とある科学の青春ラブコメは間違っている   作:一級狙撃手

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はいどうも、一級狙撃手です。

今回は俺ガイルがメインの話です。
主に折本の話になるのかな?


とりあえず本編をどうぞ。


第八話(俺ガイルside)

俺と比企谷のそれぞれにとって地獄な時間(俺は佐天さんに、比企谷は折本さんに互いが見てる前で『アーン』という最悪な時間)が過ぎた後、元気な女子連中はそっちのけで、俺らはコタツに引きこもっていた。

 

「お互い大変だな。比企谷は折本さんに振り回されてそうだ」

 

「お前が言うな、上条。お前もあの子に振り回されてんだろうが」

 

「佐天さんか?」

 

「ああ」

 

「……否定できないのが苦しいな。………っと、そうだ、念のため言っておくが、俺と佐天がここにいる事は誰にも言うなよ?学園都市の奴らから逃げてんだから」

 

「分かった。折本にも言っとくわ」

 

「頼むわ」

 

と、そこで会話が切れ、いいタイミングで佐天さんと折本さんが来る。

 

「ん?どしたん?比企谷。それに上条……『さん』はもうつけなくてもいいよね?」

 

「あ、ああ。俺はいいぞ」

 

と、俺が返答すると、何故か佐天さんが頬を膨らませながら俺の横っ腹に膝をいれてきた。

 

「なっ、なんだよ。俺、何か変な事したか?」

 

「………折本さん、これが先輩です。……どうですか?」

 

「………確かにこれは難敵だわ……」

 

何やら、勝手に女子の間で話が進んでいるのだが、全く持って理解出来ていない俺と、同じく理解できず、折本さんに助言を頼もうとした比企谷がかぶり、

 

「「どういう事だ?」」

 

と、同時に言ったのだが、そんな俺たちに佐天さんと折本さんは一度顔を見合わせた後、あからさまな溜め息を吐いて、何故?といった感じで頭を抱えていた。

 

「いや、もういいよ。うん。比企谷には後で教えてあげるけど、上条は自分で考えなよ?」

 

「何か酷くね!?」

 

俺だけ教えてもらえないらしく、ちょっと扱いがぞんざい過ぎないか?と思い、反論したのだが、またしても佐天さんに睨まれながら、今度は肘が俺の横っ腹に入れられた。

 

「それは先輩が悪いんです」

 

「………」←(いい感じに肋骨の骨と骨の間に入って、痛みで悶絶中)

 

と、痛みで返答できずに悶絶している俺をほっぽって、そのまま会話を進める佐天さん。

 

「……念のためあらかじめ言っておきますが、前にも言ったように、先輩は未来の私の夫なんですよ?その辺を考えて言ってください」

 

 

ーー果たして、いつ、そんな事が決まったのだろうか?

 

そんな疑問が頭をよぎったが、中学生の冗談だ、と決めつけておいて、納得した事にしてとりあえず横っ腹の痛みと再び向き合う事にした。

 

 

 

 

 

ーー(比企谷&折本side)ーー

 

俺は現在、佐天に肘を入れられ、悶絶している上条を見て、『大変なのはなにも自分だけじゃない』と思っていた。

 

いや、そう思わないと切り抜けられない状況に、俺自身がなっていた。

 

原因は言わずともわかっていると思うが、俺の彼女の折本かおりだ。

 

 

ーー思えば、色々あった。

 

中学ではイジメにあい、高校で久しぶりに再開したと思ったらクラス連中の前で死刑宣告(主に俺との会話)。おまけにそんな事があったにもかかわらず、何故か俺の人生初の彼女にまでなってしまっている。

 

 

だが、そんな彼女に、今俺は攻撃……、いや、正確にいえば攻撃されている訳ではないのだが、精神的にはある意味攻撃を受けていると言ってもいいだろう。

 

端的に言えば、

 

 

 

人前であるにもかかわらず、彼女に抱きつかれているのだ。

 

しかも、だ。

 

こいつ、折本かおりはその行動に至った理由が俺にある、と言って来た。あまつさえ、

 

「分からないならいいよ」

 

という最初から最後まで全く持って理解できない行動に、俺は困っていた。

 

 

 

 

「………よし。折本、よく分からんがよく分かった。分かったから退いてくれ」

 

「何が分かったの?」

 

「…………。い、いや、だって俺がいつ何をした!?」

 

「………比企谷っていつか浮気しそう」

 

「何故話がそっちへ向かうんだ?……大体告白して来たのお前からだろうが。しかもまだ一日も経ってねぇぞ」

 

「……だって比企谷割りとモテるし」

 

