明日の光とつがいの二羽   作:雪白とうま

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若干百合分入っているかもしれません。


第十三話

「海だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「光、うるさいよ」

「でもさぁ、やっと!やっと!海で泳げるんだぞ!!」

「とはいってもさ」

飛鳥は静かに光の水着に指を指した。

 

「いかに学生ですっていわんばかりのスクール水着はどうにかならなかったのかい?ボクらは仮にもアイドルなんだよ?」

「飛鳥だって何かドレスみたいなの着ているじゃないか」

「これはタンキニというの……一回、光と服を買いに行くのについていってあげたほうがいいかなあ」

「そうしてあげた方がいいかもね。飛鳥ちゃんもいい勉強になるかもしれないわよ」

クーラーボックスを持って羽音がやって来た。羽音も競泳水着のようなものだが、

鍛えられた体にはソリッドな感じがして似合う。飛鳥はそう思った。後ろでは月島がパラソルを立てている。

「おおっ!月島さん、いい筋肉の付き方しているねえ。細マッチョってやつか!」

「鍛え方とかアクションやっている奴らに教えてもらったからな、自然と覚えた。光も少しは鍛えているか?」

「うん!」

月島は笑みを浮かべると、パラソルの根の部分を立て、

「なら、このパラソルを立てるの手伝え。こういう日常のものから鍛えて行くんだ」

「分かりました社長!」

光もノリにのってパラソルを立てていく。それを見て飛鳥と羽音は苦笑を浮かべた。

 

 

パラソルが立ち終わり、準備が出来ると光は準備体操もそぞろに海へと向かって行った。

海に飛び込むと光は沖へと向かい、やがて潜って行った。

暗い青。

光の目の前にはそれしか無かったが、奥へ奥へと潜って行く。

やがて小さな魚の群れと出会い、底についた。

わずかだが、海藻が生えており、もう主がいなくなった貝殻があった。

息が苦しくなったので、光は海面を目指す。

そこには青く、蒼く輝く太陽が海面に照らされており巨大な月があるようだった。

「ぷっはぁ!!」

海面に上がった光は大きく息を吸い込むと三人に手を振った。三人も何かしら手を振り返してくれた。

遠くで月島が手招きをしている。

昼食の時間なのだろうと思い、光は海から上がった。

 

 

「やきそば~?」

「何を言っている、海と言えばやきそばにかき氷だろうが」

「美味しいの作るから待っててね」

羽音がへらを器用に動かしながらそばを焼いていく。

ソースと一緒に肉と野菜のどこか甘い匂いがただよってきた。

「おいしそうだね……」

飛鳥が小さく呟く。

立川が肉を切り、大きくへらをかきあげるとそれぞれのパックによそっていく。

「はい、熱いうちに食べてね」

と、青海苔と一緒に何か茶色の粉末をかけた。

「この粉末は?」

「美味しくなる魔法です」

飛鳥の問いに羽音はウインクで答えると食べるように勧めた。光と飛鳥は焼きそばをすする。

「む……!」

「ちょっと辛いけど、これは美味しい。……山椒かな?」

「なんでしょうねぇ、妖精の粉かも?」

とぼける羽音を横に光はむさぼるように焼きそばをすすり

「おかわりっ!」

とパックを突きだした。その横では口を青海苔だらけにして月島もパックを出している。

「社長も……おかわりですか?」

「多めに頼む」

結局、焼きそばは光と月島がほとんど食べつくし、かき氷を飛鳥と羽音が少しづつ食べる事にした。

 

 

昼も過ぎて夕方になり、帰る準備をし始めた。光はシャワーを浴び、

着替え終わると飛鳥が遠くを見ていた。

「飛鳥、何を見ているんだ?」

「ん」

飛鳥が指差す先には一組みの男女が腕を絡め合って砂浜を歩いていた。おそらく、二人も帰るとこなのだろう。

「へえ、飛鳥も恋愛に興味があるのか」

「恋愛とは、人間の行為の中で一番興味深く意味不明な行為だと思うからね。そういえば光は恋とかしないのかい?」

「ヒーローは一人の人を愛する暇なんかないっ!」

「言いきるね、君は青春の一ページをまったく別のモノを書きだすんだね」

「そういう飛鳥はどうなんだよ?何か、モテそうな感じがするけどな」

「ボク?」

飛鳥は妖艶な笑みを浮かべると光に近づいていく。光は何か別人を見たように驚いた。

鼓動が速くなる。

飛鳥の顔が近づき、唇が近くなる。

「光のような子なら……いいかもね。ボクが魅せられた、小さなマーメイド……」

「いっ!?」

背中に怖気が走り飛鳥の唇が耳元に近づく。心臓が早鐘を打つかのように早くなる。

飛鳥の小さな息が聴こえた時、言葉は発せられた。

 

 

「冗談だよ」

 

 

「……え?」

「あいにくボクは同性と恋する趣味は無いんでね。まぁこの年頃はそういうモノと思い込む疑似恋愛が多いそうだけどね」

「お、お、お、脅かすなーッ!!びっくりしたじゃないか!!」

「悪い悪い。光をからかったらさぞ楽しいかなと思ったんでね」

「飛鳥は悪の女幹部だ!!」

「せめて、悪女と言ってほしいね」

月島の車に逃げ込もうとする飛鳥を光は顔を真っ赤にしながら追いかけて行った。

夕日が静かに沈み、夏が終わろうとしていた。

 

 

これが、南条光と二宮飛鳥の夏の思い出。

 




かなり短いですが夏の終わりを書かさせていただきました。秋は色々イベント書けていければと思います。

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