Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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 ちょっとバイトが忙しすぎて投稿が不安定になりそうです。


星の聖剣

「行くぞ騎英の手綱(ベルレフォーン)!!!」

「突き穿つ死翔の槍(ゲイ、ボルク)!!!!」

 

魔力の城塞となった天馬と幾重にも分裂した炸裂弾となった槍。それらが、空中で衝突する。ランサ―自身、時間稼ぎなど言うつもりは皆無で仕留めるつもりではなった一撃。それは、急降下していたライダーの宝具とぶつかり、互いの存在を否定しようと魔力の衝撃が発生する。

 必死に前進しようとする天馬に対して、その魔力の殻を貫いて天馬五と従者を貫かんとする。バチバチ互いの魔力が干渉しては弾かれ、両者が熾烈な争いをする。

 

「くそ、俺で仕留めるつもりだったが、もう一回必要か」

「十分だ」

 

 自身はあった己の一撃、しかしそれを正面から太刀打ちして、打ち負かそうとする存在が居た。次第に勢いを無くした槍。それを良い事に勢いが増した天馬の流星が、槍を弾き飛ばし、槍が持ち主の元に戻るよりも早く、ライダーの攻撃がセイバーとランサーに向かってくる。

 このまま直撃を受ければ、消滅するのは必然。唯一の切り札は、ランサーが稼いだ時間に発動可能になったセイバーの宝具である。

 

(拘束は3つ。だが、問題はない)

「約束された(エクス)」

 

 セイバーが、剣を上に振り上げる。そして彼の魔力と周囲の魔力を光へと変換していく聖剣。

 

「勝利の剣(カリバー)!!!!」

 

十分に魔力の充填が整った聖剣を、セイバーは此方に向かうライダー目掛けて下から上に斬りあげる。その瞬間、騎士王である由縁、人々の願いが作りだした神創兵器から、光の斬撃が放たれた。質量を持った光の奔流は、天に向かって伸びながら、ライダーと天馬を巻きこもうとする。

 ランサーは、相手の正体を真名解放によって理解し、その威力に素直な賞賛を抱く。騎士王に相応しい威力の宝具だと天に延びる光を見つめる。

 当然斬撃を向けられたライダーも光の奔流にのまれれば、ただでは済まない故に方向転換で避けようとする。

 

「何?」

 

 しかし、直前の回避を行うことはできなかった。何故なら天馬の前足が、酷く傷つき急激な方向転換を妨げていた。それは、ランサーの突き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)を受け止めた際に、追わされた痛手だった。直進には支障がなくとも、回避には大きな支障となって牙を剥いたのだ。

 回避も出来ず、眼前に迫る光の奔流。絶体絶命となり、慎二の距離が離れている事を知ったペルセウスは透明のマントを回収。すぐに青銅の盾を取り出す。

 

 盾を構えた瞬間、ペガサスの前方に魔力の盾が形成される。その盾は、鏡となっており光となったセイバーの斬撃を受け止めながらも乱反射させ、威力を減退させる。その効力にセイバーは驚くが、やっている本人は必死だった。

 

(く、アテナの盾でも防ぎきれない)

 

 騎英の手綱と青銅の盾の両方を持ってしても、セイバーの真名解放した聖剣の一撃を防ぎきれない。次第に、前面に展開したアテナの盾が崩れ始める。

 

 もう限界かと思われた時、念話で慎二の声が聞こえた。

 

【令呪を使って命ずる! 今すぐに僕の所に来いライダー!】

 

 その令呪が発動されると同時に、ライダーは空間を飛び越えて慎二の元に瞬間移動する。そのタイミングが際どかったため、ライダーと天馬は少し傷を負うも、無事だった。そして、ライダーが瞬間移動した事で阻む障害の無くなった聖剣の一撃は、森を負う結界そのものを粉々に砕き、消滅する。

 

「助かったよ慎二。今のは本当に」

「油断するなよライダー。まぁよくやったよ、アルト様が面白いものが見えれるから帰って来いってさ。けど、次は仕留めろよ?」

 

 窮地を救われたペルセウスが、慎二に礼を言えば彼も満更ではなさそうに今日は引き上げると告げる。すでにランサーは捜索のルーンは解除してしまったため、ペガサスに跨って移動する彼等を追うことは不可能。

 

慎二の采配に従うライダーは、ランサーたちに追われる前に、天馬で移動する。結界やライダーの真名解放で慎二も魔力消費は激しい。慎二は気が付いていない様子だが、顔色が悪くなっていた。

 

「わかった。次には仕留めよう」

 

すぐに飛び上がり、離脱したライダー達。アルトと言う存在を崇拝すらしていそうなマスターを案じるが、今は何も言うないと決める。

 

ーーーーーー

 

聖剣の一撃を撃ちきったセイバーと手元に戻ってきたを掴んだランサー。二人は空中で消失したライダーの気配を感じていた。

 

「仕留めたか?」

「手応えがない。……令呪に拠るよる退避かもしれない」

 

ランサーは、ある意味正しい令呪の使い方だと評価した。お陰で此方の手の内は全て見せたと言うのに、仕留めきれず対策を練られるのだから。状況でいえば、相手の真名に対して二名の真名がばれたのだから、痛手である。とはえい、協力関係は今回限りなのだから、3つの陣営でいえば痛み分けと言うところだろう。

 セイバーが念話で安全を伝えると、綾香が森の影から現れる。その手には、ランサーの透過のルーンが刻まれており、彼女が姿を現さない限り隠れていられる代物だった。それを解除して現れた綾香は、セイバー(アルトリウス)への魔力供給から魔術回路が開き、七色の魔眼を目に宿していた。

 

 セイバーの元に歩み寄ろうとした綾香だが、魔力の消費が激しすぎてふら付く。それをすかさず支えに入ったセイバー。

 

