東方戦争犬   作:ポっパイ

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五十一話

 

 

 EXルーミアを動かすのは『絶望』。幽香を動かすのは『闘争』。天子を動かすのは『娯楽』。ならば、青娥を動かすのは『策略』だったのであろう。

 

 大尉に着いたのも、先代をキョンシーとしたのも、白狼天狗の屍を操ったのも、神子に術を解かせたのも、全てが彼女の策略の内だった。

 

 神子に術を解かせることで人々の目を神子に向けさせることが最初から目的であり、あわよくば、大尉を討ち取る役目も神子に任せようとしていた。

 

 自分は妖怪の賢者が不在の内に、屍に戻った先代の身体を回収し、残骸になるまで研究し『博霊』の力を自分のものにしようと画作していた。

 

 そして、他の勢力が弱体化していく中で、神子率いる神霊廟が幻想郷の地位を高めていく。

 

 全ては主である神子のため。例え、裏切り者と呼ばれようとも、それで神子の名声が高まるのならば汚名を被るなど安いものだ。

 

 だが、そうはいかなかった。青娥が裏切ることなど初めから想定内。裏切り者を信用できるのは誰かを裏切っている時だけだ。最初から神子を裏切る気などなかった青娥など信用に値しない。

 

 故に、幽香は細工を仕掛けた。先代をキョンシー化させる際、幽香の妖力が混められた植物が先代の体に植えられた。術が解かれた時は、屍とともに朽ちていく予定だった。だがらこそ、幽香はそこを細工した。術が解かれた時に発芽するように種を植えていた。誰の命令も聞かず、近づく者全てを破壊しようとするただの人形へと変わるように細工を施した。

 

 その結果、幽香の思惑通りになり、先代は化物へと成り果てた。敵も味方もなく、近づく者、動く者、全て平等に破壊する哀れな化物だ。

 

「やれやれ、青娥以上に厄介な者がいるとは驚きを隠せないな」

 

 自分を捕らえようと伸びてくる蔓を抜刀した剣を持って切り落としながら神子は軽口を叩く。その動きに無駄はなく、確実に一本一本丁寧に処理をしている。

 

「何とかここで止めねば厄介だ」

 

 暴走状態の人里に侵入してしまえばどうなってしまうのかなんて想像もしたくない。結界があるとはいえ、その結界も限界が来ている。

 

「鬼がもう一人でも来てくれたら楽になるんだけどなぁ」

 

「私を見て言うんじゃねッ!」

 

 蔓を振り回すだけかと思えば、気が向いたかのように突然、拳を叩きつけようとしてくる。型もなく、予備動作もなく、蔓を振り回しながら突然、殴り掛かってくる。

 

「そんな単調な攻撃あた―――――ッいたたたたた!」

 

 先代の拳を躱したと思っていた萃香は自分の足に蔓が絡み付いているのに気付かなかった。気付いた時には力任せに地面に叩きつけられ、そのまま地面を引き回されていた。

 

 見兼ねた神子がその蔓を切り離し、萃香を救出すると、萃香を抱えて距離を取る。

 

「悪い、助かった」

 

「いや、気にするな。それより……」

 

 先代巫女の攻めがより厄介になってしまった、と神子は思った。ただでさえ、怪力だというのに不規則な蔓の攻撃が加わってしまった。

 

 先代巫女の意思なのか、植物の意思なのかは分からないが恐ろしくマッチしてしまっている。これには流石の神子も冷や汗を流す。

 

 萃香も神子も攻めあぐねる一方だった。しかし、そんな状況の二人の元に誰かが向かってくるのが見える。

 

 暴走状態の先代巫女に近い紅白の巫女装束を纏った少女――――当代博麗の巫女は二人の顔を見るやバツが悪そうな表情を浮かべる。

 

「おぉ、霊夢! こっち手伝ってくれ!」

 

「ごめん、無理!」

 

「なに!?」

 

