Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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英雄王VS恐怖王(ブレイカー)

聖杯戦争というより怪獣対戦。



王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

「この世全ての終わり(ブロークン・ファンタズム)」

「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」

 

 時を遡り、アインツベルン城でブレイカーとギルガメッシュの戦い。紅い魔力の竜巻と白と黒の渦が正面から衝突。周辺のもの全てを塵に変え、アインツベルンの城が消滅する。しかし、当事者である2人は、互いに一撃を終えた後、落ち着きを取り戻し、相手の顔を見る。

 

「ふふ」

「ハハ」

 

 周囲の全てを破壊して、2人は突然噴き出す。同時に吹いて肩を震わせる2人。彼等の戦いをアルカは、霊体化して見護っていた。互いに肩を震わし、ブレイカーは額に手を当て、ギルガメッシュは腹を抑えるようにする。

 

「ふっははははは!!」

「フフフ、ハーハハハハ!」

 

 2人揃って馬鹿笑いする2人。何もかも消えた場所で二人の笑い声がこだまする。何故二人が笑っているかと言えば、今の一撃二人とも相手を一撃で葬るつもりではなったのだ。なのに結果は相手はピンピンしており、傷一つ与えることすらかなわなかった。

 全力で戦える相手、それが居る事がどれほど幸福かと2人は甘受していた。

 

 そして、大笑いを続けたブレイカーとギルガメッシュは、測ったかのように高速で移動し、ブレイカーは手刀でギルガメッシュは、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から取り出した50本の剣の射出と手に重ねるように持ったハルペーとデュランダルを振るい衝突する。

 弾幕など無かったとばかりに駆け抜けるブレイカーの手刀とギルガメッシュの持つデュランダルが火花を散らす。そして、容易く折られたデュランダルに変わり、ハルペーを振るう。通常武器は片手に一つだか、ギルガメッシュは指で挟むようにして3つの武器を同時に操っている。

 ブレイカーは彼が接近戦を挑むのが予想外だった。だが、接近戦の最中、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から射出ではない刃先の取り出しの連打によって、接近戦主体のブレイカーが攻めあぐねる。

 

次々に空間を歪めて展開される宝具。射出ではなく、バリケードの様に展開される宝具の数々、それらがしきりに展開され360度全てに気を向け、攻撃に移っても宝具を捨てるような物量の盾を破壊するだけに終わる。

 

「どうしたアンゴルモア! その程度だと言うのか」

「ほざけ!」

 

 一秒たりとも息を突く暇を与えられず、宝具の針山を駆使するギルガメッシュ自身が武器を持って、襲いかかる。手数で圧倒的に負けているブレイカー。破壊スキルではなく、元々の破壊に特化した魔力を纏い、肉弾戦を繰り広げる彼でも、物量に押され始める。

 すでの射出された宝具や破壊された宝具の残骸だけで、アインツベルン城の後地に出来たクレーター全てを埋め尽くし、宝具の山を築いている。そして、宝具の山の頂上で、待ちかまえるのはギルガメッシュ。寸前までブレイカー相手にまさかの肉薄をして虚を突いていた彼だが、いつも通り宝具の雨による射撃に戦法を切り替え、飛行する足場の様な宝具に乗って空へと昇る。距離を取らせるかと、膨大な魔力で強化を施しづけたブレイカーが宝具の山の斜面を駆け上がる。

 

「お前が人類の辿り着いた先だと言うなら、全ての死を越えてくるがいい」

 

 ギルガメッシュがそう言うと、標高100mに届く詰みかさなった宝具の山の周囲全てから王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)が展開、その数は数えるのも馬鹿らしくなる。少なく見積もっても万を越える宝具の災害。それらが一斉に発射される。狙いなど無い、発射すれば当る数の暴力。さらには、山の斜面からも、正しくは宝具の残骸の内部に展開された王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から、宝具が射出。空と地面の両方から人智を超えた死が迫る。

 

「俺の財は全て至宝。贋作にない輝きを持つ、存分に味わうがよい」

 

 サーヴァントであろうが、何であろうが即死する攻撃。核爆弾が暗殺に使われるような絶妙な不意討ちも織り交ぜられた攻撃。その攻撃を前にして、ブレイカーは笑っていた。

 面白いからだ。ブレイカーはこの世界に召喚されて以来、戦いの度に楽しんでいた。それは生前が英霊と殺し合うこと以外、する事がなかったからだ。

 しかし、マスターが弱く、被害の問題から全力も出せない状況下では、窮屈さも感じていた。普段の生活も楽しめた、現代はとても面白みに溢れている。だが、全力を出せる相手が居る今こそが、最高に昂っている。マスターも手加減を止め、自由に力を使っても封印するだけの魔力を持った。ならば、それをぶつける相手が居る事に、喜びを感じないわけがない。

   

「贋作だろうが、新作だろうが」 

 

