Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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明けましておめでとうございます。


祈りの泉

 セレアルトとアルカが正面から睨みあい、お互いに相手を消し去ろうと根源から取り出した知識を利用して、激しい砲撃戦を繰り広げる。

 

 空を飛ぶアルカに抵抗してセレアルトも浮遊魔術で浮かびあがり、人理焼却の炎を自在に操って攻めていく。状況で言えば、聖杯を取り込んだ怪物(セレアルト)の方が優位だった。アルカの用いる魔術は全て、過去のものであり人理焼却による不可逆の消失に無効化される。

 しかし、アルカはそれを理解したうえで質量の暴力のように、次から次に魔術を叩きこむ。次第に聖杯との融合が安定していくセレアルト。時間が立つごとに魔力は増大し、呪いと炎の両方を操る災厄となりつつある。 

 

「ウフフフ、そんなゴミみたいな魔術で、私に通じると思っているの? アルカァ」

「ん。私は貴方を倒すために帰ってきた。600年前から続く連鎖を、断ち切るために」

 

 七色の魔眼と黒の混じった七色の魔眼が相対。互いに根源から相手を打倒する技術と知識を引き出し、神代の時代を彷彿とさせる激しい魔術による攻防が行われる。

 

「600年前……、そう。思い出したの?」  

「ん。私は貴方じゃない。大切なことだった、もう私は貴方に迷わされない。今日ここで全てを終わらせる、そう宣言する――お姉ちゃん」

「そ、そう。私をそう呼ぶってことは、覚悟はできているのよねロナアルカアア!」 

 

 アルカがセレアルトを見つめながら放った人事。それがセレアルトの神経を逆なでし、激怒させる。体中の血管が浮かび上がり、セレアルトが口を開く。そして、小聖杯から漏れ出す呪いを集中して放つ。まるで流の息吹のようなの攻撃を放つ。

 放たれた呪いは瞬時に全てを汚染し、腐らせる。聖剣の一撃にも似た魔力による直接攻撃。それに対してアルカは、胸に手を当てながら、口を開く。

 

「install」

 

 アルカにのみ許された内包魔術を発動。黒騎士アーサーの攻撃を綾香が防いだのと同じ方法で、膨大な魔力を吸収しながら自分の体内にある内包世界へと封印していく。放出した傍から、次々に吸収していくアルカ相手に無駄だと悟る。人間や英霊なら一撃必殺でもアルカの内包魔術の前には、ただ燃料を投下しているだけ。

 呪いの息吹だけでなく、人理焼却の炎を矢のように放つセレアルトだが、その全てが悉くアルカの中に内包されていく。 

 

 とはいえ、アルカはすぐにその場から離れるように高速で飛行を始めた。

 

(内包魔術でも人理焼却全てを取り込むのは不可能……根源が教えてくれないから、本当に不便)

(……おそらく弱点は把握された。そろそろ使わないといけない。……大丈夫、もう見つけているのだから)

 

 戦いの中でセレアルトはアルカの弱点を探す。同じ根源接続者といえ二人は別の個体。性能や性格に差がある。それを考慮すれば僅かばかりの勝機をつかめる。 

 一方でアルカも、切り札の発動準備を戦いの中で整えていた。セレアルトです知り得ない裏側で、前世の自分との邂逅を経て手に入れた力。

 

(……本来なら、選別まで発動まで3時間かかる。それは根源に繋がった後も同じ、けれど)

 

 アルカは自身の新たな力を完全に把握した。それゆえに弱点も理解している。しかし、そんな弱点を補う協力者が二人現れたのだ。その二人は、幻のようで現実。

 確かな力としてアルカの後押しをしてくれた。だからこそ、今アルカは自分の力を振るえる。

 

 セレアルトの炎と魔術の砲撃を防ぎ切り、セレアルトと十分な距離を取ったアルカは全身の魔術回路を停止させる。その行為にセレアルトの思考が一度停止する。魔力の精製がなくなり、空を飛ぶこともかなわないアルカは地面降り立ち、静かに目をつむる。

 完全無防備な状態で相対する妹にセレアルトは幾重にも思考を巡らせるが答えが出て気はしない。

 

(……力に魔力は不要。ただ、選べばいい) 

 

 アルカは頭の中に無限にも等しい数で浮かび上がる文字や映像を認識する。正に広大な宇宙がそこには存在し、アルカはその無限に等しい星々の中から、特に輝く星を4つ選び出し、それを優しく摘まみ取った上で、胸に抱きしめる。

 あくまでイメージでしかない光景だが、胸に抱きしめた星が光り輝き、やがて太陽のように熱を持った力となる。

 

 

「何をするつもり」

「顕現させるは、祈り」

 

 アルカが目を開くとともに、彼女の体から強烈な輝きが周囲に起こる。思わず目を瞑りそうになるセレアルト。根源の知識ですら認識できないそれに、身構える事しかできない。

 

「……見なさい。この世から失われた六番目の奇跡。第六魔法・祈りの泉(エゴカラト・プライレイ)」

 

 アルカが第六魔法を発動。瞬時に世界そのものが歪むような違和感を全世界の人間が感じ取った。特に感じ取る力に優れる野生の生物や魔力を持つ生物などははっきりとした違和感を覚える。だが、彼らには何が起こったのかは理解できなかった。

 魔法の厄介さを身を持って理解しているセレアルト。彼女は最大限の警戒をしながら炎で自分を覆う。しかし、待てどもアルカが何かをする様子がない。

 

 しかし、迂闊に動く事は出来ないと様子見に徹する。根源からの情報でなく、セレアルトが妹に抱いている恐怖からの行動だった。唯一彼女にとって得体のしれない存在が妹だ。生前は、理解することなく殺して吸収した。目覚めてからのアルカは、セレアルトと融合していた事もあり理解できた。

 だが、セレアルトと完全に決別したアルカを理解することは、不可能。だが、確実な予感がある。

 

(ロナアルカは、私の天敵に違いないわ)

 

 この世全ての悪と一体化しているセレアルトは、七色の魔眼でも認識できない相手の魔法を本能で理解していた。呪いで構成される自分にとってアルカの力は対極だと。

 そんなセレアルトの様子に、アルカが口を開く。

 

「……私の魔法は祈りを昇華すること。無限に増え続ける祈りの中から、私が掬い取ることで奇跡を起こす魔法」

 

 奇跡を持って、絶望へと挑む。神々の争いのような姉妹の死闘が始まる。 

 


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