 霊夢を追い掛ける大きな五つの影が見えた。夜より暗いその闇は霊夢を食らわんと大顎開けて迫っている。これを見た神子は「確かにこれはバツが悪いな」と納得してしまう。

 

 暴走状態の先代巫女も厄介だが、EXルーミアの闇の顎も厄介だ。どちらも人里に入れてはいけない存在に違いはない。

 

 霊夢へ加勢をしに行きたいのは山々だが、そう易々と先代巫女が行かせてくれるとは思えない。

 

「そっちはどうにかなりそうか!?」

 

「どうにか出来そうだけど、時間を掛けたくない!」

 

 霊夢の声からは焦りが感じられる。大尉たちを前にして戻ってきた霊夢からしてみれば、一秒でも早く解決し、大尉たちの元へと戻って戦わなければならない。こんな時間稼ぎのような相手に時間を掛けるのが勿体無い。

 

 霊夢の欲を聴き取った神子が声を張り上げる。

 

「こっちに引き連れてこい!」

 

 何を無茶なことを言っているのだろうか、と霊夢は多少の苛立ちを感じたが神子が真剣な様子で言うので溜息を吐きながらもその声に従う。

 

「どういう魂胆だ?」

 

「なに、さっきからアレが霊夢を見て止まっているからね。試しに霊夢を追い掛けている黒いのに襲うかどうか――――」

 

 神子が言うよりも速く先代巫女が駆ける。

 

「黒いのと組んじまったらどうすんだ?」

 

「その時はその時さ。……責任は取るよ」

 

 霊夢と衝突するかと思われたが、そのまま無視して駆け抜け闇の顎へと拳を振り上げながら向かっていく。

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!」

 

 雄叫びを上げながら闇の顎の一体を躊躇いもなく振り下ろしたその拳で粉砕する。それはその場にいる霊夢も萃香も予想外の光景だった。

 

「仲間割れ?」

 

「少なくともアレらに仲間意識はないようだ」

 

「それは好都合ね。……あの剛力巫女が先代の博麗の巫女なのよね?」

 

 霊夢と先代巫女は面識がなかった。霊夢が巫女になる頃には先代巫女は死んでいた、と記憶している。先代巫女についての情報は紫との会話くらいしかない。

 

「私が知るわけないではないか」

 

「まぁ、そりゃそうよね」

 

 鬼神の如く闇の顎に応戦する先代巫女の姿を見て、霊夢は胸がチクリと痛むような感覚を覚える。死んでまで戦わされる先代巫女の姿がどうしても可哀想で仕方がない。同じ巫女として、後輩巫女として救ってあげねばいけない気がした。

 

 霊夢のそんな欲を聴き取ったのか神子も「手伝おう」と賛同してくれている様子だ。だが、霊夢はそれを首を振って拒絶する。

 

「これは私の義務よ」

 

「しかしだな……」

 

「何かしたいなら、人里へ行ってなさいよ」

 

 有無を言わさない霊夢の様子に委縮する神子。そんな一連のやりとりを萃香だけが満足そうに笑いながら見ていた。

 

「あんたもよ、萃香。笑ってる暇があるなら人里に行って手伝ってあげなさい」

 

 ピリピリとしている霊夢に萃香はひらひらと手を振ってそれに答える。これだから霊夢を見ていて飽きない。

 

 二人が人里へと向かったのと同時期に先代巫女が闇の顎を殲滅し終えたようで、霊夢へとゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「■■■■■■■■■■■」

 

 先代巫女が何かを吠えるが霊夢は知ったことではない。というより伝わらない。

 

「あんたも災難だったわね。こんな茶番に付き合わされて」

 

 先代巫女の拳が届く範囲内になっても霊夢は退くことはない。かといって、攻める様子でもない。霊夢は真っ直ぐな目で先代巫女の顔を見る。睨むわけでもでもなく、憐れに思うような目でもなく、霊夢はただ真っ直ぐに先代巫女の顔を見詰める。

 

「………………」

 

