の暗殺を邪魔したら…、殺すわよ」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

結局あの後、英語の時間は自習となりその日の暗殺教室は終業した。

翌日の英語の時間も、イリーナは授業をせずずっとタブレット端末で計画を練っていた。

「なービッチ姉さん、授業してくれよ~」

そんな状況に耐えかねて前原が催促する。

「そーだよー、ビッチ姉さん。一応先生でしょビッチ姉さん」

岬もビッチを連呼する。

「あ~、もう!ビッチビッチうるさいわね!まず正確な発音が違う!あんたら日本人はVとBの発音の区別もできないの!?」

流石にキレたイリーナは立ち上がった。

「正しいVの発音を教えてあげる、まず下唇を歯で軽く噛む、ほら」

クラス全員が言われたとおりにした。

「はい、そのまま一時間過ごしていれば静かでいいわ」

そういうとイリーナは再び座りまたタブレット端末を操作し始めた。

 

(((…なんだこの授業!?)))

 

変な顔のまま、クラス全員殺意が沸いた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

その日の5時間目

この日の体育は拳銃による射撃訓練だった。

「も~、なんなのあの先生!!嫌い!」

シュパパパと軽快な音を立てて対先生クナイは殺せんせーに見立てた的に当たった。

「………巻町さん、あれにイラつくのはわかるが、せめてそれを拳銃でやってくれないか?」

「あ、は~い」

烏間先生に注意され、的からクナイを抜いた岬は拳銃に持ち替えた。

「おいおいミサキチよ、授業内容は守れよ」

「あんたに言われたかないわよ、この肉弾戦バカ!」

パスパスパス

タスクと岬が撃った弾は見事に的を外し、奥の森へ飛んでいった。

「タスクってほんと射撃ダメだよね」

「こほこほ…、BB弾だからある程度軌道弾道計算をして…」

タスクの後ろの健と雪は弾倉にBB弾を込めながら呆れた。

「あ~、うっせ!」

「岬ちゃんもクナイとかなら当たるのにね…」

「そ~だよ~、これが礫とかみたいな自分の手で投げる物ならいくらでも当たるのに…。でも翼ちゃん凄いよね、射撃結構当たるし扱いもなんか慣れてるし…」

「ふぇ?!え、えーとうん、まぁ………」

あたふたする翼を横目で見ながら、翼が銃の扱いに長けている理由を知る幼馴染の健はニヤっと笑った。

「あ…、殺せんせー」

そんな中、一人だけぽけーとしていた萌が体育倉庫に入っていく殺せんせーとイリーナの姿を見つけた。

「おいおいマジかよ殺センコー、あの女と体育倉庫にしけこみやがった」

「けっほけほ…、なんか正直がっかりかな。あんな四則演算以前の見え透いた色仕掛けに引っ掛かるなんて………」

タスクと雪も呆れてしまった。

「ねぇ烏間先生~、私らあの先生のこと好きになれないんだけど…」

岬の言葉に烏間は溜息を吐いた。

「すまない、国の支持でな。プロの彼女に一任するようにと」

「でも…、たしかにわたし達はプロじゃないけど、それでも暗殺教室の生徒です」

翼の言葉にクラス全員が頷いた。

 

その時・・・・・・

 

ドンッ!!!

 

「何!?」

健は反射的に逆刃の小太刀の鯉口を切った。視線の先、体育倉庫からは轟音のような銃声が響いていた。

「………鳴り止んだ…?」

萌は殺せんせーよりも、むしろイリーナの身を案じていた。

 

 

「いやああぁぁ!!」ぬるぬるぬるぬるぬるぬる

体育倉庫が激しく揺れる。

 

 

「いやぁ~………」ヌルヌルヌルヌルヌルヌル

体育倉庫がいやらしく揺れる。

 

 

 

「い…ゃぁ…………」ヌルンヌルンヌルンぬるるぬるぬぬぬるる

体育倉庫は揺れないが卑猥な音がさらに執拗になっていた。

 

 

「悲鳴と…、ぬるぬる音?」

翼は体育倉庫から聞こえる音にいかがわしい妄想をしてしまった。

「変な妄想してないで、行くよ。もしかしたら殺せんせーの隙を突けるかもしれない」

健に頭を小突かれて翼は慌てて体育倉庫へ走って行った。E組も続々とそれに続いた。

倉庫の扉が開くと、中から服が継ぎ接ぎだらけになった殺せんせーが出てきた。

「くっそ、遅かった…」

不意討ちを狙っていた健は逆刃の小太刀の構えを解いた。

「殺センコー、パイオツカイデーは?」

「いやあ~、もう少し楽しみたかったですが、皆さんとの授業の方が楽しみですから。相楽君、次の6時間目は小テストです。予習はしていますか?」

にゅやにゅや笑う殺せんせーの後ろ、体育倉庫から人影が出てきた。

それは、体操着にブルマー、鉢巻まで巻かれた健康的でレトロな格好のイリーナだった。

「…わずか1分であんな事されるなんて………、肩と腰のこりをほぐされて、粘液のオイルとリンパと足裏のツボまでマッサージされて…、その上まさか触手とヌルヌルでアンナことを………」

