Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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沙条家3

 新都のデパートに車を止めた一向は、携帯ショップで手続きを済ませ待ち時間を利用して、昼食を取っていた。全員外国人の4人組の男女は、外国人の多い街でもかなり目立った。

 周囲の視線を気にしないで、ファーストフード店で食事をするアルカ達。何人かの主婦や女性客がブレイカーやセイバーを見て眼福のご様子。少しコワモテなブレイカーと見るからに王子様タイプのセイバーは、話題が尽き始めていた奥様方の格好の的だった。芸能人の誰に似ているかなど話されているのが綾香達に聞こえた。

 

「どうしたの綾香? 美味しくない?」

「そんな事ないよ」

 

 アルカは、セイバーに対して不満そうな顔をする綾香を気にする。綾香は何もないと否定するが、アルカには既に経験があり今でも起こす感情を芽生えさせた綾香を可愛く感じた。それを彼女はまだ理解していないだろうが、綾香も遂にかと、何処か姉として嬉しい気持ちになるアルカ。

 一つ不満があるとすれば、あれだけ警戒していたと言うのに吊り橋効果などで、堂々と綾香の心を引き付けて離さない相手が騎士王(笑)ということだろう。誠実と言えば誠実だが、綾香の嫉妬の感情を知らずに、偶に眼があった女性達に微笑みかけているのだから、なお始末が悪い。

 一方ブレイカーはと言えば、特に興味はなさそうに外を眺めていた。暫くして、一息ついた時、綾香が手洗いに行くと言って席を立った。だが、ファーストフード店の手洗いは、故障中らしくショッピングモールの物を利用してくれと言われた。

 

「ちょっと遠いけど行ってくるね」

「私も一緒について行こうか?」 

「大丈夫。先に車に戻ってて」

 

 そう言って綾香は、少し離れたショッピングモールの化粧室に向かって、別行動してしまった。

 

ーーーーー

 

「ふぅ、結構遠かったな。早く戻らないと。、あ」

「いって」

 

 用を済ませて、ハンカチで手を拭きながら化粧室から出てきた綾香。思いのほか距離がある位置まで来てしまい、早い所戻らなければとハンカチを仕舞いながら早歩きで動いた時、ドンっと隣の男子トイレから出てきた見るからに柄の悪そうな集団の一人とぶつかってしまう。

  

「ご、ごめんなさい」

「なんだ、外人かと思ったけど日本語上手じゃん。へぇ君結構可愛いね。どう、俺ら今からボーリング行くんだけど一緒にいかね?」

「いいじゃん。丁度女集めようと思ってたし、どうよ?」

「え?」

「俺らの日本語通じてるよな? な、これから一緒に行こうぜ」

 

 5人の柄の悪い男達は、トイレでぶつかった綾香の顔を覗きこむなり、彼女の手を掴んで強引に連れて行こうとする。さすがに抵抗する綾香だが、魔術を一般人相手に使う訳にもいかず、腕力の問題で抵抗が出来ない。聖杯戦争にばかり気を取られていたが、一般人にもこう言う危険があるのだと改めて思い出した。

 しかし、こういう経験のない綾香は、このまま連れて行かれるのは不味いと本能から察するが、パニックになって抵抗できない。

 

「ほら、はやくこいよ」 

「大丈夫俺らとっても親切だから」

 

 ゲラゲラとゲスた笑いで、手を掴んだ綾香を品定めするような目を向ける男達。周囲に助けを求めようにも人通りが少ない位置で、助けてくれる人もいない。途端に不安になる。そして、一人の手の早い男が綾香の体に触れようと下衆な手を伸ばした時。

 

「いてててててて!!!! なんだおま、いててて」

「何すんだよ、ていてててて」

 

 怖くて心細くなった綾香だったが、男の手が綾香に触れる前に彼女を迎えに来たセイバーによって手を伸ばした男の腕がひねられ、綾香の腕を掴んで離さなかった男の腕も万力の様な力で締めあげる。大柄の男2人は、突然現れたセイバー(優男)の腕力に翻弄されるがまま、腕を捻られる。解放された綾香は、セイバーを見て驚く。

 だが、セイバーは男二人を抑え込み、他の三名が警戒している事を良い事に綾香に微笑みかける。それは彼女を安心させる騎士然としたものだった。

 

「遅かったから、何かあったのかと思って来てみたんだが正解だったね。君達、女性を口説くのは自由だが、節度は守った方がいい。後で怖いお姉さん達が来るよ」

「セイバー」

「怖かったね綾香。もう大丈夫、こっちにおいで」

 

「テメェ!」

「ちょうしにのってんじゃねぇぞ!!!」

 

 セイバーは、綾香を安心させると、腕を捻りあげている男達を解放する。解放された男達はふら付きながら、仲間に支えられる。顔は怒りに染まっており、締めあげられた腕を抑えながら吠える。その怒りに仲間達も反応して、メリケンサックやナイフを取り出して2人に向ける。

 綾香は素直に怖がるが、サーヴァントであるセイバーにそんなものはおもちゃと変わりない。

 

「私の居た場所ではそんなものは、別段恐れる事ではないがこの国では、刃物は基本NGだと記憶しているが」

「ウルセェ!」

 

 セイバーの挑発を受けて、大柄の男がメリケンを装着した拳を振るう。しかし、セイバーはそれを完全に見切った上、掌で大柄の男の顎を下から押す。最大限手加減したことで、大柄の男が気を失う程度のダメージで収まる。だが、リーダー格の男が一撃で意識を昏倒させられた事で他のメンバーが警戒を強める。そして次々に迫りくる男達をセイバーは、最低限の動きと力で制圧する。

 しかし、興奮した男の一人がナイフを振り上げながら、セイバーに向かう。大丈夫だと理解していても怖いものは怖い綾香。

 

「刃物を使うと言う事は、それ相応の覚悟はできているんだね?」 

「ッ」

 

 刃物売り降ろそうとした男にセイバーは、殺気を込めた威圧を掛ける。サーヴァントの殺気を正面から受けた男は、興奮も冷めて恐怖で動けなくなる。なるべく怪我はさせたくないセイバーの配慮だったが、それだけでも相手には十分の様だった。

 動けなくなった青年の手からナイフを叩き落したセイバー。その様子に他のメンバーも恐怖し、その場から逃げだす。さすがに仲間意識はあったのか気絶した男を抱えながら情けない声をあげて逃げ出した男達をセイバーはヤレヤレと言った様子で怪我はないかと尋ねる。

 

「大丈夫」

「それはよかった。今の事、愛歌達に報告するかい?」

「やめて。お姉ちゃんが……三面記事飾っちゃう」

 

 もしこんなことを報告したらと思うと、恐怖でしかない綾香。セイバーも起こりうる未来を想像してゾッとする。たとえ戦闘力で勝ろうとも、女性の恐怖という物は拭いきれるものではないのだ。

 

「早く帰ろうか」

「うん。心配するしね」

 

 2人の主従の息はぴったりだった。

 




 綾香が出るとどうしても乙女ゲーみたいな展開になってしまいますね。

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