 様子がおかしいのは先代巫女だった。霊夢の姿を視認してから攻撃性が見られなくなってしまっている。

 

 先代巫女であって先代巫女ではない。肉体は先代巫女であっても魂は先代巫女ではない。そんなことは同じ博麗の巫女である霊夢にも分かる。

 

 だが、どうしても霊夢にはそうは思えなかった。生気も正気も感じられない姿をしているが、霊夢はその姿の根底に彼女が存在しているような気がしていた。

 

「後は私に任せなさい。あんたがしたこと、できなかったこと、私が代わってあげるわよ」

 

 先代巫女の瞳が霊夢を捉える。

 

 

――――――――――

 

 

 

 

『紫』

 

『何かしら?』

 

『次の巫女はどんな奴なんだ?』

 

『何言ってるのよ。貴方はまだ生きてるじゃない』

 

『……私は直に死ぬ。後継者はいるんだろう?』

 

『……まだ継ぐには早すぎるわ』

 

『そうか。私は次の巫女に何もしてやれない。何も残してやれない。……だが、それでいいのかもしれない』

 

『そんなことないわ』

 

『人間にも人外にも恐れられ、敬遠され、侮蔑されてきた。私はそんな巫女だった。悪い見本のような巫女だ。私の痕跡を残してしまっては次の巫女が可哀想だ』

 

『貴方……』

 

『でも、次の巫女にはそうなってほしくないんだ。人間にも人外にも好かれ、親しまれ、讃えられる。そんな巫女になってほしいんだ』

 

『貴方は本当に根暗で不器用ね。でも、私は貴方の良いところをたくさん知っているわ。共に戦い、共に笑い、共に泣いた親友。私は貴方のことを一度も悪く思ったことはないわ』

 

『ふふ、ありがとう。次の巫女には、私のような過ちはしてほしくはないなぁ。狭い世界ではあるけれど楽しいと思えるような暮らしをしてほしいなぁ。人妖問わず親友を作ってこの博麗神社で大宴会を開いてほしいなぁ。――私がしなかったこと、できなかったことで後悔はしてほしくないなぁ』

 

 

 

――――――――――

 

 

「『夢想封印』」

 

 色とりどりの光弾が霊夢と先代巫女を囲むように顕現する。その光景はとても鮮やかで幻想的なものだ。それでも先代巫女の瞳は霊夢を捉えて離さない。

 

 囲むように顕現していた色とりどりの光弾が先代巫女へと放たれる。放たれた光弾は先代巫女を優しく包み込んでいき、虹色の柱を形成していくようだった。。

 

「ありがとう……」

 

 先代巫女の全身が包まれる寸前、微かに霊夢の耳に入ったのは女性の声だった。その声調はとても穏やかで優しいものだった。

 

 虹の柱が消失した後に残ったのは、朽ちかけのただの残骸だった。その表情はとても穏やかで僅かに笑みを浮かべている。限界を迎えたのか、先代巫女の身体がボロボロと崩れ始めていく。塵芥へと変わっていく様子を霊夢は見届けている。

 

「今はこうしてあげることしかできないわ」

 

 風に飛ばされぬように先代巫女を小さな結界で囲む。塵芥へと変わっていったとはいえ、巫女は巫女だ。あるべきところに戻してあげなければならない

 

「こんな異変さっさと終わらしてあげるから待ってなさい」

 

 先代巫女へと語り掛けた霊夢は人里へと飛んでいく。萃香が力に任せて開けた結界の穴から霊夢も入っていった。

 

 

―――――――――

 

 

 先代巫女の二度目の最期を見ていることしかできなかった紫はスキマ空間の中で静かに涙を流していた。 

 

 例え、望まぬ二度目だったとしても、紫は彼女の最期を見ているだけではなく、看取ってあげたかった。彼女の唯一の親友としてその最期を看取ってあげたかった。

 

 霊夢には感謝してもしきれない。そして、先代巫女をこんな目に合わせた大尉たちは憎んでも憎んでも憎しみ足りない。

 

