Fate/make.of.install   作:ドラギオン

96 / 145
 UBWと同じですねここら辺は。


言峰教会3

 葛木が死んだ事で、敵が居なくなった。誰もが後味が悪くも戦いは終わったと思った。

 

「士郎!」

「え」

 

 だが、突然ルーラーに肩を貸していたセイバーが、ルーラーを放して士郎へと駆け寄り突き飛ばす。そして、セイバーが付き飛ばした場所には、無数の剣が突き刺さっていた。当然、キャスターに持ちいた剣の射出だと誰もが理解する。

 当の本人は「ちっ、外れたか」と悪びれずに語る。

 

「アーチャー! 何のつもり?芝居はこれで終わりでしょう!? キャスターは倒したんだからもう勝手な真似は許さないわよ!?」

 

 士郎を容赦なく攻撃するアーチャーに対して凛が激怒する。

 

「許さない? なぜ私が許されなければならない。私のマスターでもないお前に」

「え、きゃあ」

 

 しかし、アーチャーは彼女の言葉を聞く耳を持たない。自分との契約が切れている凛の言葉を聞く理由は無く、彼女を拘束するように剣を上空から射出し、剣による檻で凛を拘束する。

 

「なんでよアーチャー、あんたまだ士郎を殺すつもりなの!?」

「そう、自らの手で衛宮士郎を殺す。それだけが、守護者と成り果てた俺の唯一の願望だ」

 

 拳を握りしめ、強く怒気の籠った声で宣言するアーチャー。その言葉を聞き、ルーラーが士郎を護るセイバーに加勢しようとするも、投影された幾つもの剣があろうことかイリヤの方向に射出される。それはイリヤが不意打ちで使い魔に攻撃させようとした事に対する防衛と警告。

 

「え」

「どういうつもりですかアーチャー」

 

 見え見えの攻撃で狙いも甘かったため、ルーラーの旗で叩き落される。だがルーラーはイリヤを護るために護衛をするしかなく、傍を離れられなくなる。アーチャーはルーラーがイリヤを見捨てないと想定。あえて彼女を人質に動きを制限した。

 

「下手に動けば、刃がアインツベルンのマスターを貫くだろう。大人しく、そこで見ているが良い。お前も全てを救うなどと考える馬鹿のようだからな」

「……何故、貴方は其処まで」

 

 動きを制限されたルーラー。さすれば士郎を守れるのは、ルーラーと戦い令呪に抗い続けて消耗したセイバーしかいない。聖剣を構えアーチャーと対峙するセイバー。

 

(このままじゃ、士郎が危ない。というか、綾香とあっちのセイバーはどうしたの)

 

 凛がアーチャーを担当した2人がどうなったか考えた時、アーチャー自身が答えた。

「その顔は上の二人を案じているのか凛」

「当然でしょ」

「安心したまえ、あのセイバーは手練だ。隙をついてマスターに攻撃したが、防がれたよ。だが、足止めで教会の入り口に無数の剣をバリケードにしておいた」

 

 今凛が捕まっているような剣によるバリケード。物量による結界で持って、セイバー(アルトリウス)と綾香の侵入を拒んでいるというアーチャー。それはすなわち彼も急いでいると言うこと。

 

「時間を稼げるとは思わない事だなセイバー」

「アーチャー……あなたはまさか」

 

 セイバー(アルトリア)は、士郎を見るアーチャーの目に、彼の心の内を見た気がした。

「いつか、言っていたなセイバー。俺には英雄の誇りが欠けていると――。

 当然だ、俺に残ったものは馬鹿げた後悔のみだ。

 

 俺はねセイバー、英雄になどならなければよかった」

 

 アーチャーがその言葉を口にした時、彼の言葉と表情でセイバーは全てを察した。それは彼の正体を知っている凛やルーラーも同じく。そしてイリヤですら、一瞬だけ発せられた雰囲気が誰と似ているかを敏感に感じ取る。

「どいているがいい騎士王。マスターがいない身で無茶をすれば、すぐに消えるぞ?」

 

 そう、既に魔力は枯渇しておりアーチャーと彼女が戦うのは自殺行為。戦いにすらならないだろう。それを見越した忠告だったが、セイバーは首を振って拒否する。

 

「もはや衛宮士郎にマスターとしての資格は無い。肩入れしても君の望みには届かない」

「私は彼を守る剣となると誓った。契約がなかろうとこの誓約に変わりはありません」

 

