ラプンツェル   作:朱緒

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第十五話☆共鳴と深謀遠慮

 柿うめぇ☆

 アベルが差し入れに持ってきてくれた柿が美味い☆

 来る途中にケスラーと会ったとかで、一緒にやってきた。このところ、毎回のように一緒に来るよなあ。いや良いんだけど。それにしても、まだわたしは気付かぬふりをしてやらなくてはならないのだろうか?

 まあ当主として知らない振りを続けてやるべきなんだろうな。当主って本当にめんどい……なんの話かというと、無限増殖煉瓦についてである。

 ことの始まりは………………そう、元三長官共が我が一族の墓参りをしたいと言い出したこと。

 特に問題ないだろうとラインハルトが許可を出した。この元三長官自体は問題はなかったのだが、申請すると墓参りできるのですか☆と、父さんや母さんの元部下たち、現ラインハルトの幕僚とかが次々と申請してきた。

 どいつもこいつも、私生活部分に入れても問題ないこと確実なので、許可を出したのだが……なんか墓の前が、幕僚連中の飲みに行く前の待ち合わせスポットになっていた。

 百五歩譲って海鷲に行くための待ち合わせスポットになるのはいいのだが、人によっては墓の前で酒を飲みやがるのだ。

 地べたに座って泥酔とかいうのなら「ヤメロよ」と言えるのだが、どいつもこいつも立ったまましんみりラッパ飲みで、泥酔しないどころか、最後に墓に向かって敬礼して立ち去りやがる。

 もちろんゴミなんて落とすはずもない……まあ、最初墓にゴミを盛ってるなー、もっとゴミだらけにしていいぞーとか思ったら、ゴミじゃなかった事件があったくらいだが。

 え? なんのことか? ああ、それな。わたし、ミッターマイヤーと互角はれるくらい花言葉知らなくて。なので「白い枯れた薔薇」で溢れかえってる墓を前に「ゴミ箱扱いか。ふふ☆ざまあみろ父さん、曾祖父。……あとはとばっちりか?」とか思ってたら、アレはアレ(白い枯れた薔薇)で特別な花言葉があることを知ってしまったのですよ。

 

 白枯れた薔薇 ―― 生涯を誓う

 

 意味を知った時は、はいぃぃぃぃ? でしたよ。誰がどの死者に生涯誓ってんだよ! お前らが生涯を誓うのはラインハルトだろうがあ! とか思ったが、相手が死者だから……。ゴミ捨て場にしていた訳ではなかったらしい☆

 よくよく考えたら幕僚たちは、不届き者ではないので、他人の墓の前にゴミを捨てたりはしないよなあ。

 ロイエンタールだけはゴミ捨て場にしてる感じもするんだがね。そう、なぜかロイエンタールも許可とって、枯れた白薔薇盛ってる。あれだけは間違いなく、ゴミ捨て場扱いだよな。父さんの墓だからいいけど。だって父さんあそこに入ってないし☆墓石だけ。その墓石だって、わたしお手製という適当さ☆

 それでも、本来なら注意するところだが嫁死んじゃった(フェリックスロスト)から、少し優しくしてやらなくちゃな☆

 いやね、ラインハルトが女子供も容赦なしで、リヒテンラーデ一族皆殺しにしてしまったんだよ。

 気付いた時には全員ものの見事に処刑されていて、吃驚したわ☆

 全部ことが終わってから気付いたのは、アベルのせいである。あいつのこと調べてたら全部終わってたんだ。

 もっとも知っていても、止めようないけどなー。

 リヒテンラーデ一族の処刑とか、わたしには関係ないから。

 それとなくオーベルシュタインに何で全員殺したのと聞いたら「女性も侮れませんから」っていう答えが返ってきた。

 

 きっとフランツさんを亡くしたヒルダの強さが、未来を変えたんだね。仕方ない、ヒルダ優秀だし、頭脳は一個艦隊分だし、嫁だし。そう言えばヒルダ、主席秘書官になってたなあ。着実にラインハルトとの距離が近づいている。良い傾向だ。ヒルダ、安心したまえ。腕枕しつつ毎晩あのニート共(ネオ・アンティキティラ)に治療を命じているから、ラインハルトが若くして病死する未来はない☆

 

 死んじゃったエルフリーデには申し訳ないが、個人的にはこれでロイエンタールの未来が変わるのではないかと期待している。

 キルヒアイスの時は直接変えようとして失敗したから、今度は間接的で変わるのではないかと。ロイエンタールではなくても、ケンプが今回の出兵で生き延びるとか、なんか変わって欲しい……ケンプが生き延びたらどうなるのか全く分からんが……話が逸れたな☆戻そう☆