「あーらら、呆気ないなぁ」

 

 この猫の声を聴くだけで憎しみが沸いてくる。そして、一番憎いのは先代巫女を利用した大尉たちだ。一度殺すだけでは気が済まないだろう。何度も何度も殺してやりたい気分だ。

 

「そう怖い顔しないでよ。どの道、紫おば――――お婆ちゃんが殺す前に誰かが大尉を倒すよ」

 

「何故、そう言い切れるのかしら?」

 

「だって、大尉が満足するまでここから出す気ないもん。残念だったね」

 

 この猫はあくまで紫を解放しないつもりだ。そんなことはとうの前に分かっている。

 

「僕らは観客。まだ幕は下りてない。席に座って黙って顛末を見守るのが観客の役目だよ」

 

「貴様……!」

 

「僕だって本当は大尉とお話したいんだよ? それをこうして介護してるんだからもう少しおとなしくしといてよ」

 

 本当に苛つかせることに関してはずば抜けていると紫は関心してしまっていた。

 

「さ、大尉たちがこの後どうするか見守ろうじゃないか」

 

 猫が指を鳴らす。すると新しくスキマが開く。開いた先にはテーブルを囲んで椅子に座っている大尉たちの姿があった。

 

 

――――――――――

 

 

 『お茶会』。それは比喩でも何でもない文字通りのお茶会だった。幽香の領域『太陽の畑』の一画にて、皆で一つのテーブルを囲んで紅茶を飲んでいる。それはとても穏やかな雰囲気が流れている。

 

「良い場所でしょ?」

 

 そう問い掛けたのは『太陽の畑』の支配者である幽香だ。問い掛けられた大尉は辺りを見渡してこくりと頷く。

 

 一面に広がる向日葵たち。季節も関係なく咲き誇るその光景は幻想的だ。長年生きてきた大尉でもこれほどの光景を見たことがない。

 

「ふふ、ありがとう。ルーミアは……聞くだけ無駄ね」

 

「んだとゴラァ!」

 

「貴方に花の良さなんて分かるのかしら? 分かるのだとしたらごめんなさいね」

 

 ここに来てからの幽香はとても上機嫌だった。先代巫女が散ったことなどどこ吹く風。大尉たちにこの場所を自慢したくて堪らない様子だった。

 

「幽香殿、話を折って申し訳ないが、先程の件だが……」

 

「何だったかしら? あぁ、使い捨て白狼天狗の件ね」

 

「……煽っているのか?」

 

 椛が分かりやすく牙を剥く。そんな分かりやすい威嚇をされても尚、幽香は微笑みを絶やさない。

 

「分かりきっていたことでしょう? 白狼天狗が人里に攻め込んでどうなるかなんて。どうせ助かる者の方が少ないわよ」

 

「そんなこと分かっている! 私が聞きたいのは、何故、巻き込ませるような形で闇を放ったのか、だ!」

 

「いいじゃねェかよ。未遂で終わっちまったんだからよォ」

 

「そういう問題ではない!」

 

 追い打ちで放った闇の顎は先代巫女によって全滅させられてしまった。それを聞いたときは笑ってしまった。腹を立てていたのは一瞬で出番が終わってしまったEXルーミアだ。本当ならば、人里を蹂躙する予定だった。これだから巫女は嫌いなのだ。

 

 ここに来て大尉の計画は狂い始めてきていた。本来ならば、敵も味方ももっとたくさん殺すはずだった。青娥の裏切りはまだしも、先代巫女が闇の顎を全滅させるなど誰が予想できようか。やはり、自分には指揮官は向いていないな、などと考えながら紅茶を口にする。

 

「で、次はどうするのかしら? 人里襲撃は失敗してしまったわよ?」

 

 そう訊ねられた大尉は幽香とEXルーミアに目を配り、影狼に伝える。

 

「迎え撃つ、と言ってます」

 

