Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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朽ち果てた殺人鬼

アルカが新都でルーラーと対峙した時間帯、遠坂凛の尾行をしていたアンは、森の木の陰から、凛と衛宮士郎が潰れたガソリンスタンドで結界を作っている姿を見ていた。学園で隠密活動という意味のわからない荒行をやり遂げたアンは、彼女達が学校の教師である葛木宗一郎がキャスターのマスターである可能性があり、それを確かめるために襲撃すると言う通り魔の様な作戦を観察していた。

 彼等が一度家に帰った後は、セイバーも同行したため、隠密行動のために距離を取るしかなかった。そして聞き耳を立てながら、彼女達の会話を聞いていた。

 

 作戦決行の場所を見渡すセイバーは、周囲を確認して彼女のサーヴァントが居ない事に気が付く。

 

「凛、何故アーチャーが居ないのですか?」

「あいつなら置いてきた。―――あいつとキャスターを合わせたくないのよ」

 

 そう言いきった凛は、士郎とセイバーの追及には答えなかった。むしろ、答える事が出来なかったと言える。何か考えがあって自分のサーヴァントを置いてきたという凛。だが、キャスターの相手なら対魔力Aのセイバーがいれば事足りる。そう言った計算もあってか、セイバーは追及をしない。

 

 そして、凛と士郎は、ガソリンスタンドの廃墟の陰に隠れ、葛木の帰りを待った。そして、10分ほど経過すると人気のない道を傘を差した葛木が歩いて帰宅してくる。セイバーが森で待機する事になり、距離を詰められるアンは、渋々気配を消しながら、木を上る。

 そして、息をひそめる彼ら以上に、息を殺して周囲の風景に溶け込む。

 

「なぁ遠坂、葛木はやっぱり違うんじゃないのか?」

「やってみればハッキリする。仕掛けるわ」

 

 一般人を襲うような行為は、士郎としては酷く複雑な物だった。凛を信用できない訳じゃないが、心から納得は出来ていない。けれど、葛木以外に考えられない凛は、無慈悲にも夜道を歩く彼にガンドを発砲する。発射された魔弾は、遮蔽物のない葛木へと直進、彼の体を弾き、傘を破壊した。

 そして、飛び出そうとした士郎を凛が止める。明らかに様子がおかしいのだ。それは、木の上から見ていたアンにもはっきり目視できた。

 

(あれは、キャスターですね。アルカとの念話は出来ないけれど、しっかり観察しないと)

 

 葛木に向かったガンドは、突然空から現れたキャスターよって防がれていた。

 

「忠告したはずですよ宗一郎。このようなことになるからあなたは柳洞寺にとどまるべきだと」

 

 空中浮遊しながら現れたキャスターは。マスターである宗一郎に注意を呼び掛ける。しかし、眼鏡を外しながら襲撃者の居る方向を見つめる彼は、一切動じない。その眼と風格は、あきらかに高校教師のそれではなく、凛や士郎に言い現わせない不安を植え付ける。

 そして、襲撃した凛達の方にキャスターが近付く。

 

「さぁそこから出てきなさい。バカな魔術師さん。――三秒あげるわ。それで貴方のしたことをそのまま返してあげます」

 

 明らかに凛達を呼び出す声、凛は小さな声で横に居る士郎に声を掛ける。

「衛宮君、準備いい? 合図したら行くわよ」

「悪いが、それは後にしてくれ遠坂」

「ちょ、士郎!」

 

 凛と約束を無視して、勝手に一人飛び出す士郎。凛は慌てるがその場から姿を出す訳にはいかない。

 

「あら、素直じゃない坊や」

「遠坂に衛宮か。間桐だけではなくお前たちまでマスターとはな。魔術師とはいえ因果な人生だ」

「葛木 あんたキャスターに操られているのか?」

「五月蝿い坊や、殺してしまおうかしら……」

 

 明らかにその質問は、キャスターの行為をとがめるもの。そして、キャスターの反応が彼女がいちばんして欲しくない行為だと分かる。だが、葛木がキャスターを止める。

 