ーーーーー

ーー

ーーこんな会話をしているが、その態勢はこたつでくつろぐ俺に後ろから折本が抱きついてきているというものだ。……中学生の頃の俺が知ったらどう思うか。

ーー

ーーーーー

 

「俺がモテる?……折本、お前どんな目してんだよ……。こんな性格ひん曲がってて、ぼっちで、周り曰く目が腐ってて、顔は……自分でもそれなりにはいい方だと思ってるが、雰囲気が暗い奴のどこがモテるんだよ」

 

「だって現に比企谷は私と付き合ってるじゃん。それに、比企谷は自分の悪いところばっかり言うけどさ、もっといいところもあるんだしさ、そっちも認めなよ」

 

「……例えば?」

 

俺が折本にそう聞くと、折本は待ってましたと言わんばかりにノータイムで答えてきた。

 

「比企谷は、自分で理解してるか知らないけど、結構優しいんだよ?……私の件の時だってそうだったし、その目の腐り具合からして、既に高校に入ってからも何かやらかしたでしょ?自分を犠牲にして。………今度からはもし人を助けるなら自分を犠牲にする方法以外の方法でその人を助けてよね。……………こっちが不安になるから」

 

そこで一旦切り、更に続ける。

 

「二つ目は………」

 

と、何かを言いかけた時、俺と折本は同時に横からの視線を感じ、そっちを見る。

 

 

ーーするとそこには、寝っ転がっている上条と、こっちを見ながらニヤニヤしている佐天がいた。

 

 

「ナルホドナルホド。折本さんはそうやって比企谷さんを落としたんですね?」

 

「ち、違っ!!」

 

折本が顔を赤くして慌てて反論するが、時既に遅し。佐天は誤解を抱いたまま納得してしまったらしい。

 

「なるほど。そういう迫り方ですかぁ。……私にもできるかな?先輩のいいところ……か」

 

何やら真剣に考えだした。なので、俺たちは『邪魔をしないように』という名目(言い訳)のもと、立ち去る事にした。

 

「な、何か取り込んでるみたいだから先帰るわ。折本、後は頼む」

 

俺はそう言った。

 

ーー果たして、折本は俺の意思に気がつく事ができるのか!?

 

 

そして、そう言った俺に、折本は、

 

「比企谷が帰るなら私も行く。………全く、彼女を他人の家に置き去りにする彼氏って聞いたことないんだけど……」

 

と、期待通りの答えを返してきた。オプションでカモフラージュまでつけて。

 

 

 

ーーという結果に、最初は、なかなかやる。と思っていた時期が俺にもあった。

 

この展開できたならば、皆さんもうお気づきだろう。実際はそんな事無かった訳だ。

 

 

上条家を出て、冬の寒さが身体に直接響くアパートの通路を少し移動している最中。

 

『本当に、私を置いていかないでよね?』

 

『そのカモフラージュはもう終わったからいいっての』

 

『………は?カモフラージュ?……え?』

 

『え?さっきの俺に自然に合わせるためのカモフラージュだったんじゃねぇの?』

 

『だから、何の話?』

 

『さっき上条家から出る時のあの『置いてくぞ』の話だろ?………俺がわざと折本を置いて行くって言った意図に気付いて言ったんじゃねぇの?』

 

『え?そうだったの?』

 

『……気付いて無かったのかよ』

 

『……気付いて無かった』

 

折本がそう言ったので、俺が返事をしようとしたのだが、折本が、でも、と繋げたので、黙った。

 

『……だから、さっきの言葉は本心だよ?』

 

 

 

 

ーーその言葉に、俺の思考回路はオーバーヒートしてしまった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

今は折本が俺の家に初めて入ってから十分後くらい。

 

俺の方は、思考回路のオーバーヒートも回復して、普段通り、ただ目の腐ったぼっち(彼女もち)に戻ったのだが、変わりに折本がオーバーヒートしていた。

 

 

ーーこんな調子で、本当に大丈夫なんだろうか?

 

俺は、放心状態のまま鍵を取り出して玄関を開けていたらしく、気付くと身体が家に入るところだった。

 

そして、

 

「適当に上がってくれ」

 

と言って、先に上がったのだが、二分くらいしても折本がこないため、玄関に見にいくと、顔から耳から真っ赤な折本が玄関に突っ立っていた。

 

軽く声をかけると反応して、ようやく動き出したのだが、右足と右手が一緒に出ていた。

 

「……お前、これからここに住むのに大丈夫なのか?」

 

…………今思えば、ここでこの言葉を言った事を後悔している。

 

右足と右手が一緒に出る程緊張している折本に、この俺の言葉がトドメをさしてしまったのだ。

 

折本は、一度目を見開いて驚いてから、アタフタしはじめ、そのまま気を失って、倒れてしまった。………俺の上に被さる形で。

 

