Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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キャスターの工房

 森での闘争から時は流れ翌日の夕刻。自室にこもっていたウェイバーは、夕飯に呼ばれてリビングに向かって、驚いた。それも驚愕から、上手く話せない程に驚いた。

 

 いつも通りお祖母さんが夕飯の支度をならべ、アルカがウェイバーの隣の席でご飯を食べている。これはいつもの光景だ。未だにおはしになれないアルカのために、御爺さんが子供用のフォークとスプーンを出した事で、それを愛用するアルカ。普段通り。

 

 唯一違ったのは。

 

「あははははは」

「ふははははは」

 

 お酒に酔ったのか、顔が赤いお祖父さんと、同じく酒に酔って陽気になった『ライダー』が席についていた。お祖父さんはこの家の主だから、いて当然。しかし、ライダーが居る事が意味不明だった。お祖母さんに誘導され席に着いたのはいいが、食が進まない。そして、窓の外では気配を消しながらも両手を合わせて、謝罪しているブレイカーが居た。

 どうやら、ライダーの暴走を止めようとはしてくれたらしいが、征服王の征服を止められなかったらしい。

「いやぁ、気持ちの良い呑みっぷりですなぁ」

「おぉ、かたじけない」

 

 陽気に笑うお祖父さんが、隣に居るライダーのコップにビールを注ぐ。それに感謝しながら、2人で酒を飲む2人。

 

「もう、ウェイバーちゃん。お客さんが来るなら早く言ってくれなくちゃ」

 

 お婆さんは、台所で二人のおつまみを作りながら、ウェイバーに話しかける。とうのウェイバーは困惑から抜け出せない。

 

「いやいや、奥さんおかまいなく。気取らぬ家庭の味こそが、極上のもてなしでありますゆえ」

「あらあら、お世辞がお上手だこと」

 

 気を遣ったお祖母さんへのフォローと感謝も忘れないライダー。明らかに異質の存在なのに、妙に家庭に馴染んでいる姿にウェイバーは呆れる。

 どうやら、イギリスの大学の友人として、日本に遊びに来たという設定らしい。それを簡単に信じるマッケンジー夫妻の人柄がいいのか、それとも不用心なのか。とはいえ、暗示で家庭に入り込んだウェイバーにとやかく言う権利はなかった。

 

「はははは」

「けほ、けほ」

「ははは、おやアルカ、お酒飲んじゃいかんよ。マーサ、布巾をおくれ」

「あらま、たいへん」

「がはは、お孫さんには早すぎたようですな。ほれ、口直しに飲んどけ」

 

 2人が珍しい飲み物を飲んでいて。興味が湧いたアルカが、ビール瓶から自分のコップに少し注いで、飲んでいた。それに気づかない大人達とウェイバー。そして、案の定初めてのお酒を飲んだ途端、苦さとアルコールから大きく咽て、吐きだしていた。それを見てアルカの手の届く所にビール瓶を置いておいた事を後悔したお祖父さん。

 普段無表情のアルカが、珍しく眉を寄せて不機嫌さを現わしていた。そこで、ライダーはジュース瓶をアルカに渡した。

 

(馴染みすぎだろ)

 

 ウェイバーと外で見張っているブレイカーの感想だった。

 

――ー―――

 

「……お酒、ゆるさない」

「まだ、怒ってるのか。幾ら怒っても酒は無くならないぞ」

「そうだな。後10年もたてば、味も分かると思うんだがなぁ」

 

 夕飯を負え、ウェイバーの部屋に集まった4人。ブレイカーは窓枠に腰掛け、ライダーとアルカがベッドに座る。だが、アルカだけがずっとビールに対して、並々ならぬ恨みを抱いていた。こっそりウェイバーは、酔っぱらったアルカの反応を見てみたいとも思ったが、そんな事をすれば、アルカの水銀が大暴れするだろう。

 彼女の心境を表すように、アルカの隣で手のひらサイズになった月霊髄液がハリネズミのように刺々しくなっていた。

 どうもこの礼装は、アルカの僅かな心の揺らぎも表現するようで、大変分かりやすく便利なアイテムだった。

 

 そしてライダーの足元には、大きめのボストンバッグが置いてあり、それを見ながらライダーがぼやく。

 

「それにしても坊主。なんで征服王たる余がひなびた川原で水汲みをせにゃあならんかったのだ?」

「煎餅をかじってビデオ見てるより、よっぽど有意義だからだよ」

 