「待て、その質問の出所はなんだ? 疑問には理由があるはずだ。言ってみるがいい」

「あんたはまともな人間だろ? ならキャスターがやっている事を見逃しているはずがない」

「キャスターがやっている事だと?」

 

 士郎の言葉に葛木は心当たりがない。その反応を見た士郎がさらに続ける。

 

「キャスターは町中の人間から魔力を集めている。そいつにとって人間は生贄なんだ。キャスターが魔力を吸い上げ続ける限り、いずれ死んでしまう人間だって出てくる、取り返しのつかない事になるのもそう先じゃない」

「成程。マスターである私がキャスターの所業を放置しているのは、彼女に操られていると考えた訳だな」

「あぁ。そう言うことなら俺達はキャスターだけを倒す」

 

 それこそが士郎の言いたい事だった。

 

「もしあんたがわかった上でキャスターを好きにさせているのならあんたは只の殺人鬼だ。 俺も容赦はしない」

 

 少しの間を置く葛木。彼の反応を凛やセイバー、そしてアンも見護る。彼が操られて居るなら、彼は被害者ということになる。アンはそれでも葛木を始末する事を考えるが、全てはアルカの判断を仰ぐしかない。

 

「いや 今の話は初耳だ」

 

 その言葉に士郎は、肩の荷が一つ下りた表情をする。だが、葛木は続けた。

 

「だが衛宮、キャスターの行いはそう悪いものなのか?」

「な、んだと?」

「他人が何人死のうが私には関わりの無いことだ。私が生きていることを彼らが問題視しないように」

「あんた、魔術師のくせに人間を巻き込むつもりか?」

 

 士郎は、彼の言うことが理解出来ない。魔術師なら、キャスターの行いの危険さや間違いに気が付いている筈なのに、彼はそれがどうしたと言わんばかり。

 

「私は魔術師ではない。ただの朽ち果てた殺人鬼だ。私は聖杯戦争に関与しない。

 キャスターが殺し、お前たちが殺しあうのなら傍観するだけだ。私はお前たちの戦いになんの責任も負わないし、お前たちも私の命に責任を負う必要はない。

 では好きにしろ、キャスター。生かすも殺すもお前の自由だ」

 

 葛木がそう言った時、キャスターは何処か嬉しそうな笑みをローブの中で浮かべる。しかし、キャスターが士郎に攻撃する前に、隠れていたセイバーが飛び出す。

 

「そうか、ではここで死しても構わぬのだな? キャスターのマスターよ」

「お願い、セイバー!」

 

 セイバーの声を合図に、飛び出した凛が宝石をキャスターに投げる。それは魔力による爆発を引き起こすが魔術師の英霊であるキャスターにはダメージを与えられない。だが、彼女の目的はセイバーの攻撃する隙を作る事にあった。

 

 既に葛木と向かい合ったセイバーは、普段着から騎士鎧姿に変身し、見えない剣を構えて走り出す。それを見たキャスターが無数の魔力砲を発射するも、セイバーの対魔力の前には足止めも出来ない。

 そして、セイバーの間合いに入った事で葛木に彼女の剣が振るわれる。

 

 だれしもが彼の死を想像した。だが、現実は大きく異なったのだ。何故なら、セイバーの刃は、葛木の左ひじと左ひざに挟まれる事で受け止められていたからだ。

 

「侮ったな―――セイバー!」

 

 瞬時に剣を弾いた葛木は、人間離れした動きでセイバーの背後に回り込む。その動きをセイバーが追おうとした時、キャスターが彼の両腕に強化の魔術を施し終えていた。そして、セイバーの首に左手の人差し指と中指を打撃と共にくい込ませ、彼女の脊椎に損傷を与える。そして、一歩下がって剣の間合いから外れた彼は、脊髄に損傷を受け、僅かに痙攣しているセイバーを観察。

 その隙を逃さず、両手を強化した葛木が不思議なリズムで打撃を加える。その動きたるやサーヴァントのセイバーやアン、そしてキャスターすら驚愕するものだった。

 

