Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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遅くなりました。次回も不定期です。


騎英の手綱

 士郎達が、使い間で空を飛んでいく間に凛とセイバーは、誰よりも早く大聖杯の塔に辿りついていた。地獄への入り口のような場所に侵入すれば、塔の外見に合わない広大な空間が広がっていた。

 

 めちゃくちゃだと凛が怒りながら、中を進めば無数の影を操る桜がそこにおり、彼女はずっと大事に持っていた衛宮士郎に左腕を探していた。

 そして、彼女の狂気に染まった目が凛とセイバーに向けられる。

 

「あ、ねえさん。そっか、姉さんが取ったんですね、私の先輩を。ゆるせません、絶対に許せない!」

「桜、もうやめなさい。貴方達のやろうとしていることは」

「姉さん達のせいで、何度先輩が死んだと思うんです? いつもいつも先輩は貴方達を守って、でももう安心です。私が先輩を守るんです。ねえさん達には先輩は護れないんです」

 

 明らかに会話が成立しない。けれど、桜の表情は至って真面目で、衛宮士郎が凛達のせいで死ぬと確信している。だからこそ自分が守って見せるのだと。ゆえに全ての敵意は、凛へと向けられた。100匹近い宝具に匹敵する影の使い魔達が、凛めがけて駆け寄ってくる。

 それに対してセイバーが「凛、下がって」と護衛を買って出るも、凛はそれを断る。

 

「セイバーは力を温存しておいて。桜は私が倒す。―――Es last frei、Werkzung(解放、斬撃)!」 

 

 

 桜に対抗する策は持ってきた。咄嗟に宝石剣を起動、迫りくる影の使い魔の群れに一閃を放つ。その光は、全てを飲み込む影を切り裂き、凛の前に突破口を開く。狙うなら一瞬の勝負であり、凛は強化魔術で全身を強化しながら、前に進む。

 ひるめば、迷えばその瞬間八つ裂きにされる。なら前に走る。邪魔な壁だけを切り裂き、桜へと駆け寄る。

 

「どうして、姉さんばかり、なんでもそう。あげくのはてに先輩まで、ゆせない!」

「Es last frei、Werkzung(解放、斬撃)! 貴方に何があったのか私にはわからない、何より貴方がそこまで追い込まれていることに気付かなかった、自分が許せないわよ!」

 

 自分が今の凛に負けるはずないと、自分の力を理解していた桜だが、無限の魔力を駆使して使役する使い魔達を蹴散らしながら、凛は足を止めることなく突き進んでくる。聖杯と繋がる桜が、凛に押される理由は二つある。

 一つは間桐桜の戦闘経験のなさ。元々まともな魔術訓練を積んでいなかった桜は、魔術戦においての経験値は低い。

 間桐の家庭で、桜にあたえられたのは魔術の知識ではなく、調整という名の凌辱。元々遠坂家の二女であった桜は、姉と同じく優秀すぎる才能を持って生まれ、間桐へと養子に出された。だが間桐の頭首は、桜を次代の間桐を産む胎盤としての役割しか望んでいなかった。ゆえに彼女の持つ魔術の性質を間桐へと調整するため、蟲に犯され、体質が変化するほどむごい時間を過ごした。 

そんな彼女が戦闘訓練を受けたはずがないため、魔力に頼りきった単調な戦法しか行使できない。

 

 もうひとつは、聖杯から魔力を汲み取ることで尽きる事のない魔力だが桜の一度に使える魔力量は、決まっている。その総量はおよそ千であり、偶然にも姉である遠坂凛と同等。凛も第二魔法による魔力供給で、魔力に制限はない。

 二人の姉妹は偶然にも全く同じ条件、正しくは凛の方が実戦経験という面で有利な戦いとなった。

 

「そんな筈―――Es erzahlt(声は遠くに)――Mein Sc(私の足は)hatten nimmt(緑を覆う) Sie!」

「この程度で!―――Es last frei、Werkzung(解放、斬撃)!」

 

 桜が迫ってくる遠坂凛と言う存在を影の使い間に襲わせる最中に、凛が手に持つ宝石剣の放つ眩い光で10匹近い使い魔を一撃で切り裂く。

 

「どうして、姉さんの魔力はもう空っぽのはずじゃ」

「空っぽよ。けど、現にこうして魔力を補充できる。力に振り回されてる貴方なら、これで十分よ」

「く、こんなの!