 ウェイバーが机を移動させ、イギリスより持って来た魔術の道具を広げる。そしてライダーが川から汲んで来た水の入った試験管を並べて行く。君で着た試験管にはアルファベットの書かれたラベルが振ってあり、その横で同じく川の至る個所にアルファベットが書きこまれていた。

 

 そしてウェイバーは、ビーカーを取り出し其処に溶液を注ぎ入れ、別の薬品を合成する。

 

「何だ? 錬金術の真似事か?」

「……おー」

 

 ライダーが腕を組んでその様子を窺う。隣に居たアルカも、月霊髄液の圧縮を解除し、本来の大きさになったそれを足場にして、ウェイバーの作業を眺める。 

 

 

 

「真似事じゃなくそのものだ。馬鹿……え」

 

 ウェイバーはスポイドで先程作った溶液を吸い取る。そして、川の水のサンプルに、溶液を入れると真っ赤に染まる。

 

「いったい、それは何なのだ?」

「術式残留物、水の中にあった魔術の名残だ。かなり河口に近い所で魔術の使用があったみたいだ。これを逆にたどって行けば、その場所を掴む手掛かりになるかもしれない」

 

 そういって作業を続けるウェイバー。本人はどうとも思っていないかもしれないが、ライダーとブレイカーは、ウェイバーの優秀さを改めて理解していた。ブレイカーは何も言わずに部屋の中を見護るが、魔術師として基礎から全てをこなしていく彼を、評価していた。当然、ライダーも同じ感想を抱き、彼に質問する。

 

「坊主あの川に、そんなもんが混じっていると、最初から気付いていたのか?」

「まさか、でもせっかく街のど真ん中に流水のある地なんだ。まずは水から調べるのが当然だろう」

 

 そう言った彼は、次々試験管に溶液を垂らしていく。そして、徐々に色が黒くなる水を追って、地図を見ていた。そしてアルファベットのPがどす黒く染まり、次のQで色の変化が無くなる。これが示す事は、一つだけだった。

 

「そのアルファベットの間が答えと言う事か」

「その通りだブレイカー。なぁライダー、こことここの間に何かあったか? 排水溝とか用水路の注ぎ口とか?」

「おう、ひときわ馬鹿でかいのが一つあったが」

「それだ。そいつを遡って行った先に、多分キャスターの工房がある」

 

 完璧な推理とそれを証明した手段。何気ない彼の才能が、きっちり実を結んでいる瞬間だった。ブレイカーは悪くない才能だと感心し、ライダーは自分のマスターの功績を素直に喜んで見せた。

 

 

「おい坊主……もしかして貴様、とんでもなく優秀な魔術師なんじゃないのか?」

「ウェイバー、すごい」

 

 突然二人に賞賛され、照れくさそうにするウェイバー。ライダーだけなら、馬鹿にされている気もしたが、水銀を激しく揺らしながら、真っすぐこっちを見るアルカが本心からそう思ってくれているのが、嬉しかった。

 

 

「こ、こんなのは優秀な魔術師の手段じゃない。方法としては下の下なんだ」

「何を言うか、下策を持って上首尾に至ったのなら、上策から始めるよりも数段勝る偉業ではないか、余もサーヴァントとして鼻が高い」

 

 そう言ったライダーは、いつの間にか取り出した剣を肩に抱え、立ちあがる。

 

「ようし、居所さえつかめればこっちの物だ。さぁ坊主、ブレイカーに小娘。さっそく殴りこむとするか!!」

「待てこら、敵はキャスターだっての」

「わかっておる」

「わかってない!こと陣地防衛において最強のアドバンテージを誇ってるんだぞ。其処いきなり攻め込む馬鹿が居るかよ」

 

 確かにウェイバーの言う事は正しい。だが、それはライダーの身の場合に限る。何気なく手を挙げたブレイカーに全員の視線が集まる。彼はニヒルに笑みを浮かべながら、ウェイバーに忠告した。

 

「陣地防衛に最強のアドバンテージは確かだ。だがな、こと陣地破壊において、俺以上に適したサーヴァントは存在しないぞライダーのマスター」

「な」

「がははは。その通りだな。陣地を無力化する規格外が居るのだ、他に言う事もあるまい?」

 

