Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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 次回は不定期です。書き終り次第投稿と言う形になります。


怪物

 セレアルトが立ち去った後、結界中に突然現れた邪悪な魔力とそれを放つ蛇の頭髪を持った怪物。アルカとアンはさすがに固まってしまう。さすがにこれはとサーヴァントとマスターである2人は、呆然とする。

 

 2人は10年前にキャスターが行った巨大海魔召喚を見ていないため、巨大な怪物を初めて見た。そんな二人の背後から、突然人影が現れ二人の口を手で塞ぐ。

 

「?」

『っ』

「おい、静かにしろ俺だ。なんで念話が通じないんだお前ら」

 

 背後の人物は、ブレイカーだった。彼は二人を落ち着かせると、2人の身体を担いで背後に飛ぶ。すると、いつの間にか展開されていた青銅の鏡による結界にすんなり入れる。結界を発動しているのは、ライダーであり彼の背後には綾香を抱いたセイバーが居た。綾香の髪の色は黒に戻り、アルカは彼女の安全を見てほっとする。

 

「何があったの?」

「それがな」

 

ーーーーーー

 

ライダーは慎二が捕らわれ、綾香を解放した直後、影から現れた蛇にハルペーを破壊される。簡単に砕ける筈のない宝具だが、異質な力によって砕かれた。

 

それだけなら、よかったがライダーが手に持っていたゴーゴンの首を運ぶ袋が突然暴れだす。すぐに別の宝具に切り替えようとしたが、間に合わず。

不死殺しの武器が消えたことで、ゴーゴンが目覚めてしまった。そして革袋から飛び出した首が、無数の蛇に包まれ始め巨大顔を始める。

 

「馬鹿な!?」

「貴様、まだ」

「セイバー、何か様子が変だ」

 

 セイバーは怪しいライダーに斬りかかろうとするが、ライダーが突然現れた蛇の怪物に驚いている姿を見てブレイカーが止める。

 

「これは不味い、ゴーゴンが、彼女が目覚めてしまった」

 

 そうライダーが言った瞬間、巨大な怪物ゴーゴンは、周りの木々を魔眼で石に変えて行く。そしてブレイカー達に目を向けた瞬間、彼等を重圧が襲う。ボロボロの状態と綾香が居る状況で神話の怪物と戦うのは、厳しい。対魔力と概念耐性のスキルで持ちこたえる二人だが、ゴーゴンを現状で倒すのは不可能。

 綾香を魔眼から庇うように背を向けるセイバー。そして天馬の一撃を受けて、ボロボロのブレイカー。

 

「ワタシの背後に隠れろ」

 

 先程まで命を狙っていたライダーだったが、ゴーゴンが現代で復活したとなれば、その被害は広まる一方だろう。彼女を殺せるハルペーが失われた以上、ゴーゴンを倒せる可能性を失う訳にはいかない。予想だにしない事態だが、英雄である彼はゴーゴンを野放しには出来ない。それほど危険でおぞましい怪物を放置すれば、彼のマスターだけでなく、町の人間が全滅してしまう。

 そう言いながら、ライダーは青銅の盾の結界を起動する。ブレイカー達と十分の周囲を魔眼を無効にする結界を展開し、ゴーゴンの抜けだした袋をマントへ変え、結界ごと姿を消す。

 

「これでゴーゴンには場所がばれないはずだ」

 

 先程までブレイカー達を睨んでいた一つ目の巨大な蛇の怪物、ゴーゴンがライダーの宝具によって彼等を見失う。まだ復活して本調子ではないのか、動きが鈍い怪物。だが時間がたてばたつ程、本来の動きを取り戻し人の溢れ居冬木に向かうのではないだろうか。

 怪物を倒したペルセウスだが、実力はゴーゴンの方が圧倒的に上。なら、必殺の武器がない以上、今近くに居る英霊を殺す訳にはいかない。

 

「この結界でお前達のマスターを保護する。だから、あれを倒してほしい」

 

 それがライダーに出来る最善の手段だった。

 

―――――

 

 そして、結界の中にブレイカーは、アルカ達を連れ込み安全を確保した。その話をアルカに伝えたブレイカー。一応気絶する綾香の治療を任せると、もう一度霊体化して飛び出す。ライダーを警戒しない訳にもいかず、セイバーは結界内でライダーを警戒。

 結界の外に出たブレイカーがゴーゴンの相手をする事になった。ライダーを殺せばゴーゴンも消滅するのでは?と考えたがライダーは首を振る。

 

 自分が消えてもすぐには消滅しない。人間を喰えば、ゴーゴンが現界し続けると。そうなればゴーゴンの魔眼を防げる盾を持つ彼を今殺す訳にはいかない。サーヴァントすら石化する能力を相手に、マスター達の安全確保が難しいため、逃げる事も難しい。

  

 

「天馬の後は、ゴーゴンか」

 

 ブレイカーは自身に背中を向ける怪物を見つめる。どうやら相手が見るだけでなく、自分で相手の目を意識しても効果がある様子で、身体を重圧が襲う。だが、全身の刻印を起動し、破壊スキルを発動する。その手にはナイフを構えており、宝具を解放する構えを取る。

 

「言葉が通じるかわからないが、アイツの前に出るしかないな」

 