 どうせ、すぐに限界が来るはず」

 

 桜は、相手のむちゃくちゃな力に制限があると予想する。それは正しい。今現在も宝石剣を振るい、小さなエクスカリバーのように光の斬撃を放ち続ける凛。だが強大な力には代償がつきもの。

 その代償は一発放つたびに、凛の腕の筋繊維が断裂することだ。激しい痛みとともに、腕が動かなくなってくる。しかし、相手は怪物だ。痛みで済むなら我慢して前に進む。

 

 今この瞬間だけ、凛は最強の怪物を退けられる。そして、近づいてくる凛(姉)の勢いにおされぎみの桜は、自分の体に纏う影の触手を凛へと振るう。だが、凛もその攻撃を一度見ていたことで、回避に成功する。

 反撃とばかりに、宝石剣を振るえば。桜は本能から無数の影を壁にすることで光の斬撃を防ぎきる。そして、ガードに徹した桜の元へ誰よりも早く凛は走る。

 

「ふざけ、ないで。こんなの、こんなの不公平です!! いつも姉さんばかり、なんで、どうして!」

 

 桜は、自分に追いすがり超えようとする凛に恐れを抱き、がむしゃらに影で攻撃を仕掛ける。無駄だと理解しているが、感情が抑えられない。セレアルトに起こりうる未来を見せられた桜。彼女が見たのは、彼女の中で幸せを感じられる大事な存在、衛宮士郎の死だった。

 その光景を何度も見せられ、いつも原因は姉や他の人たちだった。いつも先輩は自分を顧みず、自分から死にに行く。それは勇気ある行動だろう。だが彼は彼が死んだ事で悲しみ人のことを考えていない。

 ようやく手に入った幸せ、それを先輩自身が捨てて行ってしまう。ゆえに、彼にとって桜は踏み止まるに値しない。それはひどく悲しかった。そして何より許せなかったのが、衛宮士郎が姉である遠坂凛を選んだ未来だった。

 

 その光景を見た瞬間、桜の中にたまり続けていたどす黒い感情が彼女の心を突き破った。それがセレアルト(この世全ての悪)との契約した原因だった。

 

「私は、ずっと地獄の中にいた。死にたくても、ひとりで死ぬのが怖くて、惨めなまま生きていきことしかできなかった。なのに、ずっと私の手の届かない場所にいた、姉さん、私のことなんて全く気にしないで、なのに、なのに」

 

 あふれ出る感情の激流が、桜の思考を混乱させていく。ただ脳裏にあるのは凛を許せないという本能のみ。憎いという感情が桜を染め上げ、影の使い魔を突破して眼前に迫る凛へと憎悪と共にぶつける。同じ家に生まれたのに、姉と自分の境遇の差。

 ずっと光りの道を凛が歩んできた時間、桜は闇の底にいた。ゆえに、何でも手に入れ、衛宮士郎すら奪っていく姉が許せなかった。

 

「く」

 

 凛もさすがに至近距離での触手を回避できず、脇腹を触手に貫かれる。だが口から血を流しながらも、凛は刺さった触手を切りすて、桜に迫る桜の口から語られる心のうち。それを聞いて遠坂凛は止まれるはずがない。そして、傷だらけになりながら、一歩また一歩前進し桜との距離をゼロにする。

 殺される。そう考え、目をつむってしまう桜。

 

 

 だが、まてども痛みは来ず、血のにおいと10年以上触れ合うことのなかった姉の香り。そして身を包むような暖かな感触だけが桜に与えられた。目を開けた桜は、自分が凛を抱きしめていた。彼女の傷口から流れる血が、桜に現在の光景に、現実味を帯びさせる。

 

「本当に、バカだ私。――――貴方の気持ち、全く理解できてなかった」

「――――――ねえ、さん」

「――――――いまさら何をって思うかもしれないけど、私は桜が大好きよ。別れてからもずっと見てた、貴方には笑ってほしいって」

「なにを」

「帰りましょう桜、貴方のつらかった思い、全部受け入れるから、私と一緒に」

 

 凛は、腰に刺していた破戒すべき全ての符を取り出す。この宝具によって桜とセレアルトの繋がりを断ち切るつもりだった。彼女を連れて帰る。それだけが凛の目的だった。体中傷だらけだが、桜を殺す選択など出来ず、凛は自分の甘さを自覚しながらも、たった一人の妹を選んだ。

