宇宙人襲来によるA市消滅。歴史的大事件として連日報道されていたが、数日もすれば報道の熱が収まり時間が経つとともに人々の記憶から風化していった。もっともそれすらも協会が意図的に報道に規制をかけていたからだが…
宇宙船はメタルナイトが回収、どこかへと移動させた。そのあと彼は協会からの依頼でA市の瓦礫を巨大な四足歩行のロボットと大量の小型機を使って撤去。跡地を整備し協会本部を強化改築を行った。協会は10年かかるつもりで依頼した大工事をメタルナイトは僅か7日で竣工させた。それから数日後のある日、俺はジェノスと会う機会を得た。
「――なるほど。宇宙船でそんなことがあったのか、全宇宙の覇者もサイタマの敵にはならなかったか…」
「当然だ。先生に倒せない悪は存在しない」
「まぁ正直な話、サイタマがやられるところなぞ想像ができんが…」
Z市にある公園のベンチにジェノスと並んで座りながら俺は宇宙船のことについて聞いていた。
「メタルナイトは宇宙船を回収した。サイタマの話が本当なら宇宙船内に放置された宇宙人の死体も回収したことになる」
「それは…」
「メタルナイトが全宇宙の覇者――ボロスの存在を無視するハズがない。回収してる可能性が高い」
「仮にメタルナイトがボロスを回収したとして、どうするつもりなんだ?」
「さぁな、アイツなりの「平和ノタメ」とやらなんだろ…俺には想像がつかないがな。とにかくメタルナイトには気をつけた方がいい」
「S級の駆動騎士にも似たようなことは言われている。それに俺自身も奴には不信を抱いている」
「そうか」
もっとも口にこそ出していないが協会にも不満を持っているだろうが…
「巨人、隕石、海人族の集団に巨大宇宙船と立て続けに事件が起きたが協会はそのどれもが予言とは無関係と判断した。件の大予言による災害の対策にシッチも動いているけど、今のところそれらしいものの片鱗は見せていないのが現状だ」
宇宙船に関してはS級ヒーローがいなければ10日で地球を更地にできるほどの戦力を有していたと専門家は言っていたが…宇宙船以降は大きな事件は起きていない。もっとも単独による怪人被害は多々ある。シッチは増え続ける怪人たちに対して裏の人間たちを起用しようと考えてるようだが…A級1位の男、イケメン仮面アマイマスク。絶対正義を形にしたような奴が納得するとは思えん。
「事件があったせいで自重していたようだが、個人的な依頼でヒーローを使う役員、幹部職員がいる。所謂、職権濫用ってやつだ。もしかしたら、お前んところにも来るかもしれん。特に連中のいう「重大任務」とやらは個人で処理できなかった厄介事か、ただのワガママと思った方がいい」
「ヒーローの組織とは思えんな」
「否定はできないな…中には比較的マトモなのもいることはいるぞ…ごく少数だが…」
個人的な理由でS級を使うバカは今のところいないが、これからこの先ないとは言い切れないのが悲しいところだ。問題はサイタマがB級ってところだが…まあ彼なら大丈夫だろう。
「あとはサイタマがB級になったことでフブキ組が勧誘に来るだろうな」
「自分の意に沿わない者は徹底的に潰して再起不能にさせる女のことだろ? 先生の実力なら返り討ちにする。問題はない」
「その女の姉がS級2位の戦慄のタツマキなんだよ。意気揚々でフブキを倒してそのあとにタツマキが出てきたらどうするんだ?」
「むっ……」
「お前も間近で見たハズだタツマキの実力を、もしもサイタマとガチンコでやり合うようなことが起きれば甚大な被害が被るぞ?」
タツマキは重度のシスコンと言われている。自分の妹がどこぞの馬の骨ともわからん奴にボロクソにやられたと知れば痛めつけた相手の下へと文字通りに飛んでいくことだろう。喩えサイタマがタツマキからケンカを売られたとしても彼なら倒せるだろうが、ただし周囲への被害状況はどうなることやら…
「ヒーロー同士の私闘はロクなことが起きない。案外、大予言の災害とやらもヒーロー同士の争いかもしれんな…」
「笑えない冗談だな…」
「だが可能性としてはある。今の協会、正しくは上層部に不満を持っているヒーローは少なからずいる。そして職員もな? ソイツらがもしも協会を抜けて新たな組織を立ち上げるとしたら、お前はどう思うヒーロー協会のS級ヒーロー、ジェノス?」
「青ジャージ、お前はまさか…」
「
「お前がわざわざ協会の建物ではなく、ここを選んだのもそのためか?」
「ああ、今はまだ動かないが近々新たなヒーロー組織が動き出す。ヒーロー協会のスポンサー企業も何社か異動するそうだ。すでに何人かのヒーロー候補に声をかけていて、その中にはS級も含まれている。サイボーグ、ジェノス…お前もそのうちの一人というわけだ」
「お前はそれでいいのか?」
「納得した上での行動だ。それにヒーロー協会存在そのものに疑問を感じるんだよ。設立して3年足らずで上層部の殆どは腐った。組織として致命的どころか、おかし過ぎるんだよ。まるでわざとそうしてる感じがしてな?」
「上層部を切り捨てるための組織とでも…?」
「これはあくまで俺の考えだ。だが実際、腐っているだろ?」
「……………………」
「沈黙は肯定と受け取るぜサイボーグ? サイタマじゃないが俺も立ち止まらずに歩くことにした。安心しろ復興やら何やらですぐには動かねぇよ。でもそういうものがあることだけは頭の隅にでも入れておいてくれ」
「俺がこのことを第三者に話すことも考えていないのか…?」
「そう臭わせることも計画のうちだ。引き受けるも断るのもお前の自由だ」
ジェノスは「わかった」と短く告げると俺の前から去っていった。もう少し何か言われるんじゃないかと覚悟していただけに……正直、拍子抜けた。まあ、その方が助かるが…
「こちらA級ヒーローの青ジャージです、ドーゾ。ジェノスには伝えておいたぜ。ん? 怪人が出没した? ああ、わかった。いつも通りに後方支援と…」
俺はA級32位「青ジャージ」これでいいのか正直悩むところだが…俺は俺の思う「ヒーロー」になることにした。
あと、未だに命の恩人に会っていない。
(´・ω・)にゃもし。
深海王で終わらす予定だったけど、ボロス戦後までになった。一応、このあとも色々考えてますが、原作改善になってしまうのでここで完結。
具体的には新たなヒーロー組織の会長がアゴーニ。ヒーロー協会はアゴーニの罠だったのだ。
青ジャージがスパイ活動しつつヒーローをスカウト。その中の一人としてガロウに目をつける。
考えたらキリがない。
ONE版も村田版も更新してくれるとイイナー。
ここまで読んでくれて、ありがとー。