フランドールズ   作:ダークフレア

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告白してしまえばレミリアが全然書けなくて詰みかけていた。
書けなくてというのは語弊があるだろうか、カリスマ全開のフランドールとの正面衝突からの消滅ルートからカリスマブレイクというボケをかます漫才ルートまで、その間のグラデーションを含めれば無数にレミリアに可能性があるように見えて書ける気がしなかった。お前は私をどう書くんだとレミリアが傲岸不遜に笑っているような気さえしていた。運命を権能とする偉大な吸血鬼の運命を定めてこの小説で書くことなどおこがましいのではないだろうか。

 そんな気分に支配されつつ日々を過ごしていたら、ふとあるレミリア像が脳裏に浮かんだ。検討してみればなぜ思いつかなかったのかというほど当たり前で、いっそ必然でさえあったかもしれない。そして、その当然さこそが私を啓示を受けた預言者のような気分にさせた。おぜうが運命を示してくれたかのような。これがカリスマか。




 スカーレット教団に入団願いを出さねば。具体的には、にわかやし、と投票してこなかった人気投票で次回からおぜうに投票せねば。

 というか友人宅で紅魔郷やったときフランちゃんとあそんでばっかで咲夜さんに追い返されておぜうと会ってすらいないのってまずいんじゃなかろうか・・・・











・・・・・・・・・・・・一押しなるものがあるらしいのですが、フランドールでよろしいでしょうか(震え声)


紅美鈴

 

 第6回フランドール脳内魔法会議の議題は二つ。

 

 「魔法と魔術の違いはあるのか」「このままの練習で魔法は使えるようになるのか」

 

 

 まず気になるところを聞いてみよう

 (一つ目だけどさ、魔法と魔術の違いなんてわからなくない?)

 

 (まあ、そうなんだけど。パチュリーに聞けばおしまいだし。考えてみるのは悪くはないでしょう。暇だし)

 

 ベッドで呑気に寝ている紅美鈴と名乗った女をフランドールが見やるから視界に入る。

 

 (妖力爆発で気絶までいくとは思わなかったけどね)

 

 (飛び方的に壁に当たったときじゃなくて飛び始めで気絶している)

 

 (妖力耐性が低いとか?)

 

 (そのわりに体壊れてないあたり丈夫よね)

 

なんの種族なんだろうか。吸血鬼ではないし、よくいる狼男でもない。紅魔館でよく見る種族ではないことは確かだ。

 

 (まあ、壊れにくいのはいいことよね)

 

 まったくもってその通り。だけど、気になるのは・・・

 

 (そう、メイドを壊してから使用人なんてよこしてなかったのに今になってなんできたのかってことね)

 

 (最悪反逆の意があるとばれて警戒されている?)

 

 (そう気にすることでもないでしょうけど、あり得るわね。露骨になにかやってくるほど器が小さいとは思わないけど)

 

 (近くに人を置かれるだけで情報は抜けやすくはなるよね)

 

 (まあ、必要な会話は脳内でやるっていうか、そもそも他人がいるなら分身して別の体動かすのは無しかな)

 

 (そうだね、二つの人格があるってことは切り札足りえるから当然隠すとして分身の精度とかも隠すべきだし、外には出ない感じになるね。体の主導権は当然持っといて)

 

 (他人から違和感持たれにくいのはこっちかしらね、地下に潜る前は私だったから。でもいいの?)

 

 (そんなの当然でしょ。それより私が話しかけて口に出して応対なんてしないでよ)

 

 (わかった。気を付ける)

 

 紅美鈴が身じろぎする。注視しているとどうやら目が覚めたようだ。あたりをぼんやりながめベッドをみて、しばらくぼーっとしていたと思っていたら布団をはねのけて出てきた

 

 「わわ、失礼しました。フランドールお嬢様」

 

 「ふふっ、ベッドを占領されたら寝るわけにはいかないし、暇だったわ」

 

 (個人的にはお嬢様という父親の娘の意味を含む呼称が引っかかるけど、そうでもない?)

 

 お嬢様という呼称には父親に付随しているイメージが残る気がしてしまい引っかかるのだ。

 

 (うーん、そう言われると気になるわね。)

 

 「罰としてお嬢様呼びは禁止ね」

 

 「ええっ、なんとお呼びすれば・・・」

 

 「好きになさい」

 

 「うーん・・・・どうしよう」

 

 困ってそうね。フランドール様あたりが普通かしら。吸血鬼の王たらんという気でいるなら自己は自立してこそ。呼称は馬鹿にはできない。お嬢様呼びだけはダメだ。

 

 「フランドール・・・・、んー、・・・・妹様?」

 

 父の娘から姉の妹になったか。

 

 「ほう、そう呼ぶのか」

 

 「ええっと、お嬢様以外なら二人姉妹の妹様かな、なんて・・・失礼でしたか?」

 

 (ここで否定するとお嬢様呼びを嫌がったというよりは名前で呼んでほしかった、可愛い子供みたいに見えそうね?)

