fgo主人公の名前を、アルカにしてたら孔明が来た。これは運命なのでしょうかw
セレアルトとの接触の際、彼女の意識を内包したアルカ。元々ひとつだった存在が、再び同じ肉体へと戻る。
だが唯一、200年前の生前と違いがあるとすれば……深層心理、その世界の支配者はセレアルトではなく、アルカだということだ。
そして、以前の支配者に対して新たな支配者は、冷徹に裁きを加え続ける。ステンドグラスのような床と天井のある場所、その下には遥かかなたまで続く思考の渦、記憶の根幹、眠り続けた間にアルカガ内包し続けてきたすべてが存在していた。
一度落ちれば、這いあがれず、他の意識に溶け込んでしまう奈落。そんな危うい場所で手足をつぶされ、心臓に黒鍵を突き立てられた存在がいた。床に縫い付けられ血を流す幼い少女の姿、それは沙条愛歌の姿でなくアルカの幼少期の姿だった。
ただ、その世界には本物のアルカが存在しており、成長前の幼児の姿だった。この世界では精神が具現化し、その形をとる。アルカとセレアルトに違いがあるとすれば、セレアルトには透明に近い羽根があり、黒いドレスを着ていることだろう。
倒れているのはドレスを着たセレアルトであり、彼女を見下ろすアルカの目は、憎しみに染まっていた。
「……私の一部だったものが、私を殺すのね」
「……ん。お前は許さない。アンを殺したのが、あなただとわかってた……。お前の意思を八つ裂きにしたうえで、意識の海に沈める」
セレアルトを見下ろすアルカの七色の目は、ひどく怒りに燃えていた。
この世界に誘い込まれたセレアルトは、全ての力を剥奪されたうえで支配者たるアルカの怒りを受けていた。力を奪われたセレアルトに対して、アルカの行った行動は、この深層心理の世界の住人を嗾けることだった。
精神世界の中で、セレアルトは魔術や空想具現化などの能力を失い、第四次聖杯戦争の参加者たちの魔術や技を防ぐことなどできるはずもなかった。
眉間を打ち抜かれ、蟲に体を食われ、打撃による内臓破壊、炎に焼かれ、四肢を切り落とされる。何名かは、子供の姿のセレアルトを殺すことに抵抗を感じるも、アルカが強制させる。彼らもセレアルトの脅威を知っているため協力した。
「アガアア!!」
「すっげー、この目、素でこの色なんだ」
そして現在は、動けないセレアルトを深層心理の世界の住人である雨龍龍之介がアルカの許可を経て、セレアルトの体を解剖している。痛みを倍加されたうえで目玉をえぐられる痛みに泣き叫ぶ。目をそらしたくなる光景だがアルカはセレアルトに「死ね」っと呪詛のように恨みを吐き続ける。
既に勝敗はついた。現実世界では、殺せないようなセレアルトでもアルカが自分のフィールドに引き込んだ段階で勝負はついていた。
けれど、綾香を聖杯戦争に巻き込み、アンを殺したセレアルトに対する収まらない怒りが、アルカの思考を黒く染める。セレアルトの痛みや苦しみを燃料にさらに燃え上がる恨みの炎。
「アルカ、もうやめておいたほうがいいわ。これ以上は無駄よ」
深層心理の空間の中で、もっとも権限の与えられた人格。この世界の沙条愛歌が怒りに震え、拳を握りしめながら解体されるセレアルトを睨むアルカを止める。この世界の沙条愛歌の意思が、アルカの内面に誘い込まれたセレアルトの異常な力を全て封じた。だが、優勢のはずのアルカは追い込まれていく。それは精神的に。
残酷な光景を見ながら、それが当然だと考え、恨みに呑まれるアルカ。既にこの世界にセレアルトの意思があるだけで終ったのにだ。
けれど、アルカは愛歌の手を振り払う。
「アルカ! お願い、やめなさい。セレアルトは私が封印する。だから」
「……アンを殺した。ゆるせない」
「わかってる。わかってるわアルカ。でも、このままでは貴方がセレアルトになってしまう」
愛歌は必死に止める。けれどアルカは、胸を押さえながら抑えられない感情に苦しむ。ここでセレアルトを封印しても、アルカが彼女になってしまう。それだけは避けなければいけない。
元は同じセレアルト、そこから経緯を経て、アルカという別の意思が生まれた。だが今起こっている現象は、アルカが徐々にセレアルトに近付いているという悪夢。アルカが力をつけるという事、魔術師が目指すものは、未来ではなく過去にある。
ゆえにルーツをたどるほど魔術の神秘は増してゆく。それはアルカも同じ、手に入れた人間性を放棄すればするほど力とともに、アルカ自身を失っていく。
「痛いわ、本当に痛い」
「うっそ、まだしゃべれるの? すっげー、この子本当にスッゲー」
「ありえない」
「!?」
「ちっ化け物め」
「これはまた、ずいぶんな怪物だ。死徒ですらここまではいかない」
