明日の光とつがいの二羽   作:雪白とうま

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第十一話

 ボクは孤独だった。

回りにはもちろん多くの人がいた。

両親を始め、クラスメイト、先生、近所の大人たち。

でも、ボクには異質なものにしか見られなかった。

あぁ、別にボクがこう真っ当なモノだったとかそう思ってたのじゃない。

むしろボクがズレていたんだ。

 

例えば、小学校で昨日のアニメの話で盛り上がる。

普通だったら、やれ主人公の子がかわいいとか、一緒についている妖精が側にいてくれたらとかと言う。

ボクはそんな中、主人公の行動は何かの理論に基づいてやっているのかなと的外れな事を話す。

そんな回りのクラスメイトはこういうんだ。

「飛鳥ちゃんって大人だね」ってね。

 

大人がいっぱいいる時は逆の事を言われたね、

「飛鳥はもう少し子供っぽくてもいいんだよ」って

でも、ボクは大人とか子供っぽいとか分からなかった。

ただ、自分のありのままを語っていた。

理解しがたいものには近づかない。うん、自然と友達は減り、大人も何か腫れものをさわるような目で見てきたよ。

 

―光?

―いやだなあ、光が泣かなくてもいいじゃないか。

―うん、でもありがとう。君が始めてあった時にボクの言葉をかっこいいと言ってくれたのは救いだったよ。

 

 

話を続けていいかな。

結局ボクは独りの「セカイ」を作るようになった。

それが、ラジオを聴き始めたり、光にも見せた漫画を描き始めるようになった。

誰に見せる事もなく、ただ自分のセカイを何かに出したかったんだ。

エクステもその頃から付け始めた。学校ではどうしても怒られるから、放課後になったらいつも付けるようになったね。

 

そして、去年の秋かな。今の社長にして我らがプロデューサー月島さんにあったんだよ。

たまたまコンビニで漫画のコピーの原稿を忘れて取りに戻った時にね、

プロデューサーが漫画を見ていたんだ。

「ボクの勝手にみないでくれないかな?」

そういうとプロデューサーはあのいつもの鋭い目を細めて言ったんだ。

「これは、お前が描いたのか」

って。うなづくと

「少し、話す時間が欲しい。

どうだ、近くの喫茶店でコーヒーでも飲まないか」

と名刺と共に話しかけてきたんだ。新手のナンパかなと思ったよ。

それともボクの様な人を誘うなんて変な人だと思ったよ。

 

でも、それで自分が小さな芸能プロダクションの社長をしながらプロデューサーをしているのを聴いた。

そこで漫画を見て思ったんだって

「お前の世界を多くの人に伝えてみないか」

って。

でも、最初は断った。ボクの世界はボクだけのもの。他の人が共有できるようなものではないと。

それでも、プロデューサーは言うんだ。

お前の世界は、この疲れた日常に刺激的な非日常を与えられる事ができると。

それを独りで抱え込むのか。

独りで抱え込むより多くの人に知ってもらい、お前という人間がどういうものか見せつけてやれと。

そして、多くの人に刺激と癒しをもたらす事が出来るんだって。

そう言うとプロデューサーは手を出していた。

始めは払おうとしたけど、ボクの世界が通じるなら、見てもらう事が出来るなら

そう考えると、手を握っていたんだ。

 

 

 

数日後、親に挨拶しにきたけど何かすらすらと話は進んだ。両親は押し付けようと思ったのかな。

プロデューサーはそうではなく、お前の個性を伸ばせるのを信じたんだって言ってるけど。

 

 

 

 

始めは静岡の小さなメーカーのお茶のCMが始まりだった。

最悪だったよ。ボクはお茶が嫌いだからね。緑茶のあの渋み……何度飲んでもダメだ。

それでもプロデューサーは

「プロなら旨そうに飲んで見せろ」

とがんとして聴かなかった。何杯も飲んだけど、NGが出た。写真に収めてもどうしても美味しそうに飲んでないって分かるんだってさ。

困ったよ。でも、そこにお茶を作っている社長さんが見に来られた。小さなCMだけど出演してくれてありがとうって。

そこで気になったんで色んな事を聴いたんだ。お茶をどう収穫して、作って、売り出しているか。

社長さんもまだ小学生ぐらいの子がそんな事に興味を持ってくれたのか嬉しくとても丁寧に話してくれた。

それを聴いたら、あぁ、なんかやんなきゃいけないかなって思った。

もう何杯飲んだか分からない。写真を収めようとしていてカメラマンの人の目も充血し、プロデューサーもどうしようかにらんでいた。

一口飲んだ。

「お茶は苦手なんだよね」

言葉が紡がれていた。回りの空気が変わるのが分かった。でも、ボクは話し続けた。

「ただ、故郷のお茶は飲むと違うね。こう作って来た人の苦労やバックボーンが見えてくるというか、

 味からその人の心意気が見えてくる……そんな感じだね」

カメラマンの人が慌ててカメラを構えながらお茶の感想を聴いてきた。ボクもそれに答えた。プロデューサーはどこか満足そうな顔をしてお茶の社長さんに頭を下げていた。

ボクは思うままお茶について語っていた。渋みが苦手な事、でも何だか飲みやすい事。さっき聴いた社長さんの話を加えながらお茶の蘊蓄も語っていた。

「お茶が苦手なボクでも飲める。だからお茶が好きな人はもっと飲めるんじゃないかな」

と言い終わると拍手が聴こえて来た。撮影は終わった。ボクは苦い顔をしながらお茶を飲み干して大きく息を吐いた。

ホント疲れたよ。でもね、ああこういうのでセカイが動いているのかなあってちょっと思った。

 

その後、『お茶が苦手な子でも飲める』って県内では親の世代の人が買ったらしいね。子供に飲ませたいって。

後、少し静岡でCMとかしていたけど去年の冬の始まり、東京にやってきた。

そしてあの冬。いつものように冬を聴こうとしていると―光、君に出会ったんだよ。

 

そして、今のボクらがいる。うまく行かなかったり、上手く行ったりするけど、光、君とならバディとしてclose friendとして高みにいける気がするんだ。

今度の夏、2ndシングル出るよね。

 

―うん、分かっている。夏だから暑く、元気が出て、パワーの出る曲にしたい

―ボクはカップリングで夏のどこか妖しさとかそういうのを表現したい夏の陽炎や蜃気楼のような

 

だから、光。ボク達で作ろう。

最高の夏を。

 

これが二宮飛鳥の0の領域

 




ようやく夏の話が書けます。楽しみに見て下さる方のためにもよいものにしたいと思います。

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