 無限増殖煉瓦についてだが、墓の前が待ち合わせスポットになっているので、少しは整えたほうが良いだろうとわたしは考えた。

 だが業者を呼んで作業させるとなると、作業員を監視する兵士が必要になり、兵士を監督する隊長が必要となり……要するに誰かの仕事が増えてしまうのだ☆

 悪いことにワイン問題も解消されてはおらず、兵士が再び盗人になる可能性も ―― これ以上幕僚に頭下げられるのは避けたいので、業者を頼らずわたし一人で庭を造ることにした。

 幸い重機などは軍用品を借りることが可能。操縦に関しては、中佐に復帰してから、軍の資格取得に精を出し、重機の免許は軒並み取ったから大丈夫☆宇宙船外活動だって華麗にこなせる☆多分だけど。実務経験ないけど、ワルキューレを自在に動かせるからきっとイケル。ワルキューレといっても、わたしの呼び名ではな……アベルゥゥゥ! おまえのせいでな……まあいい。資材だが、これも業者に運び込ませるわけにはいかないので、わたしが自ら運び込んでいる。

 資材は一度には運び込まなかった。その理由はテロ対策が大変だからである。

 買った煉瓦は一度軍の施設に立ち寄って、危険物検査を受け、安全であるという証明書を貰い元帥府に運び込むのだが、数量が多すぎるとあげる書類も多くてね。

 奥さま特権でどうにかならんのか? って。

 なるよ☆

 でもさあ、特権使って事件が起こったら、オーベルシュタインの粛清リストに名が刻まれちゃうじゃない。それは避けたいわけよ。

 

 アイパッチつけさせて、きゃっきゃしてた男の娘なんで、粛清リスト入りしている自信はある。もしかしたら殿堂入りしてるんじゃねえかなー……ああ、辛い。辛すぎるわー。この粛清から逃れるためには、新天地を目指すしかないね☆

 

 とにかく正規の手続きを経て資材を運び込み、庭の整備を行っているのだが、ある日の朝、ふと気付いたのだ。煉瓦減ってねえ! とな。

 わたしだって馬鹿じゃない……いや、馬鹿だけど、馬鹿だけど、これに関しては馬鹿じゃない。

 幾つ購入して幾つ使って、残りは幾つかくらい計算できるし、記憶できる。だから煉瓦が増えていることに気付いた。もちろん一目で「うおっ!」となるような増え方はしていない。

 なんというか控え目に、でも着実に……。で、誰の仕業か様子をうかがっていた所、犯人は複数犯だった。

 オーベルシュタインにアベルにケスラー、ギュンターにエルンスト。たまにミッターマイヤーも二三枚持ってくる。あと何故墓参りを希望しているのか、よく分からんのだがワーレンやビッテンフェルトなども。聞けばなにか関わり合いあるのかも知れないけど、そこら辺はべつに。

 無限増殖煉瓦に関して、誰が一番恐いかって、そりゃあオーベルシュタインだけどね☆

 とにかく彼らがひっそりと寄付してくれている。

 当人たちは気付かれていないつもりというか、気付かないで下さい的な空気を纏っているので、わたしはこうして知らない振りをしている。

 いやこれがさ、身代傾けるようなことしでかしてたら止めるけど、上級大将や大将の給与からすると微々たるものだから、注意するのもアレなんで。

 そしてわたしは今日も煉瓦置き場に背を向けて柿を食っている。背後では、煉瓦が積まれている音がする ―― 柿うめぇ。お前らも食うか? 柿。遠慮するな、柿持ってきたのお前(アベル)お前だし。ケスラーも食っていけよ。美味いよ☆

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 エルフリーデが死亡したことで、イゼルローン攻略でなにかミラクルが起こるかな? とか思ったけど、そんなことはなかった。

 ケンプさんは戦死して、ミュラーも負傷したとのこと。

 ラインハルトと昼食を取っている時にオーベルシュタインが報告してくれた。損失? 損害? 被害? とにかく帝国軍は出兵した九割を失って、七百隻程度の艦隊をミュラーが率いて帰ってきた。

 ヤン・ウェンリーが健在過ぎて困る☆頑張れよアンドリュー・フォーク。宇宙の誰もが君のことを嫌っても、わたしだけは信じている、君ならできる☆君にしかできない☆君こそ正義だ☆信念を持って暗殺してくれ☆嫌いじゃないとは言わないけれど。

 帰国したミュラーが軍務省の中央作戦室にて報告を行う際、なぜかわたしも同席することになった。

 何で? とか思ったのだが、わたし副参謀長でした☆

 採用された時は一参謀だったのだが、参謀本部で他の参謀相手に三次元チェスを打っていたら、いつのまにか副参謀長になっていた……おいおい、参謀本部って三次元チェスの腕前で出世するんか? わたしはチェスは強いが現実の戦闘は分からんよ。とか思ったのだが、後の祭りというやつだった。

 

「……閣下より大命を仰せつかりながら……」

 

