そのおかげで、新太VS天津が決着します。
みなさん、どちらが勝つと思いますか?
予想しながら読んでいただけると幸いです。
それではどうぞ!
互いの思惑が交錯するこの勝負。
緊張した面持ちで眺めるのは生徒だけでなく、烏間先生もだ。
そんな中、殺せんせーだけはネスカフェコーヒーを飲みながら優雅に観戦していた。
「先生、ちょっとくつろぎすぎじゃない?」
誰かツッコめよと変な空気が流れる中、渚が指摘する。
殺せんせーは「ニュルフフ…」と短く笑い、コーヒーを啜る。
「いやぁ、やはりブラジル本場のコーヒーの方が美味しいですね。皆さん、どう思います?」
「いや、知らねぇよ!!!」
コーヒーの感想を話す殺せんせーに対してクラスの心が謎の部分で一つになる。
しかし、殺せんせーは「いやいや」と首を横に振る。
「コーヒーの話ではありません。新太君と天津君の勝負ですよ。君たちはどちらが勝つと思います?」
殺せんせーの問いにクラス全員うーんと首を傾げる。
単純だがそれは非常に難しく予想がつかないものだ。
そのため、意見にばらつきが出るのだった。
「新太に勝ってもらいたいけど、有利なのは天津だよね。新太の動きが予想出来る分。」
「天津君の暗記も凄いけど、この近距離中心の勝負だと新太の速さが上回ることも…」
「それに、新太君には主人公補正がかかってるだろうし…」
「不破さん、何言ってるの?」
中村は情報面、岡野は速度面、不破は主人公補正という主にこの三つの見解が飛び交う。
主人公補正を気にしてるのは不破だけだが…。
それには原がすかさず指摘している。
「その通りです。君たちの見解はどれも正しい。」
そう全員の意見の総括をした後で「しかし…」と殺せんせーは話をを続ける。
「岡野さん、あなたはどうして近距離中心と判断しましたか?」
「え、それは新太君がナイフで攻めてるからで…」
「そうか。」
声を出したのは普段寡黙である千葉。
目が隠れているため、表情は読み取りにくいが何か分かった模様。
視線は殺せんせーから千葉へと移る。
「ずっと疑問に思ってたんだ。この勝負はナイフだけじゃなくて銃も使っていいはずなのに2人はナイフしか使っていない。何で銃を使わないのか考えてたんだ。天津はカウンター狙いのスタイルなら嫌でも近距離主体になるから銃よりナイフの方が適している。でも、日ノ丸は得意の射撃を見せていない。」
千葉がそこまで話すと一部の生徒がハッと気づく。
新太の当初の狙っていたものが。
「そうか!新太はわざと銃を温存してるのか!相手に銃を攻めの選択肢から外すために。それでいてここぞという時に使うつもりで。」
磯貝のその推察に「うんうん」と殺せんせーは頷く。
「その通りです。おそらく新太君はそれが狙いであえて苦手なナイフで攻めたのでしょう。しかし、天津君もそれに気がついていますね。そして、気づかれてることを新太君も把握している。」
「えー、あの2人そこまで考えてるの!?考えすぎじゃ………」
「倉橋さんの言うことも一理あります。しかし、相手がお互いに油断出来ないからこそ2手3手も先を行こうとしてるのです。もはや、これは身体能力などそんなものではなく頭脳戦ですね。より相手の裏をかいた方が勝ちますね。その点に関しては、それが得意でしょう天津君が引きずり込んだ分、有利でしょう。」
その話を聞いて周りから新太への不安の声が漏れ出す。
そんな中で「いや」と切り出したのはこれまた千葉だった。
「勝つのは日ノ丸だ。俺は、あいつが隠しているものが何なのか分かる。それは、おそらく初見じゃ、いや初見でなくてもかわすのは難しいはず。」
その話に「えっ」と周りが驚きの声が上がる。
今まで新太と関わりの薄かった千葉からの発言、それが不利かと思われていた新太の勝利するという予想のためだった。
「何で分かるの?」
「それは、俺が今朝あいつが裏山でその特訓を見たからだ。何かは俺が説明するより見た方が早いと思う」
速水にそう言い返し、前を向く千葉。
彼の心を支配しているのはE組への劣等感ではなく、新太への「頑張れ」という激励だった。
千葉もまた、新太の温かさに触れ、少しずつ心に明かりが戻りつつあった。
一方、新太と天津はお互い一定の距離を保ったまま動けずにいた。
新太は相手のカウンターを警戒して、天津は相手の隠し手を警戒してのことだ。
(おそらく、ナイフでの牽制の意味を理解してきている。僕の動きが読めるなら向こうから距離を詰める方がいいのに来ないのはきっと僕の切り札を警戒しているから。銃を取り出し撃つ動作まで見切られたら勝ち目がない。ベストなタイミングで使わないと…)
