今回はリゼ回です。
チノのコーヒー教室から1週間が過ぎていった。休日を満喫するために俺は惰眠を貪っていた。
時計は見えないから分らないが、大体今は11時位だろう。今日は1月まで寝るつもりだ。よみはどうやら町をふらついているようで起こしに来ない。
つまり惰眠し放題。猫は言いよな。餌さえ何とかなれば、日向でずっと寝れるんだから。人間は大変だよな。働いて働いて働いて働く。それ以外は最低限度。ついでにこの生活は俺の研究者時代の話だ。労働時間長いんだよな。
今日は惰眠を満喫した後に本を読むつもりだ。これぞ正しい休日の過ごし方。
二度寝最高と思いながら再び意識を手放そうとすると
「おい。起きろ」
誰かの声がする。
「鈴。もう昼になるんだぞ!いい加減起きろ!」
そう言われて俺の布団がバッと剥がされる。
「ん。後3光年」
「それは速さの単位だろ!」
目をこすりやっとの事で目を開けるとなぜかリゼがいた。私服である。ボーイッシュな感じで何ともリゼにあっている。
「リゼ。取りあえずそこにある俺のスマホを取ってくれ」
「?ああ。わかった。」
リゼは充電機から俺のスマホを取り俺に渡す。俺は電源を点けて、3つの番号を押す。どこかって?
「もしもし?警察ですか?不法侵入なんですが?」
国家権力だ。
「おい。リゼ。俺はお前のお陰で二次元と三次元の区別が付かなくなった残念な人にされたじゃないか!」
「それは私のせいなのか?」
電話の内容はこうだ
「すいません。家に起きたら知らない人が。」
「特徴は?」
「女の子で高校ぐらいで紫のツインテールです」
「…。そりゃあんたの幻覚だ。そんな事がない。あんたあれだ。アニメの見過ぎだ。こっちに戻ってこい。何なら良いところ紹介するぞ?」
「…………ガチャリ」
「これは俺悲しんで言いよな」
「お前が約束を忘れて居そうだから来てみたら案の定寝てるからだ」
約束?リゼと?
「お前。本当に忘れてたのか。」
「待て、どうして俺の家を知っている」
俺がここに住んでいることを知っているのはタカヒロさんとチノだが……
「チノに教えて貰ったんだ。けど途中で迷ってな。そうしたら鈴の飼い猫のよみに会ってな。ちょっと聞いてみたら案内してくれたんだ。よみって賢いんだな」
あいつ。案内ついでに俺を起こさせようとしたな
「リゼ。鍵はどうした。」
「ピッ………。秘密だ」
「おい。今ピッキングって言おうとしたろ。普通に不法侵入じゃないか」
それより約束か……あっ。もしかして町案内か?でも
「しなくていいって言ったような気がするんだけど」
「え?そうだったか?」
「確か、家からrabbit houseの道のりさえ分かっていれば良いって言ったような気がするんだけど」
確か町案内するって言われたのが3日前。お使いを頼まれてリゼに口頭で説明された後放り出され迷子になったんだよな。それで謝られて町案内するとリゼに言われたのだ。
「そ、そう言われるとそんなの気がしないでもないな」
「だろ?」
「だが!それにしてもこんな時間まで寝てるのは不健康過ぎる!運動だ!外を散歩するついでに町案内してやる!」
「えー。後二時間ほど寝て、その後本を読むつもりだったのに」
「睡眠時間の多さは別にしてチノと鈴は趣味が似てるよな……。」
「言われてみれば確かに」
チノの趣味はチェスとボトルシップにパズル。老後のおじいさんみたいな趣味だ。対して俺は読書。完璧なインドアだ。
「ほら、さっさと着替える!」
「はいはい。だが、リゼがここに居ると着替えられないんだが?」
「そ、そうだな。」
そう言うとリゼはそそくさと部屋を出て行く。
仕方ない。今日はリゼについて行きますか。
俺は何時もどうりの服を手にし着替えてから部屋を出る。するとドアの前にリゼが立っていた。
「待たせたリゼ。散歩行くか」
「ああ。ってお前何も食べてないけどいいのか?」
「ご飯なら外で食べればいいだろう。」
「それもそうだな。それよりも」
リゼは俺を頭から足まで見る。
「なあ、服が2日前と殆ど同じような気がするんだが………」
「やっぱりここまで時間たつと分かるよね。服は最低限度しか持ってないんだよ。」