 ブレイカーの破壊。それは、結界や罠などの魔術的要素なら、何の苦労もなく破壊できるスキルでもある。そこへ、ライダーの戦車も交われば、キャスター側にとっての敗北に等しい。そして、ブレイカーは先日キャスターの宝具と戦い方を観察し、情報を持ちかえった。

 

 

「えらく今日はやる気だな?」

「当然よ、我がマスターがやっと功績らしい成果を見せたのだ。ならば余もまた敵の首級を持ち帰って報いるのが、サーヴァントとしての心意気というものだ」

 

 そう言って今宵の戦いを決めたライダーは、さっそく家から抜け出し、召還した神威の車輪にアルカとウェイバー、そしてブレイカーを乗せて空に飛び立つ。空を駆けながら、目的の様子色の入口を目視できる所まで接近する。

 

「柵があるな。戦車で通れるのか?」

「柵なんてもんはな、突破するのがイスカンダルの流儀よ」

「だそうだ、掴まってろマスター諸君」

「うぁあああ」

「おー」

 

 

 問答無用で強行突破を行うライダー。雷を纏った雄牛に牽かれて神威の車輪が用水路の柵を、物ともせずに突入。突入時、アルカとウェイバーに掛る衝撃を月霊髄液が2人を包みこむ。

 

「狭くないか?」

「だな、少し小型にするとしよう。はぁ」

 

 あまり横幅が大きいとは言い難いライダーの戦車は、いたる個所が縮小して、用水路の通路を走行しやすいサイズに変形する。便利な宝具だなとブレイカーが感想を抱いていると、彼のマスターが目で訴えかけてくる。お前は何か宝具はないのかと。

 やれやれと首を振る事しかできないブレイカーは、上がり下がりの激しいマスターの評価に苦しめられていた。

 

「あれは、ブレイカーの言ってた」

「……たこ」

「少し違うな。少なからず海産物であれが出たら俺は、漁業組合を破壊する」

「めんどうだ。突破するぞ」

 

 ライダーは、前方で群れをなして蠢く海魔を強引に駆け抜ける。雷を纏った雄牛の蹄で踏みつけられ、電撃で肉を焼かれ、車輪に牽かれる海魔達はたちまち肉塊に変わる。

 

「ALaaaaai!!」

「すごい」

 

 ライダーの宝具の威力は、移動するだけで破壊をもたらすほどだった。キャスターが陣地防衛に用意していた海魔達がほぼ全滅する。そして、戦車が辿り着いたのは、とても大きな地下空洞だった。

 

「これ、貯水槽かなんかか?」

「どうやら、キャスターの奴は、留守のようだな……ん」

 

 護りの完全な内側に入り込んだウェイバーは暗い周囲を見渡して、どういう場所なのかを判断する。だが、陽気に攻め込んだはずのライダーは、英霊にしか見えないような暗闇の穴でも、その光景をはっきりとらえ、黙りこむ。

 

「ブレイカー、小娘の目を塞げ」

「もう塞いでる」

「何言ってるんだよお前ら」

 

 ライダーがアルカに気を掛けると、アルカの両目をブレイカーが手で塞いでいた。何故そんな事をしているのかわからないウェイバーが2人に問い詰める。アルカも目を塞がれ、好奇心が満たされないため手を退かそうとする。だが、ブレイカーとライダーは苦い顔をしたまま、暗闇を見据える。

 

「坊主も、これは見ない方がいいと思うぞ」

「子供と一緒にするな! どのみち、此処で何かヒントを探さなきゃなんないんだ」

「そりゃそうかもしれんが、止めとけ。こいつは貴様の手には余る」

 

 ライダーが心から、ウェイバーを心配して言うが、アルカと同等の扱いが気に入らないのか、ウェイバー手に持った簡易礼装に魔力を込め、天井に放り投げる。それは照明の代わりとなり、緑の光で周囲を照らす。そのまま、戦車を下りて手掛かりを探しに向かう。

 

「……見えない」

「お前は見るな。絶対に。こんなもの見たら、お前が汚れる」

「……んー」

 

 目を覆う手を必死に退かそうと水銀を用いてまで、抵抗したアルカ。だが、ブレイカーの真剣な声と、彼女を気遣った態度に大人しく従う。そして、貯水槽に踏み込んだウェイバーは、点滅する照明で浮き彫りになった、地獄を見た。

