暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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鷹岡編の前編です


訓練の時間

球技大会も終わり、季節は夏服の時期となった。

菅谷の影響でメヘンディアートが一時流行した際、

「なんか速そうな技が出そうなの右腕に描いて」

「蠍座系のエネルギーが高まりそうなの描いて」

と、健、翼は中二病的な注文を

「パズル的な幾何学模様描いて」

「姐さんが来たらお揃いになる感じの描いて」

雪と萌もまだわかるが・・・

「葵屋の新しいロゴっぽいの描いて」

岬に至ってはただのデザイン発注を菅谷にした。そしてタスクは・・・・

「でっかく描いてくれ」

と、いきなりシャツを脱いで諸肌になり背中にでかでかと“惡”の文字を描かせた。

この時、神崎が顔を真っ赤にして手で隠しつつ指の隙間から覗いていたが、それに気付いたは健だけだった。

 

そしてこの後殺せんせーの悪ふざけでE組が落書きビッチによる機関銃乱射事件へと発展してしまった。

 

 

 

 

そんな夏季の暗殺教室は今日も訓練が行われていた。

 

「視線を切らすな!標的が次にどう動くか予測しろ!全員で予測すればそれだけ奴の退路を塞ぐ事になる」

訓練開始から3ヶ月が経ち、可能性の高い生徒が増えてきた。

 

磯貝悠馬・前原陽斗

運動神経が良く仲の良い2人のコンビネーションは、2人掛りでなら烏間先生がナイフを当てられるケースが増えてきた。

 

岡野ひなの・片岡メグ

体操部出身で意表をついた動きと男子並みの体格と運動量を持つこの2人も女子の中では優秀なアタッカーとなり得る。

 

この4人は近接攻撃で連携を取って暗殺を行なうに向いているが、個々人で実行した場合、この4人以上の実力を発揮する生徒が3人いる。

 

 

巻町岬

クナイ投擲の腕前は下手な射撃よりも精度が高く、制服の袖やスカートの裾に大量に仕込み直接切りつけるなど日常生活でもどんどん実行している。また、古流拳法独特の動きは足音を立てず接近が可能となるので今後の訓練にも取り入れていく予定。

 

相楽タスク

我流の喧嘩殺法ながら徒手空拳の実力はクラス内でも抜きん出ている。反面、ナイフ術と射撃は壊滅的なので、素手による暗殺方法を実行できる装備を検討する必要がある。

 

緋村健

剣術道場で鍛えた剣・体捌きは中学生レベルを遥かに超えている。圧倒的敏捷性と跳躍力から繰り出される抜刀術と剣術はマッハ20の標的を追い込む切り札になると言える。ただ、烏間先生に対する敵対心(嫉妬心)とも言えるような感情と視線を向けていることが(陽菜乃と一緒にことが)多々見受けられる。

 

そしてなにより殺せんせー、彼こそ正に理想の教師像。あんな人格者を殺すなんてとんでもない。by烏間惟臣(殺せんせー)

「失せろ、勝手に捏造するな」

 

 

全体を見ればE組の暗殺能力を向上している。この他に目立った生徒はいない・・・、そう思っていた烏間先生は突如背後から迫る得体の知れない気配を感じた。

 

 

バシッ

 

 

「…!!」

「いたた…」

烏間先生に攻撃を弾かれて何度も地面を転がって起き上がった小柄な生徒は、潮田渚。

「す、スマン。強く防ぎすぎた…」

「あ、へーきです」

「渚、大丈夫?」

身長と体格的には大差無い(正確には渚の方が1cm高い)渚に健は手を貸した。

烏間先生は一見すると人畜無害そうな渚をしばし茫然と見ていた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「よし、今日の体育はこれまで!」

