明日の光とつがいの二羽   作:雪白とうま

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第十六話

「『急遽、事務所へ集合の事。緊急事態』って何なんだよ、月島さん」

光は学校帰りに、メールを受け取り事務所へと駆けていた。

「せめて、具体的な事ぐらい教えてくれよなっ……っと!」

近道の公園を通り、ショートカットの小道を抜け、事務所の階段を駆け上がる。

「皆!なにがあったー」

快音が響いた。

「お誕生日、おめでとう!!」

三人の声と拍手が湧きあがる。

「え……?」

クラッカーの紙にまみれながら光は茫然と立ち尽くしていた。

「自分の誕生日も忘れていたのかい、光?それほど、忙しかったのかな」

「なんの、これからも忙しくなくては困る。そして、もっと盛大に祝ってもらわなくてはな」

「何にせよ、今日は四人で。光ちゃん、9月13日、14歳の誕生日おめでとう」

再度、拍手が光に向けられる。光はクラッカーの紙をはらいながら

「いやぁ……そのありがと」

と、軽く手を振った。

 

「はい、というわけでケーキ作ってきました」

羽音が出してきたのはチーズケーキの切り分けられたものと苺ケーキのホール。

「何で、二つあるの?」

「もちろん、ホールは光ちゃん用よ。

光ちゃん、一度ケーキをまるごと食べてみたいっていってましたからね」

「そんな事言ってたのかい……」

「食うのはいいが、体重管理はしとけよ」

「まかせろっ!ヒーローはかっこよくないといけないからな」

飛鳥と月島に冷たい視線を受けながら光は笑いながら、まるごと食べた。

 

「ファンからも誕生日プレゼントが来てるぞ、ほれ」

月島は光に何枚かの手紙を渡した。光は嬉しそうに受け取り、一つ一つに表情を変えていく。

「これは、前にフィギュアくれた兄ちゃんから、これは親子でいつも来てくれているんだよな」

何枚かに目を通すと、光の動きが止まる。

「どうかしたかい、光?」

「飛鳥!希実ちゃんから手紙が来てる!」

「あぁ、夏の時の」

「この前、友達と山登りしたんだって!元気でやっているのが嬉しいなあ!!」

「そうだね。彼女はボク達の想像を越えるかもしれないね」

「歌の練習もしているんだって『いつか光ちゃんや飛鳥ちゃんの隣で歌いたい』だってさ。そうなるといいなあ」

「ひょっとしたら来るかもね。彼女なら」

二人は笑いながら、手紙を読み進めた。

 

 

 

「さて、俺達からもプレゼントがある」

「本当!?」

月島は大きな紙袋をテーブルに力強く置いた。光は月島に開けていいか確認すると袋を急いで開けていく。

「こ、これは……!前にあった宇宙刑事のDVDBOX!しかもサイン入り!!」

「本人に頼んでな。せっかくだから書いてもらったのさ」

「ホントだ!うわぁ、ちゃんと主役の人と、スーツアクターの人両方からだ!!」

「前々から地方のヒーローものイベントをする時に縁があってな。頼んでもらった」

「ありがとう、月島さん!何回も見てヒーローの勉強につかわせてもらうよ!」

「おう、お前がヒロインに選ばれるようになれよ、光」

月島はいつもと違う優しい笑みを浮かべた。

 

 

「私はこれね」

羽音から両手で受け渡されたのは小さなバースデーカードだった。

「ありがとう、立川さん。開けていい?」

「勿論」

光は丁寧にバースデーカードのシールを外し、中を見る。

そこには今まで頑張ってきた光へのメッセージが書き込まれていた。

そして、

「……こ、これは!」

「そう。そろそろ教えてもいい頃かと思ってね。料理が出来るヒーローもかっこいいでしょ?」

「特製カレースープのレシピ!ついにアタシの元に……!」

「光ちゃん、ちゃんと自分で作れるようになってね」

羽音の笑みはどこか妹を見るような微笑みだった。

 

「さて、ボクもバディに渡しておこうか」

飛鳥は長細いプレゼントを光に渡す。光は受け取ると、すぐに中身を開けた。

「おおっ!今やっている特撮の銃じゃないか!これ、何種類も音が鳴るからかっこいいんだよな」

「気分は弟にプレゼントを買ってあげる感じだったよ。店員さんにもそう聴かれたしね」

「それは悪かったな。飛鳥の誕生日には何倍にして返してやるからな!」

「ああ、期待しておくよ―それと」

「何?まだプレゼントがあるのか?」

飛鳥は顔を近づけ、笑みを浮かべた

「ハッピーバースデイ―光」

光の額に柔らかいものが当たった。

 

 

「……え?」

「そして、これからもよろしく。光」

どこか妖艶な笑みを浮かべる飛鳥に指を指し

「えええええ!!お、女同士でキ、キ、キ、キス!?」

「何言っているんだ、額のキスは友愛の証。海外なら当たり前だし友達だろ。

 アイドルの誓い三つ、好きなものは好きだと伝える事。ちゃんと伝えたからね」

何か、異様なものがついたかのように光は額にふれながら、

「ここは日本だぞ!?そ、それにアタシまだ」

「大丈夫。唇にはしないから。ボクもそういう趣味無いし」

「そういう問題じゃないー!」

回りでは月島が口に手を当て、笑みをこらえており、羽音は頬に手をあて、珍しいものを見たといったような笑顔を浮かべている。

「みんな笑うなー!!」

 

これが南条光が新たに年を取った瞬間




誕生日に何をあげるか。光なら分かりやすいけど何か別のモノを上げたいと思いましたので、飛鳥の行為です

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