Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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ついについにアニメ一話に追い付いた。ちょっとだけ展開に変化が起こってます。


英霊召喚

冬木についてから2日目の夜。それまでの間は、マッケンジー夫妻と交流を深めながら、ウェイバーは召喚の儀式に使う鶏の準備などを整えていた。正直、アルカがマッケンジー夫妻の目を釘つけにしてくれたお陰で動きやすかったのは嬉しい誤算だった。

孫には、こうも人は甘くなるのだと知ったウェイバーは、可愛がり方に呆れながらも微笑ましいものを見ていた。

そして居心地の良い家で過ごす事2日、ついに変化が起こった。ベッドの上で自分の手の甲を見つめながら笑うウェイバー。

 

「ふふ、僕にも宿ったぞ令呪が、僕は聖杯に選ばれた、聖杯が僕の才能を認めてくれたんだ!」

 

彼は聖杯戦争の参加資格を得たことで、今までで一番興奮していた。

 

「そうだ、こうしちゃいられないサーヴァント召喚の準備をしなくちゃ」

 

参加資格を得た今、サーヴァントを召喚することが最優先となり、ウェイバーは家を出た。アルカがマッケンジー夫妻のお世話になっている間、必要なものの場所は調べあげていた。

触媒はケイネスから奪った聖遺物があるため、後は召喚陣の作製と召喚場所だった。その両方を手に入れる手はずは整っており、夜中なのでこっそり家を出る。徒歩で1時間程した場所にある養鶏所にたどり着いたウェイバー。

 

「アルカの奴、記憶は戻らないけど結構役に立つじゃないか」

 

養鶏所から3羽の鶏を盗み出す。若干の罪悪感はあるが、聖杯戦争が終わったら弁償すれば良いと考えていた。

そして彼がこの場所に用意に忍び込めたのは、冬木の探索をしていた際に地理を全て彼女が記憶していたからだ。物覚えが良すぎるアルカは、マッケンジー夫妻から買ってもらった日本語の絵本をすでに読めるようになっていた。さらにはテレビからも言語や情報を取り込み、ウェイバーより日本に馴染んでいた。

 

「よし、本来なら今日喚びたい所だけど、日も登りかけてるし、明日の深夜にいよいよ召喚だ」

 

明日の予定を定めた彼は、袋に詰め込んだ鶏を担いで、拠点であるマッケンジー夫妻宅へと帰っていった。

その様子を電信柱のてっぺんに立って見下ろす視線があった。それは全身黒に包まれ、白いドクロのような仮面と両手に鍵爪をつけた存在だった。その身に纏う魔力は、人間のものとは遥かに次元を違ったものだった。気配こそ、周囲の人間や動物すら気が付かない程薄いが、それこそがウェイバーを監視していた暗殺者(アサシン)のサーヴァントであった。

 

「怪しげなものが居ると思い、出向いてみればこの地に訪れたマスターであったか」

 

アサシンは、自らの主と連絡を取らねばと考えた。マスターだけの見るからにひ弱そうな青年であれば死んだことにすら気付かせずに、始末できる。しかし、アサシンのマスターである聖堂教会の人間である言峰綺礼は、御三家の一つ、冬木のセカンドオーナーたる遠坂時臣と同盟を結んでいた。

彼に命じられたのは、冬木でのマスターやサーヴァントの情報収集である。アサシンのマスターは、戦略を同盟相手に委託しているために、勝手な行動はとれない。

しかし、主と念話を試みるもノイズが入って成功しない。

 

 

「念話ができぬだと?」

「だろうな」

「何奴!? ぐあ」

 

アサシンのサーヴァントである彼は、誰よりも暗殺という面においてプロである。気配遮断スキルを持ちサーヴァントですら彼を見つけることは困難だ。そして、殺されない技術にも特化していたアサシンだからこそ、その油断を突かれた。

声の方向に振り返ったとき、赤い二つの光と灰色の影が目に映った。

それがアサシンが見た最後の光景であった。

 

「悪いな。マスターからウェイバーを守れと命令されたんだ。ウェイバーの情報を他のマスターに流すには早すぎるから始末させてもらった」

 

物言わぬアサシンの首に話し掛けるのは、アルカが時計塔で偶然召喚したサーヴァントだった。彼は気配遮断スキルを持つアサシンを嗅覚で見つけ、アルカに製作した気配遮断礼装よりも強力な礼装を身につけ背後に回った。

