明日の光とつがいの二羽   作:雪白とうま

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第十八話

「うっひゃー、今日も来ているなー」

「準備はいいのか」

「勿論さ。さっき、ちゃんと出演者の人達とも挨拶と打ち合わせもしたしね」

「なら、俺は見守るだけだ。いってこい」

「いってくるよ、月島さん」

派手な音楽と共に光は幕を開き駆けだす。そこには、多くの子供達と少しの大人が期待の眼差しで待っていた。

 

「皆、こんにちわー!!」

「こんにちわー!!」

光の声の数倍が響いてくる。その声に少し快感を覚え、光は拳を突き出す。

「皆、元気かー!?」

「元気でーす!!」

「アタシも元気だ!皆、今日は誰が来るか分かってるな!?」

「はーい!!」

「それじゃあ!、呼んでみようか」

 

「そうはいかん」

どこからか不安めいたしわがれた声が響き、光の反対側から黒いフードをかぶった漆黒の老人が現れる。

「出たな!ダークウィザード」

「光よ。貴様にアークセイバーを呼ばせるわけにはいかん。今度こそ、ワシの元に来てもらおう」

「アタシのヒーロー魂を奪おうっていうのか!?負けないぞ」

光は胸を隠すように、それでも前を向いて叫んだ。

 

 

-数週間前-

飛鳥が一人でポエムを書いている最中、光はダンスの練習をしていた。勿論ただのダンスではない。

飛鳥とではできないアクションの練習も兼ねている。最近は柔軟が増してきたのか少し綺麗なハイキックができるようになったと思う。

「相変わらずだな、光」

「飛鳥も頑張ってるからね。アタシも何かで頑張らないとって思うとどうしても、これやりたくなるんだ」

「ヒーローを目指す事か。いい事だ。だが、脇から見て見る事も必要だと思わないか?」

「脇?」

光はダンスをやめると月島に視線をやる。いつもの野獣のような笑みが顔についていた。

そして、手には企画書が掴まれており、光に手渡される。

 

「……ヒーローショーの司会?」

「お前の思っているヒーローとは違う一面が見られるかもしれん。どうだ?」

「月島さん、アタシはヒーローになりたいんだよ。横のお姉さんじゃなくて」

「それは勿論分かっているさ」

月島が懐から棒付きキャンディを取りだし舐めはじめる。光にも一本差し出されたので、光も舐めはじめた。

「だがな。ヒーローになって分かる事とヒーローの隣になって分かる事があると俺は思う。お前のヒロインになった飛鳥のようにな」

ヒロインの言葉に少し顔を赤くして光は考え込む。

「……ヒーローの横で勉強しろって事か」

「まぁ、そういう事になるな。ちなみにヒーローショーとかはだいたいお前が昔出会った人もいる。あのヒーローのおじさんとかな」

「分かった、やる」

キャンディを噛み砕くと光は大きくうなづいた。

 

「貴様のその純粋な魂が我らの邪魔になるのだ。貴様を闇に落としてこそ、我が野望は達成される。無論、ここにいる人間どももエナジーになってもらうがな」

「そうはさせるか!」

光は会場を目の前に大きく叫ぶ。

「みんな、ピンチだ!さぁ、みんな大きく助けを呼ぼう!せぇーの!!」

 

『アークセイバー!!』

「まだまだ、声が足りないぞ!さぁ、もう一回!」

『アークセイバー!!』

「いいぞ、さぁ、最後だ。せぇぇぇのぉぉぉぉ」

 

 

『アークセイバー!!!』

途端、BGMが変わり、光の後ろに金色の騎士が現れた。

「地球は俺の第二の故郷!ダークウィザード、貴様などに汚させはしない!」

「アークセイバー!」

「光、会場の皆。よく呼んでくれた!後は俺にまかせろ」

光はそっと会場の隅へと隠れる。

 

「アークセイバー、何度も邪魔しおって。ここを貴様の墓場にしてやろう」

「地球の力をなめるな!闇には屈しない!」

会場では魔術師と騎士の戦いが始まった。会場の皆はアークセイバーを応援している。

光は脇でじっと見ていた。自分ならどうするか、あの動きはどうすれば再現できるか。二人のアクションをずっと見ていた。

脇で見る事で気づく事がある。それを光は全体で理解していた。

 

「おのれ、アークセイバー。今日は引かせてもらうが、覚えておくがいい!」

「地球の力は偉大だ。それがある限り俺は負けない!」

歓声があがり、時間を見たとこで光は脇から出てきた。

「皆、今日もありがとうっ!これからアークセイバーとの握手会だ。良い子の皆はちゃんと並んでくれよなっ」

『はーい!』

こっそり整理をしながら、光はアークセイバーに握手する子供を見ていた。

自分もいつか―

そんな気持ちが心をよぎった。

 

これが、南条光がヒーローを目指そうと改めて思った日




遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。
そして、光と飛鳥をこれからも書いていこうと思います。

よろしくお願いします

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