Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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巨大海魔2

 ブレイカーは戦闘機を操り、先程有効だった方法をとる。再び操縦桿を握り、同じ個所へと照準を向ける。残るミサイルは二発。決して外すわけにはいかないと意識を集中する。そして、前方で何か作戦を決めた様子のライダーたちを見て、引き金に指をあてる。一度ミサイルを食らった海魔は、戦闘機を警戒して100近い触手で迎撃するも、騎乗スキルを持つブレイカーが性能を引出し、殺人的な機動で回避する。 

 

(さっきあけた大穴はまだふさがってないな、もう一発だ)

 

 ブレイカーは、最初と同じ記機銃掃射で海魔えぐれた傷口に穴をあけていく。そして、海魔の中心に更に抉り込んだ空洞に、ミサイル二発を発射する。熱探知ではなく、手動で照準を合わされたミサイルは、彼の狙い通りに海魔の傷口に入り込み、内部で大きな爆発を上げる。

 爆発は海魔の内部まで一気に弾けさせ、海魔の分厚い肉の壁が大きく捲れあがる。

(やれ、ウェイバー)

 

 自分の仕事をなしとげたブレイカーは、ライダーたちの上を通り過ぎる時、下にいるメンバーにアイコンタクトを送る。それを受け取ったライダーは、神威の車輪の真名解放を行った。

 

「いざ行かん! 遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)!!!」

 

 最初の時よりも真名解放に込められた威力は膨大で、隣にいるウェイバーの顔色が悪くなる。元々魔力の生成量の少ないウェイバーが日に二回も宝具の真名解放は、きつい。だが、ここは正念場であり倒れるわけにはいかない。ライダーとともに駆け抜けるために、自分は魔力を彼に託すのが仕事なのだ。

 

「いっけー! ライダー!!」

 

 轟雷を牡牛から戦車まで全てが纏って、時速400キロで突進する。速度と重量、そして纏った轟雷が威力を底上げする。再び雷そのものとなった神威の戦車は、ブレイカーが開いた活路を突破する。海魔のもっとも肉の厚い部分を引き裂きながら。

 そして、ウェイバーとライダーが海魔の中心に人がゆうに通り抜けできるトンネルを作る。そして、ライダーたちが通り過ぎた場所に、そこから数メートルそれた個所に肉に包まれたキャスターがいた。

 

「なんだ?」

「あとは、任せたぞ。セイバー、ランサー」

 

 見事に彼らの道を築き上げたライダーは、後続のランサーとセイバーにすべてを託した。セイバーは水の上を駆け抜け、ランサーは切断された触手の残骸を足場に最速の名に恥じない速度で走る。そして、二人そろって海魔の体内に侵入する。ライダーの開通させたトンネルは、電撃で焼かれ再生が遅れていた。それでも不死身ともいえる再生力を持つ海魔は、内部に侵入したセイバーとランサーを阻もうとする。幾つもの肉の触手が二人に迫るが、二人は足を止めることなく切り進む。

 

「えぇええい!」

 

 眼前に敵が迫ったことでキャスターが何らかの魔術を使い、彼を守るように肉の壁が形成される。このままではまずいと悟ったのか、肉の壁でやり過ごし、海魔の中を移動するつもりのようだ。

 

「セイバー!」

「逃がしはしないぞキャスター! 風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

 アインツベルンの森と同じくセイバーが風王結界の収束を解き放ち、前方へと全てをミンチにする突風が発生。キャスターが急造した肉の壁が風で切り刻まれ、彼らを襲う触手も切り刻まれる。邪魔するものが無くなったランサーが全速力に到達する。そのまま紅い槍をキャスターに突き刺そうとする。

 

「あーーーーー!!!」

 

 キャスターは身の危険を感じ、瞬時に展開できるだけの肉の触手で壁を再び編む。風王鉄槌の勢いが収まり、ランサーの前方に壁が立ちはだかる。このままではどうやっても破魔の紅薔薇(ゲイジャルグ)が届かない。そう察したとき、ランサーの行動と思考速度は光を超える。一切の迷いもなく、右手に持った必滅の黄薔薇(ゲイ・ホウ)を投擲。投げられた槍は、キャスターの肉の壁に突き刺さる。それをみたランサーが走りながら、右手の手のひらを伸ばす。