「あの…、殺せんせー何したんですか?」

「さあね、大人にはオトナの手入れがありますから」(°_°)

萌の質問に、殺せんせーは悪い大人の顔で答えた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

さらに翌日の英語の時間。

教室にはタブレットを叩く音しか響いていなかった。

「あっはぁ、必死だねぇ、ビッチ姉さん。あんなことされちゃ、プロとしてプライドずたずただろうね~」

カルマがイラつくイリーナを嘲笑った。

「あの、先生…」

翼がおどおどしながら手を挙げた。

「何よ…」

「授業しないなら殺せんせーと代わって下さい、わたし達一応受験生なんですけど………」

「はん?あの凶悪生物に教わりたいの?地球の危機と受験を比べられるなんて、ガキが平和でいいわね~」

それに、とイリーナは続けた。

「聞けばアンタらE組ってこの学校じゃ落ちこぼれだそうじゃない、今さら勉強したって意味無いでしょ」

 

(((…!)))

その言葉に、クラス全員が殺気立った。

 

「そうだ!じゃあこうしましょ、私が暗殺に成功したら一人五百万ずつ分けてあげる。あんた達がこれから一生お目にかかることのできない大き…、」

 

シュカンッ

 

イリーナの言葉を遮るように、黒板に鋭く研がれた鉛筆が刺さった。

「出てって…」

鉛筆を投擲した岬はさらに両手の指の隙間に鉛筆を握って殺気のこもった目でイリーナを睨んでいた。岬だけではない、クラス全員、イリーナに対して殺意を向けていた。

「出てけクソビッチ!」

「そーだそーだ!!!!」

「殺せんせーと代わってよ!」

「巨乳なんていらない!!!!」

クラス中からの大ブーイング(………若干的外れなことを言っている貧乳(茅野)もいるが………)にイリーナもキレた。

「ちょ…、何よあんた達その態度、殺すわよ!」

「上等じゃん、やってみなよ!」

岬は両手の8本の鉛筆を一気に投げた。鉛筆はイリーナをわずかにかすめて全本黒板に刺さった。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

教員室

「何なのあのガキども!」

イリーナは烏間に怒鳴っていた。

「こんな美女と同じ空間にいられるよの、ありがたいと思わないの?!」

「ありがたくないから軽く学級崩壊を起こしてるんだろうが。とにかく生徒達に謝ってこい、このままここで暗殺を続けたいならな」

「なんで!?私は先生なんて経験ないのよ、暗殺だけに集中させてよ!」

その時、ドアがノックされ高荷萌、明神翼、巻町岬が入って来た。

「イェラビッチ先生、ちょっと来てくれませんか?」

「何よ、校舎裏に私一人連れ込んでこないだのお礼参りでもするつもり?」

「いえ、ここがどこなのかを説明します」

「烏間先生も、着いて来てくれますか?」

「ああ、わかった行こう」

萌達が連れて来たのは校舎裏だった。そこでは殺せんせーが葡萄ジュースを飲みながらテストを作っていた。

「………なんか、やけに時間かかってるわね。マッハ20ならテストなんて手書でも一瞬でしょうに」

「これを見て下さい」

萌と翼が差し出したテスト用紙を見ると、イリーナの表情が変わった。

「何…、これ同じ国語のテストよね…?」

「萌ちゃんは国語が苦手で、でも逆に私は国語やとくに古典が得意なんです」

「それぞれの生徒の理解度、得意不得意に合わせて殺せんせーは全部作り分けているんです」

「俺も初めて知った時は驚いた。高度な知能にスピードを持つ地球を破壊する危険生物、そんな奴の教師の仕事は完璧に近い」

「んじゃ、今度はこっち」

千葉用に数学空間図形の高度なひっかけ問題を作る殺せんせーを茫然と見ているイリーナを、今度は岬が引っ張って行った。

「校庭…?」

校庭では杉野達が木製ナイフで殺せんせーの顔が描かれたボールをバドミントンのように打ち合っていた。

「あれ見て」

「なによ、遊んでるだけじゃないの?」

「烏間先生が考案した暗殺バドミントン。動くターゲットにナイフが当てるための訓練も兼ねてるの」

「あの…、たしかにわたし達は一月前まではただの中学生でした、でも、こうやってちゃんと暗殺の訓練だってしてるんです…」

「当然、みんな賞金目当てだけどね」

「でもそれを成功報酬とするなら、今この教室における私達とイェラビッチ先生は立場的に対等じゃないでしょうか?殺し屋として」

翼、岬、そして萌の主張に、イリーナは黙ってしまった。

「暗殺対象(ターゲット)と教師、暗殺者(アサシン)と生徒。あの怪物のせいで生まれたこの奇妙な教室は誰もがその2つの立場を両立している。お前はプロであることを強調しているが、教師と暗殺者(アサシン)の両立ができないなら、ここではプロとして最も劣っているということだ。この子達よりもな」