「まぁ、そうなるわよね」

 

 分かっていました、と謂わんばかりに幽香が溜息を吐く。EXルーミアは爛々と目を輝かせている。

 

「なァ、巫女は私の獲物でいいだろ?」

 

 巫女とは切っても切れない因縁があるEXルーミアが声を上げる。だが、大尉はそれを首を横に振って否定する。EXルーミアが霊夢を殺したい理由はよく分かる。だが、それでも大尉は霊夢と戦いたかった。この世界の愛しき宿敵である彼女には殺される価値がある。

 

「いいや、こればかりは譲れねェ。山の時も我慢してたんだ……黙って譲れ」

 

 空気が冷えていくように感じた。大尉には従順だったEXルーミアがやけに反抗的だ。喋ることのできない大尉相手に「黙れ」と言っているのはまるで冗談だ。

 

 首を縦に振ろうともしない大尉に痺れを切らしたEXルーミアが十字架を模した大剣を顕現させる。EXルーミアが本気なのだと理解するや大尉もそれに応えるべく、巨狼の姿へと変化する。妖力の満ち足りたEXルーミアを侮るほど大尉の目は節穴ではない。

 

「いいじゃない。もう好きにさせてあげたら」

 

 思わぬ助け舟は幽香からだった。

 

「折角のお茶会を台無しにされるのは癪だわ。それに――――貴方が霊夢に拘る理由は何なのかしら?」

 

 大尉が霊夢に拘る理由は一つだけだ。霊夢が殺すに価する人間であり、殺されるに価する人間だからだ。それだけの理由があればいい。

 

「まぁ、私も霊夢とは戦いたかったけど……貴方たちに譲るわ」

 

「キショッ」

 

「今、殺してあげましょうか?」

 

 囲んでいたはずのテーブルが粉々に砕け散る。EXルーミアと幽香の妖力にあてられ、テーブルが耐え切れなくなってしまっていた。大尉、EXルーミア、幽香の三人が臨戦態勢をとる。その中で椛は影狼を庇うように前に出る。

 

「お巫山戯もここまでにしておいた方がよろしいのでは?」

 

 椛の言葉に耳を傾け、臨戦態勢を解いたのは大尉と幽香だ。EXルーミアはいつ大剣を振るうか分からない。

 

 大尉の中でちょっとした心変わりが起きていた。幻想郷に来てから初めての戦友であるEXルーミアがここまで意地を通そうとしている。命令してばかりで、EXルーミアにも何かしてあげなければならない時がきたのかもしれない、と。

 

「巫女は好きにしろ、と言ってます」

 

 その言葉にEXルーミアがキョトンと理解できていないような表情を浮かべる。しかし、すぐに理解することができたのか、その表情は満面の笑みへと変わっていく。

 

「お優しいことね」

 

「おォ! 流石は大将! ありがとうなァ!」

 

 勢いあまったEXルーミアが大尉に抱き付く。邪気に塗れたEXルーミアだが、この時ばかりは無邪気に見える。抱き付いたEXルーミアを引き剥がそうとしながら大尉は影狼と椛に指令を飛ばす。

 

「私とルーミアは一緒に来い、だって? 幽香はどうするのさ?」

 

「私はここで迎え撃つわ。貴方たちは好きに戦っていなさい」

 

 大尉は幽香を見詰める。

 

「貴方の戦争が良いものであることを願っているわ」

 

「ありがとう、と言ってます」 

 

「ふふ、こちらこそありがとう。私も良い夢が見れたわ」

 

 幽香の表情はとても穏やかで優しい。本当に良かったと思っている。楽しかった。とてもとても楽しかった。まだ楽しみは残っているが、大尉と離れるのは名残惜しい。

 

「行ってらっしゃい」

 

 EXルーミアと影狼を連れて行ってしまう大尉の背中を幽香は優しく見送る。そして――――。

 

「何故、貴方は残っているのかしら?」

 

「……」

 

 椛は静かに剣を抜いた。


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