 ミュラーが敗戦の報告中。

 倒れる前に治してやりたいが……提督の列にシャフトがいるし、シュトライトやギュンターもいるからこの場は避けるか。

 シャフトが逮捕されてからとなると病院でとなるか。

 一応治療したい旨をラインハルトに伝えてからにするべきだよな。いきなり怪我が治るんだから。

 そうだ、左肩が下がっている怪我もついでに治そう☆

 

「……現役復帰を命じるであろう」

 

 あ、ラインハルトの言葉に安堵して気を失った。それにしても、頭の傷深いよなあ。まだ血が滴ってるくらいだしさあ。

 

「ところでシャフト……」

 

 はい技術将校シャフトさん、さようなら☆もう二度と会うことなはいだろう。

 ラインハルトにミュラーの怪我を治したいと告げると、許可を出してくれた。

 

「ミュラーにも教えておくべきことだからな」

 

 というわけで、一緒に病院へ。一人でも大丈夫と言いたい所だが、わたしが「傷治せるんだ☆」などと語ったところで、ミュラーが信用するわけないし。なによりわたし一人だと会ってくれなさそうなので。

 いやね、ミュラーとは会って話をしてみたいなと思っているのだが、どうも向こうが避けている。三次元チェスの宇宙大会から帰国して、メッセージ書いてくれてありがとうと全幕僚に土産を持ってお礼を言いにいったのだが、ミュラーは素っ気なかった。ロイエンタールの次くらいに素っ気なかった。ロイエンタール? あいつは、冷笑家だから気にはならないが、好青年で有名なミュラーに素っ気ない態度取られると気になるじゃないか。

 ギュンターに聞いてみたところ「大佐の死に責任を感じているようでして」とのこと。気にすんなよ、ミュラー。母さんのことなんてぱーっと忘れて、今を謳歌しなよ☆

 ……で、軍病院です。

 医師に止められるようなことはない。なにせラインハルトは独裁国家の実質支配者ですからな☆止めようがない。

 ミュラーの病室へと赴き、ベッドから起き上がろうとする重傷者(ミュラー)を制し、人払いをしてラインハルトから説明。

 説明が終了したので、本当だと分からせるためにもミュラーを治療しようとしたのだが止められた。

 

「一つ窺いたいことが。その治療を受けると、古傷も治ってしまうのでしょうか?」

 

 左肩が下がってること? おお、治せると思うよ。っていうか、治すよ☆ニート共(ネオ・アンティキティラ)をフル稼働させて。

 

「我が儘とは思いますが、普通の治療を受けさせてください」

 

 え? なんで。ミュラー、痛いの好きなの? ……は冗談として、休暇が欲しいのなら、正規の治療にかかる日数休めばいいじゃないか。ラインハルトだって休みくれるよね☆

 

「そうだな。怪我は治っても、直ぐに復帰させることはできぬからな」

 

 わたしの能力は、国家機密なのでね☆知っている人は知っている能力だけどさ。

 

「そうではなく……その……」

 

 言いたいことがあるなら言いなよミュラー。ほぅ? ぐだぐだを続けると? わたしは気が長い方じゃない。いいのか本気出すぞ! 憲兵隊と社会秩序維持局が恐怖に戦き、号泣して各省庁に土下座して封印を頼み込み、最終的には貧乏くじ引かされたおっさん(オトフリート五世)が「全宇宙のためにも封印してくれぬかな。使用するのは叛徒だけならば? ……叛徒どもであろうが、それを使用するのは憐れが過ぎる。余と侯爵(祖父)の仲であろう? なあ」と頼んだという逸話を持つ、祖父が開発した自白剤を尻穴に突っ込むぞ!

 

「そ、その自白剤のレシピはもうないと聞いたが……あ、あるのか」

 

 祖父から教えてもらっておりますともラインハルト。ラインハルトが若干どもるくらい、ヤバイ自白剤。もうね、即断即決側実行! 下男に作って持ってくるように連絡いれる!

 

「ミュラー。早く理由を申せ!」

「……ですが閣下」

「ミュラー!」

 

 下男! 祖父の自白剤をー!

 

「お持ちいたしました、御前さま」

 

 自分で呼び出しておきながらなんだが、我が家の下男が優秀過ぎて困る。

 

「その自白剤は、精製に三日かかると聞いたが」

「情報は欲しい時に手に入れられなければ意味がない。先の公爵さまのお言葉にございます。故に自白剤はいつ何時であっても用意しておりまする。御前さま、どうぞ欲しい情報を手にお入れくださいませ」

 

 買い物途中の下男が即座に軍病院に来てくれたのだが、その手には自白剤。優秀にも程があるぞ下男。

 

「いや、ちょっと待て。その自白剤を使用された者は」

「ご安心ください覇王。御前さまの能力を持ってすれば、この自白剤を使用し証言を得たあとに完治可能にございます。それに関しては先の公爵さまも太鼓判を押されておりますので」