 直線の打撃をマヒする身体でどうにか回避するセイバーだが、突然彼の拳の起動が変化し一撃を貰ってよろめきく。追撃に左腕を振り上げてから、右肩を狙っていたにもかかわらず左肩へと軌道が変わり、セイバーの左鎖骨を強打。さらにセイバーの左鎖骨を砕いた腕の甲で、彼女の胸を殴打。小柄な彼女はうしろへと飛ばされる。フェイントが多く混ぜられ、動きが全く読めない彼の攻撃に翻弄されるセイバー。

 

「良くかわす。目が良いのではなく勘が良いということか」

 

 本来なら、最初でセイバーを殺している筈なのに粘る彼女を分析する葛木。だれしもがサーヴァントを肉弾戦で圧倒する人間に驚愕する。一切手を緩める気のない彼は、前へと大きく踏み出し蛇の口のように力を込めた右腕の掌をセイバーへと向ける。

 だが、セイバーはその一撃を避けるのではなく、右腕だけで剣を振り払うことで彼の前進を一歩遅らせる。素手相手に戦闘というブレイカーとの戦闘が、背格好の似ている葛木とブレイカーの間合いを見出したからだ。素手相手に距離を詰める行為は、10年前に酷く痛い目を見ている。なら、それに対処すればいいと、戦況の持ち直しに奮闘する。

 

 だが、振り払った剣の腹を葛木も殴りつける事で方向を転換、そのまま複雑な軌道の右手の掌でセイバーの喉を掴み、彼女の体を持ちあげた後、地面に叩きつけ、セガソリンスタンド目掛けて放り投げた。投げられたセイバーは、悶絶し意識を失う。

 

「そんなバカな!?」

「マスターの役割が後方支援と決めつけるのはいいがな、例外は常に存在する。私のように前に出るしか能のないマスターもいるということだ」

 

 セイバーを圧倒するマスターの存在など、誰が認められるだろう。だれしもが絶句し、残った今の結末だけを見つめる事しかできない。

 

「マスター」

「どうした、キャスター」

「セイバーには私が手を下します。あなたは残ったマスターを」

「行け」

 

 キャスターは何か思惑があるのか、セイバーの元へと向かい。葛木は残った士郎と凛に向かって駆け出す。凛は、それに対してガンドの連射で迎え撃つ。

 

「セイバーは面喰ってやられたけど要は近付かれる前に倒せばいいんでしょ!」

 

 凛の魔弾のガトリングが葛木に迫るが、彼は独特のステップで照準や間合いを測り難くし回避、瞬時に接近する。強烈な一撃が凛にヒットする。凛は、ガードするも衝撃を殺せず背後の柵に後頭部を強打、意識を失う。其処で残った士郎が、強化した木刀切り掛るが、士郎の剣では葛木を捉えられず、強化された拳によって粉砕、丸腰になった士郎に何度も強力な打撃を加える葛木。

 

 だが、薄れゆく意識の中で凛の姿を捉えた士郎は、踏ん張って立ち上がる。既に何発も強力な一撃を与えたのに、倒れない士郎を葛木が警戒する。

 

「俺が倒れたら、遠坂が死ぬ! それは駄目だ。

 武器だ…戦うための武器がいる。強い武器が……あいつが持っていたような、強い武器が!!」

 

 この状況を覆す手段、それをイメージした時彼の脳裏に浮かび上がるのは、柳洞寺にてもう一人のセイバーと打ち合っていた白と黒の夫婦剣。アーチャーの持つ干将莫邪の存在だった。そして、何かに導かれるように、己の魔術回路を起動する。

 

「――――投影、開始(トレース、オン)」

 

 何をしようとしているのか理解出来ずとも、する前にし止めようとする殺人鬼。だが、彼の足もとに山の木々の間から、ナイフが投擲され、それを回避するのに一瞬の時間を取られてしまう。

 

 そして、その隙をついてイメージした白と黒の夫婦剣。アーチャーの使う宝具である剣を投影した士郎が、葛木の打撃を二つの剣で迎撃、何度も強化された拳と打ち合い、遂には彼を後ろに引かせる。

 

「っ」 

 