「それにしても少ないだろ。上と下で二種類しかないだろ」
「ピンポン。正解」
パチパチと拍手をする。流石女子。こう言うところには鋭い。と言うか細かい。
「正解じゃないだろ!何でなんだ」
「いやー。前の会社がとてもブラックで……休日返上ってやつ?あってもずっと家にいるからな……外行きの服はこれで十分だったし」
「年頃の男がそれでいいのか?」
まあ?確かに?この年だとここでは大学生。おしゃれにも気を使う男が多いだろう。彼女が居るリア充はなおさら。
俺の場合。オシャレ?何それ美味しいの?服の金が掛かるだけだ。それなら別の物を買う
「いいんだよ。それよりも年頃の女子高生が拳銃とコンバットナイフを持っていていいのか?」
「う、うるさいな!持ってないと落ち着かないんだよ!それよりも!鈴の服を買いに行くぞ!」
恥ずかしい表情を顔をブンブンと振り落ち着かせ、話をそらすように言う
「何でだ?」
「それは前はスーツとかでも良かったのかも知れないが今は私服だろ?ある程度は買った方がいい。」
「それはそうだろうが……お高いんでしょ?」
某通販のように返す。が返答は予想外だった
「お金が無いならかすぞ?」
「ふざけてすいませんでした。流石に2つ年下にお金を借りるほどクズではありません」
俺にも一応年上のプライドはある。まあ、殆ど捨ててるけどね。しかしこうも簡単にお金を貸すと言えるのは凄いな。俺なら絶対言わないぜ。
「クズって……別にお金自体を借りることは悪くないだろ。」
「俺の残り少ない年上としてのプライドなんだ。わかってやってくれ」
「年上な。2つ上ってことは19か?」
リゼは俺の年齢を口にする。次の質問は大体分かるので先取りで説明しよう
「そうだ。ついでに海外に居て飛び級して会社に居たんだがクビにされ今に至る」
「あっああ。すごいことをさらっと説明されたのだが」
とリゼは困り顔だ。
「気にするな。」
今は何とか成ってるしな。それで十分だ
「まあ、お前がそう言うなら」
とちょっとバツが悪げだ。
俺はリゼの手を取りさっさと行くことにした。ドアを開けてリゼを引いて外に出る。リゼは前のめりになりうまく歩けない
「ちょ、おい。いきなり手を取るなびっくりするだろ!」
リゼは顔を赤くし俺に抗議する。だが、俺は悪くない。気にせず突き進む
「だったら手を引かれないようにちゃんと歩けー」
「止まらないと歩けないぞ!」
「それもそうか」
リゼのとうりだな。そう思ってリゼの手を離す。
するとリゼはバランスを崩し、倒れそうになる。
「っ!」
「おっと。すまん。俺の不注意だったな」
ラブコメなら主人公もろとも倒れて、男が胸を触ってモミモミすると言う王道パターンだ。
しかし、俺は主人公気質ではない。モブだモブ。
リゼの肩を両手で柔らかく受け止め衝撃をなくし真っ正面から受け止めキャッチ。胸を当たらないようにする考慮も忘れない。流石俺、マジ紳士
嘘です。紳士は女性の手を強引に引きません。いくらさっきの事から気をそらすようとしても。
「リゼ。大丈夫か?」
リゼは抱き止められた体制から顔を上げ上目使いに
「ああ…。大丈夫だ。怪我は無い。ありがとう」
「悪いな。配慮が足らなかった」
「いや。鈴がさっきの事を気にしないようにとしてくれたことだろう?なら。礼を言うのはこちらだ。」
と言い少し目を逸らすと少しどもりながら
「それと……いきなり手を握るのも止めてくれ。その……男の人に慣れてなくてびっくりするし恥ずかしいから」
恥ずかしいか……。その気持ちは分かるぞ。俺もその気持ちは分かるからな。
「リゼ。それなら腰に回している手を離してくれ。周りの視線が……」
今の体制は俺がリゼの肩を受け止めていてリゼの手は俺の腰の後ろ。簡単に言うと抱きつかれているのだ。
そのお陰でカップルに向けられる微笑ましいものを見る視線が痛いのだ。
リゼは今の体制を確認した後に周りと見渡すと状況を飲み込むと猫のように跳んで下がる
「す、すまない。う、うう。速く行くぞ!」
そう言って急に振り返り早歩きでリゼは先に言ってしまった。振り返るときふわりとなびく髪から覗く耳が赤くし染まってるのは恐らく見間違いではないだろう。