 

 言いながら下男は自白剤をシリンダーに移して、わたしに差し出してきた。とりあえず注射器を受け取り「さて、どうしたものか」とミュラーを眺める。

 

「ところで御前さま。どのような情報を得ようと?」

 

 下男にミュラーが治療を理由亡く嫌がるのだと告げたところ、下男は黙って頷き、

 

「こちらの提督は公爵夫人(髪長姫の母親)のご遺体を届けてくれた部下と同期でいらっしゃるとか。御前さまの母君はとてもお優しいお方でいらっしゃいました。それこそ上層部の失態や怠慢で医療品が届かぬ戦地で、負傷した部下を見捨てることなどなさらないような」

 

 淡々と語ってくれた。ベッドのミュラーはと言うと、心拍数がヤバイことになってる。医者を呼べー医者をー! いや、病院持ってこい! ああ、ここ病院だった! そもそもわたしが病院だった☆

 

「それは……先代の黄金の血公爵家当主は、決まりを破って治療したということか?」

「わたしめは戦地には赴いたことはございませんので、はっきりとは申せませんが、覇王の忠実なる部下である提督が、証言も治療もを拒否するのは、先代さまの言いつけを守ってのことかと。あれは国家第一級の機密事項でございますゆえ、覇王の命でも口を開けぬのではないかと」

 

 ミュラーの心拍数がただならぬことになったので、日を改めてとなり ―― 自白剤は持ち帰ることに。去り際に、

 

「切らさず用意しておりますので、いつ何時でもお申し付けください。尻穴用に座薬も調合しておきますゆえ」

 

 下男の心強い言葉ががががが……。まあいいや☆

 

「髪長姫。あの自白剤のレシピは」

 

 大丈夫、書面で残ってないから。頭の中だけだから大丈夫だよ☆祖父は科学組成式とか他者の弱みとか、全部頭の中に収納しておくタイプだったから。

 ……で、日を改めてミュラーから告白を。

 自白剤使ったのかって? 使ってないよ☆我が家の優秀な下男は、座薬作って前日に届けてくれたけどね☆

 

「申し訳ございませぬ」

 

 まだ全然傷が癒えていないミュラーが言うには、母さんはやはり部下を治療していたのだそうだ。治療したことがバレると、治療された側の親族が殺害されてしまうので、生きて帰っても絶対に言うな。公爵家には近づくなと厳命されたのだそうだ。まあ妥当だな。ちなみに母さんが死んだ時の作戦だが、兵站の担当者が阿呆と馬鹿と愚か者、間抜けと卑怯者と七光りと夢見がちなのしかしかいなかったらしく、食糧や水すら事欠く有様で、医療品なんて夢のまた夢だったとか ―― いくら精強な帝国軍人でも、同盟(馬鹿)帝国(無能)の両方を同時に相手にしては戦えないわー。それができるのは、ラインハルトくらいのものだろう。

 

「小官がいなければ、大佐はきっと……」

 

 いやいや、怪我の具合からすると、きっと助からなかったから気にするなよ。ミュラーが言いたくても言えなかったのは、命じられたこともあるが、母さんの最後が言えなかったらしい。

 ミュラーと母さんは瀕死の重傷を負った。その時母さんは、自分の怪我を治すのではなく、ミュラーの怪我を治療し途中で息絶えたのだそうだ。

 まあギュンターから聞いた話では、母さんは手遅れだ。わたしなら手足が千切れても、適当にくっつけられるだろうが母さんはそうではなかったようだからな。

 だからどこも千切れ飛んでいない、腹部と背中がばっくりと裂けて、コンニチワー。ハジメマシテギュンター、ボク、ナイトハルトノ、カンゾウダヨー。テレルナヨ、シンゾウ、デテキナヨー、ギュンターニ、アイサツシナヨーしていたミュラーに応急処置を施したのは、見事な判断力だったと思うのだが、治された方はずっと気に病んでいたらしい。

 気にすんなよと言ったが、彼が気にならなくなる日は訪れないのかもしれない。

 後遺症の左肩だが、過去を忘れぬためにこのままにしておきたいとのこと ―― そこまで言われたら仕方ない。わたしも古傷を残したまま治療できる自信はないので、治療を辞退することに。

 ラインハルトもミュラーの意思を尊重するそうだ。

 ミュラーのことはおそらくギュンターも知っているはずだと尋ねたのだが、こっちはこっちで口が固く、自白剤(座薬)ぶち込まない限り無理っぽいので、聞き出すのは諦め、わたしも治療できるのだと告げたところ、嬉しそうに笑ってた。お前怪我したら、即座に治療してやるからな☆平民を治療しちゃいけないなんて、知らん! 失楽園(入れ替わり)? 知らんなあ!