 宝具の剣と打ち合ったせいで、両手の甲から出血する葛木。だが、戦闘には支障がないと無理な投影と動きのせいで、両腕から激痛を感じている士郎に向かう葛木。その瞬間、動けない士郎の代わりに隣の木々の間から、5本のナイフが投擲される。それらを素手で撃ち落とした葛木は、膝をついた士郎ではなく、森に目を向ける。

 そして、森の木々から黒い装束を纏ったアンが大きく跳躍、白い仮面を付けたままナイフを何本も投擲する。

 

「新手か」

『はい』

 

 仮面で顔を隠したアンは、空中で何度もナイフを投擲するが、それらを回避しながら迫る葛木に着地を狙われてしまう。そして、地面に足がついた瞬間、強烈な一撃が頭部を粉砕しようと迫る。しかし、彼女はそれを回避しない。

 

「ん?」

 

 葛木の拳はキャスターによって強化され、英霊にすらダメージを与える。アンは英霊であり直接戦闘が苦手なアサシン。本来なら一撃を受けるだけで即死する。しかし、アンは正規の英霊ではなく水銀の体に魂を写した存在。肉体の定義が、他の英霊とは大きく異なる。それは、顔面を砕かれようとも、その部分の水銀が変形するだけという現象が証明する。

 妙な殴り心地と、破壊した頭部はその部分が抉れるが、中身は水銀だった。水銀の肉体を持つアンは、サーヴァントであった時よりも、遥かに死に難い。殆どの物理攻撃では、彼女を殺す事は不可能に近い。体全て丸ごと吹き飛ばすくらいしなければ、アンは死なないのだ。故に強化されているとはいえ、打撃メインの葛木は、相性が悪い。

 攻撃を受けてもダメージを負わない液体の体を持つアンは、両手両足を刃に変えて葛木に白兵戦を仕掛ける。葛木は何度も致命傷になる攻撃を仕掛けるが液体相手に打撃は効果が薄い。終始攻撃しかしないアンとの相性の悪さを察して、バックステップを繰り返す。

 

「宗一郎様!」

 

 宗一郎が、突然現れたサーヴァントに押されている事に気がついたキャスター。すぐに援護に向かおうとするが、その隙に目覚めたセイバーが剣を振るいながら起き上る。そして、攻撃を受けそうになるキャスターは、空中を高速で飛行しながら、劣勢の宗一郎を掴んで空中に逃げる。

 

 そして、空中から魔力砲を仕掛けようとするキャスターだが、葛木が制止する。セイバーが復帰し、アサシンのサーヴァントまで出てきた事で、形勢は不利と踏んだのだ。

 

「待て、ここまでだ。引くぞキャスター」

 

 空を飛び、遠くまで距離を取った2人は、その場から消える。追跡すら不能なキャスターの移動により、完全に逃げられた一同。

 

「やられた。こうなったら葛木は柳洞寺から降りてこない」

「では凛 キャスターは放っておくと?」

「冗談!キャスターは放っておけない」

「当たり前だ」

 

 凛は、葛木に逃げられた事で余計に状況が悪化した事に気が付く。もう二度と奇襲はさせてもらえない上に、キャスターの工房での戦闘など考えるだけでゾッとする。だが、セカンドオーナーたる彼女はキャスターを放任出来ない。次は決死の覚悟で挑まなければならないのだが、セイバーの目線の先でこちらを見ている仮面の女が今は問題なのだ。

 

「それで、急に出てきたのはどう言う訳、アンジェラさん。いいえ、アサシンさんと言うべきかしら?」

『アルカのお願いだったから、貴方を護って欲しいと言う頼み。ただ、出遅れてしまって、正直出しゃばらない方が正解だったと思う』

 

 黒の装束を消し、普段着に着替えたアンは仮面を外してセイバーや凛、そして士郎と向き合う。

 

「まったく、10年前の英霊が同級生だと思わなかったわ」

『セイバーさんに聞いたみたいだね。うん、隠していてごめんなさい。ただ、言えない訳があったから』

「わかってる。察しは着くわ。それで、アルカのお願いって何よ? 私の暗殺?」

『違う違う。貴方の護衛と情報収集』

 