 ブレイカーは、身体から噴き出す魔力に指向性を持たせることで、激しく回転する。その魔力は触れるだけで、宝具ですら破壊されていく代物。それが奔流の様に吹きだし、回転に乗って足元から飛び出す槍と空から降り注ぐ宝具の雨を呑み込み、全てブレイカーに命中する前に吹き飛ばされ、塵へと変わる。

 至宝の財だからと言って、ブレイカーの力からは逃れられない。弾幕にされるのは、破壊不可能な概念のある宝具達。しかし、そんなものは飾りとばかりにブレイカーの魔力放出によって消えていく。 

 

「俺にとってはぶっ壊すものでしかねぇよ!」

 

 魔力放出を脚に集中して、瞬時の跳び上がったブレイカー。先に飛んでいたギルガメッシュの飛行宝具に追いつくように、空中で加速する。

 だが、彼を見下ろしていたギルガメッシュは、狙っていたとばかりに笑い指を弾く。

 

 その瞬間、これまでで最大級のゲートが開き、中からビルよりも巨大な一振りの剣が射出される。その剣は、どう考えても人間に扱えるサイズではない。元はメソポタミア神話で戦いの神ザババが持ちいたとされる剣。斬山剣という別名を持つその名の通り、山を一刀両断出来る神創兵器”千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)”。

 そんなものですら貯蔵するギルガメッシュは、それをブレイカーへと射出する。そして、質量と重量だけで何もかも粉砕しそうな剣は、重力のほかに更に魔力を纏ってブレイカーに落下する。

 

 それはなぜか、理由は一つだった。ブレイカーの居る場所が宝具によって築かれた山だからだ。山を斬る剣である宝具が最大の力を発揮する状況を、ギルガメッシュは自分の財を使って創りあげたのだ。真名解放せずとも、用途だけで本来の力を発する宝具は存在する。

 

 突然現れた規格外のサイズの攻撃。だがブレイカーは回避も防御もしない。あるのはギルガメッシュをこの手で殺すという決意だけ。落下する魔力を纏った斬山剣、セイバーの聖剣にも匹敵する神が創りし武具。それに対してとった答えは簡潔。

 迸り周囲の宝具すら破壊する膨大な魔力を拳に集め、無限に等しい魔力で強化し続けている体で腕を振り上げる。

 山を一刀両断する剣に対して拳を突き上げたブレイカー。たとえ英霊と言え一瞬で潰れる攻撃とブレイカーは、正面からぶつかり、落下するイガリマの刀身を止める。剣と比べればアリのようなサイズのブレイカーが剣を拳で押しとどめ、更に拳を進めた。

 

「ふん」

 

 巨大な剣を拳で受けるだけでなく押し返したブレイカー。その瞬間、ブレイカーの込めた破壊の魔力が神造兵器であるイガリマの刀身を粉々に打ち砕き、崩れた破片を足場にギルガメッシュへと向かう。だが、斬山剣で視界を奪われたブレイカーは、上昇しながら上空で再び乖離剣を抜き、回転する刀身から膨大な魔力の渦を発生させているギルガメッシュを見る。

 明らかにカウンター狙いで、用意された乖離剣。だがチャージが終わっていない様子で、ブレイカーは両足から魔力を放出し続け、最大加速する。しかし、それでは間に合わない。

 

「この世全ての終わり(ブロークン・ファンタズム)」

 

 飛行するブレイカーの取った手段は、右掌からチャージ無しで破壊の魔力で組んだ魔力弾を放出する事だった。魔力の渦ではなく、散弾銃の様に発射された一発一発が破壊の概念を持つ魔力。

 しかし、ブレイカーの放った魔力弾は、ギルガメッシュが前面に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から取り出した無数の盾によって阻まれる。全てが最高の防御であり、絶対の守護。数々の護りの原典が揃い、巨大な花弁の様な形状の大盾を中心に鉄壁となる。

 

「失せろ」

 

 魔力弾の雨を逆に放つブレイカー。またたく間に巨大な盾が穴だらけになり、千を越える盾達が彼の破壊スキルの前に紙同然に破られ、エアを溜めているギルガメッシュの姿が浮き彫りになる。盾による守りは無意味。何故ならブレイカーの破壊は、威力ではなく概念。破壊力を防げても破壊しその物を防ぐ事は難しい。そして、破壊を防ぐ盾も一度地球を滅ぼした過去があるブレイカーの宝具の神秘に負ける。

 全てを終わらせる人類最後の宝具を持つブレイカーは、破壊出来ないものがない。過去に防げたものがない以上、防げない事が宝具の効果の一つとなりつつある。

 

「天の鎖よ」

 

 チャージが間に合わず、ギルガメッシュは天の鎖を周囲から取り出し、それをブレイカーに巻きつけ、拘束する。破壊の魔力を纏うブレイカーの体を拘束しても、一時的にだけ耐える鎖。

