Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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 明日は、投稿出来たらしようと思ってます。


沙条家

「……もう、朝か」

 

 深層心理の住人と対面していたため、あまり眠った気がしないアルカ。彼女は、自分の服が昨日のままだと気が付き、シャワーを浴びようと風呂場へと向かう。既に目覚めているアンが朝食の支度をしており、本日は和食だった。

 セイバーとブレイカーの姿は見えないが、直にリビングに現れるだろう。

 

「おはようアン」

『おはようアルカ。ご飯はもう少ししたら出来るから……って何処行くの?』

「……ん。シャワー」

『ちょ、今お風呂には……』

 

 朝の挨拶を済ませたアルカは、眠たそうな顔のまま風呂場へ直行する。それを見たアンが止めようとするが、料理中で卵焼きを焼いているため手が離せない。そして、アンの忠告を寝惚けたままスルーしたアルカは、洗面所で来ていた衣服や下着を洗濯機に放り込む。

 そして、一糸纏うことなく女性らしい肢体を朝日に晒しながら風呂場へと入る。そして、シャワーノズルを掴むと、レバーを倒す。そうすると最初に冷水が寝惚けた体に刺激を与え、目を覚まさせる。そして徐々に暖かくなっていく流水を浴びながら、腰まである長い金髪に湯を通していく。

 

「はぁ」

「お姉ちゃん……」

「……え?」

 

 視線を横の湯船に向けると、眼鏡を外し髪をまとめた綾香が入浴していた。実は綾香も昨日疲れたまま眠ってしまい、目覚めると同時に風呂場に直行したのだ。姉に合わせる顔がなく、どう言った話で切り出せばいいか熱い風呂に入りながら考えていると。突然、全裸の姉が浴室に入ってきてシャワーを浴び始めたのだ。

 

(やっぱりお姉ちゃんは美人だよね。それにあの胸……本当に私の一個上なの? でも、私も小さくはない筈)

 

 目の前でシャワーを浴びる姉の姿は、妹の綾香からしても幻想的だった。それだけ魅惑的な容姿をしている姉の姿に見とれてしまい、声を掛けるのが遅れてしまう。そしてシャワーを一度止め、身体にしっとりとした金色の髪が貼りつき、透明感の高い体を撫でる姉の一部を見て自分と比べてしまう。

 昨日セイバーとランサーの言われたせいで、変に意識してしまった。そして、何事も無く体を洗おうとする姉に声を掛けたのだ。

 

「綾香、なんでお風呂に?」

「私が先に入ってたの……入る?」

 

 一切隠さずに、自分と対峙する姉。何の覚悟もしてない状況で姉と向かいあう形になり戸惑う綾香だったが、シャワーを軽く浴びただけの姉が寒そうに自分の体を抱いており、湯船に入るかと勧める。この家の湯船は、ブレイカーの趣味で檜の浴槽となっており、大柄な彼でも楽に入れるように大きな浴槽となっているのだ。

 とりあえず、風邪をひかれても問題なので姉に勧める綾香。

 

「……うーん」

「そっか、お姉ちゃん湯船が嫌いだっけ」 

 

 入る事に悩む姉の姿に、綾香は姉の苦手な物を思い出した。それは、浴槽などの狭い空間での水だった。海などは平気だが、どうしても一人ではお風呂にも入れなかった。小学生の時など、風呂場に姉一人残してしまった事があり、しばらくたっても出てこない姉の姿を見にいけば、湯船で泣き続けていたのだ。

 理由を問えば、一人になった途端、カプセルに閉じ込められ体が動かなくなってどうやっても出られない、閉じ込められたと泣き続ける。ブレイカーとウェイバーの推測では、過去の記憶がトラウマになっていると告げ、一人での入浴は危険としてアンか綾香が付き添うことになった。

 今では、アンが用事の場合は、シャワーで済ませていたのだ。

 

「いい、入る。けど、私が先に出る」

「それはわかってるよ。どうぞ、というか髪の毛」

 

 恐る恐る湯船に脚を付ける姉。だが、紙の毛がそのままでは湯船で広がってしまう。その指摘を受けて、アルカは自分の髪をまとめ、タオルを頭に巻く。そして、2人して入浴した姉妹。