(ぎこちないナイフの扱いから先程までの執拗な近距離戦はそこに意識を向けさせるたでしょう。つまり、本命は銃を使っての何かと考えるのが自然。しかし、銃を使って何をするか分からない以上こちらからは下手に近づけませんね。)
先程まで熱い近接戦が繰り広げられていたフィールドとは考えつかないような静寂が支配している。
その静寂はフィールドの熱を徐々に奪い取るかのように冷えていくものを感じさせた。
そんな時だった。
先に動き出したのは…
「やはり、そちらから動き出しましたね。」
動き出したのは新太だ。
その手には、ナイフではなくハンドガンが握られていた。
ハンドガンで標準を定めながら、天津に走ってきていた。
「なるほど、構えた状態で接近しながらの射撃。それが狙いですね。確かにそれならいつ撃ってくるか予想が難しいですね。」
予想を武器とする人にとって、ハンドガンなどの銃火器とは相性が良くない。
何故なら、指1本で攻撃の選択が出来るからだ。
ナイフや体術などの近接戦であるなら、下がりながら相手の動きを覚え、情報として扱い、予想を立てやすい。
つまり、情報が多いほどカウンターの質は増していくのだ。
しかし、ハンドガンは構え以外の情報は少なく、下がって避けることができるものでもない。
しかも、今回は身体のどこに弾が当たってもアウトのルール。
普通なら、銃を持ち出した時点でお手上げといってもおかしくはない。
「これで終わりだね。」
新太も自信満々でトリガーを引こうとする。
しかし、天津も黙ってはいなかった。
次に彼がとった行動は後ろに下がるわけでもなくしゃがむわけでもなく、右ななめに沈み込み新太に突っ込んでいくのだった。
誰かが言った。
「攻撃は最大の防御」と。
後ろでなく前へ。
まさにそれを体現するかのような機転だった。
そして、カウンターが本領発揮する近接戦に持ち込もうとする。
(ハンドガンなどの銃の欠点は狙わないと当たらないこと。つまり、1度標準から外れてしまえば狙いを定めるための時間が必要になる。そこに隙が生じる。)
天津は銃の弱点もしっかり捉えていた。
銃について、格別詳しいわけでも知ってるはない。
彼が長年培ってきた分析から出た結論だ。
一般的にこの見解は間違っていない。
むしろ、正しいだろう。
しかし、だからこそ彼はここで致命的なミスを犯してしまった。
そのことに天津はまだ気づいていない。
そして、そのミスに誘い込むことこそ新太の真の狙いだった。
新太は標準から天津が外れたことで1度銃を下げる。
(銃を下げた?ナイフを取り出すつもりか?)
新太の行動を警戒しつつ、自分のカウンター範囲内まで近づく。
新太はナイフを取り出すと、天津に突進していく。
そして、ナイフとナイフがぶつかり合う。
天津は新太のナイフの柄をとらえるとそのまま振り上げた。
しかし、そこに手応えはなく、ただナイフだけが宙を漂っていた。
「えっ……」
さすがにこれは驚き、さらに振り上げきったことにより大きな隙が出来てしまった。
それと同時だった。
パシュッ…
小さな発砲音が聞こえたのは。
天津は自分の服を確認すると、ペイント弾がしっかり付着していた。
「そこまで!天津君の被弾により、勝者は新太君!」
審判の烏間先生がこの勝負の終わりを告げる。
新太は「ふぅ」と小さく息をつき、その場に座り込む。
一方の天津はぽかんとしていた。
発砲音で銃で撃たれたのは分かった。
しかし、なぜナイフを手放したのか、狙いを定める時間が短すぎたことと納得出来ない部分が残っていた。
「新太氏、私の負けです。ですが、聞かせてください。最後なぜナイフを手放したのですか?それに、銃で狙う時間がなかったのにどうやって?」
天津は素直に自分の負けを認め、頭を下げる。
それと同時に彼の中の疑問を新太に尋ねるのであった。
新太はニコッと笑い、ぴょんと立ち上がるとズボンに付いた砂をはらう。
「天津君の唯一の隙をつくためだよ。たぶん、天津君はこう考えてたのじゃないかな。僕の切り札は射撃だって。その通りだったんだけど、それには狙う時間がいるって思ったんじゃない?僕が勝つためにはその事実をひっくり返す必要があったんだよ。」
この説明を聞いて、「なるほど」と天津はあごに手を添えて納得する。
まだ数少ない説明ではあるが、天津には新太のしたことが大方理解したようだ。
そして、勝負を傍観していたクラスの皆と殺せんせーはと言うと…
「ニュルフフ。見事、千葉君の予想が当たりましたね。」
「千葉は知ってたの?あの新太の射撃を。」
速水は千葉の方を見て聞くと、「ああ」と小さく言う。
「あの射撃は、今朝俺が来た時に日ノ丸が練習してたからな。」
千葉は、今朝の新太とのやり取りを思い出す。