 しかし、ブレイカーには天の鎖本来の用途である神性のある存在を束縛する力は、発揮されない。ほんの一秒程動きを封じた段階で膂力によって引きちぎられる。

 数秒ではギルガメッシュの最大威力の”天地乖離す開闢の星”が間に合わない。既に1mまで迫ったブレイカーが、強化し続けバーサーカーすら凌駕するパワーで持って拳を振るう。ギルガメッシュの鎧がどれだけ強固であろうと黄金が砕け散り、英雄王の彫刻の様な体は粉砕される。

 圧倒的な宝具による攻撃を得意とする英雄王には、超至近距離での戦闘が優位。数々の原典を持つ彼は、所有者であっても極めた使い手ではない。

 

「ハハハ、死ね!」 

 

 超至近距離で振るわれる宝具すら上回った強烈な突き。すでに王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)すら間に合わない状況下で、ギルガメッシュの取った行動はブレイカーを驚愕させた。

 

「お前」

「貴様は俺を愉しませた。褒美をやろう」

 

 ブレイカーの魔力による推進と筋力A++を越える強化を施した拳を、ギルガメッシュが片腕で受け止める。ブレイカーの攻撃を受け止めたギルガメッシュの左腕は破壊の魔力で徐々に破壊されるも、微動だにせず受け止める。まるで大地を殴ったかのような手応えの無さに、ブレイカーが困惑する。

 そして、ギルガメッシュは紅い瞳を大きく開くと、チャージの終わったエアを振りあげる。

 

(零距離か)

 

 零距離の乖離剣は、まずいと全身からの魔力放出で防ごうとした時、膨大な魔力を纏った乖離剣エアを叩きつけられる。

 

「がっ」

 

 想定外のフルチャージした乖離剣エアでの打撃。完全にガードを放棄した肩に命中したそれの威力は、ブレイカーの攻撃を受け止めたギルガメッシュの謎の膂力と合わさり、ブレイカーが勢いよく飛ばされる。まさか放出ではなく、纏った乖離剣の威力を打撃に持ちいると誰が予想できよう。巨大な竜巻を叩きつけられ、無傷で済む筈がない。

 だが、追撃は終わらない。ギルガメッシュと距離を取らされた事で、前方から王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の宝剣の雨がブレイカーを襲う。空中で体勢を整えようと背中から魔力放出で殴られた事で発生する推力を減退した所で宝具の雨が降り注ぎ、それが持つ能力によって爆発や電撃などがブレイカーを襲う。

 

「お前は我に慢心を捨てろと言ったな。生前以来、初の英雄王たる我の全力、その身でもって味わうがいい」

 

 宝具の雨すら本命のための囮。ブレイカーの視界を前に向ける事で、手薄になった後方に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)のゲートが開かれ、ブレイカーを再び天の鎖で拘束しながら、王の財宝へと引き込む。突然前に進もうと魔力による推進を始める彼を阻害し、後方へと引っ張る力。前方からはダメ押しの様に宝具の雨。

 

「!?」

「まだくたばるなよ! 天地乖離す開闢の星」

 

 くたばるなと言いつつ、再び乖離剣の力を振るうギルガメッシュ。普通の英霊なら瞬時に蒸発するような魔力の渦がブレイカーを襲う。それに対して全身の魔力回路から精製した破壊の魔力を全方位に纏うことで、防御する。ブレイカーの魔力と拮抗する形でギルガメッシュの一撃は防がれる。

 しかし、攻撃の威力までは抑えられず、ブレイカーは天の鎖の張力と天地乖離す開闢の星の破壊力によって、王の財宝内へと押しこまれた。

 

 それを追う様に、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中にギルガメッシュも飛び込む。

 

(これは、現実?)

 

 二人の戦いを浮遊魔術によって、上空から観察していたアルカ。明らかにギルガメッシュの戦闘能力が高すぎるように感じるも、それと戦う自分のサーヴァント。ブレイカーの力が自分の予想を遥かに凌駕していた。

 ギルガメッシュとブレイカーの戦いで恐ろしいのは、互いにウォーミングアップの段階と言うことだろう。ブレイカーと感覚共有で戦況を理解できるアルカ。

 だが、2人の戦いが王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中に変わったのは、行幸だろう。あと数分外で戦っていれば、9割が塵になり、焼け焦げたアインツベルンの森。既に結界の効果を失い、外にも大災害として二人の戦いは知られる。

 なにより、戦闘の余波だけでブレイカーから漏れ出した魔力が空気中にただよい、世界を破壊し始めていた。30分も闘えば膨大な魔力が冬木市や隣の町を呑み込む。何もかも破壊され、生き物は苦しみながら破壊されていく。

 まさしく、この世全ての終わりが訪れる。

 

 二人の戦いが王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)内部へと変わったのは世界にとって幸福だったのだろう。 

 




 英雄王をかなり強く描写してますが、10年間ブレイカーと、言う敵が居り子ギルにならずに過ごし、試行錯誤していたと思っていただけたら幸いです。

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