既に原形のないほどばらされてもなお、心の死なないセレアルトは話す。それに龍之介は驚き、他のマスターの記憶たちも驚愕する。見た目が子供のこともある、だがそれ以上にケラケラと笑い始める無残な死骸を見て、驚かないものがいるか。
「けど、アルカ。あなた一つ勘違いしてるわ。綾香を巻き込んだ、アサシンを殺した? うふふ、馬鹿な子」
「……どういう」
「聞いてはダメ」
愛歌がセレアルトの意図を察し、アルカの目と耳を塞ごうとするが間に合わない。
「綾香ももうすぐ殺せる。そして貴方の愛しいウェイバーだったかしら、彼も冬木に入った瞬間、呪い殺す術式は組んでる。後はあの老夫婦だったわね、安心しなさい刺客は送るわ。それにブレイカーのサーヴァントは、今死んだわ。ご愁傷様、一人ぼっちになっちゃったわね。私が居なくても計画は進むのよ。
もう止められない。貴方が一人向かってもだれも救えない」
「……」
全てはセレアルトが仕組んだ罠。全てがアルカを絶望させ、彼女の心を追い込むための罠。冬木の中央公園に向かった綾香をセレアルトが用意した刺客が襲い、日本に向かっていたウェイバーには、呪いが用意され、ブレイカーは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)内で現れた謎の敵の一撃を受けてしまった。
そして、それが現実味を帯びる要因として、アルカの左手の令呪が消滅する。
そして、アルカの心が砕ける音が深層心理の世界に実際に破裂音として響く。
「--ふ、うふふ……イヤ、イヤアアアアアーーー!!」
「アルカ!!」
サーヴァントブレイカーとのつながり、それを断たれ。他の4人にも死を用意したというセレアルト。セレアルトは基本嘘をつかない。嘘よりも真実のほうが絶望に追い込むと知っているからだ。
深層心理の世界の中心で、我を忘れて悲鳴と涙を流すアルカ。それを抑えようとする愛歌だったが、深層心理の世界の崩壊が始まり、ステンドグラスの天井が割れる。
「貴方と私は同じ、皆を殺したのは貴方よ私」
それはアルカが必死に拒絶した事実。心の奥底のあって、目を背けていた。自分はセレアルトと違う、自分は別だと考え、否定し続けてきた。
でも否定すればするほど、自分にセレアルトの影が見える。そんな時、彼女をアルカと、マスターとして呼んでくれる彼ら。そんな彼等が皆いなくなったとしたら。
ーーーー憎い。憎い憎い憎い憎い憎い。セレアルトが、私が憎い。殺す殺す、私(セレアルト)を殺してやる。こんな世界なんて、滅んでしまえばいい。
全てを奪う自分(セレアルト)を呪った。それが引き金だった。アルカの中に内包されていたこの世全ての悪、その呪いの泥が深層心理に溢れ出す。そして磔だったセレアルトは、泥に溶け込みアルカへと覆い被さる。
「なんだこの泥」
「聖杯の泥か」
「ほう、これが聖杯の形の1つか」
「ぐああ」
深層心理の世界に広がる呪いの泥。それらはこの世界の住人達を飲み込み、溶かしていく。元々意識だけの彼等は抗う前に消えていく。
それは沙条愛歌ですら同じで、アルカに手を伸ばすもアルカが反応しない。そして泥に飲み込まれ分解され始める。
「「残念ね愛歌。いい作戦だったのだけど、アルカは消えた。呪いでもって私と完全に同化した」」
「アルカ……」
「うふふ、いいわ。いいわ。本当に貴方が邪魔で仕方なかった。でももう怖くない」
溶け始める体を支えながらアルカを救おうとした愛歌だったが、突然立ち上がり彼女を見て笑うアルカ。いや、正しくは呪いという形で同化してしまったセレアルトが愛歌を嗤う。
悲しげな表情の愛歌を見ながら、アルカ(セレアルト)は彼女の体を泥で構成したエクスカリバー擬きで突き刺す。
「あ、るか」
「さようなら。根源接続者にして、私の同類」
体を保てなくなった愛歌の意識が、深層心理の世界で完全に消失する。
残ったのはセレアルト(アルカ)だけとなり、彼女は勝利に酔う。世界の滅亡を、世界最大の呪いを始めましょうと深層心理の中で自由を感受する。
ようやく器が、己の体が手に入ったと歓喜する。それは世界崩壊のカウントダウンの始まりだった。
抗い難き絶望が始まる。
「そう、うまくはいかねぇよ。ノストラダムスの予言集、百詩篇第10巻72番。―-――恐怖の大王(アンゴルモア)」
完全にアルカがセレアルトに同化した時、完全に復活かと彼女が喜んだところで死にかけの男がそれを使った。
「あら? うぅ、うああああああ」
彼の声が深層心理の世界で響くと、セレアルトの胸に何かが突き刺さる。自分の内側から生えるナイフのような刃。
その刃が内側からセレアルトの胸を貫き、白と黒の魔力……恐怖を撒き散らす。
「ブレイカーの宝具、消滅させたはずなのに」
