市街地のゲームセンターで他校の生徒複数人と乱闘騒ぎを起こし、全員を病院送りにした椚ヶ丘の生徒がいるという連絡が警察から入る
事情を聞き、特徴に合致する生徒に確認を取る
「あぁ、暴れたのは俺だ。全部俺1人でやったことだ」
連絡事項
三年E組相楽祐を停学に処す
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E組の校舎への道を健と翼は登っていた。
「そういえば、相楽君今日停学明けだね」
「あぁ、そういえば」
そこに萌と岬、雪も合流した。
「おはよ、翼ちゃん、ケン君。今日からまたクラスが五月蝿くなるわね」
「う~ん、相楽の奴が加われば暗殺もぐっと効率上がるかな?どう思う、ゆっきー?」
「…けほ、あいつは計算できないから………、むしろ、カルマのがまだ計算に入れれるかな」
「はよーすっ!」
教室に入るとツンツン頭の喧しい男子生徒がいた。
「おはよ、タスク、久し振り」
健はその男子生徒とハイタッチを交わした。
「んで、例のセンコーはどこよ?」
「おはようございます、相楽祐君」
マッハで健達の前に現れた殺せんせーに、しかしタスクは嬉々としていた。
「お話は防衛省から聞いていると思います。一年間、殺す気でよろしくお願いしますね」
「おうよっ、よろしく頼むぜ殺センコー!」
挨拶を済ませたタスクは廊下側から三列目、千葉の2つ後ろの席に座った。すると、登校してきた神崎有希子がちょうど教室に入って来た。
「あ…、」
神崎はタスクの姿を見ると一瞬表情を曇らせた。
「よぉ、おはようさん、神崎」
「うん…、おはよう、相楽君………」
顔を反らしたまま神崎は自席に座った。
「………ちょいとタスク、あんた有希子ちゃんに何したのよ?」
斜め前に座っている萌が身を乗り出して訊いてきた。上半身を伸ばした体勢になってFカップの胸元がYシャツから覗いたが、タスクは全く意に介していなかった。
「別に、なんでもねぇよ」
そこで始業のベルが鳴り、今日も暗殺教室の1日が始まった。
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
いっちに~、さ~ん、死、殺、しっち、はっち
いっちに~、さ~ん、死、殺、しっち、はっち
「晴れた午後の運動場に響くかけ声、平和ですねぇ~」
体操着に体育帽を被った殺せんせーはE組の体育風景を眺めていた・・・
「生徒の武器(エモノ)が無ければですけど………」
対先生ナイフを持ったE組が整列して素振りをしている体育風景を。
「八方向からナイフを正しく振れるように!どんな体勢でもバランスを崩さない!!」
その体育を指導しているのはE組体育教師となった烏間。便宜上はE組の担任にもなっている。
「この時間はどっかに行ってろと言っただろう。今日から体育は俺の受け持ちだ」
烏間に邪険にあしらわれた殺せんせーはしくしく泣きながら砂場で砂遊びを始めた。
「酷いですよ烏間さ…、先生。私の体育は生徒の受けも良かったのに」
「嘘つかないでよ、殺せんせ~」
リズムに乗ってナイフを振っていた巻町岬は溜息混じりに文句を言った。
「この前もさぁ~………」
「ではまず反復横飛びをしてみましょう。先生はお手本を見せます」
そう言うと、殺せんせーは3人に分身した。
「まずは基本の視覚分身から、なれてきたらあやとりも混ぜ、もっとなれたらテニスのシングルスでダブルスをしてみましょう」
分身の二体が青と白の某私立中学テニス部レギュラージャージを着てラケットを構えていた。
「「「できるか!」」」
「それはテニヌよ!」
全員と不和さんから突っ込みが入った。
「異次元過ぎるんだよ~」
「体育は人間の先生に教わりたいよ」
岬と体育成績良好の杉野からの不満に殺せんせーはガーーーンとショックを受け、砂場で大人しくなった。
「やっと暗殺対象を追っ払えた。では授業を再開する」
「でも烏間先生、この訓練って意味あんスか?しかも当のターゲットの前で」
「勉強も暗殺も同じ事だ、基礎は身につけるほど役に立つ」