 ふと踏み込んだ場所から血飛沫があがり、彼の頬を濡らす。そして、視線を落とせば子供という材料を用いた家電が其処にあった。口と目にランプを埋め込まれ、頭部と胃袋以外は、なくなり、なおももぞもぞと蠢く作品。それだけではなく、良く見れば周囲一帯に狂った芸術家による血と肉を用いた芸術作品が、転がっていた。

 

「は、、うう、おえええ」

「だから、言ったであろう。こいつはお前の手に余ると」

 

 その地獄に、ウェイバーは胃から沸き奢る吐き気をこらえきれず、嘔吐する。その姿にライダーが注意した理由を告げた。彼はこの光景がウェイバーの心を傷つける物だと分かっていたからだ。

 

「く、なんでこんな事、出来るんだよ……これが本当の魔術師だって言うのかよ……」

「違うなウェイバー。これは魔術師なんかじゃない、確かにそう言う一面もあるのが魔術師だろう。だがな、これは唯の外道だよ。子供を生贄にする段階で、どこかぶっ飛んでると思ったが、これ程とはな」

「……だいじょうぶ?」

「坊主、お前の感性は正しい。もしこれを見て、眉一つ動かさぬやつが居たら余がぶん殴っておるわ」

 

 そう言いながら、嘔吐して苦しむウェイバーに歩み寄るライダー。そして、アルカの目を抑えたまま同じく戦車を下りるブレイカー。2人は、ウェイバーの感性こそ、人間らしいと賞賛する。ブレイカーもウェイバーがこの光景に何も感じないのであれば、アルカから引き離す事も考えた。

 ようやく気持ち悪さから、どうにか立ち直ったウェイバーが、悔しそうにブレイカーとライダーを見る。

 

「そんなこといって、お前らは全然平気そうじゃないか!」

「だってな、今は気を張ってそれどころじゃないわい」

「マスター、絶対に目を開けるな」

 

 声に覇気を纏ったライダーと、アルカに目を瞑るように伝えたブレイカーが、それぞれ殺気を全身から滾らせる。英霊2人の殺気は、またたく間にキャスターの工房中に伝わる。

 

「ふん!」

「ちっ」

 

 ライダーは、腰に刺した剣を振るい、ブレイカーは強化した手刀を払う。2人が同時に弾き飛ばしたものは、投擲用の短剣だった。二本の短剣が別々の方向から飛来し、それを察知した2人が対処した。そして、弾き落した短剣を拾ったライダーがそれを大きく振りかぶる。

 

「なんせ、マスター達が殺されかかっているんだからな」

「ぐああ」

 

 ライダーの投げた短剣は、暗闇に潜んでいたアサシンの頭部を貫いた。悲鳴を上げて、アサシンの一体が消滅する。それにはウェイバーもびっくりである。

 

「アサシン! やっぱり死んでなかったのか」

「驚いている場合じゃないぞ坊主。囲まれておる」

「……全然分からない」

「大人しくしとけ、ライダー。アルカとアンタのマスターを、俺がこいつ等を皆殺しにする」

 

 その場に現れたアサシンの数は、10体。それぞれが得物を持って、ライダーとブレイカーを包囲する。奴らが狙うのがマスターである以上、一切の手加減と油断はできない。

 

「この数に二人で勝てると?」

「お前らの一匹は、既に殺している。あの弱さから考えるに、ライダーと俺の二人にお前らが勝てるつもりなのか?」

 

 アサシン達は、彼の言動で聖杯戦争開幕前に殺された個体、それを殺したのがブレイカーだと理解した。自分たちアサシンに気配すら察知させない腕の持ち主。それは、アサシン達にも脅威だった。

 

「来ないなら、こちらから行くぞ暗殺者共!」

「ぐええ」

「あぎゃ」

 

 今回の聖杯戦争において、最強とも言える肉弾戦の使い手ブレイカー。彼は自身の肉体を凶器としながら、アサシンの反応できない速度で距離を詰め、最初の一体の首を手刀ではね飛ばし、反撃にナイフを投げたアサシンの攻撃をしゃがんで回避、地面を4足歩行で駆けだし、もう一体のアサシンの首を鷲掴みにし、握りつぶす。その握力は、英霊の首ですら簡単にへし折り、2人のアサシンを死に追いやった。

 

「く」

「おう、アサシン共。隠れ潜むしか能の無いお前達が、ぞろぞろと出てくればこうなるのは当然だろう。これ以上被害を出したくなく無ければ、引くがいい」

 