ウェイバーをアサシンが見つけるより早くサーヴァントの臭いを察知した彼は、念話を妨害する効果を電線に付与して簡易的で念話だけを封じる結界を作り上げた。後はウェイバーの情報をマスターに送る隙をついて、同じ英霊であるアサシンの首をもぎ取り、心臓を手刀で貫いた。必殺の攻撃を受けたアサシンは、現界を保てなくなって消滅する。

 

素手だけで英霊であるアサシンを討ち取った彼は、周囲の臭いや気配を探りつつウェイバーから距離をとる。

 

(今サーヴァントが何人いるかわからんが少なくとも、ウェイバーへの関心を遠ざけなきゃな)

 

架空の敵を想定し、ひとまず逃げることに決めたアルカのサーヴァントは、一時間前の事を思い出す。

 

-------

 

マッケンジー夫人と同じベッドで眠る彼女は、ウェイバーが外に出た事を知ると追いかけようとした。

「まてまて、不用意に出歩くなマスター」

「あ……」

 

可愛らしいキャラクターがプリントされたパジャマで外に出ようとするアルカを実体化したサーヴァントが玄関で止める。

久しぶりに見たサーヴァントの姿に首をかしげるアルカ。

 

「お前、俺の事忘れてただろ?」

「ん」

「自分のサーヴァントの事忘れるマスターってお前くらいだと思うわ。外的要因なしに素で忘れてたな」

「ウェイバー……おそと」

 

アルカは、自らのサーヴァントに対して退いてほしい旨を伝える。しかし、サーヴァントは首を横に振り命令を拒否する。

 

「お前の足じゃ夜が明けても兄ちゃんには追い付かないから、やめとけ」

「……わかった」

「素直すぎるな……言いくるめられるというか、自己意識が気薄なのかね」

 

どうにも『自分』を持たずに人形のような反応を示すマスターにサーヴァントも困る。これでは、使い魔の方が自我を持っている気がする。

 

「……よろしくお願いします」

「あ、俺に行けと? 了解したよマスター。けど頭地面につけるな、下手に出すぎだ」

 

駄目だと言われ、ウェイバーによく自分でも考えて行動するんだと叱られたアルカ。ダメなら別の方法という応用の機能を取り戻し、サーヴァントに命令する。

命令という割には、頭を下げて謝罪のような態度であり、へりくだりすぎていた。

テレビドラマで見た人にものを頼む態度と主人公に犯人が強要した土下座を実行したが起こされる。

 

「お前は寝てろ。マッケンジー夫人が心配する」

「ぎょい?」

「うん、お前テレビ禁止な」

 

今度は執事もののテレビの影響を受けていたアルカ。サーヴァントに対する間違った対応にテレビを禁止を決定した。これではサーヴァントとマスターがあべこべである。

寝室に戻ったアルカを見届け、ウェイバーを追った末にアサシンを見つけたのだった。

 

-------彼の苦労も始まったばかりだったのだ。

 

無事にウェイバーが家に帰り、アルカのサーヴァントも特に変化を感じずに霊体化して帰還した。

その頃、冬木のセカンドオーナーである遠坂家当主、遠坂時臣が拠点とする遠坂邸では。

 

(ならば問わねばならない、何を求めて戦い、その果てに何を得たのかを…)

 

遠坂家当主であり魔術の師である遠坂時臣と、聖杯戦争の参加者について話し合ったのち、衛宮切嗣という男に並みならぬ経歴や生き方に自らの問いの手掛かりを見つけた言峰綺礼。

今日は寝室に向かおうかとしたとき、彼の背後に黒尽くめに白い仮面をつけたサーヴァントが現れた。

 

「綺礼殿、お伝えしたいことが」

「なんだアサシン。私は周囲の見回りを命じたはずだが」

「……我々ハサンの内の一名が、正体不明のサーヴァントにより消滅しました」

「なに!? サーヴァントと交戦したのか。私は一切報告を受けていないぞ」

「冬木の見回りをしていた個体が、消滅後別の者が様子を見た限り、相手に関する有益な痕跡はなく、また念話妨害の結界があったそうです。遠坂氏にご報告を」

「わかった。他のアサシン達には警戒をさせろ」

「仰せのままに」

 

