Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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衛宮・遠坂陣営

 アルカと綾香の喧嘩している時間帯。学校内でキャスターのマスターを捜索していたが見つけられなかった衛宮士郎と遠坂凛。凛の提案で、衛宮亭にて情報整理をする事となった。

 

 ただ衛宮家には、保護者である藤村大河が訪れるため、彼女が帰宅した頃を見計らっての訪問となった。そして、居間でセイバーと凛と士郎が向かい合っていた。アーチャーは、屋根の上で見張りを務めると言っていたが、聞き耳は立てている様子。

 

 

「それじゃ、定期報告始めましょうか」

「そうだな」

「えぇ。では、何から?」

 

 全員にお茶を用意し、話し合いを始める遠坂凛達。彼女達も現在の状況には、混乱していると言える。

 

「まずは、そうね。今回の参加者についてかしら」

「それについては、私も知っている事があります」

「貴方以前も召喚されたんだったわね。たぶん、私の知っている情報と重なる筈よセイバー」

 

 女性陣の話し合いに士郎は置いていかれ気味になっていた。そんな彼の顔を見た凛が「ちゃんと話に混ぜてあげるわよ」と彼にも分かる説明を始めた。

 

「今のところ確認されているのは、柳洞寺のアサシンとキャスター。そして学校に現れ衛宮君を殺そうとしたランサー、そして慎二のライダー。ライダーの方は消滅しちゃっただろうから脱落と見てるわ」

「後、イリヤのバーサーカーだ」

「それ以外にも、私と同じセイバーと呼ばれたサーヴァントもですね」

 

 士郎とセイバーも思い当るサーヴァントをあげて行く。特にセイバーが気にしていたのは同じクラスで呼ばれる、同じ剣を持った英霊の存在。それに関しては凛も仕方ないと納得している。

 

「男のセイバーか」

「あのサーヴァントの正体、わかってるのセイバー?」

「恐らく、私と同じ起源を辿る英霊ではないかと」

「同じ宝具を持つ英霊か。能力も同じ?」

 

凛の質問にセイバーは、校庭で戦った騎士の姿を思い浮かべる。

 

「能力は、わかりません。ですが剣技に関しては彼方に譲ります」

「綾香さんの方もセイバーか……羨ましい。何で私は召喚できなかったのよ」

 

最優のサーヴァントを士郎と綾香が召喚している事がショックに他ならない。だがサーヴァントの数で思い出した凛は、以前新都で愛歌が使役していたサーヴァントを思い出した。

 

 

「実は、もう一人いるのよ」

「まだいるのか? 既に8人だぞ」

「そうね。正直私も理解が追いついてないのよ。ただ、私達と停戦している沙条姉妹は、謎が多いのよ」

 

 凛はお茶を飲みながら、沙条姉妹について考える。10年間お付き合いがあるけれど、魔術師なのは姉の方だけだと思っていた凛。実際は両者共に魔術師でマスターだった。欺かれていたと彼女に怒りを覚えたが、衛宮士郎の例もあるため、元々愛歌がマスターで綾香の方が偶然と言う可能性もある。

 

「もう一人は、戦った事はないんだけど灰色の外套を着た不思議な姿の英霊だった。クラスはブレイカーと呼ばれて居たわ」

 

 凛がそう話した時、セイバーが非常に驚いた顔をする。

 

「ブレイカー? あの日焼けした肌に黒髪赤目の?」

「そ、そうよ。戦ったことあるの?」

 

 机に乗り上げるように詰め寄ったセイバーに、凛は少し気圧される。彼女が此処までリアクションを取ると思っていなかったからだ。

 其処でようやく自分が取り乱した事に気が付いたセイバーが恥ずかしそうに座り直す。

 

「遠坂。ブレイカーってクラスなんか聞いた事ないんだけど」

「私も初めて聞いたわ。エクストラクラスに当るんじゃないかしら。ブレイカー、ブレイク(破壊)、何かを破壊する事に特化した英霊って事じゃないかしら」

「そんなのもいるのか」

「中々強敵ぽいのよ。アーチャーも警戒してたし、バーサーカーとやり合って生き残ってるんだもん」

 

 士郎はバーサーカーの強さを思い出し、それと争って生きている時点で英雄としては格は高い方だと理解する。2人でも倒せない英霊相手に生き残るとは、それだけ強さを兼ね備えていると言うこと。

 

「ブレイカーのサーヴァントは、以前の聖杯戦争にも参加していました」

「嘘」

「本当なのか?」

 

 イレギュラーのサーヴァントが二度も聖杯戦争に参加しているのかと凛と士郎は驚く。

 