 

 (ぐぬっ、改善はしたかぁ・・・・)

 

 「いいや、そう呼びなさい」

 

 「分かりました、妹様」

 

 こっちの気も知らず安堵の表情を浮かべている。相方のこの微妙な感情が伝わってくる感じ、くせになる。

 

 (他人事みたいな態度だけど、あんたも関係あるのよ?)

 

 (私が今楽しいからいいのよ)

 

 (覚えてなさいよ・・・・)

 

 「どうかしましたか?」

 

 「で、あんた何しに来たのよ」

 

 (聞かずに殴りかかっておいてよく言う・・・)

 

 (あのねぇ、もう、分身出さないって決めた瞬間に楽しみすぎでしょ・・・)

 

 「はい!頑丈さを買われて妹様の世話係に抜擢されました」

 

 「そう。得意なことは?」

 

 「気を使う程度の能力を持ってますから気を使うのが得意で、人間の武術をいろいろ修めています」

 

 (世話係としてって普通は解釈できそうだけど、気を使うのが得意だねぇ)

 

 (本当にね、まさに聞きたかったことを返してくれるんだから)

 

 できる女である。実際世話がうまくて戦闘力皆無の使用人は気に入らない。

 

 「へえ、人間の武術ね、どんなの?」

 

 「中国拳法なら一通り修めました」

 

 「ふーん、いいわね、なら中国とでも呼ぼうかしら」

 

 根に持ってる根に持ってる

 

 「えーっと、妹様が望むなら」

 

 (・・・・・・・・・・・・・・・・本当に呼んでやろうかしら)

 

 (ふふっ、くくくっ、あはははっ、ダメっ、面白すぎでしょ!)

 

 「・・・・・・・いいわ、めーりん」

 

 「分かりました、妹様」

 

 あくまで妹様。能天気にこっちを見てきているのが本当に面白い

 

 (ねえ、どんな気持ち?)つい楽しくなって聞いてしまう

 

 (妹様って呼ばれるのはそんなに気にならないけど、あなたに楽しそうにされててどうしよっかなって)

 

 (フランドール全体としてプラスならいいんじゃない?)

 

 (マイナスよ!!)

 

 「せっかくだし、中国拳法でもみせてもらおうかしら」

 

 「そうですねぇ・・」

 

 「面白い技とかあったりするの?」

 

 「そうですね、縮地っていう歩法の一つなんですけど、」

 

 そういうと美鈴は瞬く間に前後に5mほど移動することを繰り返してみせた。足がほとんど動いてない。

 

 「ゆっくりやるとこんな感じです」

 

 今度はゆっくり前後に滑ってみせた。

 

 「ゆっくりやるほうが難しかったりしない?」

 

 「そうなんですよ!きちんと極めないと低速縮地はできないです」

 

 「へー」

 

 両足を地につけて動かさないまま前後に滑ってみせる

 

 「ええっ!!もうできるようになっちゃったんですか!?」

 

 「まあ、ざっとこんなもんね」

 

 「すごいです!見ただけでできちゃう妖怪初めて見ました!」

 

 本当に驚いたようにはしゃいでいる。

 

 (・・・妖力探知はそこまで得意じゃなさそうか、世渡りがうまいか)

 

 (これで妖力使っていること気が付いていたら相当な策士ね)

 

 「いや、これ地面に足をつけたまま飛んでいるだけよ?」

 

 じっとフランドールの目を通して観察する。妖力使っていることに気が付いていたかどうか。

 

 「ええっ!あ、そうか、空飛べるんだから地面にそって飛べばいいのか」

 

 見た感じは本当に驚いているように見える。どう?

 

 (同意見ね)

 

 (ふーむ。なら見計らって聞いてみて。恐れぬ理由を。)

 

 「飛ぶよりどういいのかしら」

 

 「妖力の節約と臨機応変に対応しやすいです」

 

 そういうと美鈴はすべりながらハイキックを放って見せた。中華服の翻る裾と伸びた脚が美しい。

 

 「それに飛べない人間がより強くなろうと編み出したものですから人間には有り難いです」

 

 「武術を通して人間を理解したというところ?」

 

 「そうですね、いろいろな流派のそれぞれの師のもとで武術を修めましたから」

 

 随分と人間っぽいのよね、だからこそ気になる

 

 「じゃあ、人間好きなんだ」

 

