今回は本来の一話分を三つに切って投稿するので、そのうちの最初です。
それでも六千文字はありますけど。
今回は切った関係上、クロスはしてないです。
学園都市。東京にある大きなそれは、科学sideの総本山であり、科学sideの総本山であるからしてもちろん科学力も現代のそれを遥かに上回る。
そして、学園都市の存在意義でもある、学園都市を学園都市たらしめる存在が、【能力開発】である。
そして、その能力開発でLevel1と判定され、本人の努力によってLevel5にまで駆け上った茶髪の電撃使い、御坂美琴は、ようやく外出許可を得て、妹達、白井黒子、初春飾利と一緒に本格的に上条当麻捜索を開始した。
(絶っっ対にアイツを見つけてやる!!)
そもそも、なぜこんなに彼女が怒っているのか。それは、本人すら気づいていない上条当麻への好意、そして、その好意からくる心配、そして、佐天涙子への友達としての心配、さらに、その上条当麻と佐天涙子が特別な関係になるのを未然に防ぎたい。といういろんな思いが重なって現在の状況が出来上がっている。……なにせ、それは初恋の相手が友達に取られるようなものなのだから。
現在、学園都市に残っていた十数人の妹達は、他の日本内にいる健康体の妹達と連絡を取りつつそれぞれ東西南北、縦横無尽に拡散していた。なので、いまここにいるのは美琴、黒子、初春の三人になる。
初春のハッキング力をもってすれば、
とりあえず、わかりやすいところから探す事にする。
「それでお姉様、まずはどこから捜索いたしますの?」
黒子が聞いてくる。
ーーーーー
ーー
この作戦に白井が参加しているのは、友達として佐天涙子を心配しているから、という思い。……そして、何よりも、その心配と同じくらいに、美琴の顔に笑顔が早く戻って欲しいから。……最近の、あの二人がいなくなってからの美琴は、怒るか、悲しむか、笑っても愛想笑い。そして、夜になると二、三日に一回のペースで後悔の声を漏らしたり、たまに泣いたりしていた。そんな美琴に、早く笑顔が戻って欲しいから、白井黒子はこの作戦に参加していた。
ーー
ーーーーー
「まずはアイツの家から当たりましょうか。……っていっても流石に二週間近く経ってるからいないだろうけど。行くわよ」
「行くわよ。って、お姉様、場所は知っていますの?」
「うん。前に教えて貰ったんだ。なんの時だったか忘れちゃったけどね。………なんの時だったかな~」
と、しれっと言った美琴に対して、黒子は、
「お、お姉様。も、もしかして一度行った事がある、なんて事は……」
と、信じられないものを見るような目で、オロオロと聞いた。
「ん?まだ無いけど。……それがどうかしたの?」
と、答えた美琴に、今度は初春まで混ざって二人で聞いてくる。
「……お、お姉様、黒子の聞き間違いだといいのですが、……い、今、『まだ』と言いましたか?」
「御坂さん、上条さんの家に行く気満々なんですね……」
二人が同時にそう言う。それに対し、美琴は自分の誤ちに気づいたらしく、
「ち、違っ!そ、そう言う意味じゃなくて!!……む、無意識!無意識だから!!」
だが、この反論が逆に美琴を追い込む事になった。
「ほうほう、つまり御坂さんは『無意識』で叫ぶ程行きたい、と」
この初春の反撃に、顔を赤くして悶えながら、美琴と、………なぜか黒子までがしゃがみ込んだ。
「……私が………アイツの事…………。ッツ~~~///」
「……お姉様が、お姉様が、………そんな訳ありませんのぉぉぉぉぉっっ!!!」
「ちょっ!白井さん!ここ、東京の街中ですから!路上でしゃがみ込むのも危険なのに騒がないで下さい!御坂さんも!……って言うかまだ学園都市が見えてるんですよ!?どれだけ動いてないんですか!!」
ーーという事があったが、その後なんとかまず、最初の目的地である上条当麻の実家へと辿り着いた。
「ここが、アイツの家……」
確かに、今、三人が立っている目の前の家にはちゃんと『上条』と、書いてある表札がある。………のだが、実際、そこはどうでも良かった。
問題なのは、家のある『場所』だった。
なぜ場所が問題なのか。
周りを見渡せば普通に家が規則正しく建ち並ぶ、どこにでもあるような住宅街。
だが、この三人の中のある一人には、物凄く思い出深い場所だった。
「……ウソ…………ですの」