言峰綺礼に報告を終えたアサシンは、その場から消える。そして、綺礼は時臣への報告のため彼の私室へ向かった。

 

早歩きで遠坂時臣がいる照らすに通じた部屋の前までたどり着き、ドアをノックする。

 

「どちら様かな」

「言峰です導師、至急ご連絡することが」

「入りたまえ。どうしたのかな綺礼、先程の衛宮切嗣の情報から何かわかったのかな?」

 

優雅にワインを飲みながら、己が弟子に話し掛ける時臣。言峰綺礼にしては珍しく慌てた様子に疑問を感じる。

 

「分裂し他のマスターの捜索をしていたアサシンの内一体が消滅しました」

「サーヴァントとの交戦でかい?」

「恐らく。念話妨害の結界を張り、アサシンの隙を突いたようです」

 

言峰の報告に時臣は、今後の展開と相手の正体を考察する。

 

「気配遮断スキルを持つアサシンを、逆に暗殺するか。綺礼、アサシン達には霊体化を義務付けるんだ。おそらく現界した所を探知の魔術で見破られたのだろう」

「では、アサシンを殺したのは」

「キャスターのサーヴァントになるだろうね。まだ決定は出来ない。しかし、サーヴァントが他に居るとわかった以上、これまで以上に気が抜けない。

明日、凛と葵を隣町に朝一で向かわせよう、その際はアサシンの護衛を。

敵がアサシンは死んだと思っているなら、好都合だ。

アサシンがやられて気が抜けないと思うが、今日は休んでくれ綺礼」

「しかし」

「遠坂家は、魔術の要塞だ。キャスターのサーヴァントであろうが別のサーヴァントであっても正面から来るのなら相手できる。今は休んでいたまえ」

「畏まりました」

 

指示に従い部屋を出る綺礼を見送った時臣は、ワインを眺めながら予想より早く始まった聖杯戦争に焦りを覚える。彼のサーヴァントは、明日届くある聖遺物が無ければ召喚できない。

 

「今回の聖杯戦争も荒れるようだな」

 

彼の頭のなかで、何かが引っ掛かっていた。アサシンは確かに直接戦闘では弱い部類のサーヴァントだ。暗殺者であるがゆえに正面切っての戦闘では三騎士は当然、バーサーカーやライダーにも劣る。

むろんキャスターとも劣るだろう。しかし、キャスターは陣地形成による籠城戦が主なクラス。しかし、アサシンを倒した情報から攻勢に出ている事がわかる。

 

「……まだ情報がない内から憶測をたてるのは危険か。しかし、何であれ遠坂が用意したサーヴァントの前には、等しく同じ」

 

月夜を眺めながら自らの勝利を確信した男がいた。そしてその日の朝、望んでいた聖遺物は確かに彼のもとに届いた。

 

-----_

 

そして太陽が登り、朝が来る。マッケンジー宅の庭で解放された鶏達が鳴く。その鳴き声に目覚めたマッケンジー夫妻は、少し早めに朝食の準備をしていた。

アルカは、鳴き声で目覚めると無言で窓を開け庭にでる。

すると3羽の鶏の姿を目にして、しゃがみながら観察する。

 

「ふぁああ」

「あらお早うウェイバーちゃん」

「おはようウェイバー」

「おはよう、お爺さんお婆さん。……アルカは」

 

寝るのが遅かったウェイバーは、あくびをしながらリビングにやってくる。そしてコーヒーを出され、一口飲んでようやく意識がはっきりする。いつもはとなりに座るアルカが居ないと気がつく。

 

「アルカちゃんなら、お庭に迷い込んだ鶏と遊んでるわ。呼んできて貰えるかしら?」

「え、わかったよ。おいアルカ」

 

窓からサンダルに履き替えて外に出るウェイバーは、鶏2羽の首根っこを掴んで、隅っこに追い詰められたもう一羽を見つめるアルカを見た。

 

「なにやってんだよ……」

「……鶏肉」

「食べるなよ、苦労して取ってきたんだからな」

「手……」

 

ウェイバーの声を聞いて振り替えるアルカ。いつも通り無表情だが、首を捕まれた二羽が憐れで、視線がそれた隙を見て逃げた一羽だが、アルカが股に挟んで捕獲。憐れ鶏3羽は、調理される運命なのだ。

 

「手……あ、令呪だよ。飛行機で教えてあげたろ?」

「おじいちゃん、おばあちゃん……心配する」

 

