Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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staynight編
英霊召喚


自分の家に帰った綾香は、恐怖に震えながら家族の帰りを待った。だが家に訪れたのは家族ではなく、結界に阻まれる外敵だった。

 

「来た……やっぱり」

 

家に張られた結界は、中々に強力で英霊であっても結界内では力を大きく削がれる術式。これは綾香の姉であるアルカが構築した守り。どうやら強引に入ろうとして何かが阻まれていると結界の発動者である綾香は感じる。

 

「ここじゃダメ。テラスに行かなきゃ」

 

結界が徐々に削られておるため、綾香はリビングから姉達と共同の魔術工房へ移動する。すると家に張られた結界が、破壊され何者かの侵入を感じる。

 

「もう破られた‼」

「よぉ」

「きゃ、あな、あなた」

 

結界が破られてすぐ、背後に青いタイツのような鎧と真っ赤な槍を持った男性がいた。彼は槍を肩に抱えたまま、綾香を見る。

 

「中々にいい結界だな。現代の魔術師も捨てたもんじゃなさそうだ」

「何をしに来たの?」

 

綾香は、できる限り槍を持った男から距離をとる。刺激しないように後ろに下がる彼女に槍を構えた男が答える。

 

「一般人って訳じゃなさそうだが、聖杯戦争の目撃者は消さなきゃならねぇんだ。わりぃな嬢ちゃん……死んでくれや」

「……断る‼」

 

綾香が廊下の壁にてを触れた瞬間、姉が仕込んだ迎撃用の魔術が発動する。周囲の壁から一斉に鎖付きの分銅が発射される。それに男は槍で対処するも驚いた表情をしていた。

 

「これもおまけ」

 

綾香はさらに床に触れることで術式を発動させる。さすれば、廊下に描かれていた植物の絵が実体化し、槍の男に絡み付く。

 

「珍しい魔術を使うな嬢ちゃん」

「く」

 

鎖全てを槍で切り裂き、壁から現れた蕀の蔓すら、指でルーンを刻んだ瞬間燃え上がった。愛歌が仕込んだ罠をこの男は平然と越えてくる。個々に居ては殺されると脳の危機感が足を動かす。

 

そしてテラスへと辿り着いた綾香は、扉に鍵と結界を施す。しかし、5秒も経たない内に結界と扉は赤い槍に突き破られる。

 

「おとぎ話の家みたいに仕掛けが多いな、この家は。だが、もう逃げ場はねぇぜお嬢ちゃん。安心しな苦しまずに始末してやるよ」

 

そう言いながら男は、赤い槍の矛先を綾香に突き出す。足元に落ちていた本に躓き、矛先が心臓に刺さるのを回避できる。だが尻餅をつく際に左肩を斬られ、血が流れる。左肩に熱さを感じて掌に滴る血を見る。

 

「あんま抵抗しない方が身のためだぜ?」

「いや! 死にたくない!」

 

 綾香は、眼前に向けられた槍に対して、足元の本を掴んで投げつけた。血で表紙が濡れた本は、先日綾香が徹夜して読んでいた本、『アーサー王伝説』だった。投げられた血濡れの本を槍の男は、槍で斬りはらう。

 

 彼の槍で払われた本はバラバラになり、綾香の周囲にページが散らばる。

 

「じゃあな、来世では幸せにな!」

「助けて、お姉ちゃん!!」

 

 狩人の目をした存在は、綾香の心臓目掛けて槍を突き出した。既に回避する事も魔術を発動する余裕もない綾香は、自分の死を確信し、瞳から涙をこぼした。そして涙を引き金に、奇跡は起こる。綾香の周囲に散らばっていたアーサー王伝説のページが、綾香の血を介して光だし、赤き槍が突き刺さる寸前に、光が発生する。光を見た男は、槍が何かに阻まれる感覚と、強烈な魔力の発生に後ろに飛ぶ。

 

「なに、またか!?」

 

 強烈な光が綾香の身体を中心に、破れたページと血によって魔法陣となり、一人の人物を召喚する。光が収束した時、痛みを感じない事で目を開けた綾香の前には……。

 

「え」

 

 綾香の前には、銀色の鎧を纏い鮮やかな金髪に緑の目をした男の人。彼は、綾香に微笑みかけながら、倒れそうな彼女を支えてあげる。そして綾香が自分で座った時、背後に飛んでいた青い男は、苛立った顔で吠える。

 

「貴様、何者だ! 名乗れ」

「ふん」

 

 紅い槍を新たに現れた騎士にしか見えない青年に向ける。すると、騎士の青年は爽やかな笑みを崩さないまま、振り返って、目に見えない武器を振るう。それを槍の男は、槍の柄で受け止めるが、大きく後ろに飛ばされる。そして、槍の男は騎士姿の青年の持つ、風を纏った透明の武器を見て驚く。

 

「馬鹿な。同じ武器を持つ英霊が2人もだと? それにテメェを合わせたら既に8騎だと」

「何を言っているか私には理解できない。だが、君の持つ武器からランサーと断定しよう。無抵抗のレディに、ましてや私のマスターに手を出そうと言うのなら、この場斬り伏せる事も厭わない」

 

 綾香は目の前の騎士と槍の男が自然に放つ魔力が、人間の物でないと感じる。そして先に動いたのは騎士の青年でランサーと呼ばれた人物に瞬時に距離を詰めれば、綾香の目では負えない速度で見えない武器を振るう。

 

「く、てめぇ」

「退くのなら、追いはしない」

 

 5秒間の間に十数回も切り結んだランサーと騎士の青年。圧倒的な力でランサーを部屋の隅まで追い詰めた青年は、見えない剣をランサーに向けながら告げる。ランサーは、苦い顔をしながらも別の気配が迫っている事を感じてその場を去る事に決める。

 

「今度あったときは、その心臓を貰い受けるぞ8番目」

 

 そう言い残し、ランサーは屋根に貼られた結界を突き破って、ガラス張りの天井を突破。すぐに見えなくなる。そして天井に穴が開いた事で風がテラスに舞い込み、テラスで育てていた野花が散り、花弁が舞う。自分を助けてくれた存在は、腰が抜けて座り込んでいる彼女の手を取ると、優しく起こす。

 立ち上がらせてもらった綾香は、その騎士に問いかけずにはいられなかった。

 

「あなたは?」

「僕はセイバー。君を守る、サーヴァントだ」

 

 青年、セイバーはそう言って彼女に微笑みかけた。

 

 

 

 

 





 はい、綾香の英霊召喚完了致しました。感想など頂けたら嬉しい限りです。

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