 「種族全体というとなんとも言えないところはありますが、尊敬すべき人間はいますし、人間の素晴らしい点も知っています」

 

 恐怖の具現たろうと妖怪としての純度を高めんとしている私の前で人間賛歌か。面白い

 

 「どんな?」

 

 「人間はもろいです。簡単に壊れ、死にます。だからこそ妖怪に対抗するために武術を編み出し修練し継承しています。そして大妖怪相手には武術を極めてもどうにもならないということも理解しています。それでも諦めることなく修練を続け、後進を育てているのです」

 

 「どうして?死ぬときは死ぬんでしょう?」

 

 「死ぬときは死ぬからです。なんの外敵にも襲われずにいたとしても人間は50年も生きればまともに動くものはほとんどおらず、70年もあれば余裕で死にます。寿命というやつです。それ以上生きるようにできていないのです。だからこそ、死は近くにあり、死は諦観の理由足りえないのです」

 

 「理解できないな。死は消失であり残るのは無だろう?」

 

 「できないでいいのです、妹様。妹様は不死者としてこれから悠久の時を生きる存在。人間と同じ死生観を持つことなどあり得ないのですから。もろく、死にやすい人間だからこその哲学、生命観があるということだけです」

 

 これが答えか?

 

 「だからお前は私を恐れないのか?気まぐれに貴様を消し飛ばせる私を」

 

 そう、破壊をふりまく狂気の吸血鬼、フランドール・スカーレットを前にして、いや襲い掛かられてなお、恐怖を感じた様子がないのだ。この紅美鈴という女は。だから面白い

 

 「そうですね、怖くはないです」

 

 「自身の消滅は怖くないのか?」

 

 「それは怖いですけど、妹様は怖くないです。だって私を壊さないでしょう?」

 

 あっけらかんと言い放す美鈴。

 

 「壊さないだろうという推論で恐怖は消えるのか?」

 

 「わたしのことを殺せる人間にずっと師事してきました。無防備な姿をさらすこともありました。でも怖くはなかったです。そこには信頼があったからです。それと同じく、妹様が怖くないのは信頼が理由です」

 

 美鈴が視界から外れる。美鈴は動いていない。ただフランドールの顔の向きが変わっただけだ。顔も直視できないのかなんて茶化す気にはなれなかった。かなり共感できてしまうのだ。

 

 「・・・・・・・・・・・?」

 

 何もわかってなさそうな顔をしているのが横目にうつる。フランドールが口を開く前に言わねばなるまい。

 

 (父親の部下だぞ、紅美鈴は)

 

 (・・・・・・・・・・・そうね)

 

 (情がわくときついぞ)

 

 (わかってる)

 

 (ならいい)

 

 いうべきことだけ言って黙り込む。余計なことまで言ってしまいそうだった。

 

 「気に入った。傍で仕えることを許可する、紅美鈴」

 

 「!感謝を」

 

 傍にいるななんて言われることを完全に想定していなかった反応。まあ、お前はそういう妖怪だろうよ。

 

 「久々に食事をとりたくなった。二人分の食事をとってこい」

 

 「!!それって!分かりました、すぐ戻ります!」

 

 満面の笑みを浮かべてから部屋を飛び出していく姿を見送ってろうそくの火を見つめる。

 

 火はゆらゆらと動きつつ燭台の影を壁にうつしていて、どこか暖かい。

 

 (第6回魔術会議はどうする?)

 

 フランドールとしての思考を切らなくてはならなかった。

 

 (あー、なんだったっけ)

 

 (魔法と魔術の違いと訓練方法の話)

 

 (あー、そうだったそうだった)

 

 (第7回に持ち越し?)

 

 (そうなるかな)

 

 (りょーかい。拳法習う?)

 

 (うーん、ありっちゃありだけど・・・)

 

 当然父との文脈で語られるが

 

 (フランドールに悪意がなければ興味本位で習うことは十分あると思うけど)

 

 (そうね、習うのはありかもしれない)

 

 (人の在り方、その試行錯誤の結果の中に父打倒のヒントは隠されているかもしれないし)

 

 (そうね、じゃあそういう方針で)

 

 果たしてこの決定はどういう意図で行われているのだろうか。

 

 (まあ、難しく考えすぎなくていいんじゃないかな。両方あれば。)

 

 そういうものかもしれない。そんなに簡単に人妖の感情は解明できないのだ




そういえば今まで言及したことなかったですけど、感想気楽に書いてってくださいね。

誤字脱字や日本語としての違和感といった有り難い指摘や好意的な感想だけでなく批判的な感想も含めお待ちしております。

 ああ、批判的な感想くださるなら一通り読んでから下さいね。それさえ守ってくれるならなんでもどんとこいです。

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