白井黒子。
そう、彼女にとってはここは物凄く思い出深い場所。なぜなら、
「……いや、まさか、そんな筈ありませんの!」
急に叫び出した黒子に、初春と美琴は少し心配になり、
「大丈夫?黒子」
「どうかしたんですか?白井さん」
と、それぞれ声をかけて見るも、変化どころか、返答もなかった。そして、
「ッ…………」
何かを信じられないような感じ、何かを認めたくないような感じの顔をしながら、その場から全力で駆け出す黒子。
その急な行動に、二人は一瞬止まったものの、すぐに美琴が動き出す。
「初春さん!そこの家の人にインタビューお願い!私は黒子を追いかけるから!終わったら近くの店にでも入ってて!私から連絡する!」
と、言い終わるやいなや、脚に電気を纏い、一瞬で消えて行く美琴。
初春は、返事すらできずに、その場に取り残された。
「……さすがLevel5ですね。……よしっ!私は私の仕事をやりますか!」
と、気分転換をして、初春はその家の玄関へと歩いて向かった。
ーー(美琴side)ーー
美琴の本気の能力を使った走りの前には、いくら速いとはいえ、生身の脚では限界があった。
すぐに追いつかれ、黒子は美琴に肩を掴まれる。
「……どうしたのよ、黒子があんなに取り乱すなんて」
「いえ、なんでもありませんの……」
口ではそう言っているが、相変わらず、顔は変わっておらず、目は、今ここにないものをみているような感じの黒子に、痺れを切らした美琴は、
「あぁーもう!……なんでも無いわけないでしょうが!……一体何があったの?………それとも、私にも言えない?……まぁ、無理に言えとは言わないけど、こっちも黒子の事心配してんのよ?」
そう言う美琴の声は、最初こそ怒鳴っていたものの、すぐに優しいものに変わり、そして、黒子の事を抱きしめていた。
そんな美琴に、黒子は、
「ありがとう……ございます、お姉様。………でも、これは私情ですわ。私の事ですの。……一つだけ言うならば、………今、上条さんにはお会いしたくありませんわ」
「……それはアイツに、って事?」
「いえ、上条さんの家の人に、ですわ」
「…………そう。分かったわ。じゃあ近くの店にでも入って初春さんを待ちましょう」
「え……でも、そしたらあの人の家は……」
「……黒子、本当にどうしたのよ、こんなに取り乱すなんて。いい、さっき私は『店にでも入って初春さんを待ちましょう』と言ったの。この意味、分かるでしょ?……この程度の事も言わないと気づかないなんて相当ね。……本当、大丈夫なの?」
「大……丈夫ですの。問題無いですわ」
「……まぁ、自分の事は本人が一番知ってるでしょうから何も言わないけど、……さっきの言葉、信じるわよ。………そうと決まれば、さっさと行きましょうか」
「……でしたら、こちらにいいカフェがありますわ」
そうして、美琴と黒子は少し離れたところにあるカフェに入る事になった。
ーー(初春side)ーー
御坂さんが白井さんを追いかけて消えた後、残された私はとりあえず仕事をこなす事にした。
「さて、行くとしますか。……確か、お母さんの名前は詩奈、でしたっけ。だったら……」
そして、玄関前まで来た私は、インターホンを押し、
「すみません、上条詩奈さんのお宅はこちらでしょうか、お届けものがあって来ました」
と、宅配業者に扮して玄関の戸が開くのを待った。
しばらくして、空いたドアから出てきたのは、物凄く久しぶりに見る詩奈さんの顔だった。おそらく最後に見たのは中学生の、一昨年の授業参観ではないだろうか。
「はいはい、今でます………。あら、飾利ちゃん、どうしたの?」
「詩奈さん、お久しぶりです」
「どうしたの?珍しい。もしかして当麻が何かやった?」
「ま、まぁ、そうなんですが。家に、上条先輩は居ますか?」
「いないわよ?ほら、靴も無いでしょ?……それより、当麻は何をやったの?」
と言って、玄関を見せる詩奈さん。
「……本当に無いですね。……実は、上条先輩が中学生を連れて学園都市から脱走してですね……」
と、簡単に説明をする。
そして、説明が終わると、詩奈さんは、何やってんだか、という顔をしていた。そして、とりあえず上がって行って、と、言って下さったので、お邪魔する事になった。
ーーだが、私はこの時、詩奈さんは相当な演技家である事を忘れていた。