 今更誤魔化す事も出来ない。なら、正直に話しておこうとアンが話す。凛は、アルカに御守を付けられた事に酷く憤慨するが、彼女がいなければどうなっていたかわからなかった。

 

「そう。じゃ一応お礼は言っておくわ。ーーー助かった。感謝するわ」

『一撃貰う前に助けたかったんだけど、ごめんなさい』

 

 アンとしては葛木の攻撃を受ける前に、助けたかったが彼の動きの分析に時間が掛った。そして、勝算があると踏んだのは、士郎の投影の寸前だった。

 

「バーサーカーやセイバーと戦える英霊に、貴方みたいに気が利いて、暗殺謀殺が可能のアサシンまで……。ほんと腹が立つ」

 

 凛は、明らかに手駒が揃っているアルカに対するライバル心を刺激される。アンは答えようがなく苦笑する。そして、凛が地面を蹴っているとセイバーに肩を借りた士郎が話しかけてくる。

 

「ブレイナー、さっきは助かった」

『どういたしまして。ただ、私はアサシンだから、命令があれば衛宮君も殺す英霊。距離を取っておいた方がいいよ』

 

 感謝故に近づく士郎をアンが制止する。それは至極当然の忠告であり、脅すように指先を鋭い針にして見せ閉める。セイバーは悪意がないため、武装はしないが警戒は解かない。

 

「アサシン、いえアンでしたか」

『はい。10年前は会話はなかったですが、お久しぶりです』

「貴方は、あの後を知ってているのですか? 第四次聖杯戦争の結末を……」

『ごめんなさい。今話す事は出来ません。―――そうだ、衛宮君、今度綾香が尋ねるかもしれないので、その時はセイバーさんに手出しさせないでください』

 

 突然衛宮邸を訪ねたりすれば、サーヴァントを連れる綾香がセイバーに迎撃される可能性が浮上するのだ。予め予告しておけば、セイバーとセイバーの戦闘によるアルカの介入を止められる。

 

「あ、あぁ。わかった。セイバーもいいな?」

「はい。士郎がそう言うのでしたら依存はありません」

 

 面会の約束を取り付けたアンは、そろそろ戻るかと気配遮断スキルを発動して、隠密行動を始める。そして、瞬時に地面を蹴って移動したアンを凛達は追う事も出来なくなった。元々俊敏性の高いアンが、気配遮断しながら走れば、見失ってしまうのだから当然ともいえる。

 

 アンが消えた事で凛は、士郎の葛木に用いた魔術について質問した。それはアーチャーの双剣を投影すると言う、通常ならあり得ない奇跡。追及しなければ、彼女の気が収まらなかった。

 

「それより衛宮くんそれは何? あなたの魔術は強化だけじゃなかったの?」

「いや、そうだけど……始めにできた魔術が投影で」

 

 士郎は、彼の養父である切嗣との鍛錬を思い出していた。そして、記憶に残るのは、彼の前で投影した時の彼の何とも言えない表情だった。

 

「それ、頭に来るくらい聞いてない。じゃあ投影魔術は初めてではないのね?」

「そうなるかな。でも外見は似せられるけど中身は空っぽだったんだ」

 

 だが先程自分が投影したのは紛れもないアーチャーの剣。中身も見事に再現された宝具そのもの。故に士郎自身何故こんな事が出来たのか想像できていない。

 

「だから自分でもさっきのことは驚いて」

「強化より先に投影を習得したってこと?」

「それしかできなかったんだって。切嗣はそれじゃ何の役にも立たないから強化にしろって」

「そうね 私でもきっとそうさせていたわ。でもおかしな話よね」

「遠坂?」

 

 士郎の魔術について、何か思い当たる節のある凛は、自分の中で整理を付けていた。 

 

「帰りましょう」

 

 既に全員が手傷を負っていたため、彼女の判断は正しかった。

 

「士郎!」

「大丈夫だ」

 

 凛の予想通り、体に激痛を感じる士郎をセイバーは、肩を貸す事で如何にか彼をサポートする。キャスターのマスターの正体が判明という成果には見合わない大損害を彼等に与えたのだった。




 毎回思うけど葛木先生の動きはおかしいと思うw 次回は、明後日になる可能性があります。

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