「服屋に言く前にご飯だ。」
リゼはそう言うと服から何かを取り出す
「なんだそれ?」
「レーションだ。」
「ああ。軍隊の携帯食料か、なつかしい。知ってるか?携帯食料……まあ。保存食はフランスのナポレオンが民間に開発を要請したんだぞ。軍隊は胃袋で動くってセリフも残している。」
リゼは俺のこの無駄知識に感心するように話を聞いていたが急に顔を引き締めると
「そんな事を知ってるとは……貴様もしや軍の人間か!?」
「んなわけあるか!研究所の保存食に置いて合ったんだよ。その消費期限が近くなって所員全員で休憩の時に食べてたんだよ。」
あの時は所員全員が美味しくないと言いながら食べていた。だが、あれを食べた後に何時ものご飯を食べると凄く美味しく感じるんだよな。
「そうだったのか。だったらほら、思い出の品だ」
「ありがとう」
俺はリゼからレーションを受け取り食べる。味よりも懐かしさの方がこみ上げてくるな
俺はさっさと食べてしまうと近くの自販機からココアを二本買ってリゼに渡す
「鈴。ありがとう。お金は……」
といってリゼは財布を出す。俺はリゼの財布を取って強引に鞄に戻す
「ついでだよついで」
その笑顔は120円以上の価値はある。やだ、主人公ぽい。でもその笑顔を見れただけで充分さって言う方が主人公だよね。
「そうか。ならありがたく貰うよ」
リゼが両手でココアの缶を持ち口に付ける。と俺もココアを飲む。この程よい甘さがいいな。春の風を感じつつ味わいながら飲む。5分後に飲み干し缶を飲みをしリゼも飲み終えたのを確認すると
「服屋に行くか」
「そうだな。」
その服屋はその場所から15分歩いたところにあった
「なあ、リゼ。何でこんなガチっぽい所なんだ。俺は最も緩い所を想像していたんだが」
「せっかくだ。私もついでに春服を買いたいからな。両方揃えている所にしたんだ」
「場違いな気がするから止めてくれ。」
「気にするな。慣れるから。行くぞ」
俺はこうして地獄に入っていく
「いらっしゃいませ」
「すいません。コイツよ服を数着選んで頂けることはできますか?私も春服を選びたいんですが1人で選ばせるとろくな物を買わないと言うよりここから逃げそうなので」
店員さんは軽く俺を横目で見ると
「かしこまりました。彼女さんが惚れ直すようなコーディネートを出来るようにがんばりますね」
「か!?彼女!?」
「あのー。俺達はそう言う関係じゃありませんが」
「あらあら。彼女は可愛い反応をしてくれるのに…。でもこれはこれでありかしら?」
そう言うとリゼを他の店員に託し俺はからかわれた店員に連れられた
「予算はどれくらいですか?」
俺は財布の中身を確認し諭吉さんが十枚入ってるのを確認。だいたい五万でと言うと
「わかりました。んー?灰色の髪に目。身長は約168ぐらいですか。要望とかあります?」
「ならべく安く。派手なのは却下でお願いします」
「あー。確かにそう言うの似合いませんよね。お客さん。眠たそうな目をしてますもんね。あと雰囲気にもあいませんし。落ち着いた雰囲気ですもんね。わかりました。ちょっと持ってきますね。」
店員はさらっと服の森に姿を消す。この中でも俺に合う服を見つけられるのか
十分経過すると店員さんが戻って来た。
「お待たせしました。こんな服はどうですか?」
そう言って広げられたのは、ワイシャツとカーディガン、ブレザー。ワイシャツは俺が今着ている制服のシャツみたいな物ではなく、しっかりとしたオシャレなやつ。と言っても派手ではなく黒、青、白、赤。青と赤は暗色ぽくなっている。で所々にラインが入っている。
カーディガンは黒と白。模様が入っていてなかなかいい。
ブレザーは黒、白。
最後に薄い黒Tシャツが数枚
ブレザーは居るかどうかは分からんが必要なくても来年があるだろう。いや、秋にも着れるか
「いいですね。合計いくらですか?」
特に嫌な要素は無かったので買うことにする。
「5万と6千何ですが……。すいません。少しオーバーしてるのですが」
「良いですよ。」
俺はそう言って6万を出す。
「おお。お客さん太っ腹。サービスにこれを贈呈します」
