ご注文は猫ですか?   作:峰白麻耶

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アルバイト先も喫茶店でした

ぺちぺち

 

ムニムニして逆に気持ちいいからやめてくれ

 

「わかった。起きるからやめてくれよみ。」

 

よみにそう言って猫パンチをやめて俺のベッドから降りる

 

「にゃーん」

「ん、おはよう。」

 

俺がそう言って頭優しく撫でるとよみは頭を擦り付けてくる。可愛いなこいつ。最も撫でてやろうかと思ったが急に離れ、よみはメールが着たことを知らせるランプが付いているスマホを床に滑らせて取ってくる。

 

「にゃ。」

 

そう言うと誉めなさいとでも言いたげにまた頭をスリスリと擦り付けてくる。こいつ俺を悶えさせる気か?可愛いじゃないかこのやろう。

 

俺はあぐらをかいてから膝によみを乗せて充分にもふった後メールの内容を確認する

 

おはよう、鈴。無職一日目の朝はどうかしら?寝過ぎないようにしなさい。あっでもよみが起こしてくれるか。小さいときもそうだったし。

 

本題のバイトだけど私の知り合いがやっている『rabbit house』に行きな。そこで雇ってくれるとよ。家を回すのが無理そうならそこにいけ。

 

 

と、こんな感じだった。rabbit houseか。

 

「うさぎでもいるのか?」

 

何とも単純だがそう思うだろう。うん。そこにアルバイトに行くかどうかは取りあえず

 

「さて、朝ご飯食べるからよみもおいで」

 

よみは俺の腰からよじ登り頭に乗っかる。

 

「にゃっにゃーーーん」

「はいはい、そんな急がなくても大丈夫だから。」

 

階段を下り厨房に行き軽い朝ご飯を作る。よみ用の焼き魚をグリルで焼きさらにトーストを焼いてる間にソーセージ、ベーコン、スクランブルエッグを作り、さっとインスタントコーヒーを入れる。

 

焼きあがったトーストにマーガリンを塗り完成。

テーブルに持って行き

 

「いただきます。よみは焼き魚ができるまでもう少し待っててな」

「にゃーう。」

 

悲しい目で俺を見てもグリルは頑張らないぞ

 

さてとどうしようか。バイトの件は。俺1人でもここを回せるか?といえば何とかなるが連日は体が持たない。俺は元研究職。フィールドワークばっかりやっていた体力親父とは差がありすぎるのだ。

 

客が来る波は手伝っていたから大体わかる。主に昼間の1~6時は客がよく入る。15の時に聞いてみたら俺の作るお菓子類が評判らしく俺のいる長期休みの間は昼のおやつの時間に客が多く入る。逆に俺が居ないと夜に客が入る。ディナータイムで作る料理が評判になる。お菓子類は俺の方が作るのが上手くそれ以外は親の方が上手い。親が甘いものが好きではなく買ってくれなかったのでやむなく自分で作ったのだ。のが上達の原因で親の敗因でもある。親も作るが店に何とか出せるって感じなんだよな。

 

ついでに若干猫カフェ成分が入ってるので猫に触れている客にも目を光らせないといけない。プラス、料理、接客をしないといけない。正直よくよく考えるとピーク時は回らないのだ。俺があの親父の体力を持ってないかぎり。せめて接客が1人居れば何とかなるんだかな。

 

「よし決めた。rabbit houseで働こう。」

 

 

俺のやろうと思えば何でもできるは体力と言う切実な問題の前で儚く砕け散った。

 

 

 

 

★★★

朝食を食べ終えて少しゆっくりしてから俺はrabbit houseに出かけた。一応言く前に電話をしてマスターである香風タカヒロさんには私服で言いよと言われてるため私服できた。黒のズボンにワイシャツ、ブレザーだ。そして横には保護者見たくよみが付き添っている。

 

スマホで検索をしてその地図を頼りにrabbit house

の所までくる。うさぎがカップを持っている看板を見るととやはりうさぎがいるのか?家は猫がくるまって寝てるやつだけど。

 

うさぎがいるかと期待してドアを開けるカランコロンとベルがなる。店に入って見回すとやはりうさぎは居なかった。と言うより人が居なかった。

 

「すいません。いらっしゃいませ。」

 

と思ったら声が聞こえた。落ち着いた少女の声と同時に厨房とおぼしきところから薄い青色の髪の女の子が出てきた。その子の頭の上には白いモフモフとした物体が乗っかっていた。そのモフモフは少女がカウンターを通るときに頭から飛び降りカウンターに着地していた

 

あれはアンゴラうさぎか?と言うか本当にうさぎ居たし

 

俺の所まで来ると

 

「お好きな席にどうぞ」

 