 

「ランサーそれは」

「ほかの英霊達が死力を尽くして開いた活路だ。この俺が一歩足らずで討ち損じるなど、許されはしない」

 

 セイバーは彼が何をしようとしたか知った。壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)、宝具の中に眠る莫大な魔力を爆発させ、その膨大な魔力を破壊力に変換する切り札。英霊誰しもが持つ宝具を代償にする最終手段。宝具というのは英霊には生前共に在り続けた半身であり、それを己で壊すというのはその身を裂くほどの精神的苦痛を味わう、そして武器を失うデメリットがある。 だが、ランサーはここで討たねばならぬ悪を討つために、それを使ったのだ。

 

「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

 肉の壁に突き刺さった必滅の黄薔薇が、その形を崩壊させ魔力による大爆発を起こす。その火力は、瞬く間にキャスターの守りを吹き飛ばし、キャスターの身も焼いていく。

 

「あああああああ」

「抉れ、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)!」

 

 身を焼かれ苦しみの声を上げたキャスター。ランサーは、爆発の中心地を恐れずに前進する。そして、破魔の紅薔薇を突出し、突撃する。爆発は魔力による現象。ランサーのゲイジャルグは、己のゲイボウの爆発を貫き、ついに、キャスターの持つ本を貫いた。

 宝具による魔力供給が無くなったことで、巨大な海魔は活動を停止。瞬時に前進が崩壊していく。

 

「ジャンヌぅう」

 

 爆発をもろに受け、両手が吹き飛び前進焼け爛れたキャスター。それでもなお己の愛する聖処女へと向かおうとする。ランサーの後に続いていたのは、風の鞘をなくし黄金の輝きを放つ聖剣を構えたセイバー。その剣の輝きは

まぶしく、暗い海魔の内部を照らす。

 

「これで終わりだキャスター!!」

「ぐふ」

 

 セイバーは一切の迷いなく、呪いが無くなったことで全快した両手で剣を握り、キャスターの体を一刀両断した。そして、霊核を見事に破壊されたキャスターは、どこか救われた顔で消滅する。そして、キャスターと海魔が消滅し、セイバーは水面に着地。ランサーは水面に浮かぶコンテナの上に着地した。

 

 

「終わったな」

「えぇ」

 

 ランサーとセイバーは、ようやくキャスターを打倒したことで、肩の荷が下りる。それは、戦闘機に乗りながら海魔の消滅を見たブレイカーと魔力の消費から立てなくなったウェイバーを支えるライダーも同じだった。

 

 

「■■■■!!!」

「小賢しい雑種が!」

 

 だが、まだバーサーカーとアーチャーは激しい空中戦を続けていたのだ。海魔を倒したといえ、バーサーカーとアーチャーを放置すれば、被害が出るのも時間の問題だろう。しかし、ランサー、ライダー、セイバーは疲労も限界に迫っている。となれば残ったのはブレイカーしかいない。

 

「仕方ない。バーサーカーには悪いが、アーチャーには恩がある」

 

 未曾有のドックファイトにブレイカーも参戦した瞬間だった。高度を落とし、激しい突風を振りまきながら制空権を争う二機にブレイカーの戦闘機も混ざる。突然背後から機銃掃射を受けたバーサーカーがそれらを交わし、ブレイカーを見る。そして突然乱入した無礼者にアーチャーも睨みを利かせる。

 

「■■■!?」

「雑種め、許可なく我の加勢をするか。身の程をわきまえろ」

「そうは言いましてもね。アーチャーさんにはマスターに助言して貰った恩がある。それを返させてくれよ。あの狂犬の始末は俺がつけますんで」

「何を考えている雑種。よもや、そんなことで我に対する恩が返せるとでも?」

「好意は好意として受け取ってくださいよ。アーチャーさんには感謝してるんですよ。マスター共々ね」

 