そう言うと店員は羽を催したペンダントをくれた。
この時店員が何故か満面の笑みだった
「そうだ!どうせなら着て行ってください。そうすれば少しは値引きますよ?」
「本当に?」
「本当に本当」
「着替えます。」
「ありがとうございます。はい、お返し分です。それではこちらにどうぞ」
案内された先で俺は白のワイシャツの上に黒のブレザーを着て外に出る
「おお。お客さんやればできるじゃないですか!彼女さんもびっくり。私も予想外に驚きです。服に着られている感がない」
店員さんのテンションが高い。が取りあえず好評のようだ。
「それでは彼女さんこっちに居るのでどうぞ」
「もう面倒だからツッコミません」
俺は店員さんに連れられさっきリゼを連れ去った店員の所に来るが
「リゼ?」
「似合わないなら似合わないってはっきり言ってくれ。」
リゼは何時もの服とは異なりかわいい系のふわふわとしたスカート部分にフリルがある白の服に上からピンクのカーディガンを羽織って着ていた。髪は店員さんが合うようにしたのかツインテールではなくロングになっている
普段の雰囲気とは違いお嬢様と言う感じで普段とのギャップもありよく似合っている。
が素直にそれを言えるほど俺のメンタルは強くない
「似合ってなければ今頃笑っているだろうな」
「え?」
リゼは言葉の意味を理解するため考えているが、店員さんはくすくすと笑い微笑ましげにリゼを見ている
リゼは内容を理解したのか俺が笑ってない事を確認すると
「そ、そうか。似合っているのか。……鈴もなかなか様になっているぞ」
頬をかいて照れてわらっている。そんな表情されるとこっも照れるから止めてくれ。店員さんの視線が……
「素直に可愛いって言えないかー。やっぱり」
「ねえ、あの子さっきの人よね。変わり過ぎじゃない?」
「そうよね。私も出てきたときびっくりした」
「イケメンと言うほどでもないんだけど……」
「何か密かに思われそうなタイプってかんじ?」
「そうそう。」
「「はあ。彼氏欲しい」」
店員さん2人ファイト。
2人の心の叫びを聞いて俺達は外に出た。
そこからお茶をしたり公園でうさぎをもふったり、安いお店などを紹介して最後に夕日が綺麗だと言う橋まで来た。
「おお。凄いなこれは」
オレンジ色の光が町を人々を柔らかく照らし橋の下の水が光を反射しきらきらと輝く。
長らく見ていなかった優しい風景
「そうだろ。私のお気に入りの場所だ。鈴に見せたくてな。」
「確かにここはいいな。故郷にこんな風景があったとは」
「ここが故郷なのか?」
「そうだ。まあ、生まれた時と長期休暇以外海外に居たから」
「そうなのか。海外はどんな感じなんだ?」
俺は思い出す。
「特にない。何か愛着がわくまえに引っ越す転勤族だからな。ロシアが一番長くいだけど仕事で手一杯でこうやって景色を見るほどの余裕がなかった」
「今はどうなんだ?」
リゼは橋に寄りかかって景色にを見るのを止めてこちらを向く。
「今か……。凄く楽しい。年が近い友達?が2人もできてこんな風に遊んで働いて何て無かったからな。作る前に引っ越すからなあ。落ち着ける居場所が家だしな」
「お前の居場所は今も家なのか?」
俺は考える。
「今は一番落ち着くのは家だな」
「そうか」
リゼは落ち込む
「これから俺が海外に行かないかぎりはな」
「え?」
リゼは顔を上げて戸惑っている。
「俺のより所が家なのは友人がいなくてと引っ越し三昧だからだ。でも今は違うと思っている。俺自身は」
リゼは言葉の意味を理解したようだ。俺は今引っ越しはしてない。海外にも行かない。rabbit houseで働いているからだ。俺がさっきリゼのことチノを友人と言っているつまり
「そうか。お前は素直じゃないな。素直にrabbit houseが時間がたてば居場所になるかもって言えよ」
「仕方ないだろ。そういう性格なんだ」
俺の返答を肯定と受け取ったのかリゼは嬉しそうに笑顔を浮かべる
その笑顔は何とも夕暮れで茜色に染まる町に合っていた
書いててここまで長くなるとは予想外。びっくり。チノ回の約2倍はある。しかも過去最大。
感想、指摘とうあればお願いします。