「綾香、すまない」

「ううん。助けてくれてありがとうセイバー。それに、ランサーさん」

 

 数時間前も姉と激しい魔術戦を繰り広げた綾香に、真名解放は心底堪えたようだ。明らかに覇気のない綾香だったが、支えられながらも自分の足で立つ。そして、一度殺されかけた相手でも、今回は本当に命を救ってくれた。

 礼を素直に言われると思っていなかったランサーは、きょとんとするも満更でもないらしい。

 

「おう。今度会ったら敵同士ではあるが、お前らの事は割と好印象だったぜ」

「あぁ。刃を交えるなら手加減は一切無用で斬り伏せよう、クランの猟犬」

「そうだな、そうして貰えるとありがてぇよ騎士王」

 

 今回の共闘は悪くなかったと言い残し、ランサーが霊体化して消える。襲われた時は、恐ろしかったのに今回に限っては本当に頼もしい男だと綾香は感じた。セイバーも彼と戦うことになれば、死力を尽くさねばならない相手だと再認識した。だが、それと同じくらい感謝もしていた。

 そして、次に誰かが攻めてくる前に車へと乗り込もうとした時。セイバーはある事に気が付く。 

 

「綾香。君、髪の色が」

「どうしたの? あれ」

 

 急にどうしたのかと尋ねた綾香だが、セイバーが綾香の髪に手をのぼし、彼女の前に向ける。それを見た綾香は、自分の髪の一部が金髪になっている事に驚く。慌てて車のミラーで自分を見れば、全体の1割程の髪が、姉と同じ金色へと変色していた。

 そして、少しづつ姉の七色の瞳が自分の目に沈着している事に気が付く。

 

「目の色も、少しだけど変わってる? なんかドンドンお姉ちゃんに似ていってない?」

「何が起こっているのかわからないが、愛歌達に相談するべきだね」

 

 フロントガラスが砕けていても、車自体にダメージはないためエンジンが掛り始める。そして後部座席で疲れから眠った綾香の様子を見ながら、起こさないように安全運転で夜の冬木を走る。

 

 

ーーーー

 

 しばらく夜道を走った後、家へと辿り着いたセイバー。駐車場に車を停車し眠る綾香を起こそうとした時。綾香の髪が元の黒に戻っている事に気が付いた。

 

(どうなっているんだ?)

 

「帰ったか」

「あぁ」

 

 眠る綾香を起こさないように抱き上げたセイバーにブレイカーが声を掛ける。どうせだからと、喧嘩した相手である愛歌の様子を尋ねる。

 

「一時間くらい泣き続けてたぞ。その後、疲れて熟睡してる。ただ、こいつは結構引き摺るから、覚悟はしとけ。魔力全開のマスターが怒り心頭だからな。アンはマスターの御守」

「恐ろしいね。……ブレイカー、少し話がある」

「そっちも何かあったか。……おい、フロントガラス割れてるんだが、これの話か?」

「それもあるけど、綾香の体の事だ」

 

 真剣な眼差しで訴えかけるセイバーに、愛車の事は置いておこうと決める。

 

-----

 綾香を彼女のベッドに眠らせる。そして、リビングの椅子に腰かけた2人。ブレイカーの手には、ビール感が握られており、セイバーもそれを飲んでいた。ただアルコールが入っても一切問題のない2人は、酒には異常に強い様子。

 そして、セイバーは先程のライダーとの戦闘、ランサーとの共闘、綾香の体の変化を順に教えた。

 

「それは本当なのか?」

「ハッキリとこの目で見た。綾香の目が七色に変わるたびに、綾香の体が変質している」

「マスターの性質を考えると、良い傾向じゃないな。すぐにどうって訳じゃないが、綾香には目を使わないように言っておくか。恐らく何度も行使すれば、綾香はマスターと同じ存在になる」

「人間同士でそんな事が起こるのかい?」

「マスターは、純粋の人間じゃないからな。霊体化できるマスターは、半分人外の血が入ってる。その血が魔眼を通して綾香の体を作り変えているんだろう」

 

 ブレイカーは、テレビを見ながら6年前、倫敦で調べたアルカの正体について考察していた。本当の両親がどんな人だったかを知りたいと言う彼女の願いをウェイバーが持てる権力を行使して調べ上げ、少しだけ見つけた手掛かり。

 封印指定にされた人間の素性を探すと言う危ない橋を渡る行為で手に入れたのは、アルカの名字だった。その名字を告げれば、アルカは首を振りながら否定し二度とその話題には触れなかった。だが、彼女の名字『ティターニア』でアルカの血筋はたどれた。

 

 330年前に10代まで続いた妖精魔術の家系。妖精と契約し、その血に妖精の遺伝子を持って生れてくる女系の家系。産まれてくる人間は全員、女であり類稀な魔術回路と魔眼を持っているという。だが、その家は突如として歴史から消えた。魔術協会の封印指定にアルカが居た事を考えれば、協会の執行者が彼等を捕獲した可能性が高い。それでも資料が一切残らず歴史から消滅した一家と言うのが謎だった。

 

 そして、妖精とは星の意志とは関係無く、自然現象が自我を持った、星の触覚と言われる存在。今では殆ど存在しない血を引くアルカの魔眼を数年前に移植された綾香。元々人間である彼女だが、影響力の強い妖精の部分が彼女の体を作り変えて行く。産まれる時から妖精と人間の共生するアルカと違い、元々人間の綾香が妖精化した場合、この世から消滅する可能性もある。

 

「全部は明日になってからだ。それにしても、冬木の聖杯戦争はどうなってるんだろうな」

「さぁ、全くもってわからない」

 

 

 

 

 

 





 

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