といってカウンターまで下がってしまった。

ちょっと待て聞きたいことが聞けてない。

 

「すいません。香風タカヒロさんはいらっしゃいませんか?猫屋敷と言うものですけど」

 

少女は一瞬間があったが思い当たることがあったのだろう

 

「あなたが猫屋敷 鈴さんですか。話は父から聞いています。服があるので着いてきてください」

 

そう言われたので少女について行く。父から聞いていると言っているがあの母親がどんな風に説明しこの子の父親に伝わっているのかと思うと気が気ではない。けど今は仕事に集中だ。ここをクビにされたら俺は引きこもる自信がある。

 

「所で猫屋敷さん」

 

少女が店の奥の扉を開けるときに振り向き俺に声を掛ける。

 

「なんですか?」

「猫屋敷さんの足下に居る猫は…?」

 

少女の視線の先にはよみが居た。

 

「おい、何で店の中に入ってるんだよ」

「にゃにゃなゃん。」

「いや、そうであったとしても店まで入ってこないし、過保護すぎだろ。」

 

よみが言ったのを翻訳すると保護者だからだと。

 

「取りあえずあそこにいるモフモフにでも遊んで貰え。」

 

俺はカウンターに座って少女を見守っているモフモフも指した。

 

「にゃーーん?にゃにゃん。」

 

よみはそういうとモフモフめがけて一直線に走っていった。それと同時にモフモフが跳ねながら逃げていく。

 

「すまんな、モフモフ。お前の事は忘れないよ。」

「モフモフではありません、ティッピーです。後ティッピーを勝手に死なせないでください。」

 

「ごめんなさい。」

 

テヘペロ。何となく言ってみたかったんだ。

 

「それにどうしてね「のおおおおーーー。」ですか?」

 

え?今のダンディーな声はなんだ。周りを見回してもここには俺と少女によみとティッピーしか居ない。

 

「えっと香風?でいいのかな?」

「すいません。自己紹介がまだでしたね。香風智乃です。紛らわしいのでチノでいいですよ」

「それなら俺も名字呼びじゃなくていいぞ。猫屋敷何て噛まないだろうけど長いからな」

 

少し言葉を砕けさせたがいいだろうか。こっちの口調が堅いとチノもつられるだろうからな

 

「わかりました。鈴さん。なんですか?」

「さっき物凄いダンディーな悲鳴が聞こえたんだけどあれってティッピー」

「腹話術です。」

「………」

 

無言の視線をチノに寄せるが、目をそらさない。

しかし時間とともに少しずつそれていく。

 

「明らかにあれティッピーじゃ」

「私、腹話術が得意なんです。」

 

まあ、ここまで言わないのならそれ以上は追求しない

 

「それでさっきチノが言い掛けたのって何で猫と話してるか?」

「そうです。」

「単純に猫の言ってることがわかるがってだけなんだよな……。」

 

人よりも正直猫と話すことが多いのだ。いつの間にか猫の言ってることがわかるようになってきた

 

「すごいですねそれは。しかも羨ましいです。私ティッピー以外の動物には懐かれなくて。」

 

この野良うさぎが多くいる町で動物が好きなのに好かれないというのは大分悲しい体質だな。俺は動物、特に猫に好かれる。わかりきってるか

 

「猫なら触らせてやれるかも知れないぞ?」

「え!?本当ですか!!」

 

よみはロシアンブルーで人見知りであるが、子供にはめっぽう弱く仕方なく触ることを許すことが多い。

まあ、逆に大人に対しての警戒が強いけどな。チノは恐らくうさぎを触りたいのだろうが、動物ならいいのだろう。これを気に猫好きになれば俺もうれしい

 

「よみだけじゃなくて町にいる野良猫達もお願いすれば触らしてくれるだろう」

「この町って野良猫居るんですか?」

 

チノは初めて知ったようだ。まあ、それもそうか。

 

「少しね。それも路地とかうちの店にいるから見たことがあるって人は少ないかもね。」

「家の店って?」

「実家が喫茶店なんだよ」

「それなら家ではなくそこで働けばいいのでは?」

 

チノの疑問はもっともだろう。

 

「なあ、チノ。チノは1人でこの店を回せるか?それも1日中朝から夜まで」

 

チノはその光景を想像したのかぞっとしたような顔で

 

「無理ですね。倒れちゃいます」

「そう言うことだ」

「ご両親はどうされたんですか。」

「親……か。世界旅行に行ってるぞ」

「世界旅行って……自由なご両親なんですね。」

「自由過ぎて困る」

 

そうこう話している内にチノは目的の部屋に着いたのか止まっていた

 

「中の部屋にバーテンダーの服が入っているのでそれを着てください。着替え終わったら下に来て下さい」

 

チノはそう言って一階の方へ降りていった。

 

