Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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 ただのUBWルートですね。はい。


無限の剣製2

 そして、再び夜が訪れる。キャスターの消滅が夜明け前だったことから、既に夕刻を過ぎていた。そこで目を覚ました士郎は、自分の右手が痺れて動かない感触に違和感を感じ、腕を見る。

 

「ん、うん」

「……って、イリヤ!」

 

 目を覚ました士郎の右腕に抱きついて寝ていたのは、イリヤスフィールだった。突然真横にイリヤが寝息を立てており、声をあげるがすぐに士郎の口を誰かが押さえる。

 

「静かに、士郎。イリヤスフィールが起きてしまいます」

「せ、せいばー」

 

 士郎の口を塞いだのは普段着に着替え、隣で見護っていたセイバーだった。彼女の落ち着いた声で、冷静になった士郎はイリヤを起こさないように、静かに胴体だけ起こす。

 

「教会の後、確か」

「ずっと眠り続けていました。イリヤスフィールが心配して、ずっと看病していました」

 

 そういうセイバーの言葉で、イリヤが心配して寝疲れたのだと知る。すまないなとイリヤの頭を撫でる士郎だが、凛がアーチャーに誘拐された事を思い出す。

 

「今、何時だセイバー」

「夜の10時です。余程無理をしたようですね」

「まずい、早く遠坂を」

「わかっています。貴方が目覚めない場合、我々だけで凛を助ける方法を考えていました」

 

 セイバーはそう言うも難しいことが分かる。アーチャーを出し抜くという案だが、セイバー二人とルーラーに隠密スキルなど無く、刺激するだけになる。

 

「そういえば沙条は」

「彼女は、士郎より早くに目覚めました。今、台所で何か作ってくれています。話を聞いた限り、何かしていなければ落ち着かないのでしょう」

 

 まだ凛を助ける時間はある。アーチャーの言った衛宮士郎の始まる場所。それが何処か思い当たる節があった。なので、時間でいえば余裕がある。そして、セイバーが言う沙条綾香の落ち着かない理由は、姉のことだろう。

 ギルガメッシュと戦闘に入ってから、既に一日以上経過している。それでも愛歌から連絡が来ない現実は、綾香の心を少しづつ蝕んでいく。けれど、自分にできる事をと綾香が動いていた。

 凛と士郎に協力することが姉との約束。それを果たす事が綾香の目的となっていた。最も果たしたくない約束を避けるために、綾香は動いている。

 

「俺も、凛を」

「士郎、凛は私のマスターです。彼女を救いだすのは私の役目です。アーチャーは私が止めますからシロウは」

「逆だセイバー。アーチャーとは俺がやる」

 

 アーチャーはセイバーの同行は許可した。故に彼を抑えるのは自分だと言うセイバーの言葉を士郎は否定する。サーヴァント相手に生身の人間が戦う。それは自殺行為だ。だが、士郎にはアーチャーと戦わなければいけない理由があり、アーチャーも士郎を殺す目的がある。

 そこに他者が入りこむ隙間は無い。

 

「それはダメだシロウ。アーチャーは貴方の」

「わかってる。アイツが何者なのかはたぶん出会った時からわかってた」

 

 何度も戦い、アーチャー見て来た士郎は、彼の正体に気が付いている。だから士郎は逃げず、戦って勝たねばならない。

 

「だからこそアイツを認められない。アイツとだけは俺が決着をつけなくちゃいけないんだ。頼む、アーチャーとは俺がやる。その時、手を出さないで欲しい」

 

 士郎の覚悟を感じ、セイバーには何も言うことが出来ない。自らもキャスターに囚われ、もう一人のセイバーを消し去りたくなった。どうしようもない感情、それを倒さねばならぬ理由。全てを理解しているからこそ、セイバーは頷いた。

 

「貴方がそう望むのなら私はそれに従いましょう。この身は貴方の盾になると誓ったのです。その行く末を最後まで見届けます」

「ありがとうセイバー……それとイリヤ、看病ありがとう」

「……レディが起きてると分かっても、知らないふりするのが紳士の勤めよシロウ」

 

 セイバーとの話し合いの中、目覚めたイリヤは寝たふりをして話を聞いていた。だけど士郎にばれており、口を尖らせる。だが士郎に頭を撫でられ気分を良くする。その姿は猫のようだと士郎は感じた。そして襖が開けられ、ルーラーが中を覗く。

 彼女は士郎達が目覚めている様子を見て、襖を完全に開ける。

 

「綾香がイリヤスフィールと士郎君の分の料理を作ってくれています。食べられますか?」

「あぁ。いまいく」

「私もお腹がすいちゃった。本当は士郎の手料理が食べたかったんだけどね」

 

 士郎とイリヤがリビングに向かうのをセイバーとルーラーの二人が後ろを歩く。台所には、綾香が立っており、テーブルにはセイバー(アルトリウス)が配膳したお好み焼きが並び、ほくほくと振りかけられた鰹節が踊っていた。

 

「お好み焼き……か」

「ごめんなさい、材料勝手に」

「いや、ありがとう。材料は気にしないでくれ」

 

 士郎は謝る綾香に言葉に礼を返し、彼女の作ったお好み焼きをを食べた。あまり自分で作らないものだったので、素直においしく頂けた。イリヤやサーヴァント達もそれを食べながら満足げだった。

 そして、全員が食事を終える。危機的な状況だが、喰わねば戦えない。なにより気を張り詰めていた全員に余裕が生まれ、落ち着く事が出来た。

 腹が満たされれば、次にやる事は一つだった。凛の救出とアーチャーとの決着だった。綾香は姉を心配するが、彼女からの連絡がない以上、あの場所には行けない。凛はこの同盟には必須だ。彼女が居てこそ機能するのだ。

 

 すでに準備を整えた面々。3人の魔術師に3人のサーヴァント。組み合わせは、元々の主従とルーラーとイリヤ。アーチャーが指定した条件は、士郎とセイバーのみ。そのため他の二組は、かなり遠距離で待機するしかない。

  

「本当に大丈夫なのお兄ちゃん?」

「あぁ。イリヤ達は安全な場所で待って居てくれ」

 

 既に指定された場所に向かっていた6人。士郎が、予め場所を勘づいておりルーラーが聖水による探知でアーチャーの居場所を探った事で、彼等は冬木中央公園へと足を運んでいた。

 

 アーチャーの言っていた衛宮士郎が衛宮士郎へとな原因であり、始まりの場所。それは、冬木の大災害が起こった中心位置である、この場所だ。かなり広い空間と、たくさんの木々。中央に慰霊碑とそれを管理する講堂が立てられた場所。火災の犠牲者の怨念によってある種の異界と化した場所。冬木の大災害で全てを失い、衛宮士郎になる原因の場所と言えば、此処しかない。

 そして講堂の中にアーチャーは居た。それを知った上で士郎とセイバーは進んでいく。

 

 2人が広めの講堂の入口に入り、階段を上った先に慰霊碑と広い空間が用意されていた。そして、慰霊碑の前の段差に座るアーチャーが居た。

 

 

 

 

  

 

 

 

 





 冬木の中央公園ですが、原作と少し設定が違います。アルカとブレイカーが泥に呑まれている間に、被害が原作より多く、少し施設が豪華になってます。

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