 戦闘機をアーチャーの飛行宝具に横付けし、彼と話すブレイカー。相変わらず地雷が何処にあるのか分かりにくいなと感じつつ、背後にいたはずのバーサーカーを探す。だが、バーサーカーはあろうことかアーチャーから、水上に立つセイバーに標的を変えた。水面を走って逃げるセイバーを執拗に追いながら、機銃掃射を行っていた。

 

「最悪俺ごと吹き飛ばしてもOKなんで、じゃ」

「ふん」

 

 さすがに英雄王もバーサーカーとの戦闘で手を焼いたのか、ブレイカーの提案に賛同はしないが賛成もしなかった。それを返事と取ったブレイカーがバーサーカーを追う。再び背後から撃たれたバーサーカーは、セイバーを狙う障害となるブレイカーに向かって機銃を発射する。同じくブレイカーも機銃を発射。互いの弾丸が互いを打ち落としながら、2機の戦闘機はすれ違う。だが、先に悲鳴を上げるのはブレイカーの戦闘機だった。

 みしみしと音を立て、計器が限界を迎えていることをしつこく知らせる。

 

「こっちは礼装、あっちは宝具。差は歴然か」

 

 圧倒的に性能で劣るうえに、技術に関しても肩を並べるバーサーカーとブレイカー。一気に急上昇し、空めがけて飛ぶブレイカーをバーサーカーが背後から撃つ。二機の戦闘機が地面に垂直になって飛び上がるが、バーサーカーの機銃を受けたブレイカーの戦闘機が被弾、爆発四散する。

 

「結構気にってたんだがな!」

「■■■■!!」 

 

 爆発の勢いに乗ってブレイカーはまっすぐ向かってくるバーサーカーの戦闘機を殴った。強化魔術で強化され、スキルを発動したブレイカーの拳はバーサーカーの宝具になった戦闘機を破壊する。互いに空中に投げ出されたブレイカーとバーサーカー。爆発の直撃を受けても、バーサーカーは機体から分離したJM61A1(ガトリング砲)を掴んで、ブレイカーに発砲する。

 

「てめぇ!」

 

 空中で落下する中、宝具のガトリングを受けるブレイカーは、両手で次々弾丸を弾いていくも、何発かが体に命中する。弾丸が肉を裂き、多くの血が流れる。拳を連続で繰り出し、致命傷になる弾丸だけを弾くがダメージが蓄積する。

 

(こうなったら宝具を解放するか)

 

 形勢が不利になり、自身の宝具を解放するか思案した。

 

 

「な。」

 

 しかし、ガトリングの弾がブレイカーを殺すよりも先に、ブレイカーが宝具を使うより先に、バーサーカーが霊体化して消える。ブレイカーの主観では、バーサーカーが魔力切れによって霊体化したように見えた。あれほどの英霊が好き勝手暴れていれば、どんなマスターでも魔力を枯渇させるだろう。アルカのように理屈は不明だが、芳醇な魔力を持つマスターでもない限り、当然ではある。

 

「あ」

 

 川に落下していたため、ブレイカーは見事の水面に落下する事となった。全身水浸しのブレイカーが、セイバーとランサーの居る岸に上がり、ようやく事態は終息したのだった。

 

――ー――ー――

 

 そして、バーサーカーのマスター、間桐雁矢と遠坂時臣はビルの屋上で交戦。雁矢は、遠坂時臣に問いかけた。

 

「変わり果てたな、雁夜。一度魔道を諦めておきながら、聖杯に未練を残し、そんな姿になってまでも舞い戻るとは、今の君1人の醜態だけでも、間桐の家は堕落の謗りも免れん」

「遠坂時臣、質問は1つだ、なぜ貴様は桜を蔵硯の手に委ねた?」

 

 自分を見下すような時臣の態度は無視し、どうしても聞いておかねばならないと雁矢は、問いかける。自分の家に養子に来た最愛の人の娘である少女は、虫を操る妖怪爺のせいで地獄に生きている。むしろ、地獄を地獄と感じる心すら剥奪されている。そんな状況に何故自分の子供を陥れられるのか、それが理解出来ない。

 

「何? それは今君がこの場で気にかけるべき事柄か?」

 