胸を貫く刃。それを抜こうとするセレアルトを内側から溢れる恐怖が阻害する。地球上の全ての恐怖を凝縮する刃。使う相手によってはポンコツの宝具。
ブレイカーは、ギルガメッシュと戦う前にアルカに渡していた。それをアルカは胸の間に隠し持っていた。ブレイカーお守りとして、そして希望を繋げるため。絶望を恐怖によって、退けるため渡したのだ。
この世全ての悪と同化し、さらにはアルカまで取り込んだセレアルト。だが彼女ですら突然に流し込まれる大量の恐怖という感情の濁流。それを処理しきれず、内包することで消化不良を起こす。
人間なら脳がショートし、気絶することで自己防衛する。だがセレアルトは妖精や精霊の類い。全てを処理するしかない。
単純な物理攻撃ではない、感情に関わる特殊な宝具ゆえに起こる効果。
「マスターを……」
「ぐ、ぐうう「あああああ、くぅ」」
ナイフ型の宝具からブレイカーの声が聞こえ、セレアルトは深層心理に直接放たれる恐怖の感情に苦しむ。そして、セレアルトという人格とアルカという癒着していた2つの人格が歪み始める。
「アルカを返してもらう!!」
「「あああああーーーーーー」」
ブレイカーは怒りを込め宣言する。そして、セレアルトは内側から湧き出す情報量に敗北。体が中心から裂ける形で爆散。それによって呪いによって融合した2つのアルカとセレアルトが分裂。
深層心理に溢れる泥を吹き飛ばし、二人の体を爆発が消し飛ばす。
そして、セレアルトを取り込み、硬直していたアルカの体。中身がなくなり空になった沙条愛歌の体は横たわっており、微動だにしないアルカの体だったが、深層心理が破壊されたことで、異変が起こる。
アルカの体から妖精の部分と人間の部分とが分離。片方は少女の姿でブレイカーのナイフを小さな手で抱える、もう片方は16才の姿。
幼い方が魔力が強く、成長した姿は魔力が魔術師で言えば一級品クラス。
「うぐ、おえ。やってくれたわね、ブレイカー」
先に目覚めたのは16才のアルカ。いや正しくは人間の部分に宿ったセレアルト。そうなれば分離した魔力の塊、幼い姿こそがアルカの宿る妖精の体。
その妖精を左腕で抱き上げたのは、消滅したと思われたブレイカーだった。
彼は優しく妖精(アルカ)を抱き上げると自分を睨む成熟したセレアルトに目を向ける。
「どうやって、アーサーから」
「安心しろ。俺は消滅する」
ギルガメッシュと争い、その後で現れた星の聖剣をブレイカーは受けていた。紛れもなく必殺だった。だが消滅する前に、ギルガメッシュが自分とブレイカーを王の財宝の外側へと射出した。
だがギルガメッシュも魔力が尽き、ブレイカーの背後で倒れている。彼も魔力がなければ消滅するだろう。
ギルガメッシュの咄嗟の行動で生き残ったブレイカーは、残された時間をアルカに使う。身体中が徐々に消滅する中で、ブレイカーは恨みに呑まれ、般若のように顔を歪めるセレアルトを見る。
「死に損ないめ。うふふ、私からそれを切り離して、どうするの?」
「守り通すことは出来ない。だから、こうさせて貰う」
時間はない。ならばとブレイカーは足を強く踏み込む。残った最後の魔力で全力を持って踏み込み、破壊スキルが発動。破壊したのは地面ではなく、世界。
空間に亀裂が入り、世界に穴が開く。
「え、嘘よ。させない。させない……アーサー!!」
世界の穴を見て根源に擬似的に繋がるセレアルトは瞬時に理解した。故に王の財宝の内部にいる自分のサーヴァントを呼び出す。彼女の声に従い、闇を纏った騎士が現れる。
(だが遅い)
ブレイカーが開けた穴はすぐに塞がる。それは世界の裏側に通じる穴。
とある聖槍でなければ開けない穴を開き、そこにアルカと側に気絶するギルガメッシュを落とした。ギルガメッシュは完全に巻き込まれた形だが、今さら止められない。
世界の裏側は、冬木でしか活動できないセレアルトには手を出せない領域。そこにアルカが逃がされれば、セレアルトは不完全のまま。
セレアルトが手を伸ばすも、穴は閉じる。完全な復活を遂げられないセレアルトをブレイカーは笑った。
「悲しい奴だよ」
怒りの形相をしたセレアルトの指示によって、黒い聖剣を持った騎士から黄金の光が発せられ、満足げにサーヴァントブレイカー、アンゴルモアは消滅。その魂は聖杯ではなく、座に送られた。
ブレイカーの消滅を見てセレアルトは、悔しげに立ち上がる。
「計画が少し歪んだだけよ。それに敵はもういない。やることは同じ、ふふ、うふふ。あははは、あはははは。
聖杯を手に入れれば同じことよ」
セレアルトは、手に入れたアルカの人間の体を用いたまま、転位を始める。目指すは黒き聖杯の元。
ブレイカー死す。命を賭して、マスターを逃がした。完全復活は防がれたが、絶望は迫る。次回は綾香視点予定です。
次回は不定期です。