 桜は姉に抱きしめられて、現状が理解できないでいた。ずっと自分は一人ぼっちだと思っていた。なのに姉は自分を傷つけた相手を抱きしめ、涙を流している。かすかな温かさが桜の中に広がる。

 

 

「ちょっと、痛いわよ。ーーーーえ」

「凛!」

 

 ルールブレイカーを突き刺そうとしたとき、再蔵の背後に黒い膨大な魔力の塊が霊体化する。突然のサーヴァントの存在と、その膨大な魔力から感じる次元の違いが凛の動きを止めた。それは恐怖に他ならなず、捕食者に対する獲物の心境。

 咄嗟にセイバーが飛び出し、黒い騎士のような英霊に斬りかかるも、黒騎士はセイバー(アルトリウス)の聖剣と同じ形の剣を軽く二度振るう。決して同時ではないが、神技のような神速の剣が、セイバーの黄金の剣に叩きつけられ、激しい火花とともに、小柄のセイバーが吹き飛ばされる。その際、聖剣に刃溢れが生まれる。

 最優のサーヴァントですら一瞬の抵抗すらできない圧倒的な強さ。正確には反則な強さだった。魔術師である凛以上に、強いセイバーすら次元の違う相手。

 

 その兜からうかがい知れない表情、だが確実に殺気を持って桜を見ていることだけはわかる。

 

「なぜ、あなたが――――来ないでください!」

 

 桜はその存在を知っているのか、振り返って騎士と対峙する。けれど、黒い騎士が前に進もうとしたことで桜の影の使い魔が一斉にそれに襲いかかる。サーヴァントである以上、桜の全てを溶かす影には勝てない。そう考えたが、甘い考えだった。

 

 無数の影の触手が、黒い騎士に襲いかかるも魔力の爆発的な放出に全てかき消される。能力云々ではなく、その英霊の纏う純粋な魔力が、影の容量を上回っている。

 

 

「―――Es last frei、Werkzung(解放、斬撃)!」

 

 桜が作った一瞬の隙。それをついて、振るえる身体に鞭を打つことで宝石剣の光の斬撃を発動する。至近距離で発射された宝具級の攻撃。当たるとは思わない。だが隙さえ作れればと考えたが、黒騎士は手のひらを前に伸ばすと、謎の黒い鞘を具現化する。

 それを見て壁に叩きつけられたセイバーが驚愕する。

 

「それは、聖剣の鞘!」

 

 その鞘が展開されると、鞘が無数に分裂。それらが一種の結界として、黒騎士に向かった凛の攻撃を完全に遮断する。防ぐのではない、明確に宝石剣の一撃を無視するほどの宝具。本来、セイバーが持っているはずの宝具であり、持ち主に不老不死と無限の治癒能力をもたらし、この世界では無い「妖精郷」に使用者を隔離してあらゆる攻撃・交信、5つの魔法すら遮断する、この世界最強の守りとなる宝具。

 

 その名を『遥か遠き理想郷(アヴァロン)』だった。黒く染まり、異質な力を持っているが確実にアヴァロンそのものだとセイバーが理解した。

 

 桜の触手すら、その守りの前に無力化。眼前まで迫ったそれが腕を突き出し、桜の胸を貫いた。そして彼女の体から直接心臓を抜き出した黒騎士は、役目を果たしたと霊体化する。

 

「がふ―――ね、え、さ」

「桜―――――――!!!」

 

 口から夥しい血を流し、心臓を失った桜が倒れ伏す。そして魔力供給の大本である心臓を奪われたことで魔力が消え、衣服もまとわぬ姿となる。周囲の使い間も縮小化し、消滅する。

 倒れた桜を支え、瞬時に治療を始める凛。まだ間に合うと、足りない魔力を宝石剣から補充することで、死に体な彼女を治療する。

 そこに、セイバーもダメージを振り払って歩み寄り、彼女の安全を確保しなければと動く。

 

だが、黒い騎士と入れ替わるように、聖杯の魔力を纏ったライダー(メドゥーサ)が現れた。それはセイバーや凛を殺そうと考えているのか、四つん這いになりながら釘剣で持って、凛達を襲う。

 

「セイバー、治療するから動けない。援護を」

 

凛の指示でセイバーが釘剣を聖剣で弾く。

 

「ライダー、あなたまで」

「さーーくーーら」

 