さらに烏間先生が追い討ちの言葉を投げかける。

「ここに留まって奴を狙い続けるつもりなら、この子達を見下すな、生徒としても、殺し屋としても対等に接しろ。それができない“ただ殺すだけ”なら、順番待ちの一番後ろに回ってもらうぞ」

「………アンタら、名前は?」

イリーナに訊かれ、萌は一瞬ビクっとした。

「高荷…萌です………」

「巻町岬」

「明神翼です」

「そう、じゃあモエ、ミサキ、ツバサ、クラス全員教室に集めといて」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

クラスに全員集合したE組。だべっているとイリーナが教室に入って来た。

生徒からの嫌悪の視線を感じながらイリーナは一行の英文を流麗な筆記体で黒板に書いた。

「You’re incredible in bed!リピート!」

突然の英語の授業にE組は全員ぽかーんとしていた。

「ほら」

「「「ユ、ユーアー、インクレディブル、イン、ベッド」」」

「アメリカでとあるVIPを暗殺した時、まずはそいつのボディーガードに色仕掛けで近付いた時、彼が私に言った言葉よ。意味は『ベッドでのキミはスゴイ』よ」

「ゲホっ…!」

まさかの意味に雪が大きく咳き込んでしまった。

(中学生になんつー文読ませてんだ………)

後ろの雪を心配しつつ、健は呆れた。

「外国語を短期間で習得するには、その国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。相手の事をもっと知りたいと思うから、必死で言葉を理解しようとする」

イリーナの授業に、いつの間にか全員集中して聞いていた。

「私は仕事場必要な時、このヤリ方で新たな言語を身に付けてきた。だから、私の授業では外国人の口説き方を教えてあげる」

 

(((!?)))

 

「プロの暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツ、身に付ければ実際に外国人に会った時必ず役に立つわ」

「う~ん…将来葵屋継いだ時、外人のお客さんとかおもてなしするのに役に立つかも………」

「赤ベこの世界進出…」

岬と翼はまだ見ぬ外人との出会いに期待を抱いた。

「受験に必要な英語なんてあのタコから教わりなさい。私が教えられるのはあくまでも実践的な会話術だけ」

そこまで言うとイリーナは大きく息を吸った。

「もし…、それでもあんた達が私を先生と思えないなら、その時は潔く諦めて出て行くわ。そ、それなら文句ないでしょ?………………あと、色々悪かったゎょ………………」

すっかり毒気の抜けたしおらしいイリーナにE組は一瞬呆けていたが、次の瞬間にはドッと笑いが起こった。

「な~にビクついてんのさ、さっきまで殺すとか言ってたくせに」

岬はケタケタと笑っていた。

「なんか、すっかり普通の先生になっちゃたね」

「だな、もうビッチ姉さんなんて呼べないな」

翼と健の言葉にイリーナは思わず涙ぐんだ。

「あ、あんた達、分かってくれたのね」

「けほ…よく考えても先生につける呼び方じゃないよね」

「だよな~、なんか新しい呼び方を…」

雪とタスクの会話に、岬が割って入った。

「じゃあ、『ビッチ先生』で」

「え…、え~と、キミ達、どうせならビッチから離れてみない?なんならファーストネームでもいいわよ、気安く、ねぇ」

イリーナは親しみやすい口調で提案するが・・・・

「けどな~、もうビッチが定着しちまってるし、いいんじゃね?ビッチセンコーで」

タスクが耳をほじりながら決定してしまった。

「キーッ!やっぱアンタら嫌いよ!!」

 

 

 

 

クラス中からビッチ先生コールが鳴り止まない状況で、ただ一人だけ・・・・

 

 

 

 

「イリーナお姉さま………」

萌だけが一人、恍惚の表情でビッチ先生を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




緋村健の弱点③【身長が低い】
158cm(陽菜乃は149cm)
翼(155cm)とほとんど同じペースで伸びてきて、たまに双子と間違われることもあった

相楽祐の弱点①【射撃が下手くそ】
クラス最下位の成績、ナイフ術も同様に

巻町岬の弱点①【拳銃が下手くそ】
ただしクナイや礫など自分の手で投げる物に関しては百発百中
鋭く研いだ鉛筆を黒板に刺すことができる

高荷萌の弱点①【あっちの気が有り】


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