 セイバーは自分の誓いを破るつもりはない。アーチャーと敵対すると口にする。それを聞いたアーチャーは「残念だ、だが邪魔をするというのなら」と剣を投影し切り掛る。

 

「ハッ!」

「ぐぅ」

 

 突進のように繰り出された剣を受け止めるセイバーだが、抵抗できずに力負けし仰向けに倒れてしまう。

「では、偽りの主ともども此処で消えろ」

「お前の相手は俺だ!」

 

 倒れたセイバーに剣を振りおろそうとした時。アーチャーと同じ剣を投影した士郎が切り掛る。それを同じ剣で受け止めたアーチャー。後ろ向きでも士郎の剣を受けた事で技量の差は歴然。

 

「相手を間違えるな!」

「そうか」

 

 アーチャーは士郎の腹部に蹴りを入れ、彼を蹴り飛ばす。咳き込みながらも剣を放さず、アーチャーを睨む姿にルーラーは止めに入る隙を探す。だが、アーチャーがこちらに目を向け、警戒を緩めない。

 

「分不相応な魔術は身を滅ぼすだけだ。努力さえすれば、大成するとでも思っていたのか? 愚直に努力さえしていれば、理想の姿に手が届くと?」

 

 同じ魔術を用いて戦う士郎とアーチャー。だが力の差は歴然で、何度も打ち合ううちに士郎は剣から謎のビジョンを見せられ始める。何度も何度も士郎の剣と打ち合っては、彼の剣を折り続けるアーチャー。

 

 ただでさえ未熟な士郎の魔術回路が、悲鳴を上げる。そして体力と魔力の限界が迫り、動きが鈍くなる。そして、遂には両膝を地面に着いてしまう。

 

「それが衛宮士郎の限界だ。無理を続けてきた貴様には、相応しい最期だ」

 

 そう言いながら無慈悲に剣を振り下ろさんとした時、突如凛が声をあげる。

 

「告げる! 汝の身は我がもとに、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄る辺に従い今宵この理に従うのなら!」

「なに」

「させないんだから!」

「く」

 

 突如剣の檻の中で、隣に居るセイバーへと手を伸ばしながら契約の呪文を唱える凛。その意図を察し、駆け出すセイバーを追おうとした時、凛の邪魔をさせまいとルーラーの背後に居たイリヤが使い魔を剣へとかえてアーチャーに射出する。それを受け止めたせいで、反応が遅れる。

 

「我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう!」

「セイバーの名に賭け誓いを受ける。あなたを我が主として認めよう凛!」

 

 凛との契約を承諾し、彼女と掌を合わせたセイバーは、魔力切れから復帰。士郎と契約時よりもステータスが上昇し、その目をアーチャーへと向ける。まさか此処で契約に踏み切るとは思わず、アーチャーも内心、厄介なことになったと感じる。

 

「凛と契約した事で、君は衛宮士郎とは何のかかわりもなくなった訳だが、まだ肩入れするかね?」

「えぇ。言った筈です。契約がなかろうとも、士郎を護ると」

 

 向かいあう2人は、合わせたように人間には目視出来ない速度で駆け出し、剣と剣をぶつけ合う。高速で剣による突きと振りを繰り返すアーチャーだが、魔力が潤滑であるセイバーは全てを紙一重で交わし、強烈な一撃を放つ。それをクロスした剣で受け止めるも膂力で敗北したアーチャーは膝を突く事になる。

 

「ここまでです。私に言った様にマスターが居ない貴方が無茶をすれば、消滅してしまう」

「弓兵には単独行動の技能が与えられていてね。マスターを失ったとしても二日は存命できる。それだけあればあの小僧を仕留めるには十分だ」

 

 あくまで士郎を殺すと言うアーチャー。

 

『ばかな、貴方の望みは士郎を殺す事だとでも? アーチャーあなたの望みは間違っている

「間違っているか、それはこちらのセリフだセイバー。君こそいつまで間違った望みを抱いている。

 何も残せなかったのではない、全てをやりきった故の終わりだと考えることはできないのか?」

 

 アーチャーの言葉に、考える所のあるセイバーは返答できない。自分の望みを知っている彼は、間違いなく『彼』なのだろう。その彼が自分の事をそう言うと言う事は、彼の知っている自分は……とセイバーが考えた時、爆発音とともに地下室の入口から2人が入ってくる。

 