ライダーは眼帯をしたたま、呟く。慎二と契約した時よりも圧倒的に強い彼女は、桜と呼びながら、猛烈な勢いで攻撃を繰り返す。

怪力スキルと俊敏性でセイバーと互角に戦うライダー。

 

そして、5分ほど激しい戦闘が続き……しびれを切らしたライダーが首を自分で突き刺すことで、黒い天馬を召喚。黄金の手綱を装着し、宝具の使用に踏み切った。

凛と重症の桜を背後にセイバーは回避できない。騎英の手綱(ベルレフォーン)の発動で魔力による弾丸となった天馬が500キロを越える速度で向かってくる。

 

セイバーは、真名解放した聖剣で対処しようにも、時間が足りない。

 

すでに閃光となったライダーと天馬がもうスピードで迫る。万事休すとなった時、聖杯の塔の壁を突き破り、空から閃光が乱入。

ライダーの騎英の手綱の一撃を同規模の威力で弾き飛ばす。謎の乱入者に阻まれたライダーが空中で待機。

 

それを見越して乱入した存在が地面に降り立った。一人は天馬に跨がった男性であり、降り立ったのは……。

 

「し、慎二」

「やぁ遠阪。傷だらけだね。桜にでもやられたのか? ……あの黒い騎士は?」

「桜の心臓を持って、何処か行ったわよ」

「治せるのかい? そんな間抜けでも、飯は上手いからね、死なれたらめんどうだし」

 

桜を見下す態度が凛は気に入らない。だが敵である慎二が何故、自分達を救うのかわからない。

 

「聞いてるんだけど、答える口無いわけ?」

「あんたね……。ーー治せるわ。けど戦闘があったんじゃ無理」

「そうかい。つまりライダー(メドゥーサ)を相手すれば、そこで寝てる奴は治るってことか」

 

そこまで聞いた慎二は、空でこちらを見張るライダーを見上げる。

 

「全くお前もとことんついてないよね。僕に使い潰され、暴走させられ、挙げ句に桜を殺さなきゃいけない。本当にかわいそうなヤツだよ。

でもさ、僕は同情しないぜ。僕の邪魔をするんだから、徹底的に殺すさ」

 

彼の挑発にライダーが突撃の準備をする。それを見て慎二の前に天馬に跨がった英霊が立ち塞がる。

 

「ライダー、いやペルセウス。命令だ。あいつを殺せ。お前なら出来るだろ」

「造作もない。今度こそ彼女を終わらせよう。騎英の手綱(ベルレフォーン)」

 

慎二の命令を聞き、天馬を駈るペルセウスが勢いよく騎英の手綱を発動する。それに引かれるようにライダーも宝具を解放。

激しい閃光同士がぶつかり合い、ペルセウスに誘導されるように凛達から離れていく。

 

「後はこうだ」

 

慎二は、蟲達を地下から呼び出し、数でもって巨大な岩を凛達を戦闘から守る壁として切り取った。そしてそれを影で運び、彼女達の側におく。

「何が目的?」

 

敵の慎二が凛達を助ける理由がない。そう凛達からすれば、理由はないのだ。

 

「決まってるだろ遠阪。桜は僕のものだ。そいつは僕が憂さ晴らしするサンドバック。桜は僕が苦しめるための道具だ」

「慎二!! 今すぐ殺してあげましょうか」

 

凛が身勝手な彼の言葉にキレる。だが飄々とした慎二は彼女の怒りを笑いながら、顔付きを真面目に変える。

 

「僕にだってさ、譲れないものはあるんだよ遠阪。桜を苦しめていいのは、この世で僕だけだ。

それは絶対に変えない。だからアルト様だって、例外じゃない。桜を利用して、苦しめるって言うんなら僕の敵でしかない。少なくとも桜が回復するまでは、守ってやるよ」

「慎二……あんた……。絶対許さないから……けど、今は我慢するわ」

「そうさ。僕に従えば良いんだよ」

 

彼の強い決意。それを聞いて凛は桜の治療に専念。その後、士郎達が落ちてくる間ずっとペルセウスを戦わせていたのだ。

 

ーーーーーーーー

 

士郎にセイバーが説明すると、士郎は投影した剣を破棄した。許せない所はある。だが今の慎二は信じられると判断したためだ。

 