家に上がり、確認のために上条先輩の部屋を見せてもらう事になったのだが、確かに生活反応は出なかった。
そして、戻って来て再びリビングに来た後、少し詩奈さんと話したりしながら軽く捜索するも、手がかりになりそうなこれといったものは見当たらず、結局無駄足になってしまった。
仕方ないので、ネットで近くの店を探していると、カフェが出てきたので、そこに行く事にする。
そして、歩き出そうとしたその時、急にポケットの中の携帯が鳴り響き、携帯がメールを受信した事を知らせる。
ディスプレイをみると、そこには『御坂美琴』の文字が。
画面をワンタッチし、中身を開く。すると、丁度これから行こうとしていた店の名前が書いてあり、そこに来い、との事だったので、とりあえず『了解しました』と、送って、それから白井さんがどうなったのか気になったが、とりあえず行けば分かるので、カフェへ急ぐ事にして、携帯(スマホ)をポケットにしまい直し、さっき頭に叩き込んだ地図を元に、そのカフェを目指す事にした。
ーー(黒子&美琴side)ーー
時間は少し巻き戻って、初春が上条家に入って部屋を探索し始めた頃。
「……ここですわ、お姉様」
そう言って、黒子が指したのは全体的に黒で覆われた建物に、グリーンカーテンなどのツタ系の植物がいい感じに緑を出している雰囲気のいい店だった。
中に入るとそれなりに客もいて、割と繁盛している事が分かる。
「ここのオススメはランチの時間帯だけに出るサンドウィッチですの。かなり美味しいんですのよ」
黒子はそう言いながら、私にメニューを見せる。
「私は……、どうしようかしら」
「何だったらお姉様もこのサンドウィッチにします?」
「そうね、黒子のオススメだし。私もそうするわ」
と、私がそう言うと、黒子は、分かりましたわ、と言って店員を呼び、注文を済ませた。
……いつもの黒子ならさっきのところで飛びかかってくるのだが、まだ、本調子じゃないらしい。
と、考えていたら、唐突に黒子が、
「お姉様、……少し、昔話をしてもいいですか?」
と言って来た。私は、とりあえず頷き、黒子が話し出すのを待った。
「……昔話をする前に、一つ。……お姉様、今日、私の事で気になった事はありませんでしたか?」
「気になった事?……そりゃ、気になった事はあるけど、おそらくその事じゃないわよね。……つまり、今日の黒子の態度とはあまり関係ない感じなのか…」
「いえ、関係はありますわ。……………分かりませんの?」
「……残念だけどね、分かんないわ」
「今日の私の言動をよく思い出して欲しいんですの」
と、言われて、思い出してみる。
この住宅街にくる前……は、普通の黒子だったわよね。その後、追いかけた後は?
『ありがとう……ございます、お姉様。………でも、これは私情ですわ。私の事ですの。……一つだけ言うならば、………今、上条さんにはお会いしたくありませんわ』
ここは特に問題無いわね。……その後は、黒子の提案でこのカフェに来て…………ん?
黒子は、ここに来る時なんと言ってた?
『……でしたら、こちらにいいカフェがありますわ』
……つまり、黒子はこの店を知っていた?確か、ここに着いた時も……
『ここのオススメはランチの時間帯だけに出るサンドウィッチですの。かなり美味しいんですのよ』
「……もしかして、黒子は前にこの店に来た事がある?」
私がそう言うと、黒子は無言で頷き、そして、続ける。
「お姉様の推理通り、私は前にこの店に来た事がありますの。それも一度や二度じゃ無いですわ」
「……黒子ってそんなに学園都市を抜けてたっけ?」
「いえ、ここに来ていたのは、私が都市へ行く前ですわ」
そう切り出し、そして、一拍おいてから、
「私は、以前この近くに住んでいました。……いや、正確にいえばこの近くに引っ越して来たんですの……」
「……え?」
いきなりの告白に、ちょっと着いていけなくなる。だけど、黒子は続ける。
「……そして、その後、学園都市に引っ越したんですの。……でも、お姉様に会ってからこそ引っ越して良かった、と思っていますが、それ以前、つまり、小学校の頃ですわね。……その頃は、引っ越しが決まってから、お姉様に会うまでずっと、引っ越しには反対でしたの」
「……そうなの?」
「はい。お姉様に会ってから引っ越しに賛成になったのは、……私がここに住んでいた頃にいた年上のある殿方の面影がお姉様と重なったからなんですの」