「ごめんなさい遠坂さん! アーチャーを自由にしちゃった!」

「僕とした事が、申し訳ない」

「綾香、グッドタイミングよ」

 

 アーチャーのバリケードを破って綾香とセイバー(アルトリウス)が地下室に入ってくる。これでアーチャーは、更に不利になる。

 それは当の本人も理解している予想より早い到着で、完全に予定が狂ってしまった。

 

「まだやるつもりなのですか、アーチャー」 

「確かに不利だ。それに俺はアーチャーだ。もとより剣で戦うものじゃない。まぁもっとも、その弓すら借り物の贋作だがな。真髄を見せると言っている。それが俺に出来るお前への最大の返礼だ。生憎と、俺は大勢を相手にするのも得意なのでね」

 

 そういうとアーチャーは干将莫邪を消し、魔力を巡らせながら呪文を唱え始めた。

 

「I am the bone of my sword. (体は剣で出来ている。)

 

Steel is my body, and fire is my blood. (血潮は鉄で心は硝子)

 

I heve created over a thousand bladas. (幾たびの戦場を越えて不敗)

 

Unknown to Death. (ただの一度も敗走はなく)

 

Nor known to Life. (ただの一度も理解されない)

 

Have withstood pain to create many weapons. (彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う)

 

Yet, those hands will never hold anything. (故に、その生涯に意味はなく)

 

So as I pray, ”UNLIMITED BLADE WORKS”. (その体は、きっと剣で出来ていた)」

 

 アーチャーの詠唱と共に、世界が書き変えられる。風と炎が起こり、その場に居た全員を呑み込んだ後、彼等は地下室ではない広大な荒野に立って居た。空は赤く染まり、地面にはいくつもの錆た剣が、突きささる。それは墓標のようであり、上空には錆びた巨大な歯車が回り続けている。

 その場所が現実ではなく、10年前のライダーと同じ固有結界によって作られた世界だと魔術に造詣のある凛やイリヤは気が付いた。魔法に最も近い魔術であり、世界そのものを塗りつぶす魔術。それがアーチャーの切り札だった。

 

「固有結界! 心象世界を具現化して現実を浸食する大禁呪」

「こんな事が出来るってことは、アーチャーの正体は……」

「えぇ、あいつは剣士でも弓兵でもなくて……」

「そう生前、英霊となる前は魔術師だったということだ。元々、私は聖剣も魔剣も持っていなかったからな。俺が持ち得るのはこの世界だけだ―――宝具が英霊のシンボルなら、この固有結界こそが俺の宝具。武器であるのならばオリジナルを見るだけで複製し貯蔵する。それが俺の英霊としての能力だ」

 

 反則的な宝具もあったものだ。彼の前では英霊の象徴ですら、模範され複製される。そして固有結界の中に溢れる剣の数は、まさしく無限に等しい。

 サーヴァント達は、アーチャーの動きに警戒し自分達の後ろに居るマスター達を守るべく前に出る。そして士郎の前に立つセイバーがアーチャーへと語りかける。

 

「これが……こんな荒野があなたの行きついた先だというのですか アーチャー」

「ふん、言ってくれるな。試すかセイバー……お前の聖剣、確実に複製して見せよう」

「私の聖剣だと?」

「あぁ。まぁ既に二本存在するが、君の方が使いやすそうだからな。こちらも自爆覚悟の投影だが、相討ち程度には持って行けるだろう。

 だが、聖剣同士の衝突がもたらす被害を知らない訳ではないだろう?」

 

 アーチャーは、セイバー(アルトリア)とセイバー(アルトリウス)に対して警告する。聖剣の中で最高位の宝具同士の激突、間違いなく周囲のマスター達を巻き込む結果となる。

 そう言ってセイバーの宝具を封じた後、30を超える地面に刺さった剣を魔力で操り、宙に浮かべる。それらはアーチャーの世界である無限の剣製における敵、すなわち衛宮士郎を殺す兵器。

 

「かわすのも結構だが、その場合背後の男は諦めろ」

 

 アーチャーの手ぶりに従い射出される剣。それを全て掻い潜るのはセイバー(アルトリア)にも難しい。背後に凛や士郎が居る状況下ではなおのこと。そんな状況で、真っ先に動いたのは衛宮士郎だった。両手にアーチャーの射出した剣を複製、それを振るうことで攻撃を弾く。同じ剣と同じ剣が衝突し、互いに砕ける。