「信じるぞ慎二」

「何上から目線で言ってるんだよ。言っておくがお前もだからな。

桜を不幸にしていいのは、僕だけだ。だから、せめてお前達は桜を……似合わないな。

おいペルセウス! はやく蹴散らしちゃえよ」

 

中々勝敗がつかないペルセウスとメドゥーサの戦いを急かす慎二。涼しい顔をしているが、慎二の魔力は、そろそろ限界に近づいている。

強力な宝具の連続使用は、短くなった慎二の寿命をすり減らす。

 

「わかっている。だが、中々やっかいなものだ」

「言い訳はいらない。令呪を使うぞ」

 

もう長引かせる訳にはいかない。自分はセレアルトと黒い騎士を倒さなければいけないのだから。慎二の声に反応したライダーが、ペルセウスを避け、凛達へと向かう。

 

「な」

「行かせるか」

 

慎二が驚き、ペルセウスがライダーを追跡する。セイバーは剣を構え威力を押さえた聖剣を打とうと考える。

だがライダーの騎英の手綱が迫る中、衛宮士郎は、正しい行動を理解し、結構していた。

 

まっすぐ最大速度で迫ってくる騎英の手綱。ソレの眼前に七つの花びらのような盾。

 

「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)。慎二、今だ」

「命令すんな衛宮! 令呪を持って命ずる。ライダー、メドゥーサを倒せ」

 

「感謝だ。見せてやろう限界を越えた騎英の手綱(ベルレフォーン)」

熾天覆う七つの円環に激突した騎英の手綱は、花びらを5枚ほど砕くも減速し、その隙をついて回り込んだペルセウスが慎二の胸の令呪を一つ利用して、最大を越えた威力の騎英の手綱と前面に広がった熾天覆う七つの円環ごと直進。

凄まじい速度と威力で持って、メドゥーサの騎英の手綱を上回る。酷使したことで黒い天馬が消滅、メドゥーサも瞬時に引き殺され断末魔をあげる前に消滅する。

 

「やった」

「当たり前だろ。この僕が戦ったんだ」

「あぁ。ありがとう、慎二」

「生憎だが、まだ終わってないぜ。ライダーなんて戦力ですらない」

 

そう言って天井を見上げた慎二。彼の横でセレアルトの存在を思い浮かべる士郎。

 

そうしているうちに、聖杯の塔へと遅れてきた仲間達が駆けつける。

 

「皆、ごめんなさい。手こずって遅く」

「全員揃ってんな。……おい、坊主。そっちの野郎は」

「ライダー、ペルセウスか」

 

走って入ってきた綾香達。セイバー(アルトリウス)に抱えられた綾香に追走してランサーとアサシン、そして合流していたルーラーが現れる。

ランサーはペルセウスを知っているため、槍を向けるも彼は構えすらしない。武器がないので当然だが敵意もない。

 

「皆、慎二達は味方だ。今も助けてくれた」

 

士郎が代表して説明すると、慎二が口を挟む。

 

「お前らがノロマで、頼りないからね。手伝ってやろうって訳さ」

「あん?」

 

ランサーが慎二に怒りを向けるが、槍を振るうことはない。意地を張っているだけだと背後の小次郎が告げ、制止したからだ。

 

「して、ライダーのマスター。協力は渡りに船よ。拒む理由はない。そうであろう」

 

小次郎がランサーや複雑なセイバーに告げれば、断ることはできない。

慎二とペルセウスを仲間に加える事に異論はでなかった。

ルーラーも啓示で彼らが裏切らないと感じとり、推奨した。さらに桜の治療をしていた凛が「どうにか治ったわ」と桜の生存を報告。目覚めはしないため、安静が必要だが不安要素は消えた。

 

「遠阪はここにいてくれ。あの騎士とセレアルトを倒してくる。最悪、聖杯だけでも」

 

そしてようやく塔を登るという段階で、再び大地震が発生した。

 

ーーーーーー

 

屋上で聖杯の泥によって、ガイアとアラヤ、抑止力を悪に染めていたセレアルトが歓喜の声を上げる。

 

「ちょうどいいわ。始めましょう。この世界を滅ぼしましょう。さぁ抑止力よ」

 

セレアルトは、自分の魔力の触手を抑止力に突き刺し、泥に汚染されていく抑止力に操作を加えたのだった。

 

そして、なんと巨大な大聖杯の塔が大聖杯を残してくずれていったのだった。

 

 


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