「僕が練習しているのは、クイックショットっていう技だよ!」
新太はそう言うと、「どうだ!」と言わんばかりにエッヘンと胸をはる。
それを聞いた千葉は落ち着いて新太に聞き返す。
「クイックショットって、スナイパーライフルとかでスコープ通さずに目測だけで撃つ技術のことじゃないのか?」
「そう!それをハンドガンでやってみようってことで練習してるんだ!」
新太は銃をクルクルと回しながら答える。
そして、右手で銃を持ち、素早く上げると同時に的に向かってパァンと撃つ。
撃った弾はど真ん中とまでいかなかったがほぼ真ん中に当たっていた。
「どうして、そんな技を…」
「だって、殺せんせーは普通の射撃じゃ倒せないから。殺せんせーは僕たちの銃口見て、予想して動いてるから。」
新太は以前殺せんせーの話したことを挙げる。
殺せんせーは「工夫を凝らしてください」と言っていた。
つまり、それは普通の射撃では殺せないということでもあった。
新太はそれを千葉に告げる。
「なるほどな。でも、そんな朝早く来てやらなくても…」
「放課後はシューティングするから無理だよ。やるなら朝しかないよ。」
千葉は疑問に思う。
こいつ、なぜそんなに頑張るのかと…。
A組にいたことから才能がないわけじゃないはず。
そんなにやらなくていいじゃないかと…。
そして、それを素直に口にしてしまう。
「どうして…………どうしてそこまでするんだよ…」
自分はやらなかったから、E組に落ちた。
だから、今ここにいる。
もっと、やってたら…
今の日ノ丸みたいにやっておけば…
そんな後悔を、思いを滲み出すように話す。
しかし、それを聞いた新太はキョトンとしていた。
「そりゃ当たり前だよ。僕にはみんなにある「身長」っていう才能がないからだよ。僕はみんなより背が低い分、それだけで社会からも力関係からもハンデを受けてるような感じなんだ。だから、僕がみんなに認めてもらうには人より努力しないといけないのは当たり前だよ。みんなが羨ましいのはあるけど、そう言ってても始まらないからね。」
千葉は新太がどこか羨望の眼差しをして話しているのに気がつく。
千葉はここで気づかされるのだった。
自分にはなかったから後悔するんじゃない。
やってなかった自分を責めて諦めるんじゃない。
ないから、やらなかったから、今どうするのか、どうすべきなのか。
大切なのはそこなんだと。
それが勉強であっても、スポーツであっても、暗殺であっても同じだと。
「………日ノ丸は凄いな。俺もそんな風になれたらなぁ…。」
そう呟くと、新太はニコニコしながら話す。
「なれるよ。だって、千葉ちゃん眼力凄そうだから!」
「………何だそれ、訳わかんねぇ。」
新太の謎の理由にクスッと笑う千葉であった。
「朝早く来てやってるのか!?やっぱすげぇよ新太は!」
千葉の話を聞いて、前原は新太の凄さを再認識していた。
それは前原に限らず、新太と交流のある人全員に同じことが言えた。
殺せんせーは「ニュルフフ」と小さく笑う。
「まさかこんなに早くクイックショットに辿り着くとは。確かに不意をつくにはもってこいの技ですね。しかし、それとともに命中率やブレが大きくなるので相当の鍛錬を必要とする技ですが…。常識に囚われない
所変わって、勝負が決着したフィールド内。
2人に烏間先生が歩み寄っていく。
「さあ、新太君。勝負の賭けだった「頼み事」は?」
「あ、そうだった!」と新太はポンと手を叩く。
天津は「何でもどうぞ」と静かに言う。
「僕の頼み事はね、天津君への質問!」
それを聞いた天津は、ぽかんとしていた。
どんなものが来るかと思えば、ただの質問。
そのために今回闘ったのかと思うと天津にとっては非常に理解し難いものだった。
「それでいいのですか?」
「うん!その代わり、ちゃんと答えてね!」
天津は「分かりました」と小さく頷く。
しかし、天津にとって衝撃的な質問が飛んでくるのだった。
「天津君は、世界的名探偵「ACE」なんだよね?」
ちょこっと解説
〇新太がナイフを手放した理由
天津に思い切りナイフを振り上げさせ、大きな隙を作るため。
〇クイックショット
イメージはバイオ6のレオンのアクション。
意表をつくという意味で出しました。
〇E組の頭脳レベル
天津>>>>>カルマ>新太>>>>>中村………
こんな感じです。
新太は意外にも読み合いが強かったのでレベル的に高いように見えるが天津は暗記を含め、総合的に見ると天津の方が頭脳レベルは高いです。
次回予告(嘘)
唐突にもらった平手打ち
そして………
予想外の肘!!
特に理由のない暴力が寺坂を襲う!!!
次回、なんとなく公開!
このパロ1回やってみたかった。