前原の最もな疑問に、烏間は真剣に答えた。
「そうだな、では前原君、磯貝君。俺にナイフを当ててみろ」
「え…、いいんすか?」
「二人掛りで…?」
「そのナイフなら俺達には無害だ。かすりでもしたらこの後の体育は自習にしていいぞ」
磯貝と前原は烏間の左右に立ち、ナイフを構えた。
「それじゃ…」
磯貝が無造作に突き出したナイフを、烏間は余裕を持って躱した。
「さあ」
「くっ…」
前原も烏間先生にナイフを突き出すが、的確に手首を弾かれ軌道を反らされてしまう。
「このように多少の心得があれば素人二人のナイフくらい俺でも捌ける」
磯貝と前原のナイフを、上体を反らして躱し、弾いて反らしながら烏間は講釈を続けた。
「………へぇ、やるじゃん」
健は烏間の体捌きに感嘆の声を上げた。
「くっそ」
自棄になった二人は同時にナイフを突き出した。これならどちらかは当たるだろうという算段だったのだろうが・・・・
「うわっ…!」
二人とも手首を掴まれそのまま捻られ足払いを喰らい地面に倒されてしまった。
「俺に当たらないようではマッハ20の奴に当たる確率の低さが分かっただろう?」
見ろ、と烏間は忌々しそうに後ろを指差した。砂場では殺せんせーが砂の城の前で浅葱色の段だら模様の羽織を着てお茶を飲んでいた。
「今の攻防の間に奴は大阪城に真田丸まで作って新撰組の格好で茶を点てている」
(((腹立つわ~………)))
「クラス全員が俺に当てられるようになれば、少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる」
烏間は磯貝と前原に手を貸して立たせた。
「ナイフ、狙撃、その他のフィジカル訓練、暗殺に必要な基礎訓練は体育の時間で俺から教えさせてもらう」
烏間は真っ直ぐに生徒達を見てそう言った。
「烏間先生、ちょっと怖いけどカッコいいよね?」
「ねー!ナイフ当てたらよしよししてくれんのかなぁ~?」
速水凛花と陽菜乃のそんな会話が健の耳に入った。
「さて、時間的にもう一組くらいなら相手になれるぞ。当てられればそこで自習、もしいなければこの後は校庭周回と筋トレになるが」
「はい…やるっす」
すっと手を挙げた健の髪色はいつもの赤毛より負の方面へ赤みが増していた。烏間を見る目つきも若干嫌悪感を孕んでいる。
ぶっちゃけ、不機嫌そうに烏間を睨んでいた。
「緋村君か、いいだろう。あともう一人、コンビで来てもいいぞ」
「っうし、なら俺だ!」
タスクも勢いよく手を挙げた。
「タスク、まず俺が仕掛ける。隙を見て突っ込んで」
「OKだ」
健はタスクと拳をぶつけ合うと烏間と対峙した。
「…ふっ!」
いつもの小太刀とは勝手が違うが、まずは教えられたナイフ術の斬撃を繰り出す。先ほどの二人より鋭い斬撃が烏間に次々と襲い掛かる。
「む…、」
烏間もやや押され気味にスウェーやバックステップで躱していった。
「健、交代だ!」
小柄な健を大きく上回るタスクの長身が突如頭上から飛び掛ってきた。
「こっからは、俺のターンだ!」
タスクのナイフは出鱈目だった。しかし・・・・・、
「くっ…!」
タスクは殊戦闘となると天賦の才が有り、単純な戦闘力ならE組一だった。
烏間は熟練者だがそれは訓練を積んだ上での事。奇想天外な動きから攻撃を繰り出すタスクに苦戦を強いられていた。
「っしゃぁっ!!」
タスクは雄叫びを上げると・・・・・、ナイフを放り投げた。
「え…?」
健からしても予想外の行動を起こしたタスクは徒手空拳による攻撃に切り替えた。
「ちょ…と、待て、これはナイフ術の………」
「オラオラオラオラオラ」
無勝手流、喧嘩殺法ともいえるタスクの拳は確実に烏間を追い込んでいた。
「オラッ!」
その場で前方宙返りを打ったタスクの胴回し回転蹴りが烏間の頭部に直撃したかに見えた。
「い…?」
タスクの渾身の一撃は頭上で交差された烏間の腕にがっちりと防がれてしまった。
「素手の訓練は次回、だ!」
そのままの体勢で烏間はタスクの脚に沿って前進し、太腿を掴むと捻って地面にひっくり返してしまった。
「ぐむ…」
(ここっ…!)