流石にマズイと思い、どかそうとしたのだが、どういう態勢で突っ込んだのか、後ろがどうなってるのか分からないが、折本の腕には確かに力が入ってないのに、俺は折本を引き剥がせなかった。

 

しばらく抵抗したが、結局諦め、俺もその場に転がった。

 

 

 

 

ーー(折本side)ーー

気が付くと、身体に密着する形で、暖かいものを感じた。

 

よくよく見ると、少し先に手のようなものがあり、そこまできてようやくどういう状況かを悟った。

 

「……え?………ええっ!?」

 

驚いて、声をあげそうになったが、なんとか堪えて更に状況をよく確認する。

 

比企谷は寝ているので、できるだけ静かに。

 

どうやら私は比企谷の上に乗っかって気を失っていたらしい。

 

そして、そのせいで比企谷は動けなくなって、しばらく待っている内に寝てしまったんだろう。と、おおざっぱな推測をたて、そして比企谷の上から去ろうと、手を抜こうとしたのだが、

 

「んっ!……嘘でしょ?」

 

比企谷の体重に私の体重が重なって、腕が抜けなくなっていた。

 

横に倒れられれば、とも思ったが、それも無理なよう。

 

「比企谷、おーい、比企谷」

 

呼びかけるも、返事はない。

 

そのまま何度も呼びかけたのだが、成果はなかった。

 

 

仕方なく力を抜き、位置的に丁度比企谷の胸板に顔を埋める形で体重を預け、顔を横に向ける。

 

すると、比企谷の心臓の音が聞こえてきた。

 

ゆっくりとした、それでも力強く感じる事のできる音をしばらく聞いていると、何となく比企谷の顔が見たくなり、再び頭を上げる。

 

当然、そこには寝たままの比企谷しかいない。

 

ーー普通の顔で、特に髪を染めるような事もせず、教室(クラス)の端っこで目立たないように生活し、人を助ける時は直接助けず、助けられた本人にも周りにも分かりにくい、自分の功績が隠れるような助け方をして、そしてほぼ必ず自分を犠牲にする。

 

それが、今日私が総武高校に転入して、比企谷に告白するまでに得た情報を整理して導き出した結果。もちろんそこには私の経験も含まれる。

 

これはあくまで私の推測でしかないけど、でも多分当たってるんだと思う。

 

そう言い切れるのは、私自身が助けられたのと、中学生時代の比企谷を知ってるから。

 

高校に入ってからの情報も、たまに入っては来ていた。

 

何も総武高校に行ったのは比企谷だけじゃない。総武に行った人の中に、二、三人くらい、中学時代の私達のグループの奴もいた。だから、情報はそこから得られた。……ストレスの原因や中傷の対象などにして悪口を言うために。

 

私も、高校に入った当初はそいつ等と一緒に比企谷をいじってた。……でも、だんだんと嫌になって来て、そしてある時、こうなった原因は私なんだ。って考えた時、私はあの日の事件を振り返って考え直した。そして、結論が出て、比企谷に謝るって決めて、でもどうやったら連絡とれるかを考え始めた時、親が海外に引っ越す話を持って来た。

 

私は、過去のクラスの連絡網は捨てちゃうタイプだし、基本的には携帯でメアドをクラスで交換するから問題ないのだが、比企谷のメアドだけは持っていなかった。

 

だから、謝るって決めてから実行に移す方法を考える必要があった。

 

流石に、一緒に比企谷をいじってた奴に頼む訳にもいかないし、かと言って何もしない訳にもいかない。

 

そこまで考えた時に、親からの海外への引っ越しの連絡だ。しかも行く事は決まっているらしく、後二ヶ月もしないうちに、とか言い出す。何で通知が遅かったのかを聞けば、私を驚かせたかったそう。二ヶ月もあれば友人への挨拶もできるだろ、との事だった。

 

だから、私は怒った。そして、断固拒否した。結果として、親も怒り、家を売って、その金の一部を私に渡して二人で行ってしまった。

 

だけど、私はこれをチャンスと捉えていた。

 

引っ越しの話を私が知った後、お父さんには話していなかったのだが、お母さんにはこの比企谷の事を話していたため、総武への転入手続きをしてくれていた。

 

そして、あくまでお父さんの側を演じながら、私を応援してくれた。お金を渡すように言ったのもお母さんだったらしい。

 

そして、総武側にも事情を話し、転校の理由も他につけて、納得のいくようにして、そして、高校側の計らいで、引っ越しの全ての作業が完了する日、つまり両親が国を出る日に転校するようにしてくれた。

 

ーーつまり、簡単に言えば、今日。

 

 

本当に今日は色々疲れた。

 