 

 ……ところで母さん、あの怪我は普通は即死じゃね? いや、絶対即死してるはず。あの状態でも即死しないでミュラーに治療を施した母さん、超cooooooool……ネオ・アンティキティラ共も最後に頑張ったんだろうなあ。安らかに眠れニート共(ネオ・アンティキティラ)いや、まあ、とうの昔に死んでるけどさ。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 無事にエルウィン・ヨーゼフ二世が誘拐されました☆

 

「明日の……いや今日だな。正午に卿の処分を通知する」

 

 やれやれ……同盟にいる執事(皇太子)にあとは任せた。モルトに関してですが、ラインハルトはわたしにモルトの治療を命じませんでした。ここは武人のけじめですから、治療するのは正しくはないのだろう。

 

「伯爵夫人、わたしになにか言いたいことがあるようだが」

「わたしは先日申し上げたことがあります」

 

 二人が覚えのある台詞を言い合っております。

 

「わざと皇帝を誘拐させたのだと」

 

 ヒルダさんの台詞はあっております、あっておりますとも。

 そうしているうちにモルトが自決したとの報告が届き ―― 上級大将、大将を集め幕僚たちと会議に。わたしもラインハルトの背後に立って話を聞きました。こっち見んな、アベル。仕方ないだろ☆

 

「テロリスト……か。いいな」

 

 解散後、一眠りしてからラインハルトの演説の草稿を作成してラインハルトに提出いたしました☆

 同盟に行ったの知っているのかって? うん、知ってるよ☆ボルテックと組んだあと、わたしに報告してくれたので。教えられなくても知ってるけどね。

 

「そうだ髪長姫。この誘拐のことだが、御老公や下男に伝えても構わない」

 

 演説文の手直しが終わったところで、ラインハルトが唐突にそう言ってきた。良いと言ってくれたので、前もって説明しておくとするか。

 手土産のワインを持って、ラインハルトの官舎という名の下男と元皇女の住処に足を運び、皇帝が誘拐されたことを告げた。

 二人とも少しは驚いたようだが、

 

「暗殺されなかっただけ、マシというべきか。なあ兄弟」

「兄弟ではありませぬ。……奴隷のわたしめがこう申すのは身の程知らずとは分かっておりますが、あの子は皇帝の器ではありませぬので、どこぞの辺境で平凡なる余生を送って欲しいものです」

 

 エルウィン・ヨーゼフ二世については軽く終わった。

 

「小鳩は無事ですかな、公爵殿」

 

 ケスラーのことを心配していた。

 あ、うん、小鳩ってケスラーのことな。曾祖父が昔々、そうケスラーがうるりっひちゃんだった頃、”可愛らしい小鳩”と呼んでたんだって。あの若白髪のどこに小鳩感があるのか? 若いころは可愛らしかったのか? と尋ねたところ「分かりかねます」下男の答え ―― あんま追求しないほうがいいことってあるんだよ。曾祖父には可愛らしく見えたのかもしれない。五十以上も年齢離れている小さめの物体ってのは、可愛らしく見えるだろうよ、なんでも。そういうことにしておく。

 ケスラーはもう三十半ばなので、さすがに”可愛らしい”は外されたが、我が家ではいまだに小鳩呼ばわりされている。なにせ我が家でもっとも影響力があるのは曾祖父なので、こればかりは仕方ない。

 もちろん当人の目の前で言ったりはしないが ―― 記憶喪失中は、曾祖父を演じていたので可愛いらしい小鳩って呼んだけどな☆わたしの忍耐力を褒めろ、讃えろ、賛美せよ! 跪けぇ! ミュラー以上の堅忍不抜だと自負したって許されると思うんだ!

 

「小鳩とて古風な男であろう。あれの誘拐が明らかになったら、責任を取るために自決するであろうよ」

 

 元皇女にそう言われると、心配になるなあ。下男にも意見を求めてみたところ、

 

「帝国人の人生において、これ以上の失態はありませぬから、小鳩殿が死を選んだところでなんら不思議ではございません」

 

 そうか……小鳩が自決って笑いがこみ上げてくるわー。でも内容は重めだなあ。小鳩ことケスラーに自決されては困るが、これは言ってもどうしようもないことだ。

 

「失敗すれば諦めることでしょう」

 

 わたしの能力で傷を癒やすということだな☆

 

「タイミングを見計らって襲撃するのが、もっとも有効な手段だと」

 

 銀河帝国正統政府が樹立した日は特に気を付けるとしよう。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

『自由惑星同盟の全市民諸君 ――』

 

 ヨブがドヤ顔でエルウィンが亡命してきたことを宣言した日の夜、わたしは下男と共にケスラーの自宅へと向かい ―― 自害を決行しかけていたので、力ずくで止めました☆いや自害は決行されてましたけどね。まあヤバイところ撃ち抜いてたけど、わたしの能力(働けニート共)でなんとかなりました。