 当然だ。それは雁矢の闘う理由なのだから。

 

「答えろ、時臣」

「問われるまでもない。愛娘の未来に幸あれと願ったまでのこと」

 

 一瞬耳を疑う。もしや身体に宿らせ、自分を喰い殺そうとする刻印虫に耳までやられたのかと勘違いする程に。

 

「なんだと?」

「二子を設けた魔術師はいずれ誰もが苦悩する、秘伝を伝授しうるのは1人のみ、いずれか1人は凡俗に堕さねばならないというジレンマにな。…とりわけ我が妻は母体として優秀過ぎた、凛も桜も共に等しく稀代の素養を備えて生まれてしまったのだ。娘たちは2人が2人とも魔道の家門による加護を必要としていた。いずれが1人の未来のために、もう1人がひめ持ち可能性を摘み取ってしまうなど、親として、そんな悲劇を望むものはいるものか?」

 

 正直、悔しいが彼の初恋の人である葵の愛する人物。気に入らないまでも彼女が愛する人間であれば、やむを得ぬ事情があったのかとも考えた。時臣ではなく、奴を信じる葵を信じて……。だが、弱い自分は時臣を憎む事でしか苦痛に耐えられなかった。だが、それは間違いではなかった。

 

「凡俗、あの遠い日の母と子の姿をこの男は、ただ凡俗とだけ切り捨てるのか?」

 

 どれほど自分が思い焦がれ、遠坂葵や凛、桜が幸せなあの時間を時臣は……。雁矢の中で憎悪があふれ出る。己の身を焼く程の憎悪と義憤が視界をゆがませる。理性を奪い時臣を殺せと命令してくる。

 

「姉妹双方の才能について望みを繋ぐには、養子に出すしかほかにない。だからこそ、間桐の申し出は天啓に等しかった。

 聖杯の存在を知る一族であれば、それだけ根源に至る可能性も高くなる。魔術師とは生まれついてより力あるもの、そしていつしか更なる力へとたどり着く者。その運命を覚悟するより以前から、その責任は血の中にある。それが魔術師の子として生まれるということだ。

 私が果たせなくても凛が、そして凛ですら至らなかったなら桜が、遠坂の悲願を継いでくれることだろう」

 

 雁夜の握りしめた腕に力がこもる。全身を虫が這い、痛みが走るがこの激情の前には、意味を成さない。

 

「貴様、相争えというのか、姉と妹で」

「仮にそんな局面に至るとしたら、我が末裔たちは幸せだ。栄光は勝てばその手に、負けても先祖の家名にも持たされる。かくも憂いなき対決はあるまい」

 

 理解出来ない。そんな物に意味があるのか理解出来ない。そんな物のために犠牲になる理由が理解出来ない。

 

「貴様は狂っている」

「語り聴かせるだけ無駄な話だ。魔道の尊さを理解せず、あまつさえ一度は背を向けた裏切りものにはな」

 

 雁矢は改めて理解した。遠坂時臣は、愛する女性とその子供たちを不幸にする存在だと。

 

「ほざけ。俺は貴様らは許さない。薄汚い魔術師どもめ。殺してやる、蔵硯も、貴様も1人残らず、殺し尽くす!!」

「君が家督を拒んだことで、間桐の魔術は桜の手に渡った。むしろ感謝するべき筋合いとはいえ、それでも私は君という男が許せない。血の責任から逃げた軟弱さ、そのことになんの負い目も抱かぬ卑劣さ。間桐雁夜は魔道の恥だ。再び相まみえた以上、もはや誅を下すしかあるまい」

 

 雁矢と時臣は、相容れないのだ。本質的に。

 

「ふざけるな、この人でなしが」

「違うね、自ら責任を負うのが人としての第一条件だ。それが果たせない者こそ、人以下の犬だよ、雁夜」

 

 そこで完全に決別した2人。雁矢は、刻印中を羽化させて、肉食の獰猛な成虫にする。その虫の大群を時臣にけしかける。だが、間桐の魔術を知る時臣は、それに対策を済ませていた。彼の貼る結界を前に、大群で挑む虫達は散るのみ。