 ブレイカーがアサシンの注意を引いた隙にライダーが、アルカとウェイバーを抱えて戦車に騎乗していた。このままでは、白兵戦でバーサーカーとも打ち合った英霊と宝具に乗ったライダーの相手をしなければいけない。どう考えても旨みが無さ過ぎる状況に、一人だけ女性型のアサシンが答えた。

 

「では、引かせてもらいましょう」

 

 彼女がそう言うと、8体のアサシンはその場から消える。気配遮断スキルを使って逃げた彼等を見つけるのは困難だ。だが、嗅覚を強化し続けていたブレイカーが「どうやら本当に引いたようだ」と伝えたことで、初めて警戒を薄める。だが、周囲にひろがった地獄が無くなった訳でなく、ウェイバーは悲惨な死を遂げ、または死ぬ事も出来ない子供たちの事をどうするか考える。

 

「ライダー、ここはどうするんだ? このまま放っておくのか?」

「いや、ぶち壊せるだけ壊していく。それはそれでキャスターの足を引っ張る戦果にはなる」

「生き残りはどうするんだ?」

「坊主。ここまでくれば、殺してやった方が情けってもんだ。ブレイカー、お前も」

「わかっている。全て壊すさ」 

 

  ブレイカーが全身に刻印を浮かび上がらせ、近くにあった柱を拳で打ち砕く。その瓦礫が、キャスター陣営の作品をぐちゃりと潰す。苦しみ暇すら無い速やかな死だっただろう。それを皮切りに、ブレイカーは走りまわしながら、次々に柱を粉砕していく。ライダーも神威の車輪を動かす為、手綱を握り走り出そうとした。

 

「では、余も行くかな! 哀れな子供たちよ。せめて、安らかに眠れ」

「待ったライダー!」

「な、なんだ」

 

 だが、ウェイバーはライダーを静止。ライダーの質問に答える前に、戦車から飛び降りた彼は、地面にしゃがみ込んで何かを抱えて戻ってくる。その様子を見ていたライダーが首を傾げ、戦車まで戻ってきた彼が引き揚げろと言うので、手を貸す。そして、戦車に戻った彼の抱える物を見て驚く。

 

「坊主、それは」

「生き残りだ! まだ、無事な子供が居たんだ」

「……ウェイバー、目開けていい?」

「息もしてるし、怪我もしてない。とりあえず、此処から連れ出そう」

 

 ウェイバーの抱えていたのは、紫の短髪で白いワンピースを着た褐色肌の少女。年齢はアルカと変わらないくらいで、この地獄で唯一の生存者と言える。だが、その子供を見たライダーは何かに勘づくも、「まぁ一人が2人になっても変わらんな」と戦車を走らせた。ライダーが走らせた戦車は、ブレイカーと同じくキャスターの工房を次から次に雷で火の海にし、悲劇に見舞われた作品たちを楽しにして行った。

 

「あらかた壊してきた」

「余達もだ。これ以上は此処が崩落しかねん。いくぞ」

 

 これ以上はしらを壊すと、その辺り一帯が崩落しかねないため戻ってきたブレイカー。ライダーもこの場所を離れる事に決め、ブレイカーを戦車の乗せる。そして、キャスターの工房を火の海にしたまま、ライダー達は入ってきた用水路を通って、川へと抜けだす。そのまま停車せずに空に飛び上がって空へと駆け上がる。相変わらず速い、強い、便利な宝具だとブレイカーが、座席に凭れてウェイバー達に目線を向けた。

 

「え」

「なんだよブレイカー」

「いや、何で増えているんだよ」

「まぁなんだ、流れって言う奴だな」

 

 ブレイカーの目線の先には、ずっと目を瞑っていたせいで眠ってしまったアルカとその隣で静かに眠る少女だった。その二人を見守っているウェイバーと戦車を操縦するライダー。状況が今一理解できていないブレイカーは、夜空を眺めるしかやる事がなかった。

 

「聖杯戦争の陣営というか、託児所になってきたな」

「言うなブレイカーよ。薄々余も思っていたのだ」

「う、うるさい。何かキャスターのヒント知ってるかもしれないだろ!?」

 

 ウェイバーには、子供拾ってくる癖でもあるのかと、2人の英霊は大変失礼な称号をウェイバーに抱きかけた。 

 





 今回はキャスターの工房へと攻め込んで見ました。原作どおりですが、一つだけ変化が起こっていますね。最後に現れたのが、一体誰なのか。それは何時か……。

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