 きっと自害するとは思っていたが、実際目の当たりにするとけっこう吃驚するもんだね。

 あの日、下男と元皇女、二人の意見を聞いてから、ケスラーの自宅に侵入を繰り返し、徐々に物がなくなって行く部屋を目の当たりにして、これは完全に身辺整理しているなと言うことで、かなり注意を払っていたのさ☆

 え? それは不法侵入では? 気付かれなかったら問題ないよ! 身辺整理で捨てた品々も回収してるから、後日新居に無断で設置するけどね☆

 憲兵総監の自宅にそんなに簡単に侵入できるのかって? ギュンターが教えてくれたスキルが役立ったよ☆あとは下男や元皇女が色々と手伝ってくれたので。

 学校帰りに寄り道すると見せかけて、憲兵総監の自宅に忍び込むこのス☆リ☆ル。病みつきになりそうです。

 

 治療したケスラーを元帥府につれてゆき、ラインハルトに事情を説明して、がっつり叱責してもらい、絶対に自害なんてさせねーよ☆この黄金の血がそんなこと許すかよ☆わたしが居る限り、地上で自決なんてできねーよ☆とまくし立てておいた。

 

「ありがとう、髪長姫」

 

 ケスラーに見張りをつけて部屋を出たら、ラインハルトに感謝された。

 そうだよケスラー、お前はラインハルトに超絶信頼されている、得がたい部下なんだから、自殺しようなんて思うなよ。

 ケスラーは怪我は治っているが、療養を兼ねて誘拐の責任を取って謹慎という扱いになり、憲兵の仕事もラインハルトが肩代わり。たださすがのラインハルトでも、全部カバーするのは難しいので、うちの下男を貸し出すことになりました。

 下男は祖父が副総監だったころ、憲兵の仕事を手伝っていたからな。

 

「卿は憲兵として働く気はないか」

 

 かなり有能らしく……祖父が仕事を手伝わせる時点で、有能なのは明らかなんですが、その才能はまだ健在で、オーベルシュタインがスカウトしたが、

 

「年老いた奴隷など使うものではございません。若い人をお育てください、軍務尚書閣下」

 

 かわされておった。実際下男は年だからなあ。

 ケスラーの調子も良くなったところで、謹慎が解けて少しして ―― わたしはしでかしてしまったのです☆

 

「髪長姫、俺が誰か分かるか?」

 

 小鳩(ケスラー)がわたしのこと髪長姫(ラプンツェル)って言うはずないから……やってもうたー! やった記憶はないが、やってもうたー! でも不可抗力なんだよー! 学校から帰ってきたら、帝国宰相感というより総帥感が漂うと表現したほうがいいであろうケスラーと、きっと曾祖父が感じたであろう可愛い小鳩感が漂うラインハルトに出迎えられた! いや、他の事情を知っている幕僚もいたけどな!

 ああああああ! ラインハルトとケスラーが入れ替わってしまったー。

 

「これは凄いですな……信じていなかったわけではありませんでしたが……それにしても」

 

 ミッターマイヤーがやや呆然といった感じで呟いた。

 気配が完全に違うので、幕僚が全員信用してくれているのが幸いだが……どうするんだよ、これ。

 ちなみに入れ替わった経緯だが、幕僚の皆さんが会議している最中、ラインハルトとケスラーがほぼ同時に目眩を覚えて頭を抱え、三十秒もしないうちに完全に入れ替わってしまったのだそうだ。

 どういう原理で入れ替わるのか? わたしには分からないが、わたししかコレはできないことである。

 

「帝国宰相閣下は毎晩、御前さまが体調管理を兼ねてネオ・アンティキティラを稼働させているので、御前さま寄りになっているのでしょう。憲兵総監閣下は先日、瀕死の状態から御前さまが引き上げましたので、その際にネオ・アンティキティラは御前さまの影響をかなり受けたものと考えられます」

 

 戻れ! 戻れー! と祈るわたしの側で、呼び出された下男が、一般論的なこと説明している。事態そのものは、全然一般的じゃないけどな☆

 戻れ! 戻るんだ! 早く戻れ!