 

 

「あれだけ息巻いておきながら、蓋を開けてみればこの体たらく」

 

 どうみても虫に命を蝕まれている雁矢。彼を見た時臣は、自滅覚悟のこの男を殺す事にした。

 

「雁夜私からの恩情だと思え。intensive einascherung(我が敵の火葬は苛烈なるべし)」

 

 時臣の持つ杖の先端から炎が飛び出し、雁矢の全身を炎で包み込む。灼熱の炎に焼かれ、苦しみながらも憎悪の言葉を吐き続ける。

 

「殺してやる、時臣」

 

 炎に苦しみ、雁矢は屋上の策を越えて、下に落下した。落下した彼を見届けるつもりの無い時臣は、事は終わったと踵を返して、勝者として歩んでいく。

 

 雁矢が屋上から落ちたタイミングで、バーサーカーは、霊体化したようである。

 

 

――ー――――

 

 バーサーカーが離脱した光景を眺めていたライダーが、戦車を横付けする。

 

「英雄王よ。お前、何を見ておるのだ。参加しなかったのは、仕方ないにしても」

「なぁに、今宵は騎士王とやらの力を見れなかったと、今更ながら思ってな。征服王、お前は未だに奴を認めぬのか?」

「決まっとる。時の民草の希望を一身に引き受け、英霊になってまで苦しむ姿、実に痛々しいわ。理想の王なんて行き地獄を背負わされたのがただの夢見る小娘だったと知ってはな。

 そんな娘が蝶よ花よと愛でられることも、恋に焦がれることもなく、理想などという呪いにつかれた果てが、自分の行いの削除だからな。痛ましくて、見るに耐えん」

 

 騎士王に対するアーチャーとライダーの価値観は、180度違う。ライダーは、セイバーの生き方を理解出来ないまでも、彼女を案じる心はあった。だが、英雄王の目を見れば彼がセイバーをどう言う対象にしているかは一目瞭然だった。

 

「なればこそ愛いではないか、あれが抱いていた身に余る夢は、きっと最後には抱いた当人をも焼き果たしたに違いにない。その散り際の慟哭の涙、舐めればそざ甘かったであろうな」

「やはり貴様とは相容れぬな。英雄王」

 

 これ以上の話し合いは、どうあっても成立しない。ライダーにはセイバーを邪な対象に見るなという権利すらないのだ。そして、この世の全てを治めた英雄王の価値観がそう言った物なのだと納得すらしていた。

 

「今更になって察したか? ならばいかんとするライダー? その怒り、今すぐにでも武をもって示すか?」

「それができれば痛快であろうが、貴様を相手の戦となると、今宵の余はいささか以上に消耗しすぎとる。無論、見逃す手はないとつっかかってくるならば、相手にせんわけにもいかんがな」

 

 方便ではなく真実だ。現に、ウェイバーは魔力の使用が激しくとても連戦できるとは思えない。ライダー自身の魔力を使えば可能ではあるが、共に闘うと誓った彼を蔑にはしたくないライダー。

 

「構わぬ、逃亡を許すぞ、征服王。お前は十全の状態で潰さねば、俺の気も収まらぬ」

「そうさせて貰おう。次に持ち越しだ、英雄王、我らの対決はすなわち聖杯戦争の覇者を決する大一番となることだろう」

 

 そう言い残してライダーは、戦車を走行させ下にいるブレイカーを回収した後、その場を離れて行く。それを見届けたアーチャーも黄金の舟に腰掛け、何処かへ飛びだった。

 空を飛行しながらアーチャーは人知れず呟いた。

 

「果たしてどうかな、我が至宝を賜わすに値するにが1人のみだとは、まだ俺は決めていないぞ、ライダー。

 そして、人の領分を超えた悲願に手を伸ばす愚か者、その破滅を愛しやれるのは天上天下ただ1人、このギルガメッシュをおいてほかにはない。セイバー、儚くも眩しい者よ、我が腕に抱かれがいい、それが俺の決定だ」

 

 

 





 遂にキャスター陣営もリタイアですね。

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