今日の体育は5、6時間目だったのでこの後は暗殺教室の生徒から普通の中学生に戻れる時間、放課後となる。

陽菜乃はさっそく烏間先生を誘った。

「烏間せんせ~、この後みんなでお茶してこーよ!」

「…ああ、誘いは嬉しいがこの後防衛省からの連絡待ちでな」

が、烏間先生はあっさり振ってしまった。

「………」

陽菜乃からお誘いを受けたことと、それを断った烏間先生に対して健は髪色を赤黒くしながら逆刃の小太刀の鯉口を切った。

「はいストップ」

そんな健の後頭部を翼がチョップした

「殺気駄々漏れだよ。感情的になると実力が充分に発揮できないって、小父さんも言ってたでしょ」

「しっかし、烏間センコーって授業以外でも隙ねぇーよなー」

「てゆーか、私らとの間に壁っつーの?一定の距離を取ってるよね~」

タスクと岬の言葉に陽菜乃が頷く。

「厳しいけど優しくて、私たちのこと大切にしてくれてるけど、…それってやっぱりただ任務に過ぎないから?」

「そんなことありません」

いつの間にか着替えた殺せんせーが現われた。

「たしかにあの人は暗殺のために送り込まれた工作員ですが、彼にも素晴らしい教師の血がちゃんと流れていますよ」

 

「…?誰だ、あの人」

 

と、そこに烏間先生と入れ違いに大柄な男が大荷物を抱えてやってきた。

「や!俺の名前は鷹岡明。烏間の補佐として今日からここで働くことになった、よろしくなE組のみんな!」

鷹岡が持ってきた荷物は全てスイーツだった。甘い物好きなカエデは誰よりも早く食いついた。

「これ、シャルモンのメロンショートケーキ!それにドリアンのロールケーキも!」

他の箱に入っているのも有名店のスイーツばかりで女子達は歓喜していた。ただ一人を除いて・・・・

「………洋菓子ばっかじゃん………」

「お~い、翼~、さっき俺に言ったこと忘れたか~、殺気駄々漏れだぞ~」

和菓子屋の一人娘、明神翼は洋菓子・・・ではなくそれを持ってきた鷹岡に殺気を放っていた。

「いいんですか、こんな高いの?」

最近イリーナとの付き合いで高級店を色々食べ歩いている萌が心配そうに訊いた。

「おう、遠慮無く食え。俺の財布を食うつもりでな。物で吊ってるなんて思わないでくれよ。お前らと早く仲良くなりたいんだ。そのためには、一緒にメシ食うのが1番だろ?」

「でもえーと、鷹岡先生?よくこんな甘い物のブランド知ってますね?」

「ま、ぶっちゃけラブなんだよ、砂糖がよ」

そんなスイーツの山を殺せんせーも涎を垂らしてガン見していた。

「おー、殺せんせーも食え食え。ま、いずれ殺すけどな、はっはっは」

「同僚なのに烏間先生と全然違いますね」

「なんか近所の父ちゃんみたいですよ」

スイーツを囲んだE組の面々はすっかり鷹岡に気を許してワイワイ賑やかにしていたが、そんな状況を離れた校舎の入口で烏間と部下の園川雀は不安げに見ていた。

「烏間さん、本部からの通達であたなには今後外部からの暗殺者の手引きなどの事務作業に専念して欲しいと。生徒の訓練は今後全て鷹岡さんが担うそうです」

「…!」

「同じ防衛省の人間としては生徒達が心配です…、あの人は極めて危険な異常者ですから」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

翌日の体育の時間。その不安は現実のものとなった。

「さて、訓練内容の一新に伴なって新しい時間割を配るぞ」

鷹岡が配った時間割りの内容は・・・

 

「うそ…でしょ…?」

不破さんが某オレンジ髪の死神代行みたいな口調で驚愕した。

 

月曜日

9:00~9:50   総合

10:00~10:50 社会

11:00~11:50 音楽

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

15:40~16:30 訓練

17:00~17:50 訓練

18:00~19:20 訓練

19:30~21:00 訓練

 

火曜日

9:00~9:50   自立

10:00~10:50 理科

11:00~11:50 英語

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

15:40~16:30 訓練

17:00~17:50 訓練

18:00~19:20 訓練

19:30~21:00 訓練

 

水曜日

9:00~9:50   英語

10:00~10:50 技家

11:00~11:50 保体

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

15:40~16:30 訓練

17:00~17:50 訓練

18:00~19:20 訓練

19:30~21:00 訓練

 

木曜日

9:00~9:50   数学

10:00~10:50 国語

11:00~11:50 特活

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

15:40~16:30 訓練

17:00~17:50 訓練

18:00~19:20 訓練

19:30~21:00 訓練

 

金曜日

9:00~9:50   道徳

10:00~10:50 数学

11:00~11:50 美術

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

15:40~16:30 訓練

17:00~17:50 訓練

18:00~19:20 訓練

19:30~21:00 訓練

 

土曜日

9:00~9:50   国語

10:00~10:50 訓練

11:00~11:50 訓練

12:00~12:50 訓練

13:40~14:30 訓練

14:40~15:30 訓練

 

「十時間目…」

「夜9時まで…訓練?」

「土曜日まで訓練………」

某ゲーム会社の先々代社長ですら十数回コンティニューしても足りないほどありえない時間割にE組は茫然とした。

「このくらいは当然さ。“理事長にも承諾は得ている。地球の危機ならしょうがないです、と言ってたぜ”」

E組の脳裏にこの時間割を承諾した理事長の涼しい顔が浮かんだ。

「この時間割についてこれればお前らの能力は飛躍的に向上する。では早速…」

「ちょ…、待ってくれよ、無理だぜこんなの!」

「ん?」

生徒のことを全く考えていない鷹岡に前原が抗議の声を上げた。

「勉強の時間がこれだけじゃ成績落ちるよ!理事長も分かってで承諾したんだ!遊ぶ時間もねーし、できるわけねーよこんなの!!」

その前原の髪を鷹岡が無造作に掴むと・・・

 

ドンッ

「ガはっ…!」

 

腹部に膝蹴りを減り込ませ、そのままゴミでも投げるかのように地面に転がした。その表情は先ほどまでの親しみやすさの無い、狂った笑顔だった。

「“できない”、じゃない。“やる”んだよ。言ったろ、俺達は“家族”で俺は“父親”だ。どこの世の中に父親の言う事を聞かない家族がいる?」

本性を露わにした鷹岡にE組は誰も言葉を発することができなかった。

「さぁ、まずはスクワット100回×3セットだ」

鷹岡は表情を戻したが、E組はその下の本性を見てしまったので誰も言う事を聞かなかった。

「抜けたい奴は抜けてもいいぞ。その時は俺の権限で生徒を補充する。俺が手塩にかけた屈強な兵士は何人もいる。一人二人入れ替わったところであのタコは逃げ出すまい」

全員恐怖で黙ったままのE組に、鷹岡はけどな、と続ける。

「俺はそういうことはしたくないんだ。誰一人欠けることなく家族全員で地球の危機を救おうぜ、な!」

鷹岡は手近にいた神埼の頭を撫でた。神崎の全身は恐怖で強張り、足も今にも崩れ落ちそうなくらい震えていた。誰もが返事は肯定しかないと思っていた。

「…は、はい…、あの………私…」

そして神崎の口から出た言葉は・・・・

 

 

「私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

 

顔に冷汗を浮かべつつ、神崎は笑顔できっぱり鷹岡を拒絶した。

その神崎に、鷹岡は手を振り上げた。

 

 

 

 

バシンッ

 

 

 

 

果たして、神崎を叩こうとした鷹岡の平手打ちは華奢だが筋肉質な腕に阻まれた。

「………おい…、テメェ今…何しようとした」

鷹岡の平手打ちから神崎を庇ったタスクは憤怒の形相で睨みつけていた。

「お、なんだ。文句があるなら拳同士で語り合うか?父ちゃんはそっちのが得意だぞ」

「上等だコラッ!!」

 

 




後編は15日くらいを予定しています

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