 士郎はその行為を繰り返した、迫り来る剣の雨を全てコピーし、同じ武器で互いに粉砕する。

 

「投影、開始(トレース、オン)」

 

 何度も何度も繰り返し、アーチャーの攻撃を掻い潜る。

 

(今まで散々真似してきたその道理、法則に間違いがないのなら。速く上手くより強く! 俺にはあの構造が見えている)

 

 剣で剣を打ち払う永遠に続くような千日手。それをくぐり抜けながら、士郎の中に何かが生まれ始める。そして、自分を殺すというアーチャーの言葉。そして自分の背後で、他のサーヴァントが凛やイリヤ、綾香を剣の雨から護っている。

 

「ふざけてんじゃねぇえ!!」

 

 士郎の中で生まれた何か、正しくは目覚めた何かは彼の心に反応し、アーチャーの固有結界の中で異質の光を放つ。それは瞬時にアーチャーの無限の剣製を呑み込み、世界の上書きを更に上書きする。互いの世界の衝突によって、全員が元の地下室に戻っていた。

 しかし、固有結界が消滅する際に出現場所を選ぶ権限は、アーチャーにあったのか。地下室の唯一の出口を抑えていた筈の綾香とセイバー(アルトリウス)が士郎達の傍に移動しており、アーチャーと、彼に抱えられた凛が其処に居た。

 

「アーチャー、あんたどういうつもりよ」

「静かにしていろ凛」

 

 暴れる凛をアーチャーは、眠らせる。そして、気絶した凛を抱えて地下室を抜けだそうとするアーチャーをセイバーが止める。

 

「何処に行くのですアーチャー!」

「俺は今ので魔力切れでね。3体のサーヴァントの相手は出来ない。なので、これは保険だ。凛の命が惜しくば、今は此処で引け、少しでも怪しい動きを、っつ!?」

 

 アーチャーが士郎達との戦闘行為を中断しようとした時、黒い薔薇の茎が30本近く背を見せていたアーチャーの背中に命中する。それには流石にアーチャーもあっけにとられるが、ダメージが一切ない。

 

「遠坂さんを放しなさい」

 

 なんとアーチャーに攻撃したのは綾香だった。まさか協力者とは言え、部外者に入る彼女が攻撃を仕掛けてくると言うのは予想外だった。セイバー(アルトリウス)を召喚した幸運だけが武器かと思えば、眼鏡を外し七色の目で睨みつける瞳には、凛に似た強さが感じられる。

 

「断る。今度、怪しい行動を起こせば、凛の首を刎ねるぞお譲さん」

「わかった。引いてやる」

 

 アーチャーの仕切り直しに士郎が同意する。

「なら一日だけは凛の安全を保障しよう。俺の狙いは衛宮士郎の命だからな。―――そうだな、衛宮士郎が衛宮士郎になるきっかけの場所、呪われたあの場所で明日の零時だ。一人とは言わないが、サーヴァントを2体以上連れてきた場合と、私に残された2日の間に来なければ、腹いせに凛を八つ裂きにするかもしれんぞ」

 

 アーチャーはそう言い残して、その場を去る。それを追う者はいなかった。用意周到で戦上手のアーチャーのことだ、追って行けば何をするかわからない。そして追えない理由はもう一つあった。無茶をしすぎた士郎、そしてセイバー(アルトリウス)に魔力を注ぎ過ぎた綾香が疲労困憊だったからだ。

 

「綾香、すまない、無理をさせたね」

「気にしないで、セイバーが戦えるように魔力を渡すのが私の役目だから」

「士郎、貴方も無理をして」

「悪い」

 

 互いにセイバーのマスターと元マスターの主従。彼等を見てイリヤとルーラーは、目を合わせて頷く。

「結果は好転したけど、一先ず休息を取りましょう。シロウも貴方も、限界みたいだしね」

「そうですね、イリヤスフィールの言うとおりです。セイバー……アルトリアとアルトリウス、マスター達を安全な場所に、護衛は私が。敵はアーチャーだけではありません」

 

 ルーラーがセイバー達に指示を出し、2人のセイバーも文句は無い。人数の問題で、セイバー(アルトリウス)が霊体化し、セイバー(アルトリア)が車を運転する事で衛宮邸へと帰還した。その後、士郎と綾香は、泥のように眠り、イリヤとサーヴァント3人と言う異色の会合が開かれたのだった。

 

 その間も、サーヴァント達は警戒をし続けていたが、何も起こる事は無かった。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。