「彼は、ウェイバーと言う青年と彼に連れられて戦場に出ていた幼子と契約していました。彼女の名前は、アルカ・ベルベットと名乗っていました」

「ベルベット……時計塔のロード・エルメロイ二世ね。初代が愛歌の後見人だとは知ってた」

「アルカって、沙条の事なのか?」

「えぇ。愛歌は倫敦にある魔術協会の重要人物の義妹なの。綾香さんの方は知らないけれど、あの子がアルカ・ベルベットと倫敦で名乗っているのは知ってる。

 衛宮君も覚えておきなさい、沙条愛歌は魔術協会で魔術師狩りと呼ばれる手練。認めたくないけど、魔術師相手の戦闘じゃ私よりも優れてるの」

 

 幼少のアルカを知るセイバーは、聖杯戦争の時。聖杯の前に現れた彼女ごと聖杯に真名解放を行った。それによりあやめてしまったと思い込んでいた。敵でありながらも誰よりも純粋に生きていた彼女を殺した事を悔やんでいた。だが、彼女は生きて成長し、再び自分達の前に敵として立って居たのだ。そして、彼女と行動していた少女は、あの時のアサシンだと断言できる。

 

「以前の聖杯戦争でブレイカーと名乗る英霊は、その戦闘力と特異性から戦況を常に優位に進めていました。それも他の全陣営が彼等を警戒し、返り討ちにあう程に」

「そう。やっぱり愛歌は、昔からそうなのね」

「一度だけ、ブレイカーとは手合わせした事がありますが、彼の強さは本物です」

 

 何か種があるのではなく、純粋にブレイカーと言う英霊は強い。それは一度敗北しかけたセイバーが一番よくわかっている。今度は負けるつもりはないが、楽には勝てない相手だろうことは必須。

 

「同じ英霊を召喚したってわけね。真名はわかってるの?」

「いいえ。前回は知ることはできませんでした」

「凄いんだな。沙条もサーヴァントも」

 

 セイバーと凛の両者が評価する相手。それが同じ学園に通い、身体が弱いと言われていた同級生なのだからイメージが湧かない。ただ、学校での戦闘を思い出せば、嘘ではないのが分かる。

 

「あの沙条愛歌の傍にいた女性は?」

「……アンジェラ・ブレイナーさん。彼女は愛歌と組んでる魔術師だと思ってたんだけど」

「ブレイナーか。何度か話したことあるけど、魔術師だなんて思わなかった」

 

 凛と士郎が別々の感想を口に出す。士郎自体は、人当たりのいいブレンナーとは多少交流があった。何故か愛歌の方には嫌われていて、挨拶すらほとんどしたことがない。

 

「アンジェラ……彼女は以前の聖杯戦争で、アサシンとして召喚されていました」

「ブッ、ゲホゲホ」

「やっぱりね」

 

 衝撃の発言に士郎がお茶を吹いてむせる。しかし、凛はアンジェラの特異性を知っていたため納得がいった。しかし、逆に疑問が生まれてしまう。

 

「彼女は、アサシンとして10年前の聖杯戦争に参戦。私達の敵でした。その当時のアサシンはかなり異質で、複数体に分裂する能力を有し、その中の一つが彼女でした」

「多重人格の英霊ね。お父様の資料にあったわ」

「彼女は戦闘向けではなく、アルカと呼ばれていた沙条愛歌と行動を共にしていました。そして、ライダーとの戦闘で消滅しました」

 

 昔を思い出しながら話すセイバーだが、凛は消滅したサーヴァントが何故10年前から学校に通っているのか解らない。凛の表情で察したセイバーが語り続ける。

 

「ですが、当時の彼女は特異な能力を用いて、消滅したアサシンの魂の一部を自分の礼装に憑依召喚させていました。私はその光景を見ていたので断言できますが、アンと呼ばれる彼女は疑似的に受肉した英霊です」

「受肉した英霊……ね。アイツ、1個くらいルール守りなさいよ、もう」

 

英霊二人を従え、さらに姉妹で陣営を築く。そしてブレイカーというエクストラクラスと契約、自身は霊体化できる。加えて魔術師狩りと呼ばれる技量と同盟相手が最優のサーヴァント。

 

「私が知っているのは此くらいです」

「ありがとうセイバー」

「やっぱ沙条と戦うのは不味くないか?」

 

戦力的にも気持ち的にも、彼女達は悪事を働いていないし、協力すらしてくれている。此処は仲間になって貰えないか頼むべきだと言う士郎。

 

「それは衛宮君、私にアイツに降参しろって言うのかしら?」

「そういう訳じゃ……、はい」

 

威圧され何も言えない士郎。

 

「アイツとは、絶対決着つけるんだから。けど先にキャスターよね」

「だな。はやくマスターを見つけて、町の人から魔力の抽出を止めさせないと」

 

一通り情報整理が終わった事で、明日再び調査を開始することとなった凛達。彼らはまだ冬木の聖杯戦争で蠢く悪意を知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回は原作メンバーの登場ですね。気がついたらかなり影が薄くなっていました。

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