その大きな隙を見つけた健はナイフの握り直し、神谷御剣流の太刀筋に切り替えた。
「はぁっ!」
高速無数に繰り出される斬撃は四方八方から烏間を襲った・・・・・が、
「…っ、…っ、…っ、」
(嘘…だろ………!?)
素早く体勢を立て直した烏間はその全てを自分に届く前に全て叩き落してしまった。
健は烏間の掌底を受けて後方へ吹っ飛ばされてしまった。
「す、スマン…!つい反撃をしてしまった……」
我に返った烏間は慌ててタスクと健を起こした。
「痛てて…」
「平気っすよ…」
タスクは元々打たれ強く、健もとっさに後方に身を引いたのでそこまでのダメージは受けていなかった。
「すっげ~…」
「俺らまだまだだな…」
前原と磯貝達E組の男子達は健とタスクの戦闘能力に感嘆した。
「ケン君もタスクも凄かったわね」
「うんうん」
「今の動きって………」
萌、岬、翼は模擬戦の感想を言い合っていた。そして・・・・・
「烏間先生すっご~い、かっこいい~」
陽菜乃が目をキラキラさせながら烏間に羨望の眼差しを向けているの見た健のHPは一気に0になってしまった。
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
5時間目の体育が終った段階で登校してきた赤羽業による不意討ちで殺せんせーの触手が破壊され、その後の小テストでも騙し討ちと駆け引きで殺せんせーを追い込んで、その日の暗殺教室は終業となった。
翼と健は一緒に帰りながら商店街の魚屋の前まで来た時、意外な所でクラスメートに出会った。
「赤羽君?」
「あ、明神ちゃんと緋村じゃん。何?放課後デート、にしてはずいぶん色気無いとこ歩いてんじゃん」
「家が隣同士なだけだっつーの。そっちこそ何やってんの?」
「ん~?明日の嫌がらせ(イイこと)のためにね。あ、そっちの色艶のいい方で」
そう言うとカルマはタコを一匹買った。
「んじゃ、また明日ね~」
カルマは意気揚揚と帰って行った。
「………なんか激しく嫌な予感しかしない」
「同感、とりあえずお母さんに頼まれてたイカ買って帰ろ」
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深夜の緋村家
武者窓から差し込む月光だけの仄かに明るい神谷御剣流剣心道場に健は剣道着姿で正座し黙想していた。
(タスクの蹴りを防いでそこからの反撃の動き、あれは神谷御剣流の刃止めと刃渡り………、それに神谷御剣流の乱撃術の太刀筋も見てからじゃない、知っていた上で全部見切られていた…)
口をわずかに開けて鼻を動かさず息を継ぎながら今日の体育を振り返っていた。
(…父さんに……訊いてみるか)
と、思ったがすぐに止めた。
(どうせ仕事中だし、こっちの質問に真面目に答えるわけもないか)
健は立ち上がると帯に差していた小太刀の柄に手を添えた。
(ターゲットは3人………)
健は気合を充実させ、大きく息を吸った。
(殺せんせー!)
高速の抜刀術で横一文字に空を斬った。
(陽菜乃!)
その勢いで逆手に握った鞘も同じ軌道で振るった。
(…んでもって、烏間先生!!)
その場で一回転した健の腰元にはすでに納刀された小太刀が構えられ、鍔元を握った左手で鍔を勢い良く押し出した。
鞘から射出された小太刀は道場の壁に当たって跳ね返り床に落ちた。
「くっそ…まだまだだな、スピードも威力も足りないか………」
健は小太刀を拾い上げると道場の窓から不自然に欠けた月を見上げた。
「まずは………、体育で烏間先生をカッコよく倒して陽菜乃にいいとこ見せてやる」
緋村健の弱点②【嫉妬深い】
原作部分でオリキャラ達があまり絡まない所は省略していきますので、悪しからず
今回の技
刃止め、刃渡り
龍乱閃(原作での龍巣閃。今後出すオリジナル技と読み方が被るのでちょっと改名しました)
双龍閃
飛龍閃