 ブレイカーの作戦は一つだった。自分の宝具『恐怖の大王(アンゴルモア)』によってゴーゴンの最も恐れるもの。おそらくハルペーをイメージさせて、それで彼女の首を切り落とす。アンゴルモアは変幻した存在になる。なれば不死殺しの力すらも具現化することが出来る。

 それに掛けて、ナイフから白と黒の魔力の渦を発動し、それに気がついたゴーゴンが振り向く前に巨大な蛇で構成された体を駆けのぼる。それに反応したブレイカーを丸のみ出来そうな巨大な蛇の頭髪が襲いかかる。

 

「喰われるのは趣味じゃない」

 

 ブレイカーは、蛇の頭髪の攻撃をジャンプで回避し、横から迫る蛇を殴って捌く。そして、捌いた蛇を駆けのぼりながら、ゴーゴンの目へと向かう。

 

「邪魔をする、な」

 

 次々に来る蛇を回避しつつ、ようやくゴーゴンの頭を飛び越えたブレイカー。自分を捉える怪物の目を対面する。近距離で巨大な魔眼と向き合ったため、ステータスが激しく減少する程の重圧を受ける。

 

「見ろ! ノストラダムスの予言集、百詩篇第10巻72番。――恐怖の大王(アンゴルモア)」

 

 だが、ゴーゴンの目の前で宝具を解放することには成功している。手元で渦巻く魔力の渦、それは見た者の最も恐れる物を具現化する宝具。それ故にゴーゴンの首を切ったハルペーへと変質すると予想していた。しかし、恐怖の具現化は、相手にしか見えない。

 ブレイカーにはナイフにしか見えないそれだが、相手には別のものに見える。故に、相手の伝承を元に、相手の恐れる物を想定し、使用する事で初めて効果を得る。想定ではハルペーに変化した筈の宝具を、ブレイカーはゴーゴンへと振るった。

 

「なんだと」

 

 だが、ハルペーに変化した筈の宝具は、ゴーゴンを傷付ける事は叶わない。こんな場面で自分の宝具のポンコツ加減が発揮されたと理解する。石化の魔眼の直前で宝具を使ったのに、宝具が不発、または別のものを具現化していると察した。

  

「――----!!!」

「ガフッ」

 

 10メートルを超える怪物の頭部まで飛んでいたブレイカー。石化の魔眼と向き合い、流石に身体の至る個所が石化を始めていた。そこに、突然悲鳴のような声をあげギョロリと敵意の籠った目を向ける怪物。怒り狂ったような彼女の巨大な腕によって、空中で不自由になっていたブレイカーは薙ぎ払われる。

 両腕と両足をクロスし丸くなる事でガードしたが、巨大な質量と怪力、そして抵抗できない状況が災い、ブレイカーは激しく吹っ飛び、木々をなぎ倒しながら停止。

 

 どうにか踏ん張ろうとするが、ライダーとの戦闘のダメージが大きく、立てなくなる。膝をついて傷だらけになるブレイカー。その状況でも身体の石化が彼を犯していく。

 

「ブレイカー……」

『ブレイカーさん』

 

 ライダーの結界の中で、ブレイカーが窮地に立たされた姿を見てアルカとアンは、彼の名を呼ぶ。すぐにラインを経由してブレイカーに治癒を施していくが、傷口が石化していき、上手くいかない。令呪を使っての強制退去も考えるが、どの道状況は好転しないだろう。

 かといってライダーは、アルカ達を護る宝具の発動で動けず、セイバーは無事だがライダーの警戒をしない訳に行かず、宝具を使用すれば倒せるかもしれないがマスターである綾香は魔力を既に使いすぎている。恨みと怒りを持ってブレイカーへ迫るゴーゴンを止める事はセイバーでも難しいだろう。

 

 

 思考を巡らせるアルカ達を知らないゴーゴンは自分に盾付いたブレイカーへと蛇の胴体を動かして迫って行く。

 

「―――! ---!」

 

 身体の半分が石化した状況で、ブレイカーはどうにかゴーゴンの接近に対処しようと破壊スキルを発動し、石化を破壊しようとする。だが、全身に残るダメージが魔力の流れを阻害する。このままでは起き上る事も出来ない。

 

(やばいな。このまま完全に石化したら、魔力制御が出来なくなる。それだけは避けねぇと)

 

 迫りくる神話の怪物。だが、ブレイカー自身はそれよりも懸念する事があった。ピンチにピンチが重なり、絶体絶命かと思われた。

 だが、ゴーゴンが徘徊する森の結界を強大な魔力の塊が突き破り、森に雄叫びが響き渡った。アルカ達はその声の主を見て驚いた。

 

「アインツベルンの城の近くで、随分と勝手な事をしているわね間桐とベルベット。いいわ、やっちゃえバーサーカー!」

「■■■■■■!!!!」

 

 冬木に現れた怪物による地獄の前に、大英雄であるバーサーカーと雪の妖精が舞い降りたのだった。雪の妖精のようなマスター、イリヤの命令を受け恐れを知らぬ神話の大英雄が、今重なる筈の無い怪物の前へと躍り出た。

 

 





 バーサーカーさん、カッコ良いので大好きですね。

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