アルカに令呪の事を言われ、確かに何かで隠さないと行けないと思い至る。下手に騒ぎになったらこの数日で築いた関係も台無しだ。アルカや自分を暗示とはいえ、本当に可愛がってくれているのがわかるため、手荒なことはしたくないウェイバー。

 

「包帯か何かで隠しとくよ」

 

アドバイスをくれた小さな仲間の頭を撫でて「朝ごはんだってさ」と伝える。今日こそは、いよいよ英霊(サーヴァント)召喚の日でありウェイバー・ベルベットの戦いの始まりなのだ。

 

その日は、家の中で過ごしながら、鶏は明日養鶏所に自分が返しに行くと説明。その晩、申し訳ないが二人には暗示で何時もより深く眠ってもらうことにした。

天気も大変よく、体調も抜群にいい今日は最高のサーヴァントを喚ぶに相応しいと考えた。

 

「……ウェイバー」

「アルカ。お前もついてくるのか?」

「……」

「いいよ。付いてきたかったら付いてきても」

 

アルカも仮にもウェイバー・ベルベットの弟子である。正確には自分より圧倒的に優れた魔術回路や魔力を持つアルカに基本的な初歩を教えただけである。それでも簡単な魔術は覚えているため正しくは魔術使いである。

 

危険を伴う聖杯戦争に参加させるつもりは皆無だが、自分の晴れ舞台を妹のような弟子に見せたいと思った。

そして夜中にタクシーを呼んで、アルカには例の隠密礼装カーテンを着せて、乗り込んだ。鶏たちも予め眠らせたうえでトランクにいれて冬木の山奥に向かう。

 

この時間に一人で、山奥で下ろしてほしいというウェイバー。言葉は通じないが「stop」は通じたためどうにか下車できた。運転手は怪しんでいたが、アルカが魔眼の魅了暗示で記憶を操作する。

 

「そういえば魔眼あったんだったな。暗示ならもう僕よりも……いや、こんなところで落ち込んでられるか! これから僕はサーヴァントを召喚するんだ」

 

弟子に負けた所は悔しいが、心を折られている場合ではない。すぐさま、アルカをつれて森の中の自然にできたマナの多い空間にたどり着く。そこで魔方陣を描くための血を鶏で代用する。

 

「刺激強いから、ちょっと向こういってろよ」

 

鶏を殺し血を利用するため、幼児には早すぎると思ったウェイバー。だが彼の気遣いは、無用だった。

 

「鶏肉……唐揚げ、おいしい」

「こいつらは、お前の中で食料なのな」

 

生き物ではなく、肉として認識しているアルカは、無敵だった。仕方ないと魔方陣を血で描いたあと、聖遺物を設置する。

 

 

「アルカ、下がってろ。これからサーヴァントを召喚する」

 

準備は全て整った。アルカが言うことを聞いて下がったのを確認し、召喚の儀式を開始した。令呪の浮かぶ手を魔方陣に向け、本で読んだ呪文を詠唱する。

 

 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

魔方陣が激しい輝き、周囲に強烈な魔力の乱れが生じる。

 

 「―――――Anfang」

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

 

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

ウェイバーの声と魔力が、魔方陣を起動しその一帯を光が覆う。眩しさで目を閉じていたアルカとウェイバーが目を開けた先には、……。

 

「やった……成功だ」

 

 

「余は今宵この時、騎乗兵(ライダー)のクラスで現界した。問おう、そなたが余のマスターか?」

 

そこには、燃えるような赤毛に筋肉が全身を覆い尽くすような逞しい肉体、その顔には貫禄がにじみ出ており、圧倒的な存在感を放つ大男がいた。

 

 

ウェイバー達はしらないがこの時、同時に4体のサーヴァントが召喚された。既に存在したアサシン、少し前に召喚されていたランサー、そして今宵アーチャー、バーサーカー、セイバー、ライダーがそれぞれ召喚された。そこにアルカのサーヴァントを合わせて7騎が揃ったのだった。

 

これにて、聖杯戦争の火蓋が切られた。

 

tobecontinued




次回は、謎の英霊。アルカのサーヴァントのステータスものせようかなと思います。他のサーヴァントは、のせた方が良いのかわからないので、アドバイス頂けるとありがたいです。もしよろしければ感想などもお願いします。

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