「んじゃ。俺も早く着替えるか」

 

俺も早速着替えてみる。意外といい。と言うより研究職だったから白衣とかスーツの方が多かったし手伝いの時も厨房だったからこういう喫茶店の制服は着たことがない。着こなしがおかしくはないかを確認して一階へ降りる

 

そうするとチノともう1人紫色の髪をツインテールにし制服に身を包んだ子が居た

 

「む!?くせ者か!」

 

その少女はチノを後ろに庇い懐から拳銃を出す。

 

「いや、初対面の人間にいきなりモデルガンを出すなよ」

 

普通の人ならびっくりするだろうが本物をアメリカで見たことがあるしおもちゃかそうでないかの見分けはつく

 

「そうですよリゼさん。この人は新しく入る猫屋敷 鈴さんです。」

 

チノがそう言うと拳銃を制服にしまい、椅子舞いを正して

 

「そうだったのか。早く行ってくれればよかったのに」

 

リゼがそう言うと呆れたようにチノは

 

「紹介する前にリゼさんが拳銃を出したんじゃないですか」

「すまんすまん。ついな。」

 

つい拳銃を向けられる俺っていったい何なんだろうか

 

「天々座 理世だ。よろしくな。噛むだろうからリゼでいいぞ。私も勝手に鈴って呼ぶし」

「わかった。よろしくなリゼ」

「ああ。」

 

「そう言えばチノ。来る途中にティッピーが猫に追い帰られて泣いていたような気がしたんだが。あれは大丈夫なのか?」

「………鈴さん」

 

ジト目でこちらを睨んでくるが、攻められているような感じがしない。むしろかわいいが

 

「すまなかった。今度は手加減するようによみにいっめおく」

「はあ、そういう問題ではありません。まあ、何時も私の頭に乗っているので少しは運動した方が良いのかも知れませんが。あっ。リゼさんお客さんをお願いします。私は鈴さんに説明するので」

「わかった。まかせとけ。」

 

 

そうしてリゼは接客に動く

 

 

「鈴さんは基本的に接客です。コーヒーを入れるのが私で調理はリゼさんです。」

「わかった。」

「レジの使い方は分かりますか。」

「分かる」

 

店が終わった後にレジで遊んでいたことがあったからな

 

「後メニューも徐々に覚えてください」

「メニューはどこにある?」

「ここにあるぞ」

 

俺がメニューの場所を聞くとリゼがメニューを持ってきた

 

「おっ。ありがとうリゼ。」

 

メニューを開き5秒見つめた後もう一度開いて見る

 

「ありがとう、覚えた」

「すごいですね。リゼさんと同じくらい早いです」

「いや、私もここまで早くは覚えられないぞ」

 

そんな会話をしているとお客さんがきた。さて、働く、もとい接客しますか

 

「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」

「あら、新しく入ったバイトさんですか?」

「今日から働く事になりました」

「そうなの。それじゃ、ブルーマウンテンお願いします」

「かしこまりました」

 

俺はオーダーを聞きカウンターまで下がるとチノに注文を言う。こうしてrabbit houseの初日は終わっていった

 

 

 

「お前、なかなかやるな」

「飲み込みが早くて助かりました」

 

今日は客入りが多かったらしく助かったみたいだ

 

「まさか、鈴が料理ができるとは。しかも私より手際よくやってるかは負けた気分になるな」

「はい、私も予想外でした」

「暇潰しに料理は持って来いだからな。」

「何がともあれ、戦力が大幅に上がったな。」

「そうですね。回転が明日からも早くなるでしょう。今日はお疲れ様でした。」

「ああ、お疲れ」

「お疲れ様」

 

俺はさっきの部屋に戻りバーテンダーの服を返す。部屋から出ると男性がいた。

 

「もしかしてあなたがタカヒロさんですか?」

「そうだよ。」

「初めまして。猫屋敷 鈴と言います。よろしくお願いします」

 

俺はお辞儀をすると

 

「ああ、こちらこそよろしく。君の親からは聞いたよ。災難だったね」

「ええ、まあ。」

「君が新しい職を見つけるまでここにいてもいいよ。何ならここに就職するかい?」

「今は何とも言えないですね。」

 

嬉しい提案だが1日で決めるのも良くない。取りあえずいろいろやってみよう。

 

「そうか。チノが初対面であそこまで話せるの人は居ないからね。これからも仲良くしてやって欲しい」

「それは、勿論ですよ。所で気になったんですが俺の親とどんな関係で?」

「学校の先輩で幼なじみだな。」

 

 

 

 

両親とタカヒロさんの意外な関係がわかって今日は終わった。家に帰るとよみが満足げに尻尾を振るっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チノとリゼの登場。キャラがぶれてなければいいのですが………

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