 だが日頃の行いの悪さに定評のあるわたしの祈りなんて通じるはずもねえ☆

 

「申し訳ございません」

 

 謝らなくていいよ、ケスラー。全ての責任はわたしのあるわけだからなー。

 

「小官があのような真似をしなければ」

 

 ラインハルトの姿で小官とか……そりゃあ、ラインハルトも昔は言っただろうが、今のラインハルトの姿には似合わないよ。

 まあ、その、もう自殺しようなんて考えるなよ。いいな☆

 さて夜も更けて就寝時間になったわけです。わたしはいつもラインハルトと一緒に眠っているので ―― 外側がラインハルトで内側がケスラーと寝室に一緒にいるわけです。

 

「小官は床にでも」

 

 やめろ、ケスラー。入れ替わっているとはいえ、中身も外見も帝国の超重要人物なんだから、床に転がすなんてできないし、していいはずないだろう。

 わたしが床で寝るから気にするな☆いや、わたしは別に一緒に寝てもいいんだけど、ラインハルトとケスラーが嫌がったので。そうだな、ケスラーは任務失敗したら自害しちゃうくらい古風な男だものなー。必要もないのに女とベッド一緒にしないよなあ……わたし一応分類的には女だからな、だから爵位が公爵夫人なんだけどな☆ありがとう! ケスラー。わたしを女性に分類してくれて!

 

「なにを仰って……公妃さまは魅力的な女らしさに溢れて……」

 

 いやいや、皆まで言わずとも良い。優しく誠実なお前に嘘をつかせるのは心苦しい。なあに、言われずとも分かっているさ☆

 なにせわたしの身長がヤバイことになりつつあるし、ラインハルトが腕枕を希望するくらいに二の腕の筋肉が発達しているし、ギュンターが「これほど美しい広背筋は見たことがない」って言うくらい、背中の筋肉が素晴らしいらしい。どうもわたし、筋肉が綺麗に付く体らしい。筋肉って鍛えれば誰でも綺麗に付くとばかり思っていたが、そうでもないらしい。実際トレーニングルームで、可哀想な腹筋とか目にしたことが多々ある。なんであんなにトレーニングしているのに、綺麗に割れてやらないんだよ……まあいいや、色々あって疲れただろう、ケスラー。早く休め。

 ケスラーをベッドに放置して、わたしは夜空を彩る星々を肴に赤ワインを一杯。もうね、飲まないとやってられない☆

 ……それにしても、なぜ入れ替わったのだろう。なんかヒントらしいものはないのだろうか。

 

 ………………わたしより遙かに頭の良い祖父が考えても分からなかったんだから、無理ですな☆この一杯飲んだら寝よう☆

 

「公妃さま、少しお伺いしたいことがあるのですが」

 

 なんだケスラー。まだ寝てなかったのか。気になることがあるのなら答えてやるから、早く寝なよ。

 

「あの時、曾祖父殿は一体なにを仰ったのですか? もちろん、言えぬことでしたらば……」

 

 ケスラーが聞いてきたのは、能力暴露会議の際に曾祖父がわたしに残したメッセージ。……え? マジで分かんなかったの? 

 

「はい。小官が不勉強なので分からないのかと、ファーレンハイト提督に尋ねましたが提督も分からないと」

 

 マジですか! 本当に分からなかったんですか! うーわーマジか! アベルでも分からなかったってことは、本当なんだろうな。では少しだけ教えて進ぜよう、ケスラー。見た目ラインハルトだけど。

 実はあのメッセージは、曾祖父のnull型ネオ・アンティキティラがわたしの体内で生きていないと聞こえない仕組みなんだそうだ。

 どうやったらそんなこと出来るんだよ☆はったりだろ! 大体なんでわたしの体内に曾祖父の! と怒り狂っていたので、幕僚の表情見てなかったから分からなかったが、全員理解できてなかったのか。そりゃあ……生きてるのかよ、わたしの体内で。ある意味不老不死だなー。自分で実験しやがったのかー。やりおるわ! 曾祖父め☆もう片方の実験体(わたし)の許可くらい取れよ。

 事前に言われたら許可出すの? 出すわけねーだろ☆あいつは許可貰わなくても強硬するだろうけどな! あれ? 今と変わらん状況だな。

 

「曾祖父殿のネオ・アンティキティラ……あの」

 

 詳しいことは明日、あの場にいた全幕僚に説明するから、今日はこのくらいにして寝るんだ。いいな。

 

「そうですか、曾祖父殿の欠片が公妃さまの中で、生きていらっしゃるのですか」

 

 すげー嬉しそうな表情してるんだけど……体がラインハルトじゃなかったら、全力で殴ってるところだぞケスラー。

 

 一晩明けても、ラインハルトとケスラーはそのままでした。夢じゃなかったんだねー。そして曾祖父からのメッセージ再生だが、やっぱり誰も理解できないとのこと。

 なので内容を説明しました☆

 あのね、ネオ・アンティキティラって宿主というか本体が死亡すると、当然死亡するんだけど、死亡するまでにタイムラグがあるんだよ。

 

「たしかにそのように書かれていました」

 