「…………」
「その殿方も、もちろんお姉様も、私の事を助けて下さって、私によくして下さいました。そして、お姉様に会ってからは、極力昔の事は表に出さないようにして来ましたわ」
「……それは、なんで?」
「お姉様に失礼だと思ったのです。……確かに、その殿方にはよくしていただきましたし、恩返しもしたいですの。でも、先程も言いましたけれど、私は、引っ越しには反対でしたの。そして、その後、お姉様に会って、また助けてもらった。でも、お姉様に助けてもらったのに、いつまでも昔の事を引きずって暗い顔をしていてはいけないと思いましたの。だから、昔の事は胸にしまって、表に出さないようにして、お姉様に恩を返す事に努力して来ましたわ」
「黒子……」
「でも、流石に現場に来てしまうと、隠し切れませんでしたの。……もう分かっているとは思いますけど、その殿方の名字、何だと思います?」
そう言って私に質問して来る黒子。その顔は懐かしいものを思い浮かべていて、さっきよりも明らかに体調も回復していた。
「……もしかして、『上条』なの?」
「……はい」
「じゃあ、今日黒子が取り乱したのは……」
「……はい、いつもお姉様について回っているあの類じ……殿方が、私の記憶の中にいるその殿方と名前、姿ともに一致したからですの」
「…………な、なんか、すごい偶然ね。じゃ、じゃあ、黒子はこれからどうするの?」
「……そうですわね。先程は取り乱してしまいましたが、もう吹っ切れましたので、久しぶりに
「な!?……ちょっ!黒子!その呼び方……」
「なんですの?昔の呼び方で呼んだまでですわ。……もしかして羨ましいんですの?」
「そ、そんなわけないでしょ!?……とりあえず大丈夫そうね。あ、初春さんも呼ばないと」
「……心配かけて、ごめんなさいですの」
「いいって、別に」
ーーこの後、集合した初春とともにサンドウィッチを食べた三人は、再び上条家に来ていた。
「私が行きますわ」
そう言って、自分からインターホンを押しに行く黒子に、疑問を感じた初春が美琴に、
「大丈夫なんですか?」
と、聞いたのだが、美琴は、色々あってね、と、答えを濁した。
ーー(黒子side)ーー
インターホンを押し、しばらくすると、実に、引っ越し以来の対面となる詩奈さんが出てくる。
そして、
「お久しぶりですの、詩奈さん」
と、挨拶したのだが、詩奈は、
「すいませんが、どちら様?」
と、返答して来た。……まぁ、それも無理はない。引っ越しが小学校四年の頃、現在中学二年生。実に五年間音信不通だ。
だが、黒子は名乗らずに、
「こうすれば分かりますか?」
と言って、ツインテールをほどき、ポニーテールに結び直す。すると、
「……もしかして黒子ちゃん?」
「!…はい!そうです、白井黒子です」
どうやら思い出して貰えたようだった。と、ここで美琴と初春が会話に入ってくる。
「黒子って昔はポニテだったのね」
「似合ってますよ。……って言うか、二人は知り合いなんですか?」
と、それぞれ思った事を口にしたのだが、とりあえず家に入ろう、という詩奈の提案により、初春は本日二度目になる上条家に上がった。
家に上がると、黒子が開口一番に、
「……懐かしいですわ」
と、言った。その台詞に、詩奈と美琴は頷き、初春は、?を頭に浮かべていた。
そして、
「ちなみに、髪型を変えたのも昔の事を思い出さないようにするためなんですのよ?」
と、言った。これに頷けたのは美琴だけで、他二人は首を捻っていたため、先程のカフェで美琴に話した話を二人にすると、それぞれ驚いて、美琴は照れていた。
もしかしたら上条涙子ではなく、上条黒子の可能性が出てきた。
今回は、全面的に黒子を推した話です。頭の中にこれが浮かんだので、つい。
その辺の事は、アンケートを取るので、私の活動報告の、【科学の投票箱】に、投票して下さい。
投票内容は、とある側のヒロインのルートです。と言っても、まだまだ本編が続くので、もう少し後になりますがね。
では、この以下より選んで下さい。
①、佐天涙子
②、白井黒子
以上です。
数字か、ヒロインの名前、又は名字で書いて下さい。投票は一人一回です。二票目、投票内容以外の投票は無効票となります。
黒子も佐天さんも可愛いですよね。