 

「……」

「……(気不味い)」

 

 暖かい湯船に浸かりながら、会話を切り出せない2人。ちゅぷんと互いが体を動かす音が湯船に響く。このまま会話を切りださなければ、絶対後悔すると思った綾香が先に話しかけた。

 

「あ、お姉ちゃん。昨日は……(逃げちゃダメ)ごめんなさい」

 

 姉の七色の目に向きあって、謝る綾香。まさか先に綾香から謝ってくると思っていなかったアルカが、呆けた後、「私も、ごめんなさい。酷い事言ったし、酷い事した」と謝る。

 

「お姉ちゃんは私の事考えてくれてたのに、勝手な事して。それに、私の方が酷い事言った。私の言った事もした事も絶対に許されない事だった」

「……私も同じ。綾香の気持ちを無視してた……キチンと話し合うことが大切だった、ごめんね綾香」

 

 湯船で泣きそうになる綾香の頬を撫でながら、アルカも落ち着いた表情で宥める。アルカも、昨日はやり過ぎたと感じていた。そして、綾香の心を考慮していなかったと知った。完璧な作戦を立てたつもりで、何も理解していなかった。

 少なくともウェイバーは、アルカの体だけでなく心も護ろうとしてくれたのに、自分は目先の事だけを気にしていた。自分は、やっぱり何処か抜けているなと綾香をハグする。

 

「キャ!! お姉ちゃん! ちょっと急にどうしたの?」

「……ん。スキンシップ」  

 

 互いに服も着ないでハグすれば、それは胸と胸がつぶれる。特に大きいアルカと平均の綾香が抱き合えば、綾香が少し苦しい目にあう。同姓なのに恥ずかしくなる綾香だが、少しすれば慣れてくる。むしろ、非常にリラックスした姉の顔を久々に見たと、しばらくそのままにさせておこうかと考えた。

 だが、その静寂は破られたのだった。

 

「綾香! 今の悲鳴はなんだグッ!」

 

 突然風呂場の扉を開いたのは、セイバーだった。綾香の悲鳴を聞いた彼は、最悪のタイミングで現れてしまった。当然風呂場には抱き合う二人の姉妹。服を着ていない2人の肢体を見てしまったセイバーは、すぐに視線を外すも今までで最高速度で動いたアルカの肘討ちを受けて、身体がくの字に曲がる。

 魔力による強化された体術は、セイバーにも有効打であり一瞬の隙を作る。その隙を利用して、洗面所に辿り着いた水銀の触手がセイバーの体を拘束して居間へと引き摺って行った。 

 

 

ーーーーーー

 

 その後、風呂を上がった2人の姉妹に見下ろされているセイバー。大変申し訳ない事をしたと、反省し正座だが両手両足をアンの水銀で捕獲されている姿が間抜けだ。見た目が美男子で性格も理想の王子様的なのに、何処かずれている彼は、現在命の危機にあった。

 

「大変申し訳ありませんでした。綾香の悲鳴を聞いていても立ってもいられなく」

「……ギルティ」

『サクッとやっちゃおう』

 

 本来ストッパーの筈のアンも、完全に敵勢に周りブレイカーも援護すらできない。唯一の希望を綾香に託し彼女に縋りたいセイバー。騎士王たる彼が、女性の風呂場を覗いた上で殺されるなど、死んでも死にきれない。アルカだけならまだしも、アンは英霊。本気で殺されかねないのだ。

 

「待ってお姉ちゃん」

「あやか」

 

 アルカとアンを止める綾香。やはり綾香らわかってくれるんだねと感じたセイバー。しかし、眼鏡を掛けた彼女の目は、怒りに染まっていた。

 

「セイバーが死んだら、私も死んじゃうから、別の方法で」

「綾香!?」

 

 神はいなかった。綾香は、無慈悲な結末をセイバーへ与える。 

 

「そうね。安心して綾香、拷問は得意」

『ふふ、私も特技の一つにあります』

「じゃ、しっかり反省してねセイバー」

「なんていうか、強く生きろ」

 

「え、本当に? 嘘だよね綾香」

 

 この日この時、セイバーの中で女性に対する危険の認識度が大きく上がったのだった。

 

 





 

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