 オーベルシュタイン、書類全部目を通したらしい。偉いなあ。真面目だなあ……多分幕僚全員目通してるな。こいつら問題児だけど真面目だからな。

 そのタイムラグっていうのが宿主死後大体三、四日は生きている。……で、曾祖父は思ったわけだ。稼働していないネオ・アンティキティラはともかく、宿主の意思で動くnull型ネオ・アンティキティラを宿主が死の直前に、同じくnull型ネオ・アンティキティラの体に移るよう命じたら、死後移動して生き続けるのではないかと ―― 過去に稼働しなくなったネオ・アンティキティラを再起動させるために、null型ネオ・アンティキティラを抽出して注入したことからも分かるように、ネオ・アンティキティラというのは誰もが同じなのだ。

 

 まあわたしは変異体だけど☆

 

 曾祖父は色々な準備を整えて寿命を迎えることに。……で、わたしにnull型ネオ・アンティキティラを移動させるために、胸の上に乗せて死んだというわけだ。

 心臓が止まった体のすぐ近くに、心臓が動いている個体がいる ―― 曾祖父の言いつけを守ったのか、null型ネオ・アンティキティラの生存本能なのか? そこは不明だが、あいつらはわたしの体内に移動してきたらしい。

 特に棺を花で一杯にして欲しいという依頼を達成すべく、わたしは三日間頑張った。そうネオ・アンティキティラ共の寿命一杯、近づいて作業していたわけさ☆

 

 結果、移動が完了したらしい☆

 

 で、移動した数は不明だが、曾祖父のnull型ネオ・アンティキティラはわたしのウェルニッケ野の一部に滞在して、あのホログラフの特殊な言語を翻訳してくれたというわけだ ―― 曾祖父は共鳴と言っていたがね☆わたしには普通の言葉に聞こえるんだが、みんな分からないというから……居るんだろうよ、ウェルニッケ野には確実に。

 わたしを実験台にしたのは、わたしだけが持つ医療用ナノマシン……オルヒデーエが嫌だと言ったのを覚えていたラインハルトが、幕僚たちとともに会議で考えてくれて機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)という新たな名称をつけてくれた……通称はD.E.M。ワルキューレにしてラプンツェルにしてハイリゲユングフラオにしてフューラーでフェアローレネパラディースでデウス・エクス・マキナ……いいんだ、別に☆本名だって似たようなモンだから。

 話が逸れまくったが、わたしを選んだの変異型ならば浸食されたりしないだろうと ―― 同じ相手なら勝てる自信あったっぽい。宿主に似たnull型ネオ・アンティキティラなら父さんや祖父には勝ちそうだよな。わたしだって特殊個体じゃなかったら、きっと負けてたはず☆だって凡人だから。

 

「曾祖父殿の人格や記憶はないのか?」

 

 自覚はないよ、ラインハルト(外見ケスラーだけど)あったらもっと早くに気付いているはずでしょう☆

 

「そうだな。それにしても、なんの意図があって」

 

 ラインハルト、それは考えちゃ駄目だ。真面目に考えたら駄目だって。あいつは楽しそうだからってだけで、こういうことしちゃう人だから。

 

「あの御仁のことですから、深謀遠慮があるのは間違いないかと」

 

 オーベルシュタイン、そんなことないから。あいつ(曾祖父)に深謀遠慮なんてねーから。気のせいだから、マジでそんなに深く考えないで。勝手に曾祖父を大きな人物に仕立て上げないで。タダの愉快犯ですからな☆

 ケスラー(外見ラインハルトだけどさ)こっち見んな☆小鳩感漂わせて見んな☆一生懸命わたしのなかにいる曾祖父を捜そうとするな☆肉眼じゃ見えねえから。頭開いてウェルニッケ野見せてやればいいのかしらー。脳みそだからただのグロ画でしかなさそうだけど……ああ、こいつらガチ軍人だから、脳みそ露出くらいなんてことないかー。でも肉眼では見えないとおもうよー。

 

 入れ替わりから七日後に、無事ラインハルトとケスラーは元に戻りました。

 

 あー良かった。それにしても、やっぱりある程度の地位に就く人って、雰囲気というかまとう独特の空気があるもんなんだね。わたしみたいな凡人だったら入れ替わっても、分からない可能性が高いよな…………なんだ? 幕僚連中が必死に笑い堪えてる感が凄いんだが。

 下男と元皇女のほうを見たら、元皇女は笑って、

 

「主さまと坊ちゃまが入れ替わった時、主さまは()()仰いました”奴隷と入れ替わったら、俺の奴隷ライフが滾るな”と。坊ちゃまは()()かえされました”親父さまが入ったら、それはもう奴隷じゃねえなあ”と」

 

 下男はそう言った。

 曾祖父と奴隷が入れ替わったら、そりゃあバレバレだろうよ。わたしのような凡人とは違ってな☆わたしみたいな一般臣民なんかは奴隷と入れ替わっても分から……聖処女に総統、失われた楽園にも耐えた幕僚連中が笑い出した。

 

 どこに笑うポイントがあるのだ☆答えろ! なんでお前まで笑ってるんだよ、ケスラー!

 


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