両親が出ていくのを見送った後、新しい制服で新しい学校に行き、そこで目的の人に会い、目的を達成し、そして色々考えていく中で芽生えてしまった自分の気持ちにも整理をつける事ができ、そして現在は彼氏となった比企谷の家に上がって比企谷に抱きつく形で寄り添っている。

 

ーーおそらく、人生でこれだけ濃密な日を送る事はもう一生ないだろう。

 

本当にそう思える一日だ。

 

だから、締めくくりには最高のものを。

 

 

「比企谷……」

 

と、そこでようやく起きた比企谷に、私は、

 

「比企谷」

 

「ん?……何だ?」

 

「眠いなら目を冷まさせてあげる。私しか見えないように。……私をしっかり見れるように、ね」

 

そう言って、私は比企谷にキスをした。

 

 

 

 

ーー(八幡side)ーー

 

『眠いなら目を冷まさせてあげる。私しか見えないように。……私をしっかり見れるように、ね』

 

俺はその後、折本に………。

 

いや、これ以上思い出すのはやめよう。お互いの為に。

 

と、丁度折本が出て来た。

 

その格好に、俺は目をそらす。

 

 

折本が出て来たのは、風呂場の扉からで、要するに彼女は風呂に入っていたのだ。

 

その髪はほどよく濡れていて、服も先ほどまでは制服だったのだが、学校から俺と折本のチャリ籠にそれぞれ入れて持って来た折本の旅行バックの中から取り出した着替えに変わっていて、ラフな格好になっていた。

 

「上がったよ、比企谷ー。………比企谷?」

 

折本は俺に呼びかけてから、俺がそっぽを向いている事が気になったらしい。そして、

 

「どしたの?あらぬ方を向いて。………ははーん、そう言う事。折本姉さんの魅力に目をそらさざるを得なくなってしまったと」

 

この折本の言葉に、俺は折本に意見すべく、そっちを向いたのだが、折本はクイクイッと手招きをしていた。

 

「………何だよ?」

 

俺は、折本が意外に策略家であった事を警戒しつつ、近づくと、

 

「そんな警戒しないでよ。別に変な事はしないよ」

 

「じゃあ何するんだよ」

 

「ハグ?」

 

「いや、アウトだろ!」

 

俺はそう言うと、背を向けて風呂場に向かった。

 

 

 

風呂から上がると、用意した部屋着に着替えて部屋に戻る。

 

そして、いつも通りベッドに座り、スマホでニュースを確認する。

 

「今日も特に変わったニュースは無し、と」

 

と、独り言を呟くと、その独り言に返事があった。

 

「何だ、ニュースを見てたのか。ちぇっ、つまんない」

 

いきなり背後から声をかけられ、驚いて振り向くと、そこには折本。

 

「な!?………なんだ、折本かよ」

 

「なんだとは何よ。彼女をほっぽって携帯何か見る比企谷が悪い。……ね、もうそろそろ12時だしさ、私疲れたから早く寝たいんだけど」

 

「おお、悪ぃ。ちょっと待ってろ。今ベッド開けるから」

 

「え?」

 

なんで?といった反応の折本に構わず、そのまま続ける。

 

「ベッドに折本が寝て、俺は下に敷いた布団に寝るから」

 

俺はそう言うと、ベッドから立ち、押し入れにいれてある臨時用の布団を取りに行け…………なかった。

 

 

 

クイクイ。クイクイ。クイクイ……。

 

「あの、折本さん?どうされました?」

 

「…………………」

 

顔を下に向けて黙り込む折本。その片手は俺の部屋着の裾を引っ張っている。

 

俺がどうしていいか分からず戸惑っていると、折本が小さな声で、

 

[一緒に……寝よ?///]

 

と言った。

 

小さな声で、とは言え何も音のない空間でははっきりと聞こえてしまった。

 

俺は、おそらく顔を赤くして振り絞った声で俺に提案した折本に、肯定の意を示し、結局布団を出す事はせず、折本と一緒にベッドで寝る事にした。

 

 

ーーちなみに、最終的には折本は俺の腕枕で寝ていた。

 

 

 

明日も早いのだ。

 

ただ、明日からと今日まででは違う事がある。

 

 

ーー彼女ができた事。

 

ーー家に一緒に住む人が増えた事。

 

 

他にも探せば出てくるだろう。

 

でも、とりあえずは俺は、明日からは折本を彼女として、折本の彼氏として生活していくのだ。

 

 

その事に嬉しさや恥ずかしさなど色んな気持ちを抱えながら、俺は隣りで寝ている彼女の額の髪を少しずらして顔を見てから、眠りについた。




次回は